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第四章 学院生活(中等部編)
4ー10 竜との遭遇 その一
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翌朝起きて、食事前に私の礼拝堂に行きました。
昨日の静かな脅威はますます近づいていますね。
気配の距離感から、南の隣国に入ったところぐらいじゃないかと思うのですけれど正確なところは分かりません。
あまり時間的な余裕はないので、寸刻を惜しんで神様sに祈りを捧げます。
祈りに応じてくれたのは、お馴染みの「知の神」ワイアル様でした。
何か私(ヴィオラ)を大いに不安にさせるモノが刻々とライヒベルゼン王国に近づいている旨をお話しし、対処を如何にすべきかお尋ねしました。
ワイアル様、チョットお顔を顰めて言いました。
「うむ、正直なところ目的はわからぬが、エンシェントドラゴンが何かを探しておる様じゃな。
人の目につかぬよう非常に高い超空を飛んでいるあたり、ヒトの世界に干渉せぬようできるだけ心掛けておるようじゃし・・・。
特段の敵意を見せておるわけでもないから大丈夫とは思うので、放置しておってもおそらく害は無いと思うぞよ。
但し、エンシェントドラゴンの一体が瘴気に侵されて居るようなので、あるいはその瘴気を取り除く術を探して・・・・。」
そう言うと、ワイアル様が私のことをまじまじと見つめました。
あれ?
私(ヴィオラ)、何か悪いことしましたっけ?
自慢じゃないですけれど、少なくともエンシェントドラゴンどころか普通の竜にだってお目にかかったことが無いですよ。
「私の勘にしか過ぎぬが・・・。
あるいは、其方を探しているのやも知れぬな。
遥かな古の昔、とある聖女が瘴気に染まった竜を浄化してその命を助けたという言い伝えがドラゴンにはあるのじゃ。
ドラゴンが瘴気に染まっても、竜の一族がそれを浄化することはできぬ。
従って、その様な状況に置かれたドラゴンについては、一族総出で殺しにかかることになるのじゃが、かつて一度だけそうした邪竜に染まりかけた竜を聖女が浄化して助けたことがあるのじゃ。
現時点で「聖女」若しくは「聖人」と呼ばれる者で斯様な大きな力を持つ者は居らぬが、そなたならあるいは可能かもしれぬな。
じゃから、エンシェントドラゴンは、その伝説の聖女の力を求めて探し回っているのではあるまいか。
南の大陸に五体のエンシェントドラゴンが棲んで居ったが、一体は瘴気に染まったので一体がその傍らについておる。
そのほかの三体のエンシェントドラゴンが三方向に散らばって探しておるのじゃろう。
其方が感知したのは、北方に向けて探索しているエンシェントドラゴンじゃ。」
私(ヴィオラ)に直接関わる危ない話だったので、念のために回避手段があるかどうか尋ねることにしました。
「あの、私が隠れてやり過ごすというのは如何なものでしょうか?」
「さてのぉ、・・・。
瘴気に染まった獣はそなたも見たことが有るはずじゃが、いずれ見境なく周囲の生き物を襲うようになる。
それがエンシェントドラゴンともなれば、他の四体のエンシェントドラゴンをもってしても、抑えきれぬであろうな。
場合によっては、世界が亡ぶことになる。」
「えっと、すぐにでもそうなってしまうのですか?」
「いや、今の状況から推察するに、百年程経ってからのことになるじゃろうが、体内に一旦取り込まれた瘴気は自然に排出されるようなことは無い。
むしろ、より多くの周囲の瘴気を吸い込むような体質にもなるはずじゃ。
従って、其方の住む下界が今後も無事であるためには、瘴気に侵されたエンシェントドラゴンを殲滅するか、浄化するしか方法が無いであろうな。」
何だか避けられないような話ですけれど、念のため更なる質問をしてみました。
