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第六章 日米の戦いと紅兵団の役割
6-15 日米講和会議 その九
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ヒルと吉田は二人で会議室を出て行った。
残された日米協議団は、お互いに下っ端は辛いねと苦笑いをしながら協議を始めた。
最初に協議方針が変わった。
当初米国側が提出した案文は議定書の前文に関わるものであったが、逆に結論が固まっているのであれば、前文にこだわる必要など無い。
むしろ、結果に合わせて作成する事が必要である。
そのために、日本が予め作成していた案文を元に、協議を始めたのである。
結果としては幾つかの簡易な修文は有ったが、大筋で合意がなされたのである。
残りは議定書になる日本側案文の協議であるが、次の日に持ち越されることになった。
時間が17時近くになっていたからである。
日本側案文と共に日米通商航海条約の事実上の改定草案、日米相互安全条約草案の草稿が米国側に渡された。
無論、議定書以外の案文は別の協議の場で審議される事になる。
その日の記者会見は少々長くなった。
最初の会議内容の披露が長くなった事と、質疑も余分の時間を取ったためである。
大筋の合意が得られた内容についての踏み込んだ質問と、二つの草案に対する質問である。
最後の質問で、協議の最終的見込みはどうですかと尋ねられ、サキがコメントした。
「報道関係者の皆様のおかげで、ここまでの協議が実にスムーズに行えたと思います。
本当に有難うございます。
日米両国のためにもお互いに納得のできる結果が生れるものと信じておりますが、今後とも皆様のご協力をいただければ幸いと存じております。
それから、NYタイムズのMr.ディックはいらっしゃいますか。」
大柄な男が手を上げた。
「Mr.ディック、昨日の貴方の記事を拝見させていただきました。
非常に素晴らしい記事でしたが、ほめられ過ぎで、とても私どもに関する記事とは思われませんでした。
でも、お陰で私ども三人は日本人よりもアメリカ人に良く知られた日本人になったと思います。
決して私達が予期したことではありませんが、米国の次の時代を担う若者達が私達を通じて少しでも日本の若者を知っていただけたらいいなと思っております。
貴方の記事は、そのような意味で、きっと日米の未来を変えたと思います。
本当に有難うございました。
この場を借りて厚く御礼を申し上げます。」
サキと洋子は同時に立って、丁寧にお辞儀をした。
息がぴったりと合っており、しかも、そのお辞儀の仕草が余りにも華麗にみえたので、翌日の記事には、ロイヤル・ツイン・バウと紹介された。
だが、礼を言われたディック当人も本当に米国の現政府を救ったのだとは夢にも思っていなかった。
仮に、米艦隊が海王の捕獲で動けば、いみじくも国務長官の指摘した通り、太平洋艦隊は即座に消滅していただろうし、現政府は明らかに失脚していただろう。
なおかつ、最悪の場合は米国という国そのものが無くなっていたかもしれない。
国際的な信義則を破る者を宏禎王は許さないからであり、紅兵団に対しては万が一の場合の想定として米国東岸の攻撃及びワシントンの空爆を指示していたのである。
その場合、宏禎王は、米国政府に無条件降伏以外の道を与えるつもりは無かった。
その時点では、抵抗する者があれば如何なる存在であっても粉砕する覚悟であり、後世において虐殺王と呼ばれる覚悟はできていた。
ハル国務長官が、あわやの時にかろうじてその可能性に気付いたのはディックの記事のお陰であったのである。
全ての協議を終了し、二人の全権大使が署名調印したのは10月26日のことである。
ハワイ全島が一つの戦争の終結を祝ったが、欧州での戦闘が続いている事から、大仰な式典は開催されなかった。
其の日の夕刻、ホノルル在住の日系人会が慰労を兼ねてパーティを開いてくれた。
代表団一行は、今回の日米戦争で亡くなった多くの米国軍人を弔うために真珠湾の海軍基地内に慰霊碑を建立、27日に除幕式を行った。
海王に予め用意してあったものを速乾性のシリカゲル系樹脂の台座に据えつけたものである。
慰霊碑は、長さ5m、幅が3m、最大高さが3.5mの大きさをもち、針の山をも思わせる無数の細長い透明な六角柱クリスタルで出来たオブジェであり、南の島の陽光に照り映えて無数の虹色に輝いている。
三人の娘たちが着物姿で慰霊碑に花輪を献上する姿が、平和の象徴として各新聞の一面を賑わした。
同日、ハレクラニホテルで日本側主催のパーティを開催、多くの人達と懇親を深めた。
同パーティには、空母海王の主計科職員が腕によりを掛けて作った日本料理の数々が沖から空輸されて、テーブルに並べられ招待客の絶賛をあびた。
