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第六章 日米の戦いと紅兵団の役割
6-12 日米講和会議 その七
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日本側代表団5名は1800に輸送ヘリに搭乗した。
心配するほどのこともなく無事に海王へ着艦、直ぐに大使の部屋に行ってみる。
吉田大使はぴんぴんしていた。
洋子が聞いた。
「もしかして、アラジキルを使われましたか。」
「ほう、君も知っているかね。
宏禎王殿下に頼んで仮病の薬を手に入れていたんだが。
いやぁ、効いたね。
三時間は前後不覚だった。
気がついたら、医務室の中でね。
軍医には心配を掛けてしまったが、訳を話したら、薬は預かりますと取られてしまったよ。
だから、同じ手は使えない。
ところで、様子はどうかな。」
手短に長崎がこれまでの状況を話した。
「うん、いい所を突いたね。
さすがに御大将の秘蔵っ子だけのことはある。
で、本当に証拠資料はあるの。」
「ありますが、できれば出したくはありません。
出せば、米国の現政権が倒れます。」
「ふうん、だが、どうせ長くは無いんじゃないかな。
ルーズベルトは不治の病だ。
これまで持っているのが不思議なくらいでねぇ。」
「総帥も同じ見方をしています。
もって、来年春頃まで、夏は越せないだろうと。」
「そうかぁ、・・・。
そう言っていたかね。」
「ドイツと戦争中ですから、副大統領がそのまま繰り上がり、任期を全うする事になるだろうとも。
トルーマンは、どのような人物と見ておられますか。」
「どうせ、殿下からも聞いてるんだろう。
まぁ、毒にも薬にもならんだろうが、現政権のバトンタッチだけは出来るだろう。
但し、新たな動きにはつながらんだろうな。
スタッフがそのままでは変わりようがない。
御大将はどう言っていたのかね。」
「多少表現は違いますが、基本政策は変わらないだろうと仰っていました。」
「だろうな。
で、陰謀の気配はどうだね。」
「正直なところを申し上げれば五分五分か、四分六ではずれの可能性もあります。
今日、テロ事件の真相を出した時点で動き出す可能性もあると思っていたのですが、そうはなりませんでした。
あるいは準備時間が必要なのかもしれません。」
「ならば、明日か明後日の可能性もあるということだな。
よし、明日もわしは欠席、回復には向かっているが、念のためもう一日休むと言っておいて欲しい。
22日からは予定通り出ることにする。」
翌21日、予定通りに輸送ヘリでアイナハウ・トライアングルに着陸した。
周囲に不穏な動きは無いが、驚いたのは、多数の観客が警護の外で待ち構えていた事である。
山崎と本郷が降りても何の反応も無かったのに、サキ達三人が続くとワーッと歓声があがった。
ヘリのローターの音が大きいので何を騒いでいるのかはわからない。
ヘリから離れると聞き取れた。
口々に「サキ」、「ヨウコ」、「ミホ」と名前を呼んでいるのである。
良く見ると群集の殆どが若い男性であり、中にはセーラー服を着た軍人もいる。
時ならぬ歓迎を受けてしまった娘三人は理由がわからなかった。
代表団の名前など初日の新聞にも出ていたのを知っているから呼ばれても不思議は無いが、群集に顔見知りはいないし、ヘリに乗り降りするとき以外は、ホテルから出たことも無い三人の顔を知っているわけがないのであり、なんとも妙な感じであった。
ホテルのロビーで顔見知りのホテルマンに声を掛けられ疑問が解けた。
「凄いファンですねぇ。
本土から若手映画スターがホノルルにやって来た時みたいですよ。
尤もその時は女の子が一杯でしたけどね。」
「えっ、何のことなの。
マイク。」
「あぁ、まだ読んでいないんですよね。
今日のNYタイムズを見た連中が集まったんですよ。
きっと、明日はもっと増えるんじゃないかな。」
NYタイムズには、一面の半分を使ってサキと洋子の笑い顔が掲載され、美保の写真も十分に顔がわかるほど大きな写真が載っているのであり、しかも昨日のやり取りが趣向を替えて載せられていた。