「対処を先送りして、優秀な聖女が生まれるまで待つというのはどうでしょう?」
「そなた、前世の様に寿命が精々百歳前後と考えておるのではあるまいな。
そなたの魔力の保有量からみて、間違いなくそなたは五百年以上は長生きするぞよ。
じゃから、この問題はそなたにも関わりのある話なのじゃ。
あるいは、邪竜になっても其方が退治できるかもしれぬが、それまで待つかえ?」
「あのぅ、退治よりも浄化の方がマシでしょうか?」
「今の時点でも残った四体のエンシェントドラゴンでは対処できぬぐらいの強さなのじゃ。
邪気がこれ以上強まっては、そなたですら退治は難しいかも知れぬぞよ。
仮に、そなたが対処できぬとあれば、この世界は滅ぶことになろう。
それを望むかぇ?」
「あのぉ、神々が下界に干渉することは?」
「無いな。
召喚魔法陣は禁忌とされたが故に、天罰めいたものが遅まきながら発動されるが、どちらかと云うとあれは例外なのじゃ。
時空をつなげて異世界より生けるものを移転せんとする召喚魔法自体が、時空にほころびを生み出すことになり、ひいては我らの棲む天界の秩序すら乱すことになるので、例外的に罰するのじゃ。
極端な話を言うなれば、下界に住むヒト族が勝手に滅んでも、我らが下界に干渉する理由には当たらぬのじゃぞ。
此度のエンシェントドラゴンが瘴気に汚染されたことでさえも、天界の秩序に影響を与えぬものであれば我らが干渉することは無い。」
まぁ、そんなことじゃないかとは予想はしていましたけれど、私(ヴィオラ)のなけなしの希望が門前で却下されましたね。
なんだか、俎上にも乗らない話のようです。
ならば仕方ありませんよねぇ。
私の方から出向いて、エンシェントドラゴンさんの事情をお聞きしましょうか。
問題は、エンシェントドラゴンさんときちんと意思疎通ができるかどうかですけれど・・・。
それはもう出たとこ勝負しかありませんかねぇ。
相手が好戦的でないことを祈るばかりです。
◇◇◇◇
我は名も無きエンシェントドラゴンじゃ。
番が瘴気に侵されたがゆえに一族の古い言い伝えに頼って、聖女探索の旅に出たが、これがなかなか難しい。
我が近傍で気を放てばおそらく小さき者どもがその場で昏倒し、場合によっては死に至るやもしれぬ。
従って、この探索自体が小さき者どもに害をなさぬようにものすごく気を遣うのじゃ。
我の姿が目に見えぬようにし、なおかつ、注意深い観察により一定の魔力を有する小さき者を選んでその力量を推し量らねばならぬ。
それらしき候補が見つかれば、いずれその眼前に姿を現すことにもなろうが、その際には我が身を小さくして小さき者どもの丈に合わせるしかあるまいな。
本来の我の姿を見ただけで、卒倒するのであれば、我が近づいて話をすることもできぬじゃろう。
斯様な弱き存在の小さき者どもが持つ力に頼らねばならぬというのも、誠に口惜しきことじゃが、ほかに方法が無いのじゃ。
まぁ、イチかバチかで勝負に出る手はあるのじゃが、残る四体の我らで今の状況の番と戦うとしてもとんと勝ち筋が見えぬ。
場合によっては、今後百年近くもこの捜索を続けねばならぬのかも知れぬな。
小さき者どもは、寿命が短いゆえに百年もあれば、五世代から七世代程度の代替わりが有るのじゃ。
まぁ、中には長寿の種族もあるが、それとて千年を超える寿命を持つ種族は至って少ない。
因みに、言い伝えにある聖女はヒト族であって平均寿命は精々六十年未満の者どもであるようじゃ。
それゆえに世代交代も早い故、20年、いや15年に一度は探索に出る必要が有ろうな。
邪気を浄化できるほどの大いなる能力を持った聖女がいつ出てくるものかは誰も知らぬのじゃ。
我も小さき者どもの教会と呼ぶ施設を中心に探索を続けているのじゃが、生憎とこれまで見た地域にそれらしき能力を持った者は居ない。