1941年(昭和16年)10月28日、足掛け10日間のハワイ駐在であったが、午前9時海軍儀杖兵の13発の礼砲に送られて一行はハワイを後にした。
残された日米協議団は、お互いに下っ端は辛いねと苦笑いをしながら協議を始めた。
最初に協議方針が変わった。
当初米国側が提出した案文は議定書の前文に関わるものであったが、逆に結論が固まっているのであれば、前文にこだわる必要など無い。
むしろ、結果に合わせて作成する事が必要である。
そのために、日本が予め作成していた案文を元に、協議を始めたのである。
結果としては幾つかの簡易な修文は有ったが、大筋で合意がなされたのである。
残りは議定書になる日本側案文の協議であるが、次の日に持ち越されることになった。
時間が17時近くになっていたからである。
日本側案文と共に日米通商航海条約の事実上の改定草案、日米相互安全条約草案の草稿が米国側に渡された。
無論、議定書以外の案文は別の協議の場で審議される事になる。
その日の記者会見は少々長くなった。
最初の会議内容の披露が長くなった事と、質疑も余分の時間を取ったためである。
大筋の合意が得られた内容についての踏み込んだ質問と、二つの草案に対する質問である。
最後の質問で、協議の最終的見込みはどうですかと尋ねられ、サキがコメントした。
「報道関係者の皆様のおかげで、ここまでの協議が実にスムーズに行えたと思います。
本当に有難うございます。
日米両国のためにもお互いに納得のできる結果が生れるものと信じておりますが、今後とも皆様のご協力をいただければ幸いと存じております。
それから、NYタイムズのMr.ディックはいらっしゃいますか。」
大柄な男が手を上げた。
「Mr.ディック、昨日の貴方の記事を拝見させていただきました。
非常に素晴らしい記事でしたが、ほめられ過ぎで、とても私どもに関する記事とは思われませんでした。
でも、お陰で私ども三人は日本人よりもアメリカ人に良く知られた日本人になったと思います。
決して私達が予期したことではありませんが、米国の次の時代を担う若者達が私達を通じて少しでも日本の若者を知っていただけたらいいなと思っております。
貴方の記事は、そのような意味で、きっと日米の未来を変えたと思います。
本当に有難うございました。
この場を借りて厚く御礼を申し上げます。」
サキと洋子は同時に立って、丁寧にお辞儀をした。
息がぴったりと合っており、しかも、そのお辞儀の仕草が余りにも華麗にみえたので、翌日の記事には、ロイヤル・ツイン・バウと紹介された。
だが、礼を言われたディック当人も本当に米国の現政府を救ったのだとは夢にも思っていなかった。
仮に、米艦隊が海王の捕獲で動けば、いみじくも国務長官の指摘した通り、太平洋艦隊は即座に消滅していただろうし、現政府は明らかに失脚していただろう。
なおかつ、最悪の場合は米国という国そのものが無くなっていたかもしれない。
国際的な信義則を破る者を宏禎王は許さないからであり、紅兵団に対しては万が一の場合の想定として米国東岸の攻撃及びワシントンの空爆を指示していたのである。
その場合、宏禎王は、米国政府に無条件降伏以外の道を与えるつもりは無かった。
その時点では、抵抗する者があれば如何なる存在であっても粉砕する覚悟であり、後世において虐殺王と呼ばれる覚悟はできていた。
ハル国務長官が、あわやの時にかろうじてその可能性に気付いたのはディックの記事のお陰であったのである。
全ての協議を終了し、二人の全権大使が署名調印したのは10月26日のことである。
ハワイ全島が一つの戦争の終結を祝ったが、欧州での戦闘が続いている事から、大仰な式典は開催されなかった。
其の日の夕刻、ホノルル在住の日系人会が慰労を兼ねてパーティを開いてくれた。
代表団一行は、今回の日米戦争で亡くなった多くの米国軍人を弔うために真珠湾の海軍基地内に慰霊碑を建立、27日に除幕式を行った。
海王に予め用意してあったものを速乾性のシリカゲル系樹脂の台座に据えつけたものである。
慰霊碑は、長さ5m、幅が3m、最大高さが3.5mの大きさをもち、針の山をも思わせる無数の細長い透明な六角柱クリスタルで出来たオブジェであり、南の島の陽光に照り映えて無数の虹色に輝いている。
三人の娘たちが着物姿で慰霊碑に花輪を献上する姿が、平和の象徴として各新聞の一面を賑わした。
同日、ハレクラニホテルで日本側主催のパーティを開催、多くの人達と懇親を深めた。
同パーティには、空母海王の主計科職員が腕によりを掛けて作った日本料理の数々が沖から空輸されて、テーブルに並べられ招待客の絶賛をあびた。
1941年(昭和16年)10月28日、足掛け10日間のハワイ駐在であったが、午前9時海軍儀杖兵の13発の礼砲に送られて一行はハワイを後にした。
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