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第三章 学院生活編
3ー34 お化け?いいえ、リッチのようです
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ヴィオラで~す。
もう一月もすると、王立学院に来てから丸々1年になります。
初等部一年生の私達も、このまま二年生になるはずなのです。
病気等で余程出席日数が足りない場合などを除いて、初等部の場合は、全員二年生になることが決まっているようです。
今のところ出席日数が足りなくて留年するような人はいませんヨ。
稀に、成績が悪くて補修を受けている子は居ないわけではありませんけれど、それでも初等部は基礎教育なので落第はありません。
折角お友達になれたのですから、皆が一緒に二年生になりたいですよね。
年末と言う訳では無いのですけれど、先生方も年度が変わる学期末が近いという事で何かと忙しそうです。
学院ではこの時期に恒例の行事があります。
一年生だけの行事なのですけれど、王都の郊外にあるダンジョン跡の見学です。
このダンジョンは王都の間近にあって、王都に居る冒険者にとってはとても利のあるダンジョンでしたが、およそ40年前にスタンピードを起こしてしまいました。
この時は、王都を守る城壁の中に魔物が侵入することはありませんでしたけれど、王都の外に居た人たちが襲われました。
その多くは、交易のために王都へ来ていた商人や王都の知り合いを訪ねて来た旅人などです。
いずれも王都の城壁の中に入るための検問で長い行列を作っていた人達です。
その行列の中には冒険者も居ましたので彼らが中心となって魔物退治に奮戦しましたけれど、魔物の数が多すぎて、とても対応できず、多数の人命が失われました。
最終的に王都の近衛兵も繰り出して何とか魔物を退治できましたが、王都の近くにあるダンジョンがスタンピードの前歴があるとなれば将来的に同じ災害が繰り返されるかもしれません。
このため、王命によりこのダンジョンは最奥のボスを討伐した後で、魔核が破壊されました。
ダンジョンの最奥部にある魔核を破壊すると、ダンジョンはその機能を失うのです。
ダンジョンの不思議な能力については、今もって学者が研究していますけれど、経験則からダンジョン最奥部の魔核を破壊すると、ダンジョンから魔物は出現しなくなるのです。
ではなぜ、ダンジョンを討伐して無くしてしまわないかと言うと、ダンジョンで魔物を狩るとその素材やドロップ品がお金になるからです。
スタンピードの発生の危険性はあるモノの、上手く管理すれば宝を生み出す打ち出の小槌になるために、ラスボスを倒した後でも魔核は残すのが普通なのです。
但し、王都のように大勢の人が住む場所では、危険が大きすぎるのでダンジョンの機能を止めることになったわけです。
従って、この王都近郊にあるダンジョン跡は、今では魔物を生み出しません。
でも魔物が棲み着いてしまうとこれも問題ですから、入り口に扉を作って封鎖し、魔物が入り込まないようにしているのです。
このダンジョン跡は、複数の階層がある大きな洞穴のようになっていますので、そのままでは何の面白みもありませんが、40年前の災厄を忘れないために、王家がその一部を博物館にしているのです。
ここを訪れると在りし日のダンジョンの姿が蝋人形等で展示されていたり、スタンピードで起きた被害の規模を掲示してあったりするので、ダンジョンを経験したことの無い学院生徒には良い教材になるのです。
そのため、一年生の学期末に例年ここを訪れて修学旅行の代わりにしているのです。
但し、前期にあった遠足の際には何らかの謀略が原因で、テイマーの操る魔物に襲撃されるという事件がありましたので、今回は警護の部隊も冒険者も倍の人数に増やされています。
前回は歩いて行けるところでしたが、今回は馬車の旅になるのです。
警護部隊も同様に騎馬若しくは馬車に分乗しての異動です。