【サキはスマートでキュートな娘、洋子は物静かなヴィーナス、美保は東洋の妖精である。
三人揃って『Oriental Yang Witches』】
と紹介されているのである。
【彼女らの微笑みに逢えば誰でもイチコロ】
とさえある。
真面目な記事で知られるNYタイムズにしては思い切った内容であるが、これが若者に受けた。
もっと紹介してくれという電話がタイムズに殺到したのである。
協議が始まっても開口一番エルンシュタインに皮肉を言われた。
「日本側交渉団は、人気がありますね。
私らもその人気に肖れればいいのだが、残念ながら女性は集まってくれそうにも無い。」
サキ達もこの時ばかりは顔を赤らめ下を向いてしまった。
それを眩しそうに見ている米側代表団である。
それでも協議は順調に進んだ。
コーヒーブレイクでは日本の習慣について色々と聞かれたが、出来るだけわかりやすく説明する娘達に好感を持たない者があろう筈も無い。
午後の協議は和やかな雰囲気で進んだのである。
彼女達を起用した宏禎王殿下の作戦勝ちである。
正しく魔法に掛けられた米側交渉団である。
それを、敏感に察知した長崎は、サキ達にある程度の裁量さえも任せている。
ハワイでの会議は3日目であるが順調な滑り出しである。
◇◇◇◇
その頃、ハワイと6時間の時差があるホワイトハウスの一室で密談が行われていた。
講和会議当初の作戦を実行するかしないかの最終決定である。
昨日までは、おそらくは世界一の最新鋭巨大空母である海王を目の前にして、協議5日目に作戦決行の方針が決まりかけていた。
だが、NYタイムズの記事が掲載された事により微妙な変化が生じたのである。
ルーズベルトが静かに尋ねる。
「どうかね、MI6の情報は当てにできるのかな。」
この四月に新たに出来上がった情報統括機関OSIの長官のスチムソンが答えた。
「はい、内務省の人事リストには確かに二人の名前が載っているそうです。
若いサキは2年前から、後の二人は4年前からです。
MI6の局長は信頼できますし、その局長が間違いはないと言っていますので、・・・。
どうやら見込みが外れたかもしれません。
紅兵団が創設されたのは1939年1月で、隊員の募集も同時期に始まっていますが、約7ヶ月を擁して2万人ほどを集めている事は掴めています。
隊員の名簿は一切公表されていないのですが、一方で、日本の陸軍、海軍にはそれぞれ独自に集めた情報としてのリストがあるようです。
が、・・・残念ながら、その入手は不可能です。
隊員の養成期間は4年、その後本人の意思により2年毎の延長が可能なようです。
今年も1月から募集が行われており、1940年からは14歳の少女を対象にしています。
仮に彼女達3名が紅兵団の隊員であるとすれば、39年に募集した娘でも未だ訓練中のはずですし、若いサキは別としても、4年前から内務省のリストにある洋子と美保は完全に除外せざるを得ません。
それに、殆ど軍事知識の無い者を軍人に育て上げるのは1年でも何とか可能でしょうが、外交交渉が出来るほどの者を育て上げるにはもう少しかかるのではと思います。
仮に彼らがそのために育てられた者であるにしても、例の秘密戦隊とは全く別の教育訓練で無ければならず、その意味でも彼女達が秘密戦隊の内情を知っている確率は極めて低いと言わざるを得ません。
ホテルの部屋はわずか一泊だけで出て行きましたが、盗聴に気付いた様子は全く伺えませんし、彼らの会話で気になるようなものもありませんでした。
従って、残念ながら、おそらく彼女達は紅兵団構成員ではないと思われます。」
「すると、当初の作戦の目的の一つは脱落したわけだが、・・・。
例の秘密戦隊についての情報は、交渉団から何か得られそうかね。」
ハル国務長官が答える。
「日本側交渉団には軍人経験者は殆ど居りません。
娘三人については、OSI長官が述べたとおり論外でしょう。
一方で吉田茂は徴兵制度で陸軍に入隊した事はありますが、実戦部隊には配属されておりません。
次席の長崎、随行の本郷も軍隊経験はありません。
生粋の外務省職員です。
