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第六章 日米の戦いと紅兵団の役割
6ー14 日米講和会議 その八
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「時間がありすぎるが、どこか時間つぶしの場所はないのかね。」
吉田はそう尋ねた。
エルンシュタインは少し考えてから言った。
「今から根回しをしますので少々ここで待っていただきたい。
可能ならば、真珠湾をお見せしたいが、如何でしょうか。」
「ほう、こちらには依存はないが、・・・。
敵国に知られては困る場所ではないのかな。」
「ええ、其の通りです。
ですが、講和を結べば敵国ではないでしょう。
但し、海軍さんですから、色々制限はつくかも知れませんし、そもそも許可が降りるかどうかは判りません。」
「わかった。
ここでずっと待つよりは見物する方がよっぽどいい。
君らはどうする。」
吉田は他の5名に聞いた。
「全権大使をお一人で行かせたら、東京に帰ったときに叱られます。
出来たら我々もご一緒に。」
長崎も英語で答えた。
「ということだ。
全員が行けるかね。」
エルンシュタインはゆっくりと頷いた
「まあ、やってみましょう。」
1時間後、日本側交渉団は揃って海軍が差し向けた車に分乗していた。
運転手を除いて、男女一組ずつが乗る三台の車の周囲には、6台のパトカーとオートバイ3台がついている。
サキは吉田と一緒であり、エルンシュタインが助手席に座っていた。
真珠湾の太平洋艦隊司令部に到着したのは、午前11時頃であったが、どこで聞きつけたのか、ここでも若い水兵が笑顔で「サキ」と気軽に声を掛けてくる。
戦争はまだ終わっていないのにどこまでも陽気な男達である。
最初に司令長官室に案内され、キング長官他の面々と挨拶をする。
其の後、サムという名の海軍中尉が案内役について、ジープで真珠湾の中を案内された。
一通りの案内が終わると、中尉が将校食堂でランチを食べて行きませんかと誘ってくれた。
吉田もさる物で、ではご馳走になろうと言ってついてゆく。
これには長崎たちも呆れたが、止むを得ない。
ジープが将校食堂の前に止まるなり、目ざとい者が窓際から奇声を上げた。
「わおーっ、オリエンタル・ウィッチだぁ。」
途端に窓からいくつもの顔が飛び出す。
案内してきた将校が大声を出した。
「諸君、静かに。
レディの前で、はしたない真似はするな。
我々は誇りある海軍将校だ。
少なくともレディに相応しいジェントルマンとして振舞おうではないか。
我々のランチに如何かというご招待に応じてくれたレディ他一行の方々に敬礼。」
全員が窓越しに敬礼をする。
中にはフォークを持ったまま敬礼しているものもいた。
思わず吹き出したサキ達にまたまた歓声があがる。
食堂の中は広い。
将校の後について、6人が入ってゆくと、キッチンの前に列を作って並んでいたものさえ一斉に道を開けてくれる。
「ここは、セルフサービスです。
好きなものを好きなだけ食べてください。
ここにいる全ての者の奢りです。
本当は、レディだけへの特別サービスですが、他の方にもおまけします。」
このブラックジョークを直ぐに切り替えしたのは大使であった。
「おまけで結構。
だが、わしの機嫌を取っておかんと、娘達に君達が話しかけようとしてもわしが許さんぞ。
わしはこの娘達の保護者で、頑固親父だ。
君らが話をしたいのは誰だぁ?
スマート&キュートのサキか?
それともサイレント・ヴィーナスの洋子か?
それとも、それともオリエンタル・フェアリーの美保か?