新入生は全部で36名、一台の馬車に3名が乗って、お付きが3名同乗します。
馬車は全部で12台必要なわけですが、この他に冒険者を乗せた馬車が6台、2台が前・中・後に分かれて警護に当たります。
この冒険者用の馬車は幌の付いた荷馬車のような馬車で、生徒が乗るちゃんとした旅行用の馬車とは違います。
冒険者は全部で72名ですが、そのうち半数は速足で周囲の警戒をしながらついてきます。
疲れたら馬車に飛び乗って交代しているようですね。
このほかに近衛師団の二個中隊80名が騎馬で警護に当たっているのです。
ちょっと大袈裟な警護体制なのですけれど、遠足の襲撃事件や最近ではエミリア王女の暗殺未遂事件の発覚などもあり、これほど厳重な警備体制になったようです。
事前には、この修学旅行そのものを取りやめてはどうかという意見もあったようですが、子供たちの教育機会を奪うことにもなりかねないことから例年通り実施することになったようです。
朝一番に学院を出て、ダンジョン内の各種展示を見学、ダンジョンの中に整備されている大広間の食堂でお弁当を食べて帰ってくるだけの小旅行です。
でもね、仲間たちとわいわい賑々しくお話をしながらの馬車での小旅行は、とても良い思い出になると思います。
私も前世の小学校での遠足はとっても楽しみでした。
1年生から4年生までいずれも徒歩での遠足でしたがとても楽しかったことを覚えています。
乗り物での修学旅行は6年生の予定でしたので私は参加できていません。
ですからとっても楽しみにしていましたが、馬車はくじ引きで決められました。
肝心の同乗者ですが、CクラスとDクラスの男の子でした。
別に男の子でも問題は無いのですけれど、この二人ともとっても無口なんですねぇ。
Cクラスの子はレイアー子爵の次男坊でキリングス君、レイアー子爵は中道派ですね。
Dクラスの男の子は、ブレイン男爵の三男坊でマーカス君、ブレイン男爵は反国王派の王弟派なんです
他のクラスの生徒ともいろいろな機会で交流はしますけれど、この二人は顔見知りではあっても話をしたことが無いんです。
ダンジョン跡までは馬車に乗って一刻余りかかりますから、何も話をしないととても退屈になりますよね。
で、色々とやってみるのですけれど、このお二人とってもノリが悪いみたい。
美少女とまでは言わなくても、可愛い同級生が話題を提供しているのですから、礼儀として少しは反応してほしいものですが、反応が薄いものですから、何となくあちらこちらで酷い目にあわされた野良犬を思い起こさせます。
人目を避けている元気の無い陰キャラに見えますね。
そんな子であっても見棄てるわけには行きませんから、ちょっぴり人生経験豊富なお姉さんが手を曳いてあげなければいけません。
でも難しいんですよ。
伯爵家の娘と言うだけで男爵家の次男坊には若干引かれていますし、子爵家三男坊はどうも覇気というものを生まれ出る時に子宮の中に置き忘れてきたみたいですから、戦場に行ったら絶対に緒戦で逃げ出すタイプでしょうか。
それでも困難と向き合うのが、私(ヴィオラ)の使命のようなものですから、果敢に挑戦します。
何とかダンジョン跡に着く直前ぐらいには、多少のしこりと障害も取り除けたような気がしますが、苦労しちゃいましたので思わずため息が出ちゃいました。
◇◇◇◇
馬車を降りたなら順次クラスごとに二列縦隊を作って、担任の先生の引率で鉄格子の扉がある施設に入って行きます。
内部を順次見学です。
要所要所で先生が色々な説明をしてくれます。
その多くは掲示板に記載されているものが多いのですけれど、掲示板に記載されていないことで先生が調べた情報を教えてくれますね。
護衛の人たちは四分の三が施設の中に入って内部での警戒、残りはゲートで待機しています。
内部から魔物が出現する恐れは無いはずなんですが、それでも複数の階層からできていたダンジョンはあちらこちらに突起物や穴が有ったりして、幼い子には危険な場所が多いのです。
