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第七章 英国との交渉
7-7 女王との密談 その二
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「多分、米国とドイツが世界に先んじて研究開発しているはずの画期的な爆弾です。
この爆弾1発で小規模の都市が壊滅します。
もし、この技術がソ連の手に渡るならば、次期大戦は、ロケット兵器にこの新型爆弾が搭載され、互いの国を叩き合う形になりましょう。
しかも、この爆弾は従来の火薬を用いた爆弾と異なり、人体に有害な放射線を発する放射性物質を大量に生産します。
放射線を大量に浴びると人は苦しみながら死に至ります。
死に至らないほどの放射線を浴びた人は内臓器官に障害を発生し、長い間痛みに苛まれながら通常よりも短い生涯を終えることになるでしょう。
また正常な遺伝子を傷つけ子孫に大きな影響を与えることも危惧されています。
米国がそうした兵器を開発すること自体にも問題があると考えていますが、自己保身のために同胞あるいは政治的に有力な同志を多数粛清しているスターリンが持つことは世界平和にとって大きな脅威となります。
これも日本が許すことの出来ない状況です。
従って、できるだけ早い時期にドイツを降伏に至らしめ、ソ連の手に落ちないようにする事が必要なのです。
しかしながら、我が国は、ドイツに宣戦布告する理由を持ちません。
無理な理由をこじつける事は、中国侵攻と同じ結果を生む事にもなり、後世に憂いを残します。
戦争は本来避けるべきものです。
止むを得ず戦争に訴える場合も自ら進んで戦争を仕掛けるべきでは有りません。
多くの人命が失われることにどのような理屈をつけても正義は無いのです。
我が国は、強大な米国を子供扱いするほどに大きな戦力を保有しています。
だからこそ、政治家や一部の軍閥の恣意によって戦争を始めてはならないのです。
英国との同盟を締結する事により、戦争の理屈の一部が一応は成り立つと考えております。
我が国は、ユダヤ人と同様に、ドイツ人も英国人もその命を大切にしたいと考えております。
人種、民族、宗教、出自によって人は差別されるべきではありません。
英国は、海外に多くの植民地や信託委任統治領を持っています。
多くの場合、英国とは全く異なる法律を以て、現地の人々を虐げ、其の利益を英国に吸い上げています。
ですが、未開人だから、人種が異なるから差別しても良いと言う事にはなりません。
英国がその多くの海外領土や植民地で英国と全く同じ法律を適用し、人種、民族、宗教、出自、学歴などの差別無しに現地の人々を受け入れるならば、我が国は英国を理性ある国家として認め、同盟をいたしたいと考えていますが、現状のままの植民地を維持し、暴利をむさぼるならば英国も英国以外の人々を苦しめるナチスドイツと何ら変わりが無いと考えています。
欧州では多くの場合、英国人が紳士・淑女と認められていますが、多くのアジア人、アフリカ人にとっては搾取するだけの酷い主人なのです。
では力や富があれば我が国も同じように英国を或いは英国人を虐げてもいいのでしょうか?
もし、それが許されることでないとするならば、日本人に認められず、英国人に認められるのは何故でしょうか?」
唐突に英国の植民地政策を批判されて、女王は戸惑った。
植民地は英国の生命線である。
これを失えば英国は繁栄を止め、没落の危機にさえ陥るかも知れぬのだ。
「しかし、・・・。
それは弱肉強食の世界では致し方ないことではないのか。」
「では、女王陛下は、我が国が英国に対して宣戦布告し、その領土全てを植民地にしても宜しいとお考えですか?