誰が誰に話をしてもいいかはわしが決める。
何しろわしは全権大使だからな。」
一瞬、静まり返ってから、爆笑が続いた。
「OK、ボス。
あんたが大将だ。」
将校がまぜっかえした。
しかしながら、とても皆で固まって食事と言う雰囲気ではなかった。
吉田が采配を振るった。
「サキはあっちの席、洋子はそちら、美保はこっちだな。
さあ、座れ。」
苦笑しながら、サキ達が座る。
「いいか、皆、取り合いはするな。
ちゃんと三人に食事はさせろ。
それから、手も身体も触れちゃいかん。
話だけだ。
もし違反者がいたら、皆で海へ放り込め。
判ったな。
ウン、・・。
だがまだ待てよ。
おい、サム中尉だったか。
君は誰と話したい。
君に最初の優先権を与える。
但し、一人3分間だけだ。」
「ウーン、迷っちゃうなぁ。
じゃぁ、サキにお願いします。」
「よし、後は、レディが集まったものの中から順番を決める。
よし皆わかれ。」
数十人が一斉に分かれて三つのテーブルに黒山が出来た。
「ちょっと待って、食事を用意するから・・・・。」
サキがそう言うと、周りに群がる者は、時間が勿体無いからそのまま話をしてくれ、俺達が持ってくると言う。
忽ちのうちにサキの前にとても食べきれない量の料理が現れた。
「わぁ、こんなに沢山はとても食べられないわ。
OK、サム。
食べながらで申し訳ないけれど、何を話したい。」
目の前のサムに話しかける。
「よし、今から三分だな。
結婚してる?」
「ノー。」
「年は?」
「22歳。」
実は、18歳だが、米政府に提出している履歴上はそうなっていた。
「フィアンセはいる?」
「ノー。」
「好きな男のタイプは?」
「ウーン、健康的で、知的で、ウィットがあって、私を大事にしてくれる人かな。」
「ハワイでデートする時間はない?」
「ノー。」
「僕に聞きたいことない?」
「何時結婚したの?」
「え?
どうしてわかったの。」
「指輪嵌めてたじゃない。
さっき外したところ見たもの。
子供さんは?」
「まだだよ。」
「奥さんを愛してる?」
「イエス。」
「じゃ、わき見しちゃ駄目。
他の人に代わって頂戴。
次は、貴方ね。」
こんな風にして45分があっという間に過ぎた。
佐官クラスの将校もこの食堂には来るのだが、この時ならぬパーティを大目に見ていた。
彼らもオリエンタル・ウィッチの噂を聞いていたからである。
最後も吉田が締めた。
「よおし、諸君、娘達は仕事に戻らねばならぬ。
悪いが、次の機会にしてくれ。
機会がもしなかったら、自分で日本まで来る事。
運がよければ会える。
縁が無ければ会えないだろうな。」
誰かが叫んだ。
「ボス、其のときは、最初にあんたのところへ許可を貰いに行くよ。」
「おう、そうしてくれ。
じゃ、またな。」
少々泥臭いが吉田のパーソナリティなのであろう。
代表団一行が再びホテルに戻ったのは午後1時頃であった。
予定よりも少々遅れて、午後2時半に姿を現したヒル国務長官は、会議場へ直行した。
吉田全権大使と挨拶し、握手を交わしたヒル国務長官は、続いて日本側代表団全員とも順次挨拶を交わし席についた。
それから、エルンシュタインが昨日に引き続き、協定文書の案文検討を開始しようとするとそれを制止した。
「吉田さん。
ここはフランクに行きましょう。
日本側の講和条件をお聞きしたいが、・・・。」
いきなり、切り出したヒルに対して、吉田も切り替えした。
「ほう、日本側の条件からですか。
米側の譲歩が何処までのものなのか知らないが、・・・。
では申し上げましょう。
ハワイまで貰いたい。
・・・・。
そこまで言っても良いくらいと、私個人は思っているのだが、・・・。
日本政府は寛容でしてな。
残念ながら、そこまで強欲ではない。
一つ目は、戦前、日付変更線以西の太平洋海域にあった米領及び米国信託統治領を頂きたい。
二つ目に、貴国との国交回復並びに通商航海条約の早期締結。
なお通商航海条約には最恵国待遇を新たに追加する事。
三つ目に、米国が凍結した米国内若しくはその他の第三国にある日本人及び日本法人資産の凍結解除。
四つ目は、賠償金。
これは双方共に要求しない。
但し、日系人に対する補償は米国政府の義務としてやってもらいたいが、敢えて拘束条件とはしない。
五つ目に、相互安全保障条約の締結推進。
六つ目に、国際航空路線の開設、これは東京湾国際空港からホノルル、サンフランシスコ、シアトル、デンバー、シカゴ、ニューヨークへの直行便及び以遠権を含むものである。
七つ目に、我が国がドイツとの参戦に踏み切った場合、米国東部若しくはカリブ海における貴国海軍基地若しくは陸軍基地での補給支援。
さらに欧州戦線域における補給支援。
日本側が望む講和条件の骨子は以上である。
貴国の条件及び譲歩限界を伺いましょう。」
明らかにヒルは安堵の顔色を浮かべた。
「寛大なる配慮恐れ入る。
日本側提案は、我が国の譲歩限界に全て入るものと考えている。