そうした場所には不用意に入らないよう柵や紐をめぐらせて立ち入ることができないようにしてありますけれど、そうした危険な場所で警戒をするのがダンジョン跡に入った彼らの仕事のようです。
施設内の見学を終え、今はこの施設の一階中央にある岩窟の大広間で少し遅めの昼食です。
御弁当は各寮のコックさんが作ってくれたものです。
食べるのが早い子は弁当を食べ終わった頃、私(ヴィオラ)はまだ食べている途中でしたけれど、突然危険を察知しました。
非常に大きな魔力を持ったモノがダンジョンの奥底から急速に上昇して来るのです。
私(ヴィオラ)は、すぐに臨戦態勢を取りましたけれど、周囲にいる警護の人たちはまだ気づいていないみたいです。
どちらにしろ、大勢の人の目があるので、ここで私(ヴィオラ)の実力をひけらかすわけにも行きません。
そこで、遠足の際に初お目見えしたベネツィアンマスクのお姉さん(通称、マスコジェンカ?)に出てもらうよう準備だけはしています。
彼女の姿ならば、顔を見られても一年生の誰かの陰の護衛と勝手に勘違いをしてくれそうです。
学院生には上級貴族の子女が結構居ますから、そういう特殊な護衛が居ても決しておかしくは無いのです。
そうしている間にも膨大な魔力の塊のようなものが急速に下層から接近してきて、勘の鋭い近衛騎士や冒険者の一部も気が付いたようで、施設の奥を睨んで臨戦態勢を取りはじめます。
隊長でしょうか、大声を上げました。
「奥から危険な気配が接近している。
総員戦闘態勢を取れ。」
うん、遅すぎますよね。
もう少し早めに号令をかけるべきです。
正体不明のものは、もうこの岩窟の大広間の入り口近くに達しています。
それは姿を現し・・・。
いえ、靄のような黒いガス状の物をまとっているので姿が見えません。
隠しているのかそれともそもそも姿の無いアンデッドなのか・・・。
うーん、此処は廃墟ですからね。
もしかしてお化けさんなのかしら?
そこで念のため鑑定をかけましたら、途端に「キシャーッ!」と叫び声をあげて、黒い靄の魔力が吹き上がりました。
うーん、鑑定をかけられたことに気づいて怒っているのかもしれません。
この黒モヤさん、『お化け』じゃなくって、『リッチ』と鑑定に出ました。
何だか物凄い憤怒を感じます。
リッチもアンデッドの一つですから、まぁ、お化けの一種ではあるのでしょうけれど、この憤怒は何かの未練?なのでしょうか?
何となく復讐心に駆り立てられた成仏できない歪んだ精神を感じます。
リッチが魔法を行使しようと魔方陣を描き出しました。
放置すると多数の死者が出ますし、この洞窟自体が崩落する恐れもあります。
発動しようとしている魔法は、多分、極大炎熱地獄じゃないかと思います。
そんなものをここで使用したらこの場所全部が吹き飛びます。
私(ヴィオラ)は、急ぎ、ディスペルで魔方陣の生成を阻止し、同時に神聖魔法の大浄化を発動しました。
但し、此処で活躍するのは飽くまで、私(ヴィオラ)の仮の姿の『マスコジェンカ』です。
完成間近の魔方陣は一瞬にして消滅し、次いで膨大な数の光の泡が周囲の空間から一斉に黒い靄に襲いかかります。
リッチは「グッ、ギャーッ‼」という叫び声をあげながら、あっという間に消え去りました。
警備陣にも生徒たちにも被害はありません。
みんなを救ったマスコジェンカは口元に笑みを見せながら一瞬で消え去ります。
私が居てよかったですよね。
あんなのが出てきたら、百や二百の武人では絶対に対応できません。
宮廷の高位の魔法師でも総がかりで対応できるかどうかです。
鑑定にかけた際に感じたのは、裏切られたことへの復讐心だったように思います。
このダンジョンの核が破壊されてから四十年ほどですから、その後に冒険者がここに入るわけもないですよね。
だとしたら、ダンジョンのラスボスを倒して魔核を破壊する際に何かあったのかどうかです。
リッチは魔物ですけれど、元は人間の魔法師だった人が死んだときに怨念等で蘇ったモノと言う定義づけになっていたはずです。
ノータであるルテナもそのことを追認しています。
