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第五章 戦争への序曲
5-9 大日本帝国の決断 その六
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陛下が再度宏禎王に尋ねた。
「今ひとつ聞いておこう。
そちは帝国のあり方についてどう考えているのだ。
朕は天皇として臣民の上に君臨しているが、それが本来のあり得べき姿なのか。」
「その件に関する限り、陛下の御疑問にお答えするのは私の役目では無い様に存じます。
国家の政治形態として立憲君主制を取ったのは明治維新の功労者達でございます。
少なくとも徳川の封建体制を打ち破るために、必要と思われる方策として恐れ多くも天皇陛下を利用しました。
徳川の幕藩体制が崩壊した後も、権威がなければ国を治める事はできないことから、天皇陛下を祭り上げたのでございます。
これは、実は天皇家の直接政治が行われなくなって以来、我が国に根強く残っている慣行なのです。
平氏から源氏へ、豊臣から徳川へ政権が移ったときも同様に、帝を国の最高権威者として位置づけ、実質的な政治権力を帝の権威を代行する者として勝ち得たのです。
現行憲法はそのことを明文化し、武士階級ではなく政治家の中から宰相を選び出す制度を付け足したに過ぎません。
私は歯に衣を着せるような言い方は出来ませんので、処罰を覚悟で敢えて申し上げます。
陛下は国家元首でありながら、政治・司法・軍事に渡る実質的采配を宰相他に委ねていることは、陛下が単なる飾り物にしか過ぎないことを示しております。
しかしながら同時にその存在無かりせば、宰相などの彼らに委ねた権威も同様に存在しなくなります。
従って、宰相や陸海軍の者は、陛下の仰せには逆らえない部分もあるわけでございます。
但し、天平、飛鳥の時代には、帝が直卒の軍を持ち、反抗勢力を討ち果たしてきたという事実がございます。
帝の継承争いにも兵力がものを言いました。
勝った方が正当な帝として認められたわけです。
陛下には近衛師団は存在しても、陛下直卒の軍勢ではございません。
一方で天皇家のお血筋に、万が一、ローマ皇帝カリギュラのような暴君が現れ、帝位を継がれ、臣民や国家のためによくないことをされる場合もあり得ます。
そのような場合に帝直卒の軍が存在することは極めて危険なことになりましょう。
世界においても、いまだ民主主義、共産主義、王政主義、立憲君主主義など様々な制度が入り乱れ、試行錯誤で改良を重ねております。
ただ、陛下が陛下ご自身を見失わない限り、臣下の者は付いて行くでありましょう。」
「なるほど、・・・・。
そちや紅兵団も朕が行く末を見ているということかな。
まあ、よい。
此度の旅の目的はほぼ達成された。
明日に予定されている訓練を見ずとも良いぐらいだが、折角の折だ。
訓練を見てから帰るとしよう。」
「恐れ入りまするが、陛下。
一つお願いがございます。
訓練が終わった段階で、紅兵団の一同に一言お言葉を賜りたく存じます。
陛下にお見せする訓練はこの青龍のみでございますが。
ほかに玄武、白虎、鳳凰の三隻で訓練に励んでいる娘達もおりますれば、全員に陛下のお姿を拝見し、お言葉を拝聴させたく存じます。」
「ほう、それは構わぬが、・・・。
朕が言葉を皆に聞かすというか。
それは、また、どのような・・・。
いや、これはつまらぬ質問であったな。
戦闘機を眼の届かぬ遠隔の地から操縦する技術を持つ、そちたちじゃ。
我が身、我が言葉を離れた場所に伝えるなど簡単な事のはずだな。」
「ご賢察、恐れ入ります。」
翌日、朝食後に紅兵団の訓練を中央司令室でつぶさにご覧になった天皇陛下は、紅兵団総員に向けての激励のメッセージを残して、宮城へ戻る旅につかれた。
午前11時の出発であり、最短で品川白金台には翌日の丑三つ時には到着できるが、宮城への送迎にそのような時間は難しい。
結局は下田の港までの航海時間を3時間ほど長くして、翌朝6時過ぎに到着するように調整した。
陛下が宮城へ戻られたのは、3月23日午前8時のことである。
同日午後、急遽御前会議が招集された。
会議冒頭に陛下が異例の発言をされ、日米開戦の詔勅がなされた。
