コンバット

サクラ近衛将監

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第三章 学院生活編

3ー12 傍目から見たヴィオラ

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 王立学院に入学して五か月が過ぎました。
 ヴィオラ(私)は、友人を増やしながら勉学にいそしんでいます。

 但し、自分の能力を伏せて友達と付き合うというのは結構大変なのですよ。
 当初の計画通り、ヴィオラ(私)は常に二番手を目指しています。

 なろうと思えば多分いつでもトップになれますけれど、私の場合、学院に入ったのはトップになるためじゃないんです。
 お友達を作り、そのお友達と語り合い、きそい合うことで、私も嬉しいし、そのお友達の能力も高めることができますよね。

 ヴィオラ(私)がもう成長しきったというつもりはありませんけれど、同年代の子達とは少なくとも知識と魔法の能力という点で大きな差が開いてしまいました。
 ですから、できれば先達として未熟なかたが居ればその能力を伸ばしてあげたいと思っているんです。

 でも、余りに隔絶した能力を見せつけると、対抗心なんかはどこかへ吹き飛んでしまいますよね。
 ですからその加減がすごく難しいんです。

 ルテナとしょっちゅう相談しながら力を発揮する際の調整をしているヴィオラ(私)ですが、正直なところ気を使いすぎると云うのでしょうか、精神的には疲れますね。
 遠慮なしに魔法をぶっ放す場面が無いと、なんとなくフラストレーションがまりそうです。

 で、そんなときは、時折、ヴィオラ(私)の成長ボディ(願望?)を生み出して、あちらこちらで活躍(暗躍?)させています。
 素性の知れない若い女が時折市井しせいの巨悪を断罪しているので王都ではちょっとした話題になっているんです。

 ちまたでは、凄腕の女魔法師『マスコジェンカ』と呼ばれ始めました。
 ヴィオラ(私)がそんな名を名乗った覚えはありませんよ。

 『マスコジェンカ』というのは、王都の西方域の地に住むマロバ族の言葉で、「仮面の美女」という意味なんです。
 例の遠足の際の魔物襲撃事件で、第四王女エミリア様の警護についていた王宮騎士団の中にマロバ族出身の人が居たようで、その人がヴィオラ(私)の幻影を見ていたことから、後で「あれって、マスコジェンカ仮面の美女だったよなぁ。」と独り言を言ったのが同僚の耳に入り、それが何故か通称に置き換えられたみたいです。

 多分、十年以上も経って、ヴィオラ(私)が成長した暁には、あの幻影であったような素敵なボディになると思うのですが、もしかするとあの幻影は大いに私の願望が反映されていたかもしれません。
 でも、是非にそうであって欲しいなと思うヴィオラ(私)です。

 ◇◇◇◇

 私は、エミリア・ディ・ラ・シス・オルソー・ドラベルト、国王の側妃の娘であり、第四王女です。
 王家の慣例に従って、私も王立学院に入学しました。

 王宮からほとんど出たことのない私ですので、市井のことはほとんど何も知りませんでした。
 一応は、私付きの家庭教師ヘンリエッタさんから、教育の一環として通り一遍とおりいっぺんの話は教えていただいては居ましたが、ただ話を聞いているだけではなかなかわからないことが多いのです。

 それが学院に入ると一変しました。
 学院は、私と同じ年齢の男子と女子が多数集まって、教師に色々な知識を教えていただく学び舎まなびやなんです。

 色々な考えの持ち主が集まりますので、物事に対する反応も様々です。
 私は庶子しょしにあたる第四王女ですけれど、王家の血筋として相応に敬ってくれる者が居る一方で、ヘンリエッタさんから聞いていた反国王派の子女も居て、極端な反目はないものの,私に対する緩やかな敵愾心てきがいしんを向けてくる子も少なからず居ます。

 これまで私の周囲にはそんな人が居なかったので、ある意味で驚きましたけれど、これまでの私が温室育ちだったのだなぁと、つくづく感じました。
 そんな中で頼りになるのが、寮で私の隣部屋に住む、ヴィオラ・ディ・ラ・フェルティス・エルグンド嬢です。

 彼女は、エルグンド伯爵様の次女なのですけれど、とても聡明な人なんですよ。
 入学試験は単なるクラス分けのための試験とは聞いておりましたけれど、学科試験と実技試験で優秀な成績を収め、ぶっちぎりの首席を取った子なんです。

 学院長様に内緒で教えていただきましたけれど、歴代の新入生では最上位に当たる成績だったとか。
 学院長様からは、特に、ヴィオラ嬢との交友を勧められました。

 本人と顔を合わす前に、年配者から特定の方との交友を勧められたのは初めての経験です。
 きっと素晴らしい方なのだろうと思っていました。

 ヴィオラ嬢と初めて会ったのは、学院の寮に移り住んだ日であり、上級生を含めたオンディーヌ寮生全員の前で自己紹介をする直前でした。
 背丈は私と同じぐらいですけれど、ヴィオラ嬢の方が心持ち低いかもしれません。

