親王様は元大魔法師~明治の宮様に転生した男の物語~戦は避けられるのか?

サクラ近衛将監

文字の大きさ
99 / 112
第七章 英国との交渉

7-7 女王との密談 その二

しおりを挟む
「多分、米国とドイツが世界に先んじて研究開発しているはずの画期的な爆弾です。
 この爆弾1発で小規模の都市が壊滅します。
 もし、この技術がソ連の手に渡るならば、次期大戦は、ロケット兵器にこの新型爆弾が搭載され、互いの国を叩き合う形になりましょう。
 しかも、この爆弾は従来の火薬を用いた爆弾と異なり、人体に有害な放射線を発する放射性物質を大量に生産します。
 放射線を大量に浴びると人は苦しみながら死に至ります。
 死に至らないほどの放射線を浴びた人は内臓器官に障害を発生し、長い間痛みに苛まれながら通常よりも短い生涯を終えることになるでしょう。
 また正常な遺伝子を傷つけ子孫に大きな影響を与えることも危惧されています。
 米国がそうした兵器を開発すること自体にも問題があると考えていますが、自己保身のために同胞あるいは政治的に有力な同志を多数粛清しているスターリンが持つことは世界平和にとって大きな脅威となります。
 これも日本が許すことの出来ない状況です。
 従って、できるだけ早い時期にドイツを降伏に至らしめ、ソ連の手に落ちないようにする事が必要なのです。
 しかしながら、我が国は、ドイツに宣戦布告する理由を持ちません。
 無理な理由をこじつける事は、中国侵攻と同じ結果を生む事にもなり、後世に憂いを残します。
 戦争は本来避けるべきものです。
 止むを得ず戦争に訴える場合も自ら進んで戦争を仕掛けるべきでは有りません。
 多くの人命が失われることにどのような理屈をつけても正義は無いのです。
 我が国は、強大な米国を子供扱いするほどに大きな戦力を保有しています。
 だからこそ、政治家や一部の軍閥の恣意によって戦争を始めてはならないのです。
 英国との同盟を締結する事により、戦争の理屈の一部が一応は成り立つと考えております。
 我が国は、ユダヤ人と同様に、ドイツ人も英国人もその命を大切にしたいと考えております。
 人種、民族、宗教、出自によって人は差別されるべきではありません。
 英国は、海外に多くの植民地や信託委任統治領を持っています。
 多くの場合、英国とは全く異なる法律を以て、現地の人々を虐げ、其の利益を英国に吸い上げています。
 ですが、未開人だから、人種が異なるから差別しても良いと言う事にはなりません。
 英国がその多くの海外領土や植民地で英国と全く同じ法律を適用し、人種、民族、宗教、出自、学歴などの差別無しに現地の人々を受け入れるならば、我が国は英国を理性ある国家として認め、同盟をいたしたいと考えていますが、現状のままの植民地を維持し、暴利をむさぼるならば英国も英国以外の人々を苦しめるナチスドイツと何ら変わりが無いと考えています。
 欧州では多くの場合、英国人が紳士・淑女と認められていますが、多くのアジア人、アフリカ人にとっては搾取するだけの酷い主人なのです。
 では力や富があれば我が国も同じように英国を或いは英国人を虐げてもいいのでしょうか?
もし、それが許されることでないとするならば、日本人に認められず、英国人に認められるのは何故でしょうか?」

 唐突に英国の植民地政策を批判されて、女王は戸惑った。
 植民地は英国の生命線である。

 これを失えば英国は繁栄を止め、没落の危機にさえ陥るかも知れぬのだ。

「しかし、・・・。
 それは弱肉強食の世界では致し方ないことではないのか。」

「では、女王陛下は、我が国が英国に対して宣戦布告し、その領土全てを植民地にしても宜しいとお考えですか?
 それが国際的に認められた原理原則であると仰せになりますか?」

