親王様は元大魔法師~明治の宮様に転生した男の物語~戦は避けられるのか?

サクラ近衛将監

文字の大きさ
84 / 112
第六章 日米の戦いと紅兵団の役割

6-8 日米講和会議 その三

しおりを挟む
 艦長は一行を引き連れ、艦長公室へ案内した。
 艦長公室で、コーヒーを飲みながら暫しの談笑をしながら今後のスケジュールを艦長が確認した。

「海王はこの打ち合わせが終わったならば、航行を開始し、速度調整を行いながら航行し、オアフ島沖には17日夕刻に到着する予定である。
 海王はどう足掻いてもホノルル港や真珠湾には入れないから、オアフ島ハレクラニホテルの沖合5海里で漂泊することになる。
 そこから先は、搭載艇又は輸送ヘリで上陸する事になるが、相手国の領域内であることから、ホノルル港のポートサービスまたは真珠湾の海軍司令部と連絡を取った上で、米国の了解を得ることになる。
 第一希望は、海王の艦載輸送ヘリでハレクラニホテル中庭への直接輸送であり、その場合必要ならば米側の指示された場所に降りることになる。
 ヘリの輸送が許可されない場合は、搭載艇によりホノルル港へ入港し、代表団と報道関係者を降ろした上で搭載艇は海王へ戻る事になる。
 河合サキ君ら三名の携帯電話番号を飛鳥総帥から知らされているので、彼女らからの連絡を待って迎えのヘリ又は搭載艇を出す事になる。
 緊急事態の場合は、彼女らがその対処法を知っているから、全権大使他の方は彼女たちの指示に従っていただきたい。
 彼女達はこう見えてもれっきとした軍人です。
 男性に負けない力量を発揮するものと期待して宜しい。」
 
 部外の男性、しかも海軍軍人幹部からこれほどまでの期待をかけられたことは無い。
 サキは敢えて尋ねた。

「失礼ですが、我々紅兵団の内容は殆ど知られていないはずですが、艦長はどうして知っておられるのでしょうか。」
 
 艦長は笑って答えた。

「実は、講和会議の話があってすぐに、海王は沼津の造船所に入って改修工事を行った。
 さほど大きな工事ではない。
 君たち女性を乗せるようにはできていなかったのでそのための改修だ。
 悪いが、君たち三人の部屋は一続きの部屋だ。
 個別に鍵も掛けられるが、出入り口は一つだけ。
 出入り口にはインターホンが設置されているから、男どもが用事のある場合はインターホンで連絡をしてからの話になる。
 万一に備えて、各部屋及び共有の部屋には非常ボタンが設置されている。
 間違っても本番以外では押さないで欲しい。
 艦内全部の男が集まる可能性があるからな。
 但し、今現在は、各個室は鍵が掛けられているが共有の部屋の鍵が開いている。
 君達の荷物を運び入れるためにな。
 宏禎王殿下直々の指示で改装しているから、大概の設備は整っているはずだが、何か問題があれば主計長又は航海長に申し出て欲しい。
 できる範囲で希望に添えるようにしたいと考えている。
 君達の話を聞いたのは宏禎王殿下からだ。
 極秘事項であると言いながら、海王の全乗組員を集めて、紅兵団の役割とその戦果をとうとうと演説していった。
 それに加えて、君達に何かあったら俺が許さんと厳命して言った。
 あれでは、箱入り娘についている頑固親父だ。
 よほど度胸のある奴でなけりゃ、君らには近づかないと思う。
 だが、君達はいいオヤジさんを持ったな。」

「そうですか・・・。
 総帥が先に手を回されて・・・。
 本当にありがたいことだと思っています。
 ですから私達も総帥の命令には素直に従えるんです。」

 脇から吉田茂全権大使が口を挟んだ。

「そういえば、わしも宏禎王殿下から君達の簡単な話だけは聞いておる。
 君ら三人はいずれも英語をネイティブのように話せるということだったが、間違いないかね。」

「正直申し上げて、ネイティブスピーカーと話したことはございませんが、米軍関係の無線電話を傍受したときに特に支障を感じませんでしたし、彼らの発音でしたら十分に真似が出来ると思います。
 一応、英語については20ほどの方言でも会話が可能だと思っています。
 他の二人も同様です。」