従って、彼らがMI6でさえ得られない情報を得る事は無理だろうと思われます。
東郷外相ならば中枢にいますので、あるいは知っている可能性もありますが、事務次官ではどうでしょうか。
私も自分の補佐官に内緒にしている話は幾つもあります。
記者会見でも種々の質問が出ておりますが、公式、非公式にも彼らが知っているという確証は得られていません。」
「残るは、軍人のいる海王だが、・・・。
彼らが知っており、その内容をしゃべる確率はどのぐらいだ。」
キートン参謀長が答える。
「軍人も将官クラスであればかなりの最高機密に接しています。
ですが、艦長クラスは通常大佐であり、必ずしも将官ではありません。
今回は艦隊を指揮しての作戦行動ではありませんので、おそらくは艦長が最高位の軍人でしょう。
その艦長が秘密戦隊の存在やその内容を知っているかどうかは、微妙なところです。
それに、海王についても形は斬新ですが、航空写真の分析で見る限りは、特に新兵器を積んでいるわけではありません。
艦載航空機の輸送ヘリコプターは魅力的ですが武装もしておらず、低速です。
輸送用としては便利ですが、秘密戦隊の秘密兵器としては考えにくい。
格納庫の中身は外からでは判断できません。
正直なところ、未だに我々は姿の見えない敵に怯えている。
だが少なくとも我々の艦艇・航空機が視界に入らない遠距離にいる秘密戦隊から攻撃を受けているのは確かなのです。
海王がトラックにいる間にも秘密戦隊は日付変更線を守護していたのだから、海王そのものが秘密戦隊の秘密兵器である可能性はありません。
遠距離索敵能力に優れ、百発百中の命中率を誇る長距離砲を備えた特殊な戦艦かもしれない。
しかしながら、海王は我々には造れない最新の建艦技術で造られており、それだけでも十分に捕獲を狙う価値があると考えております。」
「それで、仮に、海王の鹵獲作戦を発動したとして、どの程度の確率で可能なのだ。」
「正直なところ取り逃がす事はあり得ないでしょうが、鹵獲前に自沈されると事は厄介です。
ホノルルに近いとは言っても、あの付近で水深千メートル以上はあります。
そこから引揚げる技術を我々は持っていません。
ですから、自沈を防ぎながら鹵獲をするとなると、空挺団による強襲で艦橋を制圧・確保し、同時に艦底にあるであろう爆弾若しくは弾薬庫を確保しなければなりません。
空挺部隊に制圧時間を聞きましたところ、我が軍のヨークタウン等通常の空母の飛行甲板に100人の空挺部隊が降り立ったとして、最短の場合で、艦橋制圧に10分、弾薬庫制圧に20分乃至30分、機関室制圧に30分という話ですが、あくまでこれは図面で予め配置がわかっている場合の想定で、構造が全くわからない場合はその倍程度は間違いなく掛かるという事です。
まして、海王のような巨大な艦の場合は、3倍掛けてもできるかどうかは不明という返事でした。
弾薬庫に自爆装置を積み込んでいる場合は、先ず、自沈を防ぐ方法はありません。
さらには、手榴弾一個でも弾薬庫の適当な場所に投げ込まれれば自爆を防ぐ事は出来ません。
つまりは、自沈を防ぐことは非常に難しいという事です。
もし、どうしてもということならば、サリン等の即効性の毒ガスを船内に散布できれば、かなりの確率で制圧は可能だろうという事です。
それでネバダの陸軍研究所に問い合わせたところ、海王クラスの艦内に散布する致死量の毒ガス量は、効率的に発生液を散布すれば凡そ一トンで済み、無差別に飛行甲板に散布する場合は凡そ10トン程度は必要で、しかも、無風状態が必要と計算されています。
因みに同研究所で保管している量は500キログラムであり、最低量にも満たないことから、期待は出来ませんが、一つの方法としてのみ取り得ます。」
「で、結論として・・・?」
「結論として、やってみなければわからないということであります。」
心配するほどのこともなく無事に海王へ着艦、直ぐに大使の部屋に行ってみる。
吉田大使はぴんぴんしていた。
洋子が聞いた。
「もしかして、アラジキルを使われましたか。」
「ほう、君も知っているかね。
宏禎王殿下に頼んで仮病の薬を手に入れていたんだが。
いやぁ、効いたね。
