親王様は元大魔法師~明治の宮様に転生した男の物語~戦は避けられるのか?

サクラ近衛将監

文字の大きさ
40 / 112
第三章 新たなる展開

3-13 帰国とその後

しおりを挟む
 米国留学中に休暇を利用して様々なところに旅行し、いろいろな人ともお会いしました。
 ワシントンに赴き在日米国大使の紹介で当時の政界の有力者ともお会いし、色々なお話を聞かせてもらいました。

 中には黄禍論と言うか人種差別に随分とこだわった方も居ましたね。
 正直なところ、いかな名士であったとしても私としては二度と会いたくない人物です。

 ニューヨークでは米国経済界の重鎮にもお会いできました。
 第一次大戦による需要増大で好景気に浮かれた方が多かった中で、終戦後に起きるであろう不況を真剣に心配している方もいらっしゃいました。

 但し、そうした人物がいくら警告を発しても、浮かれている連中には馬の耳に念仏で、何の対策も取られていないと嘆いておられましたが、帝国でも同じことが起こっていそうで、私も帰国した時点で何らかの対策を行う必要性を感じていましたので、ある意味で共感を覚えました。

 五大湖周辺の工業地帯の視察もいたしましたし、隣国カナダへも親善訪問しました。
 まぁ、帝国も徐々に工業化を進めていますが、急激な転換はできないのでゆるゆるとやっていますが、五大湖周辺の工業地帯は確かにすごいですね。

 そうは言いつつも、21世紀の進展した工業社会を見たことのある私ですから、納得半分、感心半分と言ったところでしょう。
 観光を兼ねての視察も全ては帝国の親王プリンスという肩書き故にできた話ですが、様々な方と親しくお話ができたことは大変に良い経験になったと思います。

 留学中に同年代(やや年上?)の友人もたくさんできました。
 中には変わった方もいらっしゃいましたが、総じてアメリカ人は陽気で人なつこいなと感じました。

 日本人がどちらかと言うと奥手であり、礼儀正しく、生真面目であり、若干なのに比べると非常に際立ちますね。
 とにもかくにも二年にわたる留学で学業にもそれなりの成果を上げて、私は1917年8月末にボストンを離れました。

 私の宿舎HAMは、退去前に大規模な改装を行い、設置されていたオーバーテクノロジーは全て撤去した上で、米国政府の了承を得て無償でハーバード大学に譲渡しました。
 改修されていますのでこれからも二十年やそこらは十分に使える屋敷の筈です。

 帰路は大陸横断鉄道を使い、シアトルまで車中泊で、シアトル港で迎えに来た明日香丸に乗船して横浜へ戻りました。
 単純に大陸横断鉄道に一度は乗ってみたいと言う私の我儘わがままなのですが、本来はその方が経済的には安くつきます。

 パナマの通行料は結構高いですからね。
 二万トン級の貨客船は、結構なお値段になってしまうのです。

 まぁ、南米ホーン岬経由と言う手もありますが、その燃料代を考えるとパナマ運河を通った方が通常は安くつくのです。
 但し、明日香丸の場合、燃料は殆ど使わないエレクトリック・モーター・シップですから、パナマ運河を使った方が高くなる可能性もあるのです。
 
 回航に要する時間と手間を考えると、シアトルで乗船するのがベストだったことに間違いはありません。
 私が帝都の富士野宮邸に戻ったのは1917年9月中旬の事でした。

 ◇◇◇◇

 帰国して早々、私の『成人の儀』が待っておりました。
 それに由紀子嬢との『婚約の儀』も併せて準備が進められています。

 彼女ももう20歳(数えでは21歳)を超えて世間では大年増と呼ばれる範疇に入っていますので、対外的にも何とかしてあげねばならない年頃なのです。
 男の私は左程年齢にはこだわらないのですが、女性はそうも行かないのです。

 9月下旬には無事に成人の儀が執り行われ、私は正式に成人として扱われるようになりました。
 本来は昨年辺りにしておくのが一番よかったわけですが、留学中では如何ともしがたいわけで、帰国を待って早々に執り行われたわけです。

 更には成人の儀を迎えた男子が嫁となるべき女子を得るための儀式として婚約の儀があるわけです。
 まぁ、単純に言えば一般人の結納の儀式なのですがそこは皇族、結構面倒なやり取りが、富士野宮家と島津家であるわけで、この結納の儀だけで足掛け5日ほどを要するのです。