我が国の条件は特に無いが、個人的には先日貴国代表団から指摘のあった中国国内でのテロに関する情報一切を今後50年は公開しないで欲しい。」
「委細承知。」
「これで問題の殆どは解決したと思うが、一つ確認をしておきたい。
貴国との相互安全保障条約なるものは、所謂軍事同盟を意味するものと考えているが、念のため何処までのものを考えておられるのか一応お聞きしておきたい。
また、ドイツとの交戦意思はかなり具体的なものかどうか。」
「相互安全保障条約は、締結国の一方が他国に侵略を受けた場合、他の締結国は当該侵略を受けた締約国を助けるために軍事行動を起こすべき事を義務付けるものである。
その場合、締約国は他の締約国に対して相互的に支援を行う義務がある。
一方で他国からの侵略ではなく、一方の締約国の事情により第三国との交戦を行う場合は、他の締約国に必ずしも軍事行動及び支援の義務を負わせるものではない。
日本側の考えている骨子は以上のとおりである。
今ひとつの質問であるドイツとの交戦については、来年4月に防共協定の効果がなくなることからその際にあらためて検討することになるが、前提として英国との協定又は条約が必要になると考えている。
従って、このことは協定に付随する秘密協定として公表はしない。」
「了解した。
これで私の役目はほぼ終了したも同然。
吉田さん、後は若い者に任せてもいいのではないですかな。
日本側には優秀なスタッフも揃っているようだ。
明日はゴルフにでも行きませんか。」
「おお、それはいいですな。
私も三日ほど寝てばかりでしたので、是非お願いしたい。
長崎君、任せてよいかな?」
長崎の立場では悪いとも言えない。
「わかりました。
我々にお任せ下さい。
但し、通商航海条約草案と相互安全保障条約草案については一応米国側にお渡しし、事前に検討してもらうことで宜しいでしょうか。
なお、本日の記者会見でも、その案文を公表するつもりでいます。」
「其の件も含めて任せる。」
吉田はそう尋ねた。
エルンシュタインは少し考えてから言った。
「今から根回しをしますので少々ここで待っていただきたい。
可能ならば、真珠湾をお見せしたいが、如何でしょうか。」
「ほう、こちらには依存はないが、・・・。
敵国に知られては困る場所ではないのかな。」
「ええ、其の通りです。
ですが、講和を結べば敵国ではないでしょう。
但し、海軍さんですから、色々制限はつくかも知れませんし、そもそも許可が降りるかどうかは判りません。」
「わかった。
ここでずっと待つよりは見物する方がよっぽどいい。
君らはどうする。」
吉田は他の5名に聞いた。
「全権大使をお一人で行かせたら、東京に帰ったときに叱られます。
出来たら我々もご一緒に。」
長崎も英語で答えた。
「ということだ。
全員が行けるかね。」
エルンシュタインはゆっくりと頷いた
「まあ、やってみましょう。」
1時間後、日本側交渉団は揃って海軍が差し向けた車に分乗していた。
運転手を除いて、男女一組ずつが乗る三台の車の周囲には、6台のパトカーとオートバイ3台がついている。
サキは吉田と一緒であり、エルンシュタインが助手席に座っていた。
真珠湾の太平洋艦隊司令部に到着したのは、午前11時頃であったが、どこで聞きつけたのか、ここでも若い水兵が笑顔で「サキ」と気軽に声を掛けてくる。
戦争はまだ終わっていないのにどこまでも陽気な男達である。
最初に司令長官室に案内され、キング長官他の面々と挨拶をする。
其の後、サムという名の海軍中尉が案内役について、ジープで真珠湾の中を案内された。
一通りの案内が終わると、中尉が将校食堂でランチを食べて行きませんかと誘ってくれた。
吉田もさる物で、ではご馳走になろうと言ってついてゆく。
これには長崎たちも呆れたが、止むを得ない。
ジープが将校食堂の前に止まるなり、目ざとい者が窓際から奇声を上げた。
「わおーっ、オリエンタル・ウィッチだぁ。」
途端に窓からいくつもの顔が飛び出す。
案内してきた将校が大声を出した。
「諸君、静かに。
レディの前で、はしたない真似はするな。
我々は誇りある海軍将校だ。
少なくともレディに相応しいジェントルマンとして振舞おうではないか。
我々のランチに如何かというご招待に応じてくれたレディ他一行の方々に敬礼。」
全員が窓越しに敬礼をする。
中にはフォークを持ったまま敬礼しているものもいた。
思わず吹き出したサキ達にまたまた歓声があがる。
食堂の中は広い。
将校の後について、6人が入ってゆくと、キッチンの前に列を作って並んでいたものさえ一斉に道を開けてくれる。
「ここは、セルフサービスです。
好きなものを好きなだけ食べてください。
ここにいる全ての者の奢りです。
本当は、レディだけへの特別サービスですが、他の方にもおまけします。」
このブラックジョークを直ぐに切り替えしたのは大使であった。
「おまけで結構。
だが、わしの機嫌を取っておかんと、娘達に君達が話しかけようとしてもわしが許さんぞ。
わしはこの娘達の保護者で、頑固親父だ。
君らが話をしたいのは誰だぁ?