「いや、そうではない。
 そうではないが、・・・。
 日本は本当に我が国を植民地化するつもりなのか?」

「それ以外に方法が無ければ、あるいはそうする可能性は否定できません。
 日米戦争で片鱗を見せた我が国の戦力には、いずれの国も脅威を感じているはずです。
 英米に限らず、ソ連、ドイツもまた我が国との同盟について模索をしています。
 ですが、我が国がどの国と同盟を結ぶかは我が国為政者の考え方次第です。
 我が国は、英国との同盟をでき得れば締結するという方向で纏まっていますが、それが不調に終わった場合、どちらの方向に向くかはわかりません。
 場合によっては、ドイツと同盟を結び、その代わりにナチスドイツの非道を正す事にする可能性もあります。
 元々はベルサイユ体制での決着に不満を有するドイツ国民にナチスが取り入って政権を確立した結果が、今回の欧州での戦乱です。
 ベルサイユ体制の崩壊と、英国、フランスという欧州列強の力を弱め、あるいは両方の国家そのものを占領してしまえば、ドイツ国民もナチスに引きずられずに本来の姿に立ち戻る可能性もあります。
 欧州共同体という一つの広域国家のほうが良いのかも知れません。」

「そなたが言っているのは、よもやドイツと同盟し、英国と戦を行うと言う事では有るまいな。」

「僅か四年ほど前には日独伊三国同盟が真剣に議論されており、其の当時の大勢は同盟締結に傾いていました。
 同盟を締結しなかったのは一握りの良識派がうまく立ち回っただけのことです。
 傲慢と思われるかもしれませんが、現在の我が国は世界を相手にしても勝利できるだけの戦力を保有しています。
 ですが、先ほど申し上げた少数派は、世界戦略に立った考えから恣意的にこの戦力を用いたくないと考えているだけなのです。
 それが何らかの要因で別方向に向かうことは十分にあり得る事なのです。
 数年前、我が国では陸軍将校の反乱で首相の暗殺未遂と言う暴挙が発生しました。
 そうしたことが再度起きないと言う保証は誰にも出来ない事なのです。」

「仮に英国が日本の提案を断った場合、日本はどうするのじゃ。
 直ちにドイツと手を結ぶとは考えにくいが、一番有り得る可能性は何だと思うておるのか?」

「それは、私個人の見解を申し上げよとの仰せでございますか。」

「ふむ、そちの考えでよい。」

「では、申し上げます。
 日本は、おそらくはこの5月頃までは静観します。
 其の上で、状況が好転しない場合、英国とドイツに対して申し入れをいたします。
 ドイツに対しては、これ以上の欧州域内での侵攻を止めること、及び、ユダヤ人の差別政策全般を即時停止することを求めます。
 猶予期間は1ヶ月程度となるでしょう。
 英国に対しては、英国が保有する海外領土である植民地及び信託委任統治領の全面放棄を求めます。
 英国が海外領土の住民を英国人と同様に扱う場合は、植民地ではなく英国領土として認めますが、そうはできないでしょうから、無駄な要求はいたしません。
 英国が放棄した海外植民地は独立して新たな国家となることでしょう。
 英国にその度量があるかないかの確認です。
 これも1ヶ月乃至2ヶ月の猶予が与えられるでしょう。
 その結果として日本の要請が受け入れられない場合は、両方の国に対して宣戦布告し、その行為を正す事になるでしょう。
 具体的には、英国の植民地全ての解放を行うことになると思います。」

「馬鹿を申すでない。
 日本にそのような権利が有るわけが無い。」

「では、失礼ながら、女王陛下、英国には植民地を持つ権利があると仰られますか?」

「そうじゃ。
 そのために多くの英国兵士と英国の財力を注ぎ込んで今の植民地を経営するに至った。」

「英国がつぎ込んだ財力の何十倍もの利益を得ている現在も、まだ搾取をなさいますか?」

「自分達で其処まで成長させたものを手放せというのはおかしいではないか。
 日本とて、朝鮮や台湾、それに満州を持っているではないか。」

「仰せの通りにございます。
 日本もここ2年の間には、朝鮮及び台湾という二つの属領を住民投票により、独立かそれとも日本の内県として存続するかを選ばせることにしています。
 内県となった場合は、日本国内の日本人と同じ権利を全て与えられ、一切の差別はしません。
 言語も日本語を強制せず、公用語としての教育に留めることになるでしょう。
 逆に独立した場合には、一切の内政干渉をせず、必要な援助だけは行います。
 国家として相互安全保障を望む場合はこれにも応じますが、基本的に軍の駐留はしません。
 満州についても、原則として軍は駐留をしないことにしますが、ソ連の動向については注意を要しますので、別の方法で引き続き国境の監視は継続します。
 ソ連が満州への侵攻を企てるならば、そのときにこそ再起不能となると思えるまで叩きます。
 中国の遼寧省、熱河省、山東省については、現状の中国国内での政治不穏及びその流動性から引き続き軍の駐留を継続しますが、国民党政府にしろ、共産党政府にしろ、政権安定の状況如何によっては朝鮮や台湾と同様に住民投票で三省の帰属を決定します。
 独立、日本への帰属、中国への帰属、或いはソ連を除く第三国への帰属についても住民の意向次第となるでしょう。
 満州は成立経緯の問題はあろうとも、国家としての形態をなしている以上、一切の政治干渉は行わず、独立国家として日本は支持します。」