「なるほど、他にも色々と外国語を知っていると聞いているが、ドイツ語とフランス語はどうかな。」

「はい、英語と同じで実践では試した事はありませんが、十分に会話は出来ると思います。」

「うむ、事前の情報では米側の全権大使は、エルンシュタインというドイツ系アメリカ人だ。
 彼自身は二世で、ナチスドイツとは縁もゆかりも無い人物だが、出自の縁でドイツの歴史及び文学に詳しいと聞いている。
 また、ハーバードを優秀な成績で卒業した男だから、欧米知識人の常として社交用のフランス語も相応に話せるようだ。
 そういう意味で彼らにコーヒーブレイクで対等に話をするには、西欧史と西欧文学にもある程度精通していると非常に有利な交渉が出来る可能性がある。
 君達はそのような勉強はしているのだろうか。」

「学者のように詳しいかどうかは別として、一応の知識はあると思っています。
 帝大の院生程度の知識と思っていただければ宜しいかと存じます。」

「ほう、そいつは頼もしい。
 ついでに聞くが、政治学の方はどうだね。」

「はい、政治学といっても、体系的なものはないと理解していますが・・・。
 米国政治史、欧州政治事情、英国政治史、地政学、経済政策論、軍事政治論などの著書については原書を含めて40~50冊分の知識はあると思います。」

「ほうほう、それはそれは、・・・。
 君達わしの弟子にならんかい。
 それほどの知識がありながら、軍人などもったいない。」

「失礼ながら、大使。
 大使を含めての3人以外、ここにいるのは全員軍人なのですがなぁ。」

「あ、いや。
 これは失礼をした。
 別に軍人を蔑む意味で言ったわけではないが、何せ、近頃の若い者は勉強嫌いが多くてなぁ。
 これほどの人材がまだおったかと思うと、わしゃあ嬉しくてな。」

 ひとしきりの話が終わるとそれぞれの部屋に下士官が案内した。
 サキ達三人は一緒に案内された。

 聖獣型潜水空母に比べると二回り、三回りほども狭い部屋ではあるが、一人で生活するには十分なスペースが確保されている。
 各個室にバストイレが付いており、ロッカーも十分なスペースが確保されていた。

 共用の部屋には四人掛けのソファとテーブルも置かれ、壁には花柄模様の壁紙やタイルなど非常に綺麗な作りとなっている。
 もしかすると皇族のやんごとなき方々が来られても大丈夫なような改装をしたのかもしれない。

 全権大使の部屋も似たような作りで、四つの部屋が連なり、次官と事務官が居間らしき部屋のドアを隔てた隣室である。
 おそらくは天皇陛下、妃殿下のご家族などが海王に乗艦される場合を想定しての造りかもしれない。

 総帥からは3日ほど前に伝送画像電話により3人揃っての多元中継で講和会議での対応方針についてレクチャを受けたばかりである。
 全権大使もそれなりのレクチャを受けているはずであるが、必ずしも総帥の意向を十分に汲んでいるとは限らない。

 サキたちはその目付け役であり、米側交渉団の懐柔役をも担っている。
 だからあくまで身分は内務事務官兼外務事務官となっている。

 もう一つ報道関係者を束ねる役目を負っている。
 外国人報道関係者についてはサキと洋子が報道官を担当、日本人報道員の本国との連絡橋渡しには美保が担当する事になっている。

 無論、全権大使は吉田茂であり、彼の意向は尊重しなければならない。
 彼の意向が仮に本国の方針に逆らうものであれば、場合によっては身を挺しても止めねばならないと釘を刺されている。

 方法手段はサキ達に任されていた。
 事務次官の長崎一郎は中々の曲者でありそうだ。

 総帥も長崎の力量はわからないという。
 先ほどの会合でも黙ったまま会話を聞いていた。

 事務官の本郷は、つい先ごろまで英国駐在大使館の一等書記官を勤め、それ以前の海外勤務がフランス大使館勤務をしていた男であり、欧州事情には詳しそうだが、北米一課の補佐官勤務が一年あるだけで米国は必ずしも専門分野ではなさそうである。
 ハワイ到着前日の16日、それまで会食しても雑談ばかりしていた吉田茂が代表団全員に夕食後自分の部屋に集まるように指示した。

