コンバット

サクラ近衛将監

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第四章 学院生活(中等部編)

4-11 竜との遭遇 その二

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『私は、聖女と呼ばれたことはありませんよ。
 聖女が居るとすれば、多分、教会という組織に属していますけれど、私は教会には属してはいませんので、間違いなく聖女ではないと思いますよ。』

『そなたが、聖女と呼称されているか否かに関わらず、聖女と同様に浄化の力を持っているのならば我らを助けてほしいのじゃが、・・・。
 どうじゃろうか?』

 浄化は、初等部1年生の折に、安全とされていたダンジョンまで遠足に行った際に、恨みつらみの怨念の化け物であるリッチが出て来て、私(ヴィオラ)達に向かって大魔法を発動しようとしましたので、ディスペルを発動して大魔法を止めるとともに神聖魔法の大浄化を発動、リッチさんを退治したことが有りました。
 ですから浄化の能力はありますね。

『これまで、さほど試したことはありませぬが、浄化の力はそれなりにございます。
 して、浄化の力が必要というのは、何故でございましょうか?』

 ワイアル神様から事前情報はいただいており、このエンシェント・ドラゴン古代竜さんが聖女を探しているという状況からワイアル神様の推測がほぼ正しいということがわかるのですけれど、もしかすると違っているのかも知れませんし、ここで神様の話をすると後々厄介になる危険性もあるでしょうから、敢えて事情を知らないふりをして確認しなければなりません。

『実はのぉ・・・・。
 我のつがい瘴気しょうきおかされてしまったのじゃ。
 我の番はどちらかと云うとズボラでのぉ。
 おそらくは、百年かそこらねぐらで惰眠を貪っておったのじゃろうが、その間に偶々塒に瘴気が噴出し、体内に大量の瘴気を取り込んでしまったのじゃ。
 瘴気に侵されたとはいえ、未だ十分に正気を保ってはいるんじゃが、我らドラゴン(竜)は、例えエンシェント・ドラゴンと雖も瘴気を浄化できぬのじゃ。
 おまけに一度瘴気を浴びた身体は、周囲の瘴気を吸収しやすくなる。
 かく言う我も、かつて若きドラゴンが瘴気に飲まれ狂気に陥った際に、止むを得ず、我と我の仲間のエンシェント・ドラゴンで祖奴そやつを退治したことが有る。
 瘴気に飲まれたドラゴンは狂暴になると同時に強大な力を持つ故、普通のドラゴンが多数でかかっても退治できぬほどになるのじゃ。
 じゃから、止むを得ず我らが出張って片づけたのじゃ。
 じゃが、仮に我の番が瘴気の所為で狂気に陥れば、我らエンシェント・ドラゴンでさえも制圧できぬようになる。
 実際に正気を失っていない今でも、番を制圧するのは至難の業じゃ。
 放置すれば、いずれ我ら竜族のみならず下界の全ての生き物が危うくなるでのぉ。
 何とかせねばならぬのじゃが、生憎と我らにこれと言った良策は無い。
 じゃが、我らが言い伝えに、瘴気に侵されたドラゴンを浄化したヒト族の聖女の逸話いつわが残っておるのじゃ。
 それゆえ、ヒト族の聖女にすがることにしたのじゃが・・・・。
 今のところ聖女らしき能力を持ったヒト族は見つかっておらぬ。
 じゃが、其方ならばあるいは我が番の瘴気を浄化できるのではないか?
 試しに浄化をやってはくれぬかのぉ。』

 私(ヴィオラ)はため息を付いてしまいました。
 放置すれば多くの人々や生き物に影響が出そうなので、このお願いを断るわけには行きませんよね。

 取り敢えずは、試しに浄化をすることを了承しました。
 ブルーベルさんの番のいる場所なんですが、やはり南にあるという暗黒大陸のようですよ。

 私が飛翔して行くのも、まぁできますけれど、此処はブルーベルさんの背中に乗って運ばれた方が早いようです。
 私の飛翔の場合ですと精々ジェット旅客機程度の亜音速ですけれど、ブルーベルさんは超音速ジェット機並のようで、実に音速の五倍ほどで飛翔できるそうなんです。

 因みに私(ヴィオラ)は、ライヒベルゼン王国の最南端の国境上空に居ますけれど、ここから暗黒大陸中央部のドラゴン生息地までおよそ1万キロぐらいありそうなんです。
 私(ヴィオラ)の飛翔能力では10時間以上かかりそうですけれど、ブルーベルさんなら4時間余りで着けそうなんです。

 それならどちらを選ぶかは分かり切っていますよね。
 楽で速い方を選ぶに決まっています。

 そんなわけでデカいブルーベルさんの背中に乗って出発進行です。
 エンシェント・ドラゴンって本当に大きいですよ。

 がたいの大きさはゴジラ並みで、羽を広げるとキングギドラ並みです。
 それが音速の五倍で飛ぶとどうなるか?