事前に閑院宮首相から概略の経緯を聞いていた閣僚であるがそれでもその内容には唖然とした。
日米開戦にあたり、
第一に3月一杯までは、米国へ中国駐留軍計画の撤回の余裕を与える事。
第二に駐米日本大使館を通じて米国務長官に3月31日までに中国駐留軍計画の撤退を公表するか、もしくは日本側に公式に通知をせざる場合、4月1日を以て帝国は米国に対して宣戦布告をなすべき事。
第三に東郷外相が駐日米国大使を呼んで同内容を伝える事。
第四に日本及び米国での通報終了後、首相は記者会見を行って、戦争にいたる判断を下した経過を発表する事、なお、その際に、中国で3月11日、14日、15日、18日に発生した駐在員及び米国民に対するテロ活動はいずれも中国共産党の仕業に見せかけた米国工作員の仕業であり、国民党政府には何の責任もないこと、米国の圧力に屈したとはいえ、中国国民党政府の国際信義にもとる今回の行動は、誠に遺憾であるが、同じアジアの国家として中国に同情こそすれ敵意はないこと、むしろ、自ら企てた狂言による事件を奇禍とし、日中講和協定に承諾された駐留軍の禁止条項を踏みにじる行為を企図し、帝国と中国を再度開戦させようとする魂胆は極めて狡猾しかも陰湿な謀略であること、帝国はこの故を以て、協定を約しながら、これに反した中国国民党政府ではなく、背後でこれを扇動した米国政府に対して猛省を求めるものであり、3月31日までに中国駐留軍の計画を破棄しなければ、米国に対して帝国に対する邪な謀略を打ち砕くために宣戦布告するものであることを説明する事。
米国又は報道関係者が何らかの証拠提示を求めてきてもこれに応ずる必要は無い。
異例中の異例の詔勅であるが、天皇を輔弼する内閣に反論の余地は殆ど無かった。
陸軍及び海軍は既に迎え撃つ用意は出来ている旨の発言をなし、飛鳥総業の協力により更なる兵器拡充に取り掛かる計画である事を述べた。
農林担当の内相は、米の備蓄は現在までに400万トンが準備されており、開戦と同時に北海道北見地方及び青森県下北地方に飛鳥総業の発案による農業工場の建設が始まり、今秋から稼動を開始できる見込みである事を発言した。
通産担当の内相は、飛鳥総業の石油部門がサハリン東部沖合い海域の油田開発により、航空機燃料及び感染の燃料に必要な石油製品は十分に賄える見込みであること、更に、飛鳥総業の電気部門が地脈発電機の増産により、必要に応じて外地への供給が可能であることを発言した。
鉱山担当の内相は、飛鳥総業の鉱工業部門が鉄、銅、鉛、銀、金、アルミニウムなどの必要な金属生産を拡大し、これまでの年間需要量の三倍を市場に流す事が出来る旨表明していることを述べた。
戦争に必要不可欠な、金属、石油、電力、食料などの物資の目処はついているということである。
それにしても、飛鳥総業無くしてはいずれも達成困難な部門だけに飛鳥総業の貢献ばかりが目立った。
陛下が会議の最後に、飛鳥総業の力無くば、我が帝国も立ち行かぬようになったようだが、諸君も身命を賭して国民のためにできることをなして欲しいと締めくくったのである。
米国東部時間3月23日1800、米国駐在野村大使はハル国務長官に面会、日本からの訓令に従い、中国本土駐留軍派遣計画を即時破棄するよう求め、同時に計画破棄が米国時間3月31日22時までになされない場合、帝国は断腸の想いで米国との国交を断絶、宣戦布告する旨告げた。
同じ頃、日本時間3月24日午前8時、東郷外相は米国グレッグ大使を外務省に呼びつけ、同じ内容を伝えた。
日本時間4月1日午前10時までに米国より返答なき場合は、日米で戦闘状態に入ることを確認したのである。
同日午前9時、首相官邸で内外の報道記者を集めて臨時記者会見を行い、帝国の決断を伝えたのである。
閑院宮首相は、発表の後、一切の質問を受け付けずに退室した。
◇◇◇◇
しかしながら、開戦が目前に迫っているにもかかわらず、陸海軍は特に目立った動きをせずにいるようであった。
連合艦隊は柱島泊地に錨を降ろしたままであり、陸軍も国内各部隊に待機命令を発したのみで大規模な将兵の移動を行っていないが、日中戦争から復員した将兵の25%程度が再度の召集令状を受け、4月1日10時までに原隊に復帰するよう命令が出されていた。