三時間は前後不覚だった。
気がついたら、医務室の中でね。
軍医には心配を掛けてしまったが、訳を話したら、薬は預かりますと取られてしまったよ。
だから、同じ手は使えない。
ところで、様子はどうかな。」
手短に長崎がこれまでの状況を話した。
「うん、いい所を突いたね。
さすがに御大将の秘蔵っ子だけのことはある。
で、本当に証拠資料はあるの。」
「ありますが、できれば出したくはありません。
出せば、米国の現政権が倒れます。」
「ふうん、だが、どうせ長くは無いんじゃないかな。
ルーズベルトは不治の病だ。
これまで持っているのが不思議なくらいでねぇ。」
「総帥も同じ見方をしています。
もって、来年春頃まで、夏は越せないだろうと。」
「そうかぁ、・・・。
そう言っていたかね。」
「ドイツと戦争中ですから、副大統領がそのまま繰り上がり、任期を全うする事になるだろうとも。
トルーマンは、どのような人物と見ておられますか。」
「どうせ、殿下からも聞いてるんだろう。
まぁ、毒にも薬にもならんだろうが、現政権のバトンタッチだけは出来るだろう。
但し、新たな動きにはつながらんだろうな。
スタッフがそのままでは変わりようがない。
御大将はどう言っていたのかね。」
「多少表現は違いますが、基本政策は変わらないだろうと仰っていました。」
「だろうな。
で、陰謀の気配はどうだね。」
「正直なところを申し上げれば五分五分か、四分六ではずれの可能性もあります。
今日、テロ事件の真相を出した時点で動き出す可能性もあると思っていたのですが、そうはなりませんでした。
あるいは準備時間が必要なのかもしれません。」
「ならば、明日か明後日の可能性もあるということだな。
よし、明日もわしは欠席、回復には向かっているが、念のためもう一日休むと言っておいて欲しい。
22日からは予定通り出ることにする。」
翌21日、予定通りに輸送ヘリでアイナハウ・トライアングルに着陸した。
周囲に不穏な動きは無いが、驚いたのは、多数の観客が警護の外で待ち構えていた事である。
山崎と本郷が降りても何の反応も無かったのに、サキ達三人が続くとワーッと歓声があがった。
ヘリのローターの音が大きいので何を騒いでいるのかはわからない。
ヘリから離れると聞き取れた。
口々に「サキ」、「ヨウコ」、「ミホ」と名前を呼んでいるのである。
良く見ると群集の殆どが若い男性であり、中にはセーラー服を着た軍人もいる。
時ならぬ歓迎を受けてしまった娘三人は理由がわからなかった。
代表団の名前など初日の新聞にも出ていたのを知っているから呼ばれても不思議は無いが、群集に顔見知りはいないし、ヘリに乗り降りするとき以外は、ホテルから出たことも無い三人の顔を知っているわけがないのであり、なんとも妙な感じであった。
ホテルのロビーで顔見知りのホテルマンに声を掛けられ疑問が解けた。
「凄いファンですねぇ。
本土から若手映画スターがホノルルにやって来た時みたいですよ。
尤もその時は女の子が一杯でしたけどね。」
「えっ、何のことなの。
マイク。」
「あぁ、まだ読んでいないんですよね。
今日のNYタイムズを見た連中が集まったんですよ。
きっと、明日はもっと増えるんじゃないかな。」
NYタイムズには、一面の半分を使ってサキと洋子の笑い顔が掲載され、美保の写真も十分に顔がわかるほど大きな写真が載っているのであり、しかも昨日のやり取りが趣向を替えて載せられていた。
【サキはスマートでキュートな娘、洋子は物静かなヴィーナス、美保は東洋の妖精である。
三人揃って『Oriental Yang Witches』】
と紹介されているのである。
【彼女らの微笑みに逢えば誰でもイチコロ】
とさえある。
真面目な記事で知られるNYタイムズにしては思い切った内容であるが、これが若者に受けた。
もっと紹介してくれという電話がタイムズに殺到したのである。
協議が始まっても開口一番エルンシュタインに皮肉を言われた。
「日本側交渉団は、人気がありますね。
私らもその人気に肖れればいいのだが、残念ながら女性は集まってくれそうにも無い。」
サキ達もこの時ばかりは顔を赤らめ下を向いてしまった。