「日本はそれら全ての利権を放棄するというのか?
 それは本当のことか?」

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

仮想戦記:蒼穹のレブナント ~ 如何にして空襲を免れるか

サクラ近衛将監
ファンタジー
 レブナントとは、フランス語で「帰る」、「戻る」、「再び来る」という意味のレヴニール(Revenir)に由来し、ここでは「死から戻って来たりし者」のこと。  昭和11年、広島市内で瀬戸物店を営む中年のオヤジが、唐突に転生者の記憶を呼び覚ます。  記憶のひとつは、百年も未来の科学者であり、無謀な者が引き起こした自動車事故により唐突に三十代の半ばで死んだ男の記憶だが、今ひとつは、その未来の男が異世界屈指の錬金術師に転生して百有余年を生きた記憶だった。  二つの記憶は、中年男の中で覚醒し、自分の住む日本が、この町が、空襲に遭って焦土に変わる未来を知っってしまった。  男はその未来を変えるべく立ち上がる。  この物語は、戦前に生きたオヤジが自ら持つ知識と能力を最大限に駆使して、焦土と化す未来を変えようとする物語である。  この物語は飽くまで仮想戦記であり、登場する人物や団体・組織によく似た人物や団体が過去にあったにしても、当該実在の人物もしくは団体とは関りが無いことをご承知おきください。    投稿は不定期ですが、一応毎週火曜日午後8時を予定しており、「アルファポリス」様、「カクヨム」様、「小説を読もう」様に同時投稿します。

リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット
ファンタジー
「君に今の時代に生まれ変わって欲しいんだ」 魔物の王を討伐した古き英雄グレリア・ファルトは死後、突然白い世界に呼び出され、神にそう言われてしまった。 彼は生まれ変わるという言葉に孫の言葉を思い出し、新しい人生を生きることを決意した。 遥か昔に生きていた世界がどう変わっているか、発展しているか期待をしながら700年後の時代に転生した彼を待ち受けていたのは……『英雄召喚』と呼ばれる魔法でやってきた異世界人の手によって破壊され発展した――変貌した世界だった。 歴史すら捻じ曲げられた世界で、グレリアは何を求め、知り……世界を生きるのだろうか? 己の心のままに生き、今を知るために、彼は再び歴史を紡ぐ。 そして……主人公はもう一人――『勇者』、『英雄』の定義すら薄くなった世界でそれらに憧れ、近づきたいと願う少年、セイル・シルドニアは学園での入学試験で一人の男と出会う。 そのことをきっかけにしてセイルは本当の意味で『勇者』というものを考え、『英雄』と呼ばれる存在になるためにもがき、苦しむことになるだろう。 例えどんな困難な道であっても、光が照らす道へと……己の力で進むと誓った、その限りを尽くして。 過去の英雄と現代の英雄(の卵)が交差し、歴史を作る! 異世界転生型アンチ異世界転生ファンタジー、ここに開幕! ――なろう・カクヨムでも連載中――

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

【完結】ここって天国?いいえBLの世界に転生しました

三園 七詩
恋愛
麻衣子はBL大好きの腐りかけのオタク、ある日道路を渡っていた綺麗な猫が車に引かれそうになっているのを助けるために命を落とした。 助けたその猫はなんと神様で麻衣子を望む異世界へと転生してくれると言う…チートでも溺愛でも悪役令嬢でも望むままに…しかし麻衣子にはどれもピンと来ない…どうせならBLの世界でじっくりと生でそれを拝みたい… 神様はそんな麻衣子の願いを叶えてBLの世界へと転生させてくれた! しかもその世界は生前、麻衣子が買ったばかりのゲームの世界にそっくりだった! 攻略対象の兄と弟を持ち、王子の婚約者のマリーとして生まれ変わった。 ゲームの世界なら王子と兄、弟やヒロイン(男)がイチャイチャするはずなのになんかおかしい… 知らず知らずのうちに攻略対象達を虜にしていくマリーだがこの世界はBLと疑わないマリーはそんな思いは露知らず… 注)BLとありますが、BL展開はほぼありません。

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

処理中です...