 まぁ、由紀子嬢は願いが叶ってニコニコ顔で、すっかり女らしくなった美人顔が余計に映えていましたね。
 この儀式を終えると島津由紀子嬢は正式に私の婚約者となるわけで、対外的にも公表され、新聞にも掲載されるのです。

 ある意味で私もになったというところでしょうか。
 但し、由紀子嬢には嫁いでから皇族の一員として、様々な儀式やしきたりの中で生きて行かねばならないのでそれが結構大変かもしれません。

 特に、皇族の中では身分、序列が結構意識されており、出自を気にされる方もいらっしゃいます。
 島津家という元大名の公爵と言う地位が左程ものをいうわけではありません。

 むしろ血筋としては底辺に近い方かもしれません。
 富士野宮家本家と言う格式高い皇族に嫁いだ者としてどのような振る舞いをなせばいいのか、結婚するまでの一年余りの間は、厳しいお妃教育が待っています。

 因みに私と由紀子嬢の婚姻の儀は、1919年3月を予定しております。
 1918年から婚姻の日までに忌事いみごとが起きなければ、結婚することになります。

 ◇◇◇◇

 ああ、スペイン風邪の顛末についても述べておかねばなりませんね。
 発生時期が第一次世界大戦中であったために、ドイツ、イギリス、フランス、ポーランド、アメリカ合衆国での病状や死亡の初期報告は士気の維持のために敢えて伏せられていましたが、中立国スペインではそのような措置が講じられておらず自由に報道された所為でスペイン風邪と通称されるようになりました。

 恐らくは1918年1月ごろが最初の発症時期ではないかと思われます。
 私の精神操作により、帝国政府は1917年秋には、具体的な病名を出さずに大使館員等に徹底した感染予防策を講じさせていました。

「先頃、『コレラのような凶悪な感染症が欧州方面で起きる恐れがある。』とのさる高名な占い師の予言があり、念のため各大使館においては日ごろから感染症の予防対策を強化せよ。」

という公電が世界中の日本大使館及び日本領事館に出回ったのです。

 その上で、年明けには重大な感染症発症の疑いがある症例を見出した際はその患者の唾液等体液のいずれかを入手して帝都へ送るよう秘密訓令を出したのです。
 英国とフランスで肺炎患者が重症化し、死者が出た時点で入手されたサンプルは、飛鳥海運の高速貨客船に乗せられてそれぞれ別便で輸送され、飛鳥製薬微生物研究所に運び込まれました。

 研究所到着は、フランスからの第一便が1918年2月3日、英国からの第二便が2月11日でしたが、直ちに電子顕微鏡で観察され、H1N1鳥インフルエンザの変異体と同定されました。

 それまでに準備されていたH1N1対抗薬を種々試した上で、ワクチン開発を急がせましたが、どうしても時間はかかります。
 更にスペインからの検体が第三便として送られてきたのが三月末のことでしたが、ワクチンの試験薬が出来上がったのが8月半ば、人体への治験をしようにも帝国には患者が居ませんので、公表されているスペインへワクチンを送って外交ベースで話を進め、スペインの医師団で治験を開始してもらいました。

 ワクチンは二種類、一つは発症患者に与えるものであり、今一つは未発症の人に与える予防薬です。
 スペインでの臨床試験で確認した結果、両方のワクチンともかなりの効果が認められたので、直ちに大量生産を開始しましたが、残念ながら5億人と推測される発症患者すべてに行き渡る数を量産するには時間がかかります。

 国内でも感染症対策を周知しつつ予防のためのワクチン接種を推進しました。
 一方で情報公開されているスペインへ真っ先に百万人分の二種類のワクチンを緊急輸出したところ、ほとんど即座に各国からも問い合わせが相次ぎ、各大使館、領事館からの公電が飛び交いました。

 生産能力を上げても輸出用に確保できるのは1日に二種類のワクチンが数百万本程度、需要に供給が追い付きません。
 申し入れのあった国へ平等に配分しながら徐々に供給量を増やして行くしか方法がありませんでした。

 それでも重症患者の死亡率を下げることに寄与できましたが、逆にワクチン開発が余りに早かった所為で列強諸国の諜報機関からは帝国の陰謀ではないかと疑われたのは事実です。

 しかしながら、こちらとしては隠すことは何もありません。
 といいつつも、事前に種々の準備をしていたことは完璧に伏せています。

 電子顕微鏡によるウィルスの発見、そのための対策としてのワクチンの開発等、報道陣を集めて記者会見を飛鳥製薬でしっかりとさせました。
 ウィルスの電子顕微鏡写真を公開したのもこの時が初めてです。