それが国際的に認められた原理原則であると仰せになりますか?」
「いや、そうではない。
そうではないが、・・・。
日本は本当に我が国を植民地化するつもりなのか?」
「それ以外に方法が無ければ、あるいはそうする可能性は否定できません。
日米戦争で片鱗を見せた我が国の戦力には、いずれの国も脅威を感じているはずです。
英米に限らず、ソ連、ドイツもまた我が国との同盟について模索をしています。
ですが、我が国がどの国と同盟を結ぶかは我が国為政者の考え方次第です。
我が国は、英国との同盟をでき得れば締結するという方向で纏まっていますが、それが不調に終わった場合、どちらの方向に向くかはわかりません。
場合によっては、ドイツと同盟を結び、その代わりにナチスドイツの非道を正す事にする可能性もあります。
元々はベルサイユ体制での決着に不満を有するドイツ国民にナチスが取り入って政権を確立した結果が、今回の欧州での戦乱です。
ベルサイユ体制の崩壊と、英国、フランスという欧州列強の力を弱め、あるいは両方の国家そのものを占領してしまえば、ドイツ国民もナチスに引きずられずに本来の姿に立ち戻る可能性もあります。
欧州共同体という一つの広域国家のほうが良いのかも知れません。」
「そなたが言っているのは、よもやドイツと同盟し、英国と戦を行うと言う事では有るまいな。」
「僅か四年ほど前には日独伊三国同盟が真剣に議論されており、其の当時の大勢は同盟締結に傾いていました。
同盟を締結しなかったのは一握りの良識派がうまく立ち回っただけのことです。
傲慢と思われるかもしれませんが、現在の我が国は世界を相手にしても勝利できるだけの戦力を保有しています。
ですが、先ほど申し上げた少数派は、世界戦略に立った考えから恣意的にこの戦力を用いたくないと考えているだけなのです。
それが何らかの要因で別方向に向かうことは十分にあり得る事なのです。
数年前、我が国では陸軍将校の反乱で首相の暗殺未遂と言う暴挙が発生しました。
そうしたことが再度起きないと言う保証は誰にも出来ない事なのです。」
「仮に英国が日本の提案を断った場合、日本はどうするのじゃ。
直ちにドイツと手を結ぶとは考えにくいが、一番有り得る可能性は何だと思うておるのか?」
「それは、私個人の見解を申し上げよとの仰せでございますか。」
「ふむ、そちの考えでよい。」
「では、申し上げます。
日本は、おそらくはこの5月頃までは静観します。
其の上で、状況が好転しない場合、英国とドイツに対して申し入れをいたします。
ドイツに対しては、これ以上の欧州域内での侵攻を止めること、及び、ユダヤ人の差別政策全般を即時停止することを求めます。
猶予期間は1ヶ月程度となるでしょう。
英国に対しては、英国が保有する海外領土である植民地及び信託委任統治領の全面放棄を求めます。
英国が海外領土の住民を英国人と同様に扱う場合は、植民地ではなく英国領土として認めますが、そうはできないでしょうから、無駄な要求はいたしません。
英国が放棄した海外植民地は独立して新たな国家となることでしょう。
英国にその度量があるかないかの確認です。
これも1ヶ月乃至2ヶ月の猶予が与えられるでしょう。
その結果として日本の要請が受け入れられない場合は、両方の国に対して宣戦布告し、その行為を正す事になるでしょう。
具体的には、英国の植民地全ての解放を行うことになると思います。」
「馬鹿を申すでない。
日本にそのような権利が有るわけが無い。」
「では、失礼ながら、女王陛下、英国には植民地を持つ権利があると仰られますか?」
「そうじゃ。
そのために多くの英国兵士と英国の財力を注ぎ込んで今の植民地を経営するに至った。」
「英国がつぎ込んだ財力の何十倍もの利益を得ている現在も、まだ搾取をなさいますか?」
「自分達で其処まで成長させたものを手放せというのはおかしいではないか。
日本とて、朝鮮や台湾、それに満州を持っているではないか。」
「仰せの通りにございます。
日本もここ2年の間には、朝鮮及び台湾という二つの属領を住民投票により、独立かそれとも日本の内県として存続するかを選ばせることにしています。
内県となった場合は、日本国内の日本人と同じ権利を全て与えられ、一切の差別はしません。
言語も日本語を強制せず、公用語としての教育に留めることになるでしょう。
逆に独立した場合には、一切の内政干渉をせず、必要な援助だけは行います。
国家として相互安全保障を望む場合はこれにも応じますが、基本的に軍の駐留はしません。
満州についても、原則として軍は駐留をしないことにしますが、ソ連の動向については注意を要しますので、別の方法で引き続き国境の監視は継続します。
ソ連が満州への侵攻を企てるならば、そのときにこそ再起不能となると思えるまで叩きます。
中国の遼寧省、熱河省、山東省については、現状の中国国内での政治不穏及びその流動性から引き続き軍の駐留を継続しますが、国民党政府にしろ、共産党政府にしろ、政権安定の状況如何によっては朝鮮や台湾と同様に住民投票で三省の帰属を決定します。
独立、日本への帰属、中国への帰属、或いはソ連を除く第三国への帰属についても住民の意向次第となるでしょう。
満州は成立経緯の問題はあろうとも、国家としての形態をなしている以上、一切の政治干渉は行わず、独立国家として日本は支持します。」
「日本はそれら全ての利権を放棄するというのか?