 綺麗きれいな髪は、深い緑色で宝石にも似た輝きをもっていました。
 どうしてあんなに綺麗でつやつやしているのかと不思議に思いました。

 瞳はオッドアイなのかな?
 どちらも青なのですけれど、右目が少し薄い色に見えます。

 そうしてかなり後でわかったのですけれど、彼女の目の虹彩に金色が混じっていました。
 虹彩に金色が混じっているのは魔力が高い証拠なんだそうですよ。

 別件で王宮魔法師団の長にお聞きした話なので間違いないと思います。
 お顔は丸顔ですが、お目目がぱっちり、お口は小さ目かなぁ。

 でもとってもかわいいんです。
 母方のおばあさまから頂いて、私が大事にしているヴィスクドールにちょっと似ているから、そう思うのかもしれません。

 会った瞬間に彼女が好きになりました。
 ヴィオラ嬢のさらにお隣に入っているルミエ・ディ・ラ・シス・エステバン・ブラッセルド嬢とともに、二人が私の最初の友人になってくれました。

 ヴィオラ嬢は、とっても面倒見が良いのです。
 私が何かしら困っていると、すぐに気が付いて、間接的に手助けしてくれます。

 面白いのはその仕草や言動が、後宮メイド長のケイティさんによく似ていることです。
 色々とアドバイスはしてくれますけれど、滅多に手は出しません。

 本当に危ない時はすぐにめてくれますけれどね。
 そうしてどんなときにも慌てないんです。

 初めての遠足の時に魔物集団が襲撃してきた時は、周りに居た生徒全員があわてふためいていましたのに、ヴィオラ嬢だけは普段と変わらず、いいえ、むしろ普段よりも怜悧れいりな目つきに変わっていたかもしれません。
 なんだか獲物を狙う鷹の目のように感じたのは私の気の所為せいでしょうか?

 でも怖いという感じでは無いんですよ。
 ヴィオラ嬢の傍にいるだけで大丈夫だと思わせる何かがあるんです。

 そうして謎の女魔法師が出現して、みるみる間に魔物を退治して行き、生徒たちには何の怪我もなく学院に戻れましたけれど、ちょっと気になったことが一つ。
 何の根拠もないんですけれど、謎の女魔法師の口元がヴィオラ嬢に似ていたように思うんです。

 髪の色がブルーネットでしたし、目の色も茶色か黒に見えましたから、ヴィオラ嬢とは違うと思うのですけれど、・・・。
 ヴィオラ嬢が大人に成長したときにはあんな感じの顔立ちになるんじゃないのかなって直感で思っちゃったんです。

 なんか、ヘンテコですよね。
 でもヴィオラ嬢には内緒で、こそっとルミエ嬢とお話ししましたら、実は彼女もそんなことを感じていたのですって。

 不思議な話ですよね。
 私についている従者によれば、少なくともヴィオラ嬢の周辺には謎の女魔法師のような存在は居ないそうです。

 やっぱり王家なんですね。
 私の周囲に近づく者については、しっかりと身辺調査をしているんです。

 ヴィオラ嬢もルミエ嬢も、お父様たちが国王派ですので敵対する派閥の子ではありません。
 学院にまで派閥の抗争を持ち込むのはおかしな話ですけれど、反国王派の子女のかたが親の指示なのか、時折反目するような振舞いを見せる場合もありますね。

 そんな中でもヴィオラ嬢は、反目なんかどこ吹く風で、誰とでも仲良くなれちゃう子なのでびっくりしちゃいました。
 親たちは反目しあっても子供たちには当座関係ないという考え方で、反国王派の子女にもごく普通に付き合っています。

 向こうが突き放そうとしても、ヴィオラ嬢に対しては何だか言葉で言い負かされていますね。
 その関係は、友達というよりは言葉に屈した従者に近いかもしれません。

 あれ?
 じゃぁ、ヴィオラ嬢って、一年生のガキ大将なのかしらん?

 普通、ガキ大将って言ったら男の子の役柄でしょう?
 女の子が大将?

 まぁ、ヴィオラ嬢なら何でもありかも・・・。
 本人は一生懸命隠しているつもりでも、魔法の授業なんか大分手加減しているのが見え見えです。

 筆記試験なんかも、難問なんかをしっかり解いているのに、誰でもわかる易しい問題を誤記したりしていますけれど、あれって、絶対にわざとだと思いますよ。
 だから彼女が本気になれば誰もかなわないのじゃないかと思います。

 そんな彼女が私の親しい友人でいてくれて本当によかった。
 だってとっても頼れる姉みたいな友人なんですもの。

 最近、ルミエ嬢なんか、本人の前では決して言いませんが、陰ではヴィオラ嬢のことを「姉御アネゴ」って呼んでいるんですよ。
 ウーン、ぴったり合っているから、もしかするとヴィオラ嬢のあだ名が「アネゴ」で決まるかも知れませんね。

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