邪竜に半ばなりかけの瘴気を浄化できる者ともなれば、離れていてもその者の持つ魔力?覇気?そのようなものが我にも察知できるはずなのじゃが、これまで通り過ぎた地にはそうした存在が居なかったという事じゃ。
そうして更に探索を続けていると、はるか遠方から強大な魔力の接近を感知した。
何と我らエンシェントドラゴンに匹敵する魔力なのじゃが、斯様な存在を我は知らぬ。
しかもそれは空を飛翔しておるのじゃ。
空を統べるドラゴンとしては非常に気になる存在じゃが、間違いなく我が種族ではない。
とある空中でその存在は停止した故、我もゆっくりと警戒をしつつ接近することにした。
我が居るのは地上の高峰の5倍ほどの高さゆえ、普通の生き物であれば飛ぶことはおろか生きること自体ができぬはずじゃ。
亜竜にしか過ぎぬワイバーンなどは、遥か下の高度しか飛べぬ雑魚にしか過ぎぬ。
我にしては、非常にゆっくりとした速度で近づいてみると、何と小さき者どもの中でもヒト族と呼ばれる存在と我が目には映った。
その周囲を大きな光背が取り巻いており、あるいはその人為的な障壁によりこの高さまでこの人族が飛翔できるのやもしれぬ。
そうしてその光背そのものがその小さき者の能力の高さを示しているともいえる。
そもそも、小さき者が斯様に大空を翔べるとは知らなんだわ。
なおもその存在にゆるりと近づいて行くと、念話が飛んできた。
『私は、ヴィオラと申します。
貴方の名を教えてはいただけませんか?』
ある意味でこの念話が使えるということ自体が驚きでもあるのじゃが、それにしても大きな力を感ずる念話であった。
『我は万の歳を経たエンシェントドラゴンじゃが、我らに名は無い。
其方が個を識別するための名が必要であれば我に名をつけるが良い。』
『あらまぁ、私が名を付けても宜しいと・・・。
では、あなたは青緑の鱗が大層綺麗なドラゴンさんなので、ブルーベルと及びしましょうか?
とある国で青緑を意味する言葉なのですが、それでよろしいでしょうか?』
『ふむ、ブルーベルとな?
中々良い響きじゃな。
我はそれで構わぬ。』
『はい、それでは、ブルーベルさん。
あなたがこちらにおいでになったわけを教えていただけましょうか。
下界に住む者に脅威を与えぬようにしていらっしゃるようですけれど、その目的が気になります。』
『我の目的は、小さき者どもの中で最も力のある聖女を探索することじゃが、あるいは、そなたに遭ったことでそれがかなったやもしれぬ。
ヴィオラとやら、そなたは、下界の王なのか?』
『いいえ、私は、一つの国の王に使える臣下の娘に過ぎませんが、王に御用があるのですか?』
『いや、違う。
先ほども言うた通り、我らは力のある聖女を探索しておる。
そなたが、その聖女ではないのか?』
昨日の静かな脅威はますます近づいていますね。
気配の距離感から、南の隣国に入ったところぐらいじゃないかと思うのですけれど正確なところは分かりません。
あまり時間的な余裕はないので、寸刻を惜しんで神様sに祈りを捧げます。
祈りに応じてくれたのは、お馴染みの「知の神」ワイアル様でした。
何か私(ヴィオラ)を大いに不安にさせるモノが刻々とライヒベルゼン王国に近づいている旨をお話しし、対処を如何にすべきかお尋ねしました。
ワイアル様、チョットお顔を顰めて言いました。
「うむ、正直なところ目的はわからぬが、エンシェントドラゴンが何かを探しておる様じゃな。
人の目につかぬよう非常に高い超空を飛んでいるあたり、ヒトの世界に干渉せぬようできるだけ心掛けておるようじゃし・・・。
特段の敵意を見せておるわけでもないから大丈夫とは思うので、放置しておってもおそらく害は無いと思うぞよ。
但し、エンシェントドラゴンの一体が瘴気に侵されて居るようなので、あるいはその瘴気を取り除く術を探して・・・・。」
そう言うと、ワイアル様が私のことをまじまじと見つめました。
あれ?
私(ヴィオラ)、何か悪いことしましたっけ?