それは本当のことか?」
この爆弾1発で小規模の都市が壊滅します。
もし、この技術がソ連の手に渡るならば、次期大戦は、ロケット兵器にこの新型爆弾が搭載され、互いの国を叩き合う形になりましょう。
しかも、この爆弾は従来の火薬を用いた爆弾と異なり、人体に有害な放射線を発する放射性物質を大量に生産します。
放射線を大量に浴びると人は苦しみながら死に至ります。
死に至らないほどの放射線を浴びた人は内臓器官に障害を発生し、長い間痛みに苛まれながら通常よりも短い生涯を終えることになるでしょう。
また正常な遺伝子を傷つけ子孫に大きな影響を与えることも危惧されています。
米国がそうした兵器を開発すること自体にも問題があると考えていますが、自己保身のために同胞あるいは政治的に有力な同志を多数粛清しているスターリンが持つことは世界平和にとって大きな脅威となります。
これも日本が許すことの出来ない状況です。
従って、できるだけ早い時期にドイツを降伏に至らしめ、ソ連の手に落ちないようにする事が必要なのです。
しかしながら、我が国は、ドイツに宣戦布告する理由を持ちません。
無理な理由をこじつける事は、中国侵攻と同じ結果を生む事にもなり、後世に憂いを残します。
戦争は本来避けるべきものです。
止むを得ず戦争に訴える場合も自ら進んで戦争を仕掛けるべきでは有りません。
多くの人命が失われることにどのような理屈をつけても正義は無いのです。
我が国は、強大な米国を子供扱いするほどに大きな戦力を保有しています。
だからこそ、政治家や一部の軍閥の恣意によって戦争を始めてはならないのです。
英国との同盟を締結する事により、戦争の理屈の一部が一応は成り立つと考えております。
我が国は、ユダヤ人と同様に、ドイツ人も英国人もその命を大切にしたいと考えております。
人種、民族、宗教、出自によって人は差別されるべきではありません。
英国は、海外に多くの植民地や信託委任統治領を持っています。
多くの場合、英国とは全く異なる法律を以て、現地の人々を虐げ、其の利益を英国に吸い上げています。
ですが、未開人だから、人種が異なるから差別しても良いと言う事にはなりません。
英国がその多くの海外領土や植民地で英国と全く同じ法律を適用し、人種、民族、宗教、出自、学歴などの差別無しに現地の人々を受け入れるならば、我が国は英国を理性ある国家として認め、同盟をいたしたいと考えていますが、現状のままの植民地を維持し、暴利をむさぼるならば英国も英国以外の人々を苦しめるナチスドイツと何ら変わりが無いと考えています。
欧州では多くの場合、英国人が紳士・淑女と認められていますが、多くのアジア人、アフリカ人にとっては搾取するだけの酷い主人なのです。
では力や富があれば我が国も同じように英国を或いは英国人を虐げてもいいのでしょうか?
もし、それが許されることでないとするならば、日本人に認められず、英国人に認められるのは何故でしょうか?」
唐突に英国の植民地政策を批判されて、女王は戸惑った。
植民地は英国の生命線である。
これを失えば英国は繁栄を止め、没落の危機にさえ陥るかも知れぬのだ。
「しかし、・・・。
それは弱肉強食の世界では致し方ないことではないのか。」
「では、女王陛下は、我が国が英国に対して宣戦布告し、その領土全てを植民地にしても宜しいとお考えですか?
それが国際的に認められた原理原則であると仰せになりますか?」
「いや、そうではない。
そうではないが、・・・。
日本は本当に我が国を植民地化するつもりなのか?」
「それ以外に方法が無ければ、あるいはそうする可能性は否定できません。
日米戦争で片鱗を見せた我が国の戦力には、いずれの国も脅威を感じているはずです。
英米に限らず、ソ連、ドイツもまた我が国との同盟について模索をしています。
ですが、我が国がどの国と同盟を結ぶかは我が国為政者の考え方次第です。
我が国は、英国との同盟をでき得れば締結するという方向で纏まっていますが、それが不調に終わった場合、どちらの方向に向くかはわかりません。
場合によっては、ドイツと同盟を結び、その代わりにナチスドイツの非道を正す事にする可能性もあります。
元々はベルサイユ体制での決着に不満を有するドイツ国民にナチスが取り入って政権を確立した結果が、今回の欧州での戦乱です。
ベルサイユ体制の崩壊と、英国、フランスという欧州列強の力を弱め、あるいは両方の国家そのものを占領してしまえば、ドイツ国民もナチスに引きずられずに本来の姿に立ち戻る可能性もあります。
欧州共同体という一つの広域国家のほうが良いのかも知れません。」
「そなたが言っているのは、よもやドイツと同盟し、英国と戦を行うと言う事では有るまいな。」
「僅か四年ほど前には日独伊三国同盟が真剣に議論されており、其の当時の大勢は同盟締結に傾いていました。
同盟を締結しなかったのは一握りの良識派がうまく立ち回っただけのことです。
傲慢と思われるかもしれませんが、現在の我が国は世界を相手にしても勝利できるだけの戦力を保有しています。
ですが