再召集の兵士達の多くは、営業を主体とする会社員と農林漁業者であったが、いずれも家を継ぐべき長男は外されていた。
これにより陸軍の内地常備軍100万に約30万人が増員されることとなり、関東軍30万人、中国遼寧省、山東省、熱河省における駐留軍20万人と合わせて、180万人の規模となっていた。
3月31日台湾南部の高雄に四発の大型輸送機が到着、レーダー車両、対空自走砲が搭乗員と共に大量に届けられた。
また、高雄、台北にある陸軍及び海軍の航空基地には新型戦闘機と新型高速爆撃機が次々に着陸していた。
戦闘機が200機、爆撃機は100機である。
それぞれ陸海軍のパイロットが搭乗している。
これらの新鋭機が到着してから、高雄、台北にこれまで配属されていたパイロット達は長崎まで出向いて新型機の受け取りを開始したのである。
長崎までの輸送は飛鳥総業が請け負っていた。
新型戦闘機は13年式戦闘機「閃電」、新型爆撃機は14年式爆撃機「雷鵬」である。
閃電は、三菱の十二試艦上戦闘機とフォルムがにているものの、やや大型化であり、空戦フラップを装備している上に、防弾構造が強化されたものであり、翼面積や重量は三菱儒十二試艦戦よりも2割ほど大きいが、飛鳥重工製作の加給機つき新型エンジン蓬莱1号3000馬力エンジンを搭載、最大速力で760キロを出すことができ、巡航速力450キロでは通常航続距離2250キロ、増槽タンクをつけて3200キロと十二試艦戦の要求を超える長距離を飛行できる。
一方の雷鵬は、飛鳥重工の加給機付き新型エンジン霧島1号4500馬力エンジン4基を搭載し、高度8千メートルで最高速度は実に820キロを出す事ができる。
爆弾搭載量は4トン、航続距離は6600キロである。
サイパンでは大規模な航空基地の建設を始めた。
近隣のグアムには米軍も存在するが、飛鳥総業の貨物船がサイパンに25日に入港、大型の建設機械を投入してサイパンに大規模な滑走路と航空司令部を完成させたのはその1週間後のことである。
一方、フィリピンでは米軍の増強も始まっていたが、マッカーサー司令官の思惑とは異なり、増強支援の速度は遅かったのである。
「今ひとつ聞いておこう。
そちは帝国のあり方についてどう考えているのだ。
朕は天皇として臣民の上に君臨しているが、それが本来のあり得べき姿なのか。」
「その件に関する限り、陛下の御疑問にお答えするのは私の役目では無い様に存じます。
国家の政治形態として立憲君主制を取ったのは明治維新の功労者達でございます。
少なくとも徳川の封建体制を打ち破るために、必要と思われる方策として恐れ多くも天皇陛下を利用しました。
徳川の幕藩体制が崩壊した後も、権威がなければ国を治める事はできないことから、天皇陛下を祭り上げたのでございます。
これは、実は天皇家の直接政治が行われなくなって以来、我が国に根強く残っている慣行なのです。
平氏から源氏へ、豊臣から徳川へ政権が移ったときも同様に、帝を国の最高権威者として位置づけ、実質的な政治権力を帝の権威を代行する者として勝ち得たのです。
現行憲法はそのことを明文化し、武士階級ではなく政治家の中から宰相を選び出す制度を付け足したに過ぎません。
私は歯に衣を着せるような言い方は出来ませんので、処罰を覚悟で敢えて申し上げます。
陛下は国家元首でありながら、政治・司法・軍事に渡る実質的采配を宰相他に委ねていることは、陛下が単なる飾り物にしか過ぎないことを示しております。
しかしながら同時にその存在無かりせば、宰相などの彼らに委ねた権威も同様に存在しなくなります。
従って、宰相や陸海軍の者は、陛下の仰せには逆らえない部分もあるわけでございます。
但し、天平、飛鳥の時代には、帝が直卒の軍を持ち、反抗勢力を討ち果たしてきたという事実がございます。
帝の継承争いにも兵力がものを言いました。
勝った方が正当な帝として認められたわけです。
陛下には近衛師団は存在しても、陛下直卒の軍勢ではございません。
一方で天皇家のお血筋に、万が一、ローマ皇帝カリギュラのような暴君が現れ、帝位を継がれ、臣民や国家のためによくないことをされる場合もあり得ます。
そのような場合に帝直卒の軍が存在することは極めて危険なことになりましょう。