スマート&キュートのサキか?
それともサイレント・ヴィーナスの洋子か?
それとも、それともオリエンタル・フェアリーの美保か?
誰が誰に話をしてもいいかはわしが決める。
何しろわしは全権大使だからな。」
一瞬、静まり返ってから、爆笑が続いた。
「OK、ボス。
あんたが大将だ。」
将校がまぜっかえした。
しかしながら、とても皆で固まって食事と言う雰囲気ではなかった。
吉田が采配を振るった。
「サキはあっちの席、洋子はそちら、美保はこっちだな。
さあ、座れ。」
苦笑しながら、サキ達が座る。
「いいか、皆、取り合いはするな。
ちゃんと三人に食事はさせろ。
それから、手も身体も触れちゃいかん。
話だけだ。
もし違反者がいたら、皆で海へ放り込め。
判ったな。
ウン、・・。
だがまだ待てよ。
おい、サム中尉だったか。
君は誰と話したい。
君に最初の優先権を与える。
但し、一人3分間だけだ。」
「ウーン、迷っちゃうなぁ。
じゃぁ、サキにお願いします。」
「よし、後は、レディが集まったものの中から順番を決める。
よし皆わかれ。」
数十人が一斉に分かれて三つのテーブルに黒山が出来た。
「ちょっと待って、食事を用意するから・・・・。」
サキがそう言うと、周りに群がる者は、時間が勿体無いからそのまま話をしてくれ、俺達が持ってくると言う。
忽ちのうちにサキの前にとても食べきれない量の料理が現れた。
「わぁ、こんなに沢山はとても食べられないわ。
OK、サム。
食べながらで申し訳ないけれど、何を話したい。」
目の前のサムに話しかける。
「よし、今から三分だな。
結婚してる?」
「ノー。」
「年は?」
「22歳。」
実は、18歳だが、米政府に提出している履歴上はそうなっていた。
「フィアンセはいる?」
「ノー。」
「好きな男のタイプは?」
「ウーン、健康的で、知的で、ウィットがあって、私を大事にしてくれる人かな。」
「ハワイでデートする時間はない?」
「ノー。」
「僕に聞きたいことない?」
「何時結婚したの?」
「え?