それを眩しそうに見ている米側代表団である。
それでも協議は順調に進んだ。
コーヒーブレイクでは日本の習慣について色々と聞かれたが、出来るだけわかりやすく説明する娘達に好感を持たない者があろう筈も無い。
午後の協議は和やかな雰囲気で進んだのである。
彼女達を起用した宏禎王殿下の作戦勝ちである。
正しく魔法に掛けられた米側交渉団である。
それを、敏感に察知した長崎は、サキ達にある程度の裁量さえも任せている。
ハワイでの会議は3日目であるが順調な滑り出しである。
◇◇◇◇
その頃、ハワイと6時間の時差があるホワイトハウスの一室で密談が行われていた。
講和会議当初の作戦を実行するかしないかの最終決定である。
昨日までは、おそらくは世界一の最新鋭巨大空母である海王を目の前にして、協議5日目に作戦決行の方針が決まりかけていた。
だが、NYタイムズの記事が掲載された事により微妙な変化が生じたのである。
ルーズベルトが静かに尋ねる。
「どうかね、MI6の情報は当てにできるのかな。」
この四月に新たに出来上がった情報統括機関OSIの長官のスチムソンが答えた。
「はい、内務省の人事リストには確かに二人の名前が載っているそうです。
若いサキは2年前から、後の二人は4年前からです。
MI6の局長は信頼できますし、その局長が間違いはないと言っていますので、・・・。
どうやら見込みが外れたかもしれません。
紅兵団が創設されたのは1939年1月で、隊員の募集も同時期に始まっていますが、約7ヶ月を擁して2万人ほどを集めている事は掴めています。
隊員の名簿は一切公表されていないのですが、一方で、日本の陸軍、海軍にはそれぞれ独自に集めた情報としてのリストがあるようです。
が、・・・残念ながら、その入手は不可能です。
隊員の養成期間は4年、その後本人の意思により2年毎の延長が可能なようです。
今年も1月から募集が行われており、1940年からは14歳の少女を対象にしています。
仮に彼女達3名が紅兵団の隊員であるとすれば、39年に募集した娘でも未だ訓練中のはずですし、若いサキは別としても、4年前から内務省のリストにある洋子と美保は完全に除外せざるを得ません。
それに、殆ど軍事知識の無い者を軍人に育て上げるのは1年でも何とか可能でしょうが、外交交渉が出来るほどの者を育て上げるにはもう少しかかるのではと思います。
仮に彼らがそのために育てられた者であるにしても、例の秘密戦隊とは全く別の教育訓練で無ければならず、その意味でも彼女達が秘密戦隊の内情を知っている確率は極めて低いと言わざるを得ません。
ホテルの部屋はわずか一泊だけで出て行きましたが、盗聴に気付いた様子は全く伺えませんし、彼らの会話で気になるようなものもありませんでした。
従って、残念ながら、おそらく彼女達は紅兵団構成員ではないと思われます。」
「すると、当初の作戦の目的の一つは脱落したわけだが、・・・。
例の秘密戦隊についての情報は、交渉団から何か得られそうかね。」
ハル国務長官が答える。
「日本側交渉団には軍人経験者は殆ど居りません。
娘三人については、OSI長官が述べたとおり論外でしょう。
一方で吉田茂は徴兵制度で陸軍に入隊した事はありますが、実戦部隊には配属されておりません。
次席の長崎、随行の本郷も軍隊経験はありません。
生粋の外務省職員です。
従って、彼らがMI6でさえ得られない情報を得る事は無理だろうと思われます。
東郷外相ならば中枢にいますので、あるいは知っている可能性もありますが、事務次官ではどうでしょうか。
私も自分の補佐官に内緒にしている話は幾つもあります。
記者会見でも種々の質問が出ておりますが、公式、非公式にも彼らが知っているという確証は得られていません。」
「残るは、軍人のいる海王だが、・・・。
彼らが知っており、その内容をしゃべる確率はどのぐらいだ。」
キートン参謀長が答える。
「軍人も将官クラスであればかなりの最高機密に接しています。
ですが、艦長クラスは通常大佐であり、必ずしも将官ではありません。
今回は艦隊を指揮しての作戦行動ではありませんので、おそらくは艦長が最高位の軍人でしょう。