生憎とルテナにアカシック・レコードを調べてもらっても、すぐには回答が得られないようです。
これは40年前の状況を確認しておく必要があるかも知れません。
もう一月もすると、王立学院に来てから丸々1年になります。
初等部一年生の私達も、このまま二年生になるはずなのです。
病気等で余程出席日数が足りない場合などを除いて、初等部の場合は、全員二年生になることが決まっているようです。
今のところ出席日数が足りなくて留年するような人はいませんヨ。
稀に、成績が悪くて補修を受けている子は居ないわけではありませんけれど、それでも初等部は基礎教育なので落第はありません。
折角お友達になれたのですから、皆が一緒に二年生になりたいですよね。
年末と言う訳では無いのですけれど、先生方も年度が変わる学期末が近いという事で何かと忙しそうです。
学院ではこの時期に恒例の行事があります。
一年生だけの行事なのですけれど、王都の郊外にあるダンジョン跡の見学です。
このダンジョンは王都の間近にあって、王都に居る冒険者にとってはとても利のあるダンジョンでしたが、およそ40年前にスタンピードを起こしてしまいました。
この時は、王都を守る城壁の中に魔物が侵入することはありませんでしたけれど、王都の外に居た人たちが襲われました。
その多くは、交易のために王都へ来ていた商人や王都の知り合いを訪ねて来た旅人などです。
いずれも王都の城壁の中に入るための検問で長い行列を作っていた人達です。
その行列の中には冒険者も居ましたので彼らが中心となって魔物退治に奮戦しましたけれど、魔物の数が多すぎて、とても対応できず、多数の人命が失われました。
最終的に王都の近衛兵も繰り出して何とか魔物を退治できましたが、王都の近くにあるダンジョンがスタンピードの前歴があるとなれば将来的に同じ災害が繰り返されるかもしれません。
このため、王命によりこのダンジョンは最奥のボスを討伐した後で、魔核が破壊されました。
ダンジョンの最奥部にある魔核を破壊すると、ダンジョンはその機能を失うのです。
ダンジョンの不思議な能力については、今もって学者が研究していますけれど、経験則からダンジョン最奥部の魔核を破壊すると、ダンジョンから魔物は出現しなくなるのです。
ではなぜ、ダンジョンを討伐して無くしてしまわないかと言うと、ダンジョンで魔物を狩るとその素材やドロップ品がお金になるからです。
スタンピードの発生の危険性はあるモノの、上手く管理すれば宝を生み出す打ち出の小槌になるために、ラスボスを倒した後でも魔核は残すのが普通なのです。
但し、王都のように大勢の人が住む場所では、危険が大きすぎるのでダンジョンの機能を止めることになったわけです。
従って、この王都近郊にあるダンジョン跡は、今では魔物を生み出しません。
でも魔物が棲み着いてしまうとこれも問題ですから、入り口に扉を作って封鎖し、魔物が入り込まないようにしているのです。
このダンジョン跡は、複数の階層がある大きな洞穴のようになっていますので、そのままでは何の面白みもありませんが、40年前の災厄を忘れないために、王家がその一部を博物館にしているのです。
ここを訪れると在りし日のダンジョンの姿が蝋人形等で展示されていたり、スタンピードで起きた被害の規模を掲示してあったりするので、ダンジョンを経験したことの無い学院生徒には良い教材になるのです。
そのため、一年生の学期末に例年ここを訪れて修学旅行の代わりにしているのです。
但し、前期にあった遠足の際には何らかの謀略が原因で、テイマーの操る魔物に襲撃されるという事件がありましたので、今回は警護の部隊も冒険者も倍の人数に増やされています。
前回は歩いて行けるところでしたが、今回は馬車の旅になるのです。
警護部隊も同様に騎馬若しくは馬車に分乗しての異動です。
新入生は全部で36名、一台の馬車に3名が乗って、お付きが3名同乗します。