どうしてわかったの。」
「指輪嵌めてたじゃない。
さっき外したところ見たもの。
子供さんは?」
「まだだよ。」
「奥さんを愛してる?」
「イエス。」
「じゃ、わき見しちゃ駄目。
他の人に代わって頂戴。
次は、貴方ね。」
こんな風にして45分があっという間に過ぎた。
佐官クラスの将校もこの食堂には来るのだが、この時ならぬパーティを大目に見ていた。
彼らもオリエンタル・ウィッチの噂を聞いていたからである。
最後も吉田が締めた。
「よおし、諸君、娘達は仕事に戻らねばならぬ。
悪いが、次の機会にしてくれ。
機会がもしなかったら、自分で日本まで来る事。
運がよければ会える。
縁が無ければ会えないだろうな。」
誰かが叫んだ。
「ボス、其のときは、最初にあんたのところへ許可を貰いに行くよ。」
「おう、そうしてくれ。
じゃ、またな。」
少々泥臭いが吉田のパーソナリティなのであろう。
代表団一行が再びホテルに戻ったのは午後1時頃であった。
予定よりも少々遅れて、午後2時半に姿を現したヒル国務長官は、会議場へ直行した。
吉田全権大使と挨拶し、握手を交わしたヒル国務長官は、続いて日本側代表団全員とも順次挨拶を交わし席についた。
それから、エルンシュタインが昨日に引き続き、協定文書の案文検討を開始しようとするとそれを制止した。
「吉田さん。
ここはフランクに行きましょう。
日本側の講和条件をお聞きしたいが、・・・。」
いきなり、切り出したヒルに対して、吉田も切り替えした。
「ほう、日本側の条件からですか。
米側の譲歩が何処までのものなのか知らないが、・・・。
では申し上げましょう。
ハワイまで貰いたい。
・・・・。
そこまで言っても良いくらいと、私個人は思っているのだが、・・・。
日本政府は寛容でしてな。
残念ながら、そこまで強欲ではない。
一つ目は、戦前、日付変更線以西の太平洋海域にあった米領及び米国信託統治領を頂きたい。
二つ目に、貴国との国交回復並びに通商航海条約の早期締結。
なお通商航海条約には最恵国待遇を新たに追加する事。
三つ目に、米国が凍結した米国内若しくはその他の第三国にある日本人及び日本法人資産の凍結解除。
四つ目は、賠償金。
これは双方共に要求しない。
但し、日系人に対する補償は米国政府の義務としてやってもらいたいが、敢えて拘束条件とはしない。
五つ目に、相互安全保障条約の締結推進。
六つ目に、国際航空路線の開設、これは東京湾国際空港からホノルル、サンフランシスコ、シアトル、デンバー、シカゴ、ニューヨークへの直行便及び以遠権を含むものである。
七つ目に、我が国がドイツとの参戦に踏み切った場合、米国東部若しくはカリブ海における貴国海軍基地若しくは陸軍基地での補給支援。
さらに欧州戦線域における補給支援。
日本側が望む講和条件の骨子は以上である。
貴国の条件及び譲歩限界を伺いましょう。」
明らかにヒルは安堵の顔色を浮かべた。
「寛大なる配慮恐れ入る。
日本側提案は、我が国の譲歩限界に全て入るものと考えている。
我が国の条件は特に無いが、個人的には先日貴国代表団から指摘のあった中国国内でのテロに関する情報一切を今後50年は公開しないで欲しい。」
「委細承知。」
「これで問題の殆どは解決したと思うが、一つ確認をしておきたい。
貴国との相互安全保障条約なるものは、所謂軍事同盟を意味するものと考えているが、念のため何処までのものを考えておられるのか一応お聞きしておきたい。
また、ドイツとの交戦意思はかなり具体的なものかどうか。」
「相互安全保障条約は、締結国の一方が他国に侵略を受けた場合、他の締結国は当該侵略を受けた締約国を助けるために軍事行動を起こすべき事を義務付けるものである。
その場合、締約国は他の締約国に対して相互的に支援を行う義務がある。
一方で他国からの侵略ではなく、一方の締約国の事情により第三国との交戦を行う場合は、他の締約国に必ずしも軍事行動及び支援の義務を負わせるものではない。
日本側の考えている骨子は以上のとおりである。
今ひとつの質問であるドイツとの交戦については、来年4月に防共協定の効果がなくなることからその際にあらためて検討することになるが、前提として英国との協定又は条約が必要になると考えている。
従って、このことは協定に付随する秘密協定として公表はしない。」
「了解した。
これで私の役目はほぼ終了したも同然。
吉田さん、後は若い者に任せてもいいのではないですかな。
日本側には優秀なスタッフも揃っているようだ。
明日はゴルフにでも行きませんか。」
「おお、それはいいですな。
私も三日ほど寝てばかりでしたので、是非お願いしたい。
長崎君、任せてよいかな?」
長崎の立場では悪いとも言えない。
「わかりました。
我々にお任せ下さい。
但し、通商航海条約草案と相互安全保障条約草案については一応米国側にお渡しし、事前に検討してもらうことで宜しいでしょうか。
なお、本日の記者会見でも、その案文を公表するつもりでいます。」
「其の件も含めて任せる。」
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