 普通ならば物凄い風圧と音速の壁にぶち当たりますから、背中になんて乗れるはずもありませんが、そもそもドラゴンが空を飛ぶのは鳥の様に軽いからじゃありません。
 ドラゴンも先天的な魔法を使って飛翔しているのです。

 重力魔法と風属性の魔法のようですね。
 ですから背中に乗っている私を気遣って、ちゃんと風属性魔法のシールドで保護してくれていますから、風速も音速越えの衝撃も感じませんでした。

 用心のために私(ヴィオラ)も身体の周囲に自前のバリアーを張りめぐらせていますけれどね。
 そうして概ね2時間余り、前方に白い冠雪を被った山脈が見えてきました。

 暗黒大陸の東西に延びる名も無き山脈です。
 その高峰はエベレストよりも高く優に一万mを超えています。

 普通そんなところに聖女様を連れて行ったら酸欠で死んじゃいますけれど・・・・。
 あ、そう言えばさっきブルーベルさんと相対した空域って高度三万m近かったんですよね。

 そこで生きている私(ヴィオラ)なら此処でも大丈夫って判断されちゃったみたい。
 でも、そんなことは普通のヒト族ではできないですよという事を念のために伝えておかねばなりませんね。

 どうせ今回のこれもドラゴンの聖女伝承になるのでしょう?
 1万年か2万年か先にも同じようなことが起きた場合、同じように聖女さんをここへ連れてきたらそれだけで聖女さんが死んでしまいますかしっかりと言い含めておきましょう。

 そうして目指す大厳洞に到達しました。
 大した洞窟ではないんですよ。

 チョット庇が伸びている岩窟というような風情です。
 でもその規模が物凄くでかいんです。

 何しろ竜が出入りできる場所ですからね。
 庇が空中に突き出している長さだけで300m程、その庇の高さが500mを超えていると思います。

 地面はごつごつとした岩場で、植物も生えていない瓦礫だらけの場所ですよ。
 そこに、傍目に見ても瘴気に侵されているとすぐにわかるエンシェントドラゴンと、正常なドラゴンの二匹が居ました。

 この二匹もデカいんですけれど、大厳洞がでかすぎて、ブルーベルがそこへ降り立っても全く圧迫感を感じないほど広いんです。
 そこへちんまりとした私(ヴィオラ)が紛れ込むと、まさしくアリンコみたいですよね。

 早速、背中から飛翔で飛び降りて、患者?患畜?を診ることにします。
 ブルーベルさんの番は、和色で言えば白藍若しくは水色に近い透き通った薄い青なんですが、その中に銀色のラメが入ったような不思議な色合いです。

 でも瘴気に侵された今は、斑点状に黒っぽい紫の斑点が全身に浮き出ていますからとても不気味な感じですよね。
 リッチは神聖魔法の大浄化で消えましたけれど、このドラゴン(面倒なんで私の中ではアスール・プラテアド(銀青色)をもじって「アスプラ」という名前を付けました。)に鑑定をかけてみてわかったのですけれど、このアスプラテもブルーベルも魔石を持っているんですよね。

 それで気になるのは魔石に対する大浄化の効果なんです。
 リッチも魔物なんでしょうけれど、実は大浄化をかけた際には魔石が残らなかったんですよね。

 つまりは大浄化をかけるともしかすると魔石まで消し飛んでしまう可能性があるかもなんです。
 確か魔石は、魔素が固まってできたものと聞いていますので、瘴気とは明らかに違うのじゃないかと思うのですが、少なくとも大浄化を使って魔石が消し飛んだりしないのかを確認しなければなりません。

 ルテナに聞いても調べてみますと言ってすぐには返事が戻ってきません。
 仕方が無いですから、ここは、「神様ヘ~ルプ」ですね。

 そこでお祈りポーズをしてからワイアル様にご相談してみました。
 ワイアル様曰く、大浄化は確かに魔石の中に侵入している瘴気ごと消し去る可能性はあるけれど、アスプラテの場合は、未だ一部が侵食されているだけなので、多少魔石は削られても大丈夫のはずとのことでした。

 但し、大浄化ではなくって範囲を狭く指定した上で、瘴気のみを対象にした浄化も私(ヴィオラ)ならできるだろうと言われちゃいました。
 あれあれ?そんなことできるのかなぁ?

 で、アスプラテを処方する前に、ブルーベルに試すことにしました。
 実はブルーベルにもうっすらと目に見えないほどの瘴気が取り付いているんです。

 長いこと生きていると皮膚にシミができることが有りますよね。
 あれと一緒で知らず知らずに少量の瘴気を浴びて皮膚の一部が影響を受けて小さな斑点ができているんです。

 ブルーベルも処方実験に承諾してくれましたので、センサーで瘴気の侵入箇所を特定し、その瘴気だけを浄化するようにやってみました。
 チョット、ムズいというか、面倒なんですけれど何とか出来ましたね。

 ただ、大浄化みたいに、ぱぁっと一気にはできません。
 少しずつ壁をペンキで塗り潰す感じでしょうかねぇ。

 時間がかかります。
 ブルーベルの場合で30分ほどかかりました。

 ブルーベルに処方後の調子を聞くと、何だか疲れがいっぺんに取れた感じで物凄く調子が良いと言っていました。
 私(ヴィオラ)のほうは、慣れないことをしたので疲れました。

 少し休んでから、アスプラテに取り掛かることにしました。
 夕方までかかって3割ぐらいしかできていませんが、それでも瘴気だけの浄化はなんとかできそうです。

 ブルーベルに言って、今日はここまで明日は朝からここに来ると言って、私は家に戻ることにしました。
 携帯食料は持っていますけれど、お風呂にも入りたいし、やっぱりおいしい食事を食べたいですよね。

 だから王都の寮に戻るんです。
 ブルーベルはちょっとブー垂れていましたよ。

 ブルーベルがライヒベルゼン王国まで行くとなれば、最低でも片道二時間、往復四時間以上もかかるんです。
 ブルーベルは、私(ヴィオラ)を運ばねばならないと思っていたのでしょうね。

 ですから、その場で一瞬にして少し離れた場所に転移して見せました。
 空間転移を使えば一度訪れた場所にはすぐに行けると説明したのです。

 その上で、明日の午前中にはまた来ると言いおいて、私は王都の寮に転移しました。

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