馬車は全部で12台必要なわけですが、この他に冒険者を乗せた馬車が6台、2台が前・中・後に分かれて警護に当たります。
この冒険者用の馬車は幌の付いた荷馬車のような馬車で、生徒が乗るちゃんとした旅行用の馬車とは違います。
冒険者は全部で72名ですが、そのうち半数は速足で周囲の警戒をしながらついてきます。
疲れたら馬車に飛び乗って交代しているようですね。
このほかに近衛師団の二個中隊80名が騎馬で警護に当たっているのです。
ちょっと大袈裟な警護体制なのですけれど、遠足の襲撃事件や最近ではエミリア王女の暗殺未遂事件の発覚などもあり、これほど厳重な警備体制になったようです。
事前には、この修学旅行そのものを取りやめてはどうかという意見もあったようですが、子供たちの教育機会を奪うことにもなりかねないことから例年通り実施することになったようです。
朝一番に学院を出て、ダンジョン内の各種展示を見学、ダンジョンの中に整備されている大広間の食堂でお弁当を食べて帰ってくるだけの小旅行です。
でもね、仲間たちとわいわい賑々しくお話をしながらの馬車での小旅行は、とても良い思い出になると思います。
私も前世の小学校での遠足はとっても楽しみでした。
1年生から4年生までいずれも徒歩での遠足でしたがとても楽しかったことを覚えています。
乗り物での修学旅行は6年生の予定でしたので私は参加できていません。
ですからとっても楽しみにしていましたが、馬車はくじ引きで決められました。
肝心の同乗者ですが、CクラスとDクラスの男の子でした。
別に男の子でも問題は無いのですけれど、この二人ともとっても無口なんですねぇ。
Cクラスの子はレイアー子爵の次男坊でキリングス君、レイアー子爵は中道派ですね。
Dクラスの男の子は、ブレイン男爵の三男坊でマーカス君、ブレイン男爵は反国王派の王弟派なんです
他のクラスの生徒ともいろいろな機会で交流はしますけれど、この二人は顔見知りではあっても話をしたことが無いんです。
ダンジョン跡までは馬車に乗って一刻余りかかりますから、何も話をしないととても退屈になりますよね。
で、色々とやってみるのですけれど、このお二人とってもノリが悪いみたい。
美少女とまでは言わなくても、可愛い同級生が話題を提供しているのですから、礼儀として少しは反応してほしいものですが、反応が薄いものですから、何となくあちらこちらで酷い目にあわされた野良犬を思い起こさせます。
人目を避けている元気の無い陰キャラに見えますね。
そんな子であっても見棄てるわけには行きませんから、ちょっぴり人生経験豊富なお姉さんが手を曳いてあげなければいけません。
でも難しいんですよ。
伯爵家の娘と言うだけで男爵家の次男坊には若干引かれていますし、子爵家三男坊はどうも覇気というものを生まれ出る時に子宮の中に置き忘れてきたみたいですから、戦場に行ったら絶対に緒戦で逃げ出すタイプでしょうか。
それでも困難と向き合うのが、私(ヴィオラ)の使命のようなものですから、果敢に挑戦します。
何とかダンジョン跡に着く直前ぐらいには、多少のしこりと障害も取り除けたような気がしますが、苦労しちゃいましたので思わずため息が出ちゃいました。
◇◇◇◇
馬車を降りたなら順次クラスごとに二列縦隊を作って、担任の先生の引率で鉄格子の扉がある施設に入って行きます。
内部を順次見学です。
要所要所で先生が色々な説明をしてくれます。
その多くは掲示板に記載されているものが多いのですけれど、掲示板に記載されていないことで先生が調べた情報を教えてくれますね。
護衛の人たちは四分の三が施設の中に入って内部での警戒、残りはゲートで待機しています。
内部から魔物が出現する恐れは無いはずなんですが、それでも複数の階層からできていたダンジョンはあちらこちらに突起物や穴が有ったりして、幼い子には危険な場所が多いのです。
そうした場所には不用意に入らないよう柵や紐をめぐらせて立ち入ることができないようにしてありますけれど、そうした危険な場所で警戒をするのがダンジョン跡に入った彼らの仕事のようです。