自慢じゃないですけれど、少なくともエンシェントドラゴンどころか普通の竜にだってお目にかかったことが無いですよ。
「私の勘にしか過ぎぬが・・・。
あるいは、其方を探しているのやも知れぬな。
遥かな古の昔、とある聖女が瘴気に染まった竜を浄化してその命を助けたという言い伝えがドラゴンにはあるのじゃ。
ドラゴンが瘴気に染まっても、竜の一族がそれを浄化することはできぬ。
従って、その様な状況に置かれたドラゴンについては、一族総出で殺しにかかることになるのじゃが、かつて一度だけそうした邪竜に染まりかけた竜を聖女が浄化して助けたことがあるのじゃ。
現時点で「聖女」若しくは「聖人」と呼ばれる者で斯様な大きな力を持つ者は居らぬが、そなたならあるいは可能かもしれぬな。
じゃから、エンシェントドラゴンは、その伝説の聖女の力を求めて探し回っているのではあるまいか。
南の大陸に五体のエンシェントドラゴンが棲んで居ったが、一体は瘴気に染まったので一体がその傍らについておる。
そのほかの三体のエンシェントドラゴンが三方向に散らばって探しておるのじゃろう。
其方が感知したのは、北方に向けて探索しているエンシェントドラゴンじゃ。」
私(ヴィオラ)に直接関わる危ない話だったので、念のために回避手段があるかどうか尋ねることにしました。
「あの、私が隠れてやり過ごすというのは如何なものでしょうか?」
「さてのぉ、・・・。
瘴気に染まった獣はそなたも見たことが有るはずじゃが、いずれ見境なく周囲の生き物を襲うようになる。
それがエンシェントドラゴンともなれば、他の四体のエンシェントドラゴンをもってしても、抑えきれぬであろうな。
場合によっては、世界が亡ぶことになる。」
「えっと、すぐにでもそうなってしまうのですか?」
「いや、今の状況から推察するに、百年程経ってからのことになるじゃろうが、体内に一旦取り込まれた瘴気は自然に排出されるようなことは無い。
むしろ、より多くの周囲の瘴気を吸い込むような体質にもなるはずじゃ。
従って、其方の住む下界が今後も無事であるためには、瘴気に侵されたエンシェントドラゴンを殲滅するか、浄化するしか方法が無いであろうな。」
何だか避けられないような話ですけれど、念のため更なる質問をしてみました。
「対処を先送りして、優秀な聖女が生まれるまで待つというのはどうでしょう?」
「そなた、前世の様に寿命が精々百歳前後と考えておるのではあるまいな。
そなたの魔力の保有量からみて、間違いなくそなたは五百年以上は長生きするぞよ。
じゃから、この問題はそなたにも関わりのある話なのじゃ。
あるいは、邪竜になっても其方が退治できるかもしれぬが、それまで待つかえ?」
「あのぅ、退治よりも浄化の方がマシでしょうか?」
「今の時点でも残った四体のエンシェントドラゴンでは対処できぬぐらいの強さなのじゃ。
邪気がこれ以上強まっては、そなたですら退治は難しいかも知れぬぞよ。
仮に、そなたが対処できぬとあれば、この世界は滅ぶことになろう。
それを望むかぇ?」
「あのぉ、神々が下界に干渉することは?」
「無いな。
召喚魔法陣は禁忌とされたが故に、天罰めいたものが遅まきながら発動されるが、どちらかと云うとあれは例外なのじゃ。
時空をつなげて異世界より生けるものを移転せんとする召喚魔法自体が、時空にほころびを生み出すことになり、ひいては我らの棲む天界の秩序すら乱すことになるので、例外的に罰するのじゃ。
極端な話を言うなれば、下界に住むヒト族が勝手に滅んでも、我らが下界に干渉する理由には当たらぬのじゃぞ。
此度のエンシェントドラゴンが瘴気に汚染されたことでさえも、天界の秩序に影響を与えぬものであれば我らが干渉することは無い。」
まぁ、そんなことじゃないかとは予想はしていましたけれど、私(ヴィオラ)のなけなしの希望が門前で却下されましたね。
なんだか、俎上にも乗らない話のようです。
ならば仕方ありませんよねぇ。
私の方から出向いて、エンシェントドラゴンさんの事情をお聞きしましょうか。
問題は、エンシェントドラゴンさんときちんと意思疎通ができるかどうかですけれど・・・。
それはもう出たとこ勝負しかありませんかねぇ。
相手が好戦的でないことを祈るばかりです。
◇◇◇◇
我は名も無きエンシェントドラゴンじゃ。
番が瘴気に侵されたがゆえに一族の古い言い伝えに頼って、聖女探索の旅に出たが、これがなかなか難しい。
我が近傍で気を放てばおそらく小さき者どもがその場で昏倒し、場合によっては死に至るやもしれぬ。
