コンバット

サクラ近衛将監

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第四章 学院生活(中等部編)

4-14 編入生 その二

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 ヴィオラで~すよぉ。
 初等部ではがありましたけれど、中等部でもそれに似たがあります。

 単純に言って、お泊り会のようなものですけれど、馬車で遠出し、観光を兼ねて色々な場所で見聞を広め、一泊して戻って来るだけなのですが、学院以外での集団行動に慣れていない生徒達にとっては、とても得難い経験になるのです。
 今日は、学院中等部一年生のAクラスとBクラスの生徒達が、王都から馬車で一刻半ほどかかるフレマーズの街にやって来ています。

 フレマーズの街は、果樹栽培の特産地として良く知られており、王都およびその周辺を中心に、様々な果物を出荷している街でもあるんです。
 フレマーズは王家直轄領であり、修学旅行の最初は、この地を治める代官所に行って、フレマーズの地勢や経済情勢、地域の特色などを代官所の職員の方に教えてもらいました。

 それから、予め決められた観光コースを巡りながら、果樹園の所有者や労働者の人などから色々とお話を聞くのがメインですね。
 生徒の中には、自分の実家の領地にも果樹園があるような生徒もいますが、フレマーズの場合は出荷先が王都とその周辺であるため、品質管理が大変厳しいのが特徴のようです。

 その意味では、私(ヴィオラ)の職人が手掛けているブドウ栽培に通じるところもありますけれど、土壌や気候に左右されやすいぶどうの品質はともかく、ワインとブランデーなどの製造では、ロデアルの方が数十年ほど先を行っていますね。
 特に、ワイン等の生産工程では衛生面で問題のある個所がいくつかありましたけれど、一生徒に過ぎない私(ヴィオラ)が口を挟む場面ではありませんので黙っていましたよ。

 ところで、この修学旅行で特異なことは、王立学院を出た時から複数の尾行者が居ることです。
 或いは警護の騎士なのかもしれませんが、実は今回の修学旅行については王都の外に出ることもあって、警備体制はかなり厳重なのですよ。

 今回の修学旅行では、王宮騎士団から20騎の騎士が付いていますし、冒険者のパーティが6つ、27名もついているんです。
 例によって、お付きの従者がそれぞれの生徒についていますから、A、B二つのクラスで生徒と従者を併せると32名もいるんです。

 私(ヴィオラ)についているローナは護衛としてはあまり役立ちませんけれど、エミリア様やアントニオ君についている従者はかなりの手練れなんですよ。
 私(ヴィオラ)の見立てでは、ついている従者のおよそ8割が冒険者で言えばCクラス以上の戦闘力を持っているんじゃないかと思います。

 ですからちょっとした軍隊に守られている生徒たちなのですけれど、それにもかかわらず、更なる影の警護がいるのでしょうか?
 何となく不穏な感じですが、その動きを注意して監視するだけに留め、敢えて素性までの確認はしていません。

 でも悪意を持っている者達の可能性も否定できませんから、念のためにその一人一人に式神を付けておくことにしました。
 不穏な気配が見えたり、急に動き出したような場合には、式神が私(ヴィオラ)に知らせてくれます。

 実のところ、私(ヴィオラ)が鑑定をかけるには、その追尾して来る連中とは少し距離があり過ぎて、他の者に気づかれる可能性もあるからです。
 朝早くに学院を出発し、お昼前には代官所での説明を聞き、お昼には最寄り農園で地産の農産物を使った料理をいただきました。

 広い牧草地の一画に天井を覆うだけの幕舎テントが据えられ、その中で皆でワイワイとおしゃべりしながらいただく昼食は楽しく美味しいものでしたよ。
 警護についている者の半数も一緒に食事をとりましたけれど、私たちが半分も食べない内にあっという間に食べ終えると、残り半数と交代して周辺警護に着いています。

 その間、追尾して来た者達はかなり遠目に分散配置して、こちらの様子を伺っているようですが、ほとんど動きが無いのが何となく気味が悪いですね。
 少なくとも警護の騎士も、冒険者たちもその様子に気づいているようには思えません。

 単に見守っているだけなら良いのですけれど、何となく私(ヴィオラ)は気になりました。
 陽が傾き始めた頃に、フレマーズの中心街近くにある上宿のバルファ館に入りました。

 バルファ館は貴族や大商人を相手にする上級の宿なんです。
 王族や貴族の子女を泊めるには、やはり、こうした上級の宿でなければいけないようです。

 私や兄様、姉様がロデアルに帰省する際にも宿泊する場所はこのような上級の宿と決まっているのです。
 余程のことが無い限りは、それ以外の宿は使わないのが貴族の慣行ですね。

 江戸時代の参勤交代の折に大名などが泊る宿は、『本陣ほんじん』や『脇本陣わきほんじん』であったようですから同じようなものですね。
 そうしてバルファ館にはお風呂がありました。

 但し、温泉ではなくって蒸し風呂ですけれど、夕食後の短い時間に入るように宿の人からかされました。
 燃料に薪を使って、蒸し風呂の蒸気を造っているようで、蒸し風呂稼働中は外の竈に人がついている必要があるために、入浴時間が決められているのです。

