コンバット

サクラ近衛将監

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第四章 学院生活(中等部編)

4ー13 編入生 その一

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 ヴィオラでございますよぉ。
 私(ヴィオラ)が中等部に上がった時、Aクラスの顔触れはあまり変わってはいないですよ。

 でも一人がBクラスになり、Bクラスから一人がAクラスになった子がいます。
 AクラスからBクラスになった子は、シャルル・エル・ド・ヴァル・フランゼ・ラッセル君で、ラッセル家(男爵)の長男であり、大公派の子です。

 彼は座学の方は優秀でしたが、実技の方があまり伸びずに、Bクラスの子と入れ替えになったのです。
 新たにBクラスからAクラスに入れ替えになった子は、ミレイユ・ディ・ラ・シス・ファルセット・ブーラングさん、ブーラング家(子爵)の次女であり、中道派です。

 そうして異例なことに、中等部になった時点で新たに編入生がAクラスに入ってきました。
 この編入生は、ライヒベルゼン王国の西南西に位置するリットニア王国の第三王子のようです。

 ライヒベルゼン王国とリットニア王国は古くからよしみを通じており、過去何代かに渡り政略結婚も成されている間柄なのです。
 特に、リットニア王国の西にはレインバルク帝国が有って、リットニア王国はライヒベルゼン王国とレインバルク帝国と言う二つの大国に挟まれた中小国であるために結構面倒な立場にあるようですね。

 で、そこから何故に第三王子がやって来たのかと言えば、ルテナ曰く、目的はどうも嫁探しのようなんです。
 或いは、エミリア王女辺りを狙っている可能性が無きにしも非ずですね。

 これまでにも、リットニア王国からの王家や貴族の編入生は、結構な数があるようなんですよ。
 そうして、今回は、リットニア王国の侯爵の嫡男が第三王子と共にやってきており、そちらはBクラスに編入したようです。

 第三王子は、アントニオ・ファル・イ・リトニアルという名前ですが、リットニア王国は、文化的には少し毛色が変わっていて、名前の付け方がライヒベルゼン王国などの主要国とは若干異なります。
 名前の中の『ファル・イ』は、傍系の三男を意味し、彼はリットニア王国の王族ではありますが側室の子なのです。

 『リトニアル』は、王家の家名ですね。
 一方で、Bクラスに編入してきた子は、エステバン・エデル・フォン・アラニスと言うそうです。

 ルテナ曰く、『エステバン』は名前、『エデル』は嫡男を意味し、『フォン』は、侯爵位、『アラニス』が家名ですね。
 もちろんエステバン君が侯爵であるわけではなくって、『アラニス侯爵の嫡男であるエステバン』と言う意味合いなのです。
 正式名が素性をも表現するのは、ライヒベルゼン王国や他の国と同じなのですけれど、その表現方法が若干違うというところなのでしょう。

 アントニオ王子について言えば、側室から生まれた第一子(王家の三男坊)であり、王位継承権は三番目のようですね。
 おそらくは、リットニア王家の嫡男や次男に何事も無ければ、ある時点で臣籍降下をして公爵位になるのでしょう。

 普通の場合であれば、臣籍降下は、次代の王が即位する直前になることが多いようです。
 次男が大公、三男以下が公爵と言う形式で、それぞれに新たな家名を貰えることになるはずです。

 但し、王族の王位継承権者の男子が非常に多い場合は、間引きの様に入り婿として他所の家(臣下筋)に出される場合もあります。
 江戸時代の将軍『徳川家斉』は、子沢山(こだくさん)で有名ですが、男女合わせて53人の子をもうけ、そのうち26名は男性でしたから、かなりの数の男子が大名家に入り婿で入ったと言う話を安奈先生から雑学知識として聞いています。

 押し付けられた大名家の方は堪ったものじゃないですけれど、受忍するしかない時代でした。
 そんな前世の古い話はともかく、新たな同級生が増えたことで、若干クラスの雰囲気が変わっていますね。

 アイリスとミレイユが、盛んにアントニオ君にアプローチしていますよ。
 中等部の時期は、一般的に真っ盛りなわけなので無理からぬ話ではありますが、玉の輿を夢描いてばかりいると相手から嫌われますよ。

 エミリア様もどちらかと言うと、この二人の級友女子に若干引いている感じではありますね。
 で、肝心のアントニオ君はと言えば、どうやらエミリア様に多少気があるような雰囲気です。

 お昼休みには、Bクラスの編入生であるエステバン君も合流して一緒に話をしたことが有ります。
 私としては、婚活騒動に巻き込まれたくはないので、できれば遠慮したいところなのですけれど、エミリア様にお願いされて同席しているのです。