世界においても、いまだ民主主義、共産主義、王政主義、立憲君主主義など様々な制度が入り乱れ、試行錯誤で改良を重ねております。
ただ、陛下が陛下ご自身を見失わない限り、臣下の者は付いて行くでありましょう。」
「なるほど、・・・・。
そちや紅兵団も朕が行く末を見ているということかな。
まあ、よい。
此度の旅の目的はほぼ達成された。
明日に予定されている訓練を見ずとも良いぐらいだが、折角の折だ。
訓練を見てから帰るとしよう。」
「恐れ入りまするが、陛下。
一つお願いがございます。
訓練が終わった段階で、紅兵団の一同に一言お言葉を賜りたく存じます。
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ほかに玄武、白虎、鳳凰の三隻で訓練に励んでいる娘達もおりますれば、全員に陛下のお姿を拝見し、お言葉を拝聴させたく存じます。」
「ほう、それは構わぬが、・・・。
朕が言葉を皆に聞かすというか。
それは、また、どのような・・・。
いや、これはつまらぬ質問であったな。
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我が身、我が言葉を離れた場所に伝えるなど簡単な事のはずだな。」
「ご賢察、恐れ入ります。」
翌日、朝食後に紅兵団の訓練を中央司令室でつぶさにご覧になった天皇陛下は、紅兵団総員に向けての激励のメッセージを残して、宮城へ戻る旅につかれた。
午前11時の出発であり、最短で品川白金台には翌日の丑三つ時には到着できるが、宮城への送迎にそのような時間は難しい。
結局は下田の港までの航海時間を3時間ほど長くして、翌朝6時過ぎに到着するように調整した。
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同日午後、急遽御前会議が招集された。
会議冒頭に陛下が異例の発言をされ、日米開戦の詔勅がなされた。
事前に閑院宮首相から概略の経緯を聞いていた閣僚であるがそれでもその内容には唖然とした。
日米開戦にあたり、
第一に3月一杯までは、米国へ中国駐留軍計画の撤回の余裕を与える事。
第二に駐米日本大使館を通じて米国務長官に3月31日までに中国駐留軍計画の撤退を公表するか、もしくは日本側に公式に通知をせざる場合、4月1日を以て帝国は米国に対して宣戦布告をなすべき事。
第三に東郷外相が駐日米国大使を呼んで同内容を伝える事。
第四に日本及び米国での通報終了後、首相は記者会見を行って、戦争にいたる判断を下した経過を発表する事、なお、その際に、中国で3月11日、14日、15日、18日に発生した駐在員及び米国民に対するテロ活動はいずれも中国共産党の仕業に見せかけた米国工作員の仕業であり、国民党政府には何の責任もないこと、米国の圧力に屈したとはいえ、中国国民党政府の国際信義にもとる今回の行動は、誠に遺憾であるが、同じアジアの国家として中国に同情こそすれ敵意はないこと、むしろ、自ら企てた狂言による事件を奇禍とし、日中講和協定に承諾された駐留軍の禁止条項を踏みにじる行為を企図し、帝国と中国を再度開戦させようとする魂胆は極めて狡猾しかも陰湿な謀略であること、帝国はこの故を以て、協定を約しながら、これに反した中国国民党政府ではなく、背後でこれを扇動した米国政府に対して猛省を求めるものであり、3月31日までに中国駐留軍の計画を破棄しなければ、米国に対して帝国に対する邪な謀略を打ち砕くために宣戦布告するものであることを説明する事。
米国又は報道関係者が何らかの証拠提示を求めてきてもこれに応ずる必要は無い。
異例中の異例の詔勅であるが、天皇を輔弼する内閣に反論の余地は殆ど無かった。
陸軍及び海軍は既に迎え撃つ用意は出来ている旨の発言をなし、飛鳥総業の協力により更なる兵器拡充に取り掛かる計画である事を述べた。
農林担当の内相は、米の備蓄は現在までに400万トンが準備されており、開戦と同時に北海道北見地方及び青森県下北地方に飛鳥総業の発案による農業工場の建設が始まり、今秋から稼動を開始できる見込みである事を発言した。