 果たして、講和会議の作戦会議であった。
 集まった皆に吉田茂がおもむろに言った。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

仮想戦記:蒼穹のレブナント ~ 如何にして空襲を免れるか

サクラ近衛将監
ファンタジー
 レブナントとは、フランス語で「帰る」、「戻る」、「再び来る」という意味のレヴニール(Revenir)に由来し、ここでは「死から戻って来たりし者」のこと。  昭和11年、広島市内で瀬戸物店を営む中年のオヤジが、唐突に転生者の記憶を呼び覚ます。  記憶のひとつは、百年も未来の科学者であり、無謀な者が引き起こした自動車事故により唐突に三十代の半ばで死んだ男の記憶だが、今ひとつは、その未来の男が異世界屈指の錬金術師に転生して百有余年を生きた記憶だった。  二つの記憶は、中年男の中で覚醒し、自分の住む日本が、この町が、空襲に遭って焦土に変わる未来を知っってしまった。  男はその未来を変えるべく立ち上がる。  この物語は、戦前に生きたオヤジが自ら持つ知識と能力を最大限に駆使して、焦土と化す未来を変えようとする物語である。  この物語は飽くまで仮想戦記であり、登場する人物や団体・組織によく似た人物や団体が過去にあったにしても、当該実在の人物もしくは団体とは関りが無いことをご承知おきください。    投稿は不定期ですが、一応毎週火曜日午後8時を予定しており、「アルファポリス」様、「カクヨム」様、「小説を読もう」様に同時投稿します。

リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット
ファンタジー
「君に今の時代に生まれ変わって欲しいんだ」 魔物の王を討伐した古き英雄グレリア・ファルトは死後、突然白い世界に呼び出され、神にそう言われてしまった。 彼は生まれ変わるという言葉に孫の言葉を思い出し、新しい人生を生きることを決意した。 遥か昔に生きていた世界がどう変わっているか、発展しているか期待をしながら700年後の時代に転生した彼を待ち受けていたのは……『英雄召喚』と呼ばれる魔法でやってきた異世界人の手によって破壊され発展した――変貌した世界だった。 歴史すら捻じ曲げられた世界で、グレリアは何を求め、知り……世界を生きるのだろうか? 己の心のままに生き、今を知るために、彼は再び歴史を紡ぐ。 そして……主人公はもう一人――『勇者』、『英雄』の定義すら薄くなった世界でそれらに憧れ、近づきたいと願う少年、セイル・シルドニアは学園での入学試験で一人の男と出会う。 そのことをきっかけにしてセイルは本当の意味で『勇者』というものを考え、『英雄』と呼ばれる存在になるためにもがき、苦しむことになるだろう。 例えどんな困難な道であっても、光が照らす道へと……己の力で進むと誓った、その限りを尽くして。 過去の英雄と現代の英雄(の卵)が交差し、歴史を作る! 異世界転生型アンチ異世界転生ファンタジー、ここに開幕! ――なろう・カクヨムでも連載中――

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

【完結】ここって天国?いいえBLの世界に転生しました

三園 七詩
恋愛
麻衣子はBL大好きの腐りかけのオタク、ある日道路を渡っていた綺麗な猫が車に引かれそうになっているのを助けるために命を落とした。 助けたその猫はなんと神様で麻衣子を望む異世界へと転生してくれると言う…チートでも溺愛でも悪役令嬢でも望むままに…しかし麻衣子にはどれもピンと来ない…どうせならBLの世界でじっくりと生でそれを拝みたい… 神様はそんな麻衣子の願いを叶えてBLの世界へと転生させてくれた! しかもその世界は生前、麻衣子が買ったばかりのゲームの世界にそっくりだった! 攻略対象の兄と弟を持ち、王子の婚約者のマリーとして生まれ変わった。 ゲームの世界なら王子と兄、弟やヒロイン(男)がイチャイチャするはずなのになんかおかしい… 知らず知らずのうちに攻略対象達を虜にしていくマリーだがこの世界はBLと疑わないマリーはそんな思いは露知らず… 注)BLとありますが、BL展開はほぼありません。

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

処理中です...