 面白いのはアントニオ王子よりも、エステバン君の方が優秀そうなことです。
 会話の中に知性を感じさせる場面が何度かありました。

 それに比べるとアントニオ王子は、考えが稚拙ですし、意思の表現が上手ではありませんね。
 私(ヴィオラ)は、どうしてアントニオ君がAクラスで、エステバン君がBクラスなんだろうと思いましたが、ルテナ曰く、編入試験の段階での成績は、アントニオ君がエステバン君よりも上なんだそうです。

 でもそれが筆記試験も実技試験も同じ傾向となると、間違いなく作為を感じますね。
 おそらくは、エステバン君は、アントニオ君の警護も兼ねて派遣されているのでしょうから、余りアントニオ王子よりも成績が上では拙いのでしょう。

 だって、彼の魔力量は、アントニオ君の二倍以上もありますから、少なくともエステバン君が実技試験でアントニオ君の下位になるはずがないのです。
 どうやら、リットニア王国では、貴族階級における階級差なり、上を立てる慣習なりが強く残っているようですね。

 きっと、アントニオ王子よりも余りに優秀な成績を出すことが、国に戻った際に面倒を引き起こすことになるので、エステバン君は、より下位の成績を敢えてとったという事でしょう。
 で、そういう微妙なさじ加減ができるほど、エステバン君はアントニオ王子の力量を把握しているという事でもあるのです。

 ウーン、これはエステバン君、中々の曲者かも知れません。
 ところで、私(ヴィオラ)は、中等部になっても寮はオンディーヌ(但し、初等部と中等部では同じオンディーヌであっても寮そのものが違います。)で変わりがありませんし、エミリア様も何故かご一緒です。

 飽くまで推測ではありますが、どこか上の方からの圧力でもかかりましたかねぇ。
 エミリア様には私(ヴィオラ)を付けておけと・・・・。

 まぁ、別に問題は無いですよ。
 エミリア様と私(ヴィオラ)は、大の仲良しですし。

 で、その話ではなくって、二人の編入生のことですが、寮はアントニオ王子が『サラマンダー(火の妖精)』に、エステバン君が『ウィル(光の妖精)』に入ることになりました。
 エステバン君がアントニオ王子の警護役をも兼ねているとしたなら、寮が違うというのは非常にやりにくいでしょうね。

 まぁ、アントニオ王子にはかなり腕利きの従者が付いていますから、余程のことが無ければ大丈夫なはずですけれどね。
 以前申し上げたかと思いますけれど、自分の所属する寮以外の寮には勝手には入れませんし、そこでの自治等については口出しもできないのです。

 無論、面会はできますけれど、きちんと手続きを踏まないとそもそも会えないのです。
 仮に、エステバン君がアントニオ王子の警護を兼務して編入してきたのであれば、一緒の寮にし、なおかつクラスも一緒にしてあげればよかったのにと思うのですけれど、まぁ、押し込む側や受け入れる側双方に色々な思惑があったのかも知れません。

 その辺の事情を調べようと思えばできるでしょうけれど、私(ヴィオラ)に関わりのあることじゃないので取り敢えずは放置です。
 でも、エステバン君は、休みの時間になると一生懸命にアントニオ君の傍に来ているんですよ。

 ウーン、これはもしかしてひたすらご主人様の傍にはべりたがる忠犬なのでしょうか?
 いずれにしろこの二人には、学院に通う以上毎日顔を合わせています。

 アントニオ君は同じAクラスですから、授業では必ず会うわけですし、休み時間になると決まってエステバン君が隣のクラスからやってくるわけなので、やはりエステバン君とも顔は合わせるのです。
 もっとも、エステバン君とは左程お話をする機会があるわけではありません。

 何せ、アントニオ君の傍に来ても、何気なく周囲への警戒をしているだけで、エミリア王女や私(ヴィオラ)などと親交を深めようというような素振りは無いんです。
 でもそんなエステバン君とは異なり、アントニオ君は、エミリア王女にとってもご執心のようです。

 エミリア王女は、余りその気はなさそうですけれど、友好国の王子という事で仕方無くお付き合いしている程度でしょうか。
 前にも申し上げたかもしれませんが、エミリア王女は父王の意向次第でどこかに嫁ぐつもりでいますから、少なくとも自分の気持ちで動くことはできないようなんです。

 ですから友人としてエミリア王女の本音を聞きました。
 エミリア王女曰く、

「アントニオ王子は、悪い人ではないと思うのですけれど、正直なところ余り好きにはなれないタイプのような気がします。
 何となく軽い感じがするんです。
 ですから婿を自分で選べるなら、きっと彼を選ばないと思います。
 あ、でも、これは誰にも内緒にしてくださいね。
 人の口に乗ると勝手に変な話で広がってしまうから・・・・。」

「はい、エミリア様が何を言ったのかは、もう忘れました。
 記憶にないことは、当然誰にも申し上げられませんのでご心配なく。」

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