通産担当の内相は、飛鳥総業の石油部門がサハリン東部沖合い海域の油田開発により、航空機燃料及び感染の燃料に必要な石油製品は十分に賄える見込みであること、更に、飛鳥総業の電気部門が地脈発電機の増産により、必要に応じて外地への供給が可能であることを発言した。
鉱山担当の内相は、飛鳥総業の鉱工業部門が鉄、銅、鉛、銀、金、アルミニウムなどの必要な金属生産を拡大し、これまでの年間需要量の三倍を市場に流す事が出来る旨表明していることを述べた。
戦争に必要不可欠な、金属、石油、電力、食料などの物資の目処はついているということである。
それにしても、飛鳥総業無くしてはいずれも達成困難な部門だけに飛鳥総業の貢献ばかりが目立った。
陛下が会議の最後に、飛鳥総業の力無くば、我が帝国も立ち行かぬようになったようだが、諸君も身命を賭して国民のためにできることをなして欲しいと締めくくったのである。
米国東部時間3月23日1800、米国駐在野村大使はハル国務長官に面会、日本からの訓令に従い、中国本土駐留軍派遣計画を即時破棄するよう求め、同時に計画破棄が米国時間3月31日22時までになされない場合、帝国は断腸の想いで米国との国交を断絶、宣戦布告する旨告げた。
同じ頃、日本時間3月24日午前8時、東郷外相は米国グレッグ大使を外務省に呼びつけ、同じ内容を伝えた。
日本時間4月1日午前10時までに米国より返答なき場合は、日米で戦闘状態に入ることを確認したのである。
同日午前9時、首相官邸で内外の報道記者を集めて臨時記者会見を行い、帝国の決断を伝えたのである。
閑院宮首相は、発表の後、一切の質問を受け付けずに退室した。
◇◇◇◇
しかしながら、開戦が目前に迫っているにもかかわらず、陸海軍は特に目立った動きをせずにいるようであった。
連合艦隊は柱島泊地に錨を降ろしたままであり、陸軍も国内各部隊に待機命令を発したのみで大規模な将兵の移動を行っていないが、日中戦争から復員した将兵の25%程度が再度の召集令状を受け、4月1日10時までに原隊に復帰するよう命令が出されていた。
再召集の兵士達の多くは、営業を主体とする会社員と農林漁業者であったが、いずれも家を継ぐべき長男は外されていた。
これにより陸軍の内地常備軍100万に約30万人が増員されることとなり、関東軍30万人、中国遼寧省、山東省、熱河省における駐留軍20万人と合わせて、180万人の規模となっていた。
3月31日台湾南部の高雄に四発の大型輸送機が到着、レーダー車両、対空自走砲が搭乗員と共に大量に届けられた。
また、高雄、台北にある陸軍及び海軍の航空基地には新型戦闘機と新型高速爆撃機が次々に着陸していた。
戦闘機が200機、爆撃機は100機である。
それぞれ陸海軍のパイロットが搭乗している。
これらの新鋭機が到着してから、高雄、台北にこれまで配属されていたパイロット達は長崎まで出向いて新型機の受け取りを開始したのである。
長崎までの輸送は飛鳥総業が請け負っていた。
新型戦闘機は13年式戦闘機「閃電」、新型爆撃機は14年式爆撃機「雷鵬」である。
閃電は、三菱の十二試艦上戦闘機とフォルムがにているものの、やや大型化であり、空戦フラップを装備している上に、防弾構造が強化されたものであり、翼面積や重量は三菱儒十二試艦戦よりも2割ほど大きいが、飛鳥重工製作の加給機つき新型エンジン蓬莱1号3000馬力エンジンを搭載、最大速力で760キロを出すことができ、巡航速力450キロでは通常航続距離2250キロ、増槽タンクをつけて3200キロと十二試艦戦の要求を超える長距離を飛行できる。
一方の雷鵬は、飛鳥重工の加給機付き新型エンジン霧島1号4500馬力エンジン4基を搭載し、高度8千メートルで最高速度は実に820キロを出す事ができる。
爆弾搭載量は4トン、航続距離は6600キロである。
サイパンでは大規模な航空基地の建設を始めた。
近隣のグアムには米軍も存在するが、飛鳥総業の貨物船がサイパンに25日に入港、大型の建設機械を投入してサイパンに大規模な滑走路と航空司令部を完成させたのはその1週間後のことである。
一方、フィリピンでは米軍の増強も始まっていたが、マッカーサー司令官の思惑とは異なり、増強支援の速度は遅かったのである。
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