施設内の見学を終え、今はこの施設の一階中央にある岩窟の大広間で少し遅めの昼食です。
御弁当は各寮のコックさんが作ってくれたものです。
食べるのが早い子は弁当を食べ終わった頃、私(ヴィオラ)はまだ食べている途中でしたけれど、突然危険を察知しました。
非常に大きな魔力を持ったモノがダンジョンの奥底から急速に上昇して来るのです。
私(ヴィオラ)は、すぐに臨戦態勢を取りましたけれど、周囲にいる警護の人たちはまだ気づいていないみたいです。
どちらにしろ、大勢の人の目があるので、ここで私(ヴィオラ)の実力をひけらかすわけにも行きません。
そこで、遠足の際に初お目見えしたベネツィアンマスクのお姉さん(通称、マスコジェンカ?)に出てもらうよう準備だけはしています。
彼女の姿ならば、顔を見られても一年生の誰かの陰の護衛と勝手に勘違いをしてくれそうです。
学院生には上級貴族の子女が結構居ますから、そういう特殊な護衛が居ても決しておかしくは無いのです。
そうしている間にも膨大な魔力の塊のようなものが急速に下層から接近してきて、勘の鋭い近衛騎士や冒険者の一部も気が付いたようで、施設の奥を睨んで臨戦態勢を取りはじめます。
隊長でしょうか、大声を上げました。
「奥から危険な気配が接近している。
総員戦闘態勢を取れ。」
うん、遅すぎますよね。
もう少し早めに号令をかけるべきです。
正体不明のものは、もうこの岩窟の大広間の入り口近くに達しています。
それは姿を現し・・・。
いえ、靄のような黒いガス状の物をまとっているので姿が見えません。
隠しているのかそれともそもそも姿の無いアンデッドなのか・・・。
うーん、此処は廃墟ですからね。
もしかしてお化けさんなのかしら?
そこで念のため鑑定をかけましたら、途端に「キシャーッ!」と叫び声をあげて、黒い靄の魔力が吹き上がりました。
うーん、鑑定をかけられたことに気づいて怒っているのかもしれません。
この黒モヤさん、『お化け』じゃなくって、『リッチ』と鑑定に出ました。
何だか物凄い憤怒を感じます。
リッチもアンデッドの一つですから、まぁ、お化けの一種ではあるのでしょうけれど、この憤怒は何かの未練?なのでしょうか?
何となく復讐心に駆り立てられた成仏できない歪んだ精神を感じます。
リッチが魔法を行使しようと魔方陣を描き出しました。
放置すると多数の死者が出ますし、この洞窟自体が崩落する恐れもあります。
発動しようとしている魔法は、多分、極大炎熱地獄じゃないかと思います。
そんなものをここで使用したらこの場所全部が吹き飛びます。
私(ヴィオラ)は、急ぎ、ディスペルで魔方陣の生成を阻止し、同時に神聖魔法の大浄化を発動しました。
但し、此処で活躍するのは飽くまで、私(ヴィオラ)の仮の姿の『マスコジェンカ』です。
完成間近の魔方陣は一瞬にして消滅し、次いで膨大な数の光の泡が周囲の空間から一斉に黒い靄に襲いかかります。
リッチは「グッ、ギャーッ‼」という叫び声をあげながら、あっという間に消え去りました。
警備陣にも生徒たちにも被害はありません。
みんなを救ったマスコジェンカは口元に笑みを見せながら一瞬で消え去ります。
私が居てよかったですよね。
あんなのが出てきたら、百や二百の武人では絶対に対応できません。
宮廷の高位の魔法師でも総がかりで対応できるかどうかです。
鑑定にかけた際に感じたのは、裏切られたことへの復讐心だったように思います。
このダンジョンの核が破壊されてから四十年ほどですから、その後に冒険者がここに入るわけもないですよね。
だとしたら、ダンジョンのラスボスを倒して魔核を破壊する際に何かあったのかどうかです。
リッチは魔物ですけれど、元は人間の魔法師だった人が死んだときに怨念等で蘇ったモノと言う定義づけになっていたはずです。
ノータであるルテナもそのことを追認しています。
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