 勿論、男女は別の浴室になっていますヨ。
 Aクラス、Bクラス併せて8人の女子が一度に入っても、大丈夫なほど大きなサウナ(??)でした。

 ここでも、みんなしてワイワイとはしゃぎまくっているのは、年相応なんですね。
 お部屋は、個室ではなくってツインの二人部屋です。

 例によって、私(ヴィオラ)はエミリア様とご一緒で、お付きの従者であるローナとアレサさんは、私達の部屋に出入りできる従者用の隣の部屋に居ます。
 エミリアさんと今日の出来事なんかを話しながら、少し夜更かしし、それから寝ました。

 夜半、例の尾行者達に動きがありました。
 尾行者は全部で12名なんですけれど、そのうちの二名が、式神の目の前から消えたのです。

 何故に消えたのかは不明です。
 まるで、転移の様にすっと消えて気配を終えないんです。

 残り10名は、抜刀して周囲からじわじわと宿へ接近を始めています。
 因みに宿の警備の方は規模を縮小して、騎士団5名、冒険者パーティ二つ9名の14名が交代制で付いていますけれど大分気が緩んでいますね。

 私が緊急に索敵を行っていると、そのうちに向かいの部屋の戸口前に二人が急に出現しました。
 向かいの部屋は、アントニオ君とカイン・ド・ヴァル・シス・マーカス・ローランド君のはずです。

 これは、もしかして、転移なのでしょうか?
 空間転移にしては500mほど先の潜伏地点で消えてから、このドアの傍に出現するまでに30秒ほどの時間が経っていますので、魔法ならば時間がかかりすぎです。

 しかもこの二人は、間違いなく殺気を放っていますので暗殺者と見做して間違いないでしょう。
 狙う相手は、アントニオ君?それともカイン君?

 いずれにせよこのまま放置はできませんので、私はネグリジェ姿のままで瞬時に廊下に転移しました。
 私(ヴィオラ)が転移した時点では、ドアノブに手を掛けている状態でしたけれど、二人ともに手には少し大き目のダガーを逆手に持っています。

 廊下は暗いんですけれど、私(ヴィオラ)は暗視ができますからね。
 ダガーの刃には、見てすぐにわかるほどの毒々しい液体が塗られていますので、間違いなく毒刃でしょう。

 上から下まで黒づくめの衣装で、目だけ出して布で頭部を覆っています。
 まるで忍者のようだと思いました。

 鑑定の必要もなく、この二人は暗殺者です。
 私(ヴィオラ)が殺しても問題は無いのでしょうけれど、背後を手繰たぐるために生かしておきましょう。

 二人が私の気配に気づくと同時に、30万ボルトの高電圧の雷を二人に落としました。
 瞬時に気を失って、二人がどさっと倒れます。

 その音に反応したのが三人でした。
 エステバン君、アントニオ君の従者のデーヴィス君、それにエミリア様の従者のアレサさんです。

 最寄りの三つのドアが開いて、彼らが出てきました。
 三人に私(ヴィオラ)のネグリジェ姿を見られたわけですけれど、逃げるわけにも行かず、そのままアレサさんにお願いしました。

「アレサさん、帳場に警備の人たちがいますので知らせてください。
 害意を持った侵入者二名捕縛中。
 なお、周辺に彼らの仲間十名が居て、宿に向けて徐々に迫って来ていますので、外部の警戒を強化してくださいとお願いをしてください。
 エミリア様の警護は私が致します。」

 アレサさんはすぐに頷いて、廊下を走って行った。
 少なくとも私(ヴィオラ)はアレサさんには結構信用されているようですね。

 エステバン君が言いました。

「侵入者って・・・。
 確かに怪しい奴らだけど、どうして君が?」

 さて、どう説明したものか。
 まぁ、詳細の説明は省いて、出たところ勝負ですね。

「ベッドで寝ている時に外部からの侵入を感じて、廊下に出たら、カイン君とアントニオ君の部屋の前に、この黒尽くめの不審者二人が抜き身を携えていましたので、雷属性の魔法で二人を倒しました。
 死んではいませんけれど、すぐには身動きできない状態でしょうね。
 警護の騎士がくれば引き渡して背後関係を調べてもらいましょう。
 狙いは、カイン君かアントニオ君のいずれかでしょうけれど、お二人は何か心当りが御座いますか?」

 エステバン君とデーヴィスさんは顔を見合わせていたが、やがてエステバン君が言った。

「間違いかも知れないが、この二人の装束は、レインバルク帝国の陰の組織が使うと、以前に父上から聞いたことが有る。
 だから、もしかするとレインバルク帝国の差金で、アントニオ王子の命を狙った可能性があるかも・・・。」

 あらまぁ、国同士の諍いの火の粉がここまで飛んできましたか。
 確かに、アントニオ君がライヒベルゼン王国滞在中に不審死を遂げれば、リットニア王国とライヒベルゼン王国の関係が悪くなるかもしれませんね。
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