その艦長が秘密戦隊の存在やその内容を知っているかどうかは、微妙なところです。
それに、海王についても形は斬新ですが、航空写真の分析で見る限りは、特に新兵器を積んでいるわけではありません。
艦載航空機の輸送ヘリコプターは魅力的ですが武装もしておらず、低速です。
輸送用としては便利ですが、秘密戦隊の秘密兵器としては考えにくい。
格納庫の中身は外からでは判断できません。
正直なところ、未だに我々は姿の見えない敵に怯えている。
だが少なくとも我々の艦艇・航空機が視界に入らない遠距離にいる秘密戦隊から攻撃を受けているのは確かなのです。
海王がトラックにいる間にも秘密戦隊は日付変更線を守護していたのだから、海王そのものが秘密戦隊の秘密兵器である可能性はありません。
遠距離索敵能力に優れ、百発百中の命中率を誇る長距離砲を備えた特殊な戦艦かもしれない。
しかしながら、海王は我々には造れない最新の建艦技術で造られており、それだけでも十分に捕獲を狙う価値があると考えております。」
「それで、仮に、海王の鹵獲作戦を発動したとして、どの程度の確率で可能なのだ。」
「正直なところ取り逃がす事はあり得ないでしょうが、鹵獲前に自沈されると事は厄介です。
ホノルルに近いとは言っても、あの付近で水深千メートル以上はあります。
そこから引揚げる技術を我々は持っていません。
ですから、自沈を防ぎながら鹵獲をするとなると、空挺団による強襲で艦橋を制圧・確保し、同時に艦底にあるであろう爆弾若しくは弾薬庫を確保しなければなりません。
空挺部隊に制圧時間を聞きましたところ、我が軍のヨークタウン等通常の空母の飛行甲板に100人の空挺部隊が降り立ったとして、最短の場合で、艦橋制圧に10分、弾薬庫制圧に20分乃至30分、機関室制圧に30分という話ですが、あくまでこれは図面で予め配置がわかっている場合の想定で、構造が全くわからない場合はその倍程度は間違いなく掛かるという事です。
まして、海王のような巨大な艦の場合は、3倍掛けてもできるかどうかは不明という返事でした。
弾薬庫に自爆装置を積み込んでいる場合は、先ず、自沈を防ぐ方法はありません。
さらには、手榴弾一個でも弾薬庫の適当な場所に投げ込まれれば自爆を防ぐ事は出来ません。
つまりは、自沈を防ぐことは非常に難しいという事です。
もし、どうしてもということならば、サリン等の即効性の毒ガスを船内に散布できれば、かなりの確率で制圧は可能だろうという事です。
それでネバダの陸軍研究所に問い合わせたところ、海王クラスの艦内に散布する致死量の毒ガス量は、効率的に発生液を散布すれば凡そ一トンで済み、無差別に飛行甲板に散布する場合は凡そ10トン程度は必要で、しかも、無風状態が必要と計算されています。
因みに同研究所で保管している量は500キログラムであり、最低量にも満たないことから、期待は出来ませんが、一つの方法としてのみ取り得ます。」
「で、結論として・・・?」
「結論として、やってみなければわからないということであります。」
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現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~
はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。
病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。
これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。
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おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。
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