 米国でも、私が製造し、ハーバード大学に寄贈してきた電子顕微鏡でウィルスを確認し、独自にワクチン開発を始めたようですが、夏場以降に始めた開発では翌年夏までに間に合うかどうか微妙なところです。
 何れにしろ、ワクチンは無償供与ではなく有償でしたから、それなりの収入が飛鳥製薬には入っており、外貨獲得に役立っていました。

 このために一躍、飛鳥製薬の名前は世界に知れ渡りました。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

仮想戦記:蒼穹のレブナント ~ 如何にして空襲を免れるか

サクラ近衛将監
ファンタジー
 レブナントとは、フランス語で「帰る」、「戻る」、「再び来る」という意味のレヴニール(Revenir)に由来し、ここでは「死から戻って来たりし者」のこと。  昭和11年、広島市内で瀬戸物店を営む中年のオヤジが、唐突に転生者の記憶を呼び覚ます。  記憶のひとつは、百年も未来の科学者であり、無謀な者が引き起こした自動車事故により唐突に三十代の半ばで死んだ男の記憶だが、今ひとつは、その未来の男が異世界屈指の錬金術師に転生して百有余年を生きた記憶だった。  二つの記憶は、中年男の中で覚醒し、自分の住む日本が、この町が、空襲に遭って焦土に変わる未来を知っってしまった。  男はその未来を変えるべく立ち上がる。  この物語は、戦前に生きたオヤジが自ら持つ知識と能力を最大限に駆使して、焦土と化す未来を変えようとする物語である。  この物語は飽くまで仮想戦記であり、登場する人物や団体・組織によく似た人物や団体が過去にあったにしても、当該実在の人物もしくは団体とは関りが無いことをご承知おきください。    投稿は不定期ですが、一応毎週火曜日午後8時を予定しており、「アルファポリス」様、「カクヨム」様、「小説を読もう」様に同時投稿します。

リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット
ファンタジー
「君に今の時代に生まれ変わって欲しいんだ」 魔物の王を討伐した古き英雄グレリア・ファルトは死後、突然白い世界に呼び出され、神にそう言われてしまった。 彼は生まれ変わるという言葉に孫の言葉を思い出し、新しい人生を生きることを決意した。 遥か昔に生きていた世界がどう変わっているか、発展しているか期待をしながら700年後の時代に転生した彼を待ち受けていたのは……『英雄召喚』と呼ばれる魔法でやってきた異世界人の手によって破壊され発展した――変貌した世界だった。 歴史すら捻じ曲げられた世界で、グレリアは何を求め、知り……世界を生きるのだろうか? 己の心のままに生き、今を知るために、彼は再び歴史を紡ぐ。 そして……主人公はもう一人――『勇者』、『英雄』の定義すら薄くなった世界でそれらに憧れ、近づきたいと願う少年、セイル・シルドニアは学園での入学試験で一人の男と出会う。 そのことをきっかけにしてセイルは本当の意味で『勇者』というものを考え、『英雄』と呼ばれる存在になるためにもがき、苦しむことになるだろう。 例えどんな困難な道であっても、光が照らす道へと……己の力で進むと誓った、その限りを尽くして。 過去の英雄と現代の英雄(の卵)が交差し、歴史を作る! 異世界転生型アンチ異世界転生ファンタジー、ここに開幕! ――なろう・カクヨムでも連載中――

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

【完結】ここって天国?いいえBLの世界に転生しました

三園 七詩
恋愛
麻衣子はBL大好きの腐りかけのオタク、ある日道路を渡っていた綺麗な猫が車に引かれそうになっているのを助けるために命を落とした。 助けたその猫はなんと神様で麻衣子を望む異世界へと転生してくれると言う…チートでも溺愛でも悪役令嬢でも望むままに…しかし麻衣子にはどれもピンと来ない…どうせならBLの世界でじっくりと生でそれを拝みたい… 神様はそんな麻衣子の願いを叶えてBLの世界へと転生させてくれた! しかもその世界は生前、麻衣子が買ったばかりのゲームの世界にそっくりだった! 攻略対象の兄と弟を持ち、王子の婚約者のマリーとして生まれ変わった。 ゲームの世界なら王子と兄、弟やヒロイン(男)がイチャイチャするはずなのになんかおかしい… 知らず知らずのうちに攻略対象達を虜にしていくマリーだがこの世界はBLと疑わないマリーはそんな思いは露知らず… 注)BLとありますが、BL展開はほぼありません。

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

処理中です...