従って、この探索自体が小さき者どもに害をなさぬようにものすごく気を遣うのじゃ。
我の姿が目に見えぬようにし、なおかつ、注意深い観察により一定の魔力を有する小さき者を選んでその力量を推し量らねばならぬ。
それらしき候補が見つかれば、いずれその眼前に姿を現すことにもなろうが、その際には我が身を小さくして小さき者どもの丈に合わせるしかあるまいな。
本来の我の姿を見ただけで、卒倒するのであれば、我が近づいて話をすることもできぬじゃろう。
斯様な弱き存在の小さき者どもが持つ力に頼らねばならぬというのも、誠に口惜しきことじゃが、ほかに方法が無いのじゃ。
まぁ、イチかバチかで勝負に出る手はあるのじゃが、残る四体の我らで今の状況の番と戦うとしてもとんと勝ち筋が見えぬ。
場合によっては、今後百年近くもこの捜索を続けねばならぬのかも知れぬな。
小さき者どもは、寿命が短いゆえに百年もあれば、五世代から七世代程度の代替わりが有るのじゃ。
まぁ、中には長寿の種族もあるが、それとて千年を超える寿命を持つ種族は至って少ない。
因みに、言い伝えにある聖女はヒト族であって平均寿命は精々六十年未満の者どもであるようじゃ。
それゆえに世代交代も早い故、20年、いや15年に一度は探索に出る必要が有ろうな。
邪気を浄化できるほどの大いなる能力を持った聖女がいつ出てくるものかは誰も知らぬのじゃ。
我も小さき者どもの教会と呼ぶ施設を中心に探索を続けているのじゃが、生憎とこれまで見た地域にそれらしき能力を持った者は居ない。
邪竜に半ばなりかけの瘴気を浄化できる者ともなれば、離れていてもその者の持つ魔力?覇気?そのようなものが我にも察知できるはずなのじゃが、これまで通り過ぎた地にはそうした存在が居なかったという事じゃ。
そうして更に探索を続けていると、はるか遠方から強大な魔力の接近を感知した。
何と我らエンシェントドラゴンに匹敵する魔力なのじゃが、斯様な存在を我は知らぬ。
しかもそれは空を飛翔しておるのじゃ。
空を統べるドラゴンとしては非常に気になる存在じゃが、間違いなく我が種族ではない。
とある空中でその存在は停止した故、我もゆっくりと警戒をしつつ接近することにした。
我が居るのは地上の高峰の5倍ほどの高さゆえ、普通の生き物であれば飛ぶことはおろか生きること自体ができぬはずじゃ。
亜竜にしか過ぎぬワイバーンなどは、遥か下の高度しか飛べぬ雑魚にしか過ぎぬ。
我にしては、非常にゆっくりとした速度で近づいてみると、何と小さき者どもの中でもヒト族と呼ばれる存在と我が目には映った。
その周囲を大きな光背が取り巻いており、あるいはその人為的な障壁によりこの高さまでこの人族が飛翔できるのやもしれぬ。
そうしてその光背そのものがその小さき者の能力の高さを示しているともいえる。
そもそも、小さき者が斯様に大空を翔べるとは知らなんだわ。
なおもその存在にゆるりと近づいて行くと、念話が飛んできた。
『私は、ヴィオラと申します。
貴方の名を教えてはいただけませんか?』
ある意味でこの念話が使えるということ自体が驚きでもあるのじゃが、それにしても大きな力を感ずる念話であった。
『我は万の歳を経たエンシェントドラゴンじゃが、我らに名は無い。
其方が個を識別するための名が必要であれば我に名をつけるが良い。』
『あらまぁ、私が名を付けても宜しいと・・・。
では、あなたは青緑の鱗が大層綺麗なドラゴンさんなので、ブルーベルと及びしましょうか?
とある国で青緑を意味する言葉なのですが、それでよろしいでしょうか?』
『ふむ、ブルーベルとな?
中々良い響きじゃな。
我はそれで構わぬ。』
『はい、それでは、ブルーベルさん。
あなたがこちらにおいでになったわけを教えていただけましょうか。
下界に住む者に脅威を与えぬようにしていらっしゃるようですけれど、その目的が気になります。』
『我の目的は、小さき者どもの中で最も力のある聖女を探索することじゃが、あるいは、そなたに遭ったことでそれがかなったやもしれぬ。
ヴィオラとやら、そなたは、下界の王なのか?』
『いいえ、私は、一つの国の王に使える臣下の娘に過ぎませんが、王に御用があるのですか?』
『いや、違う。
先ほども言うた通り、我らは力のある聖女を探索しておる。
そなたが、その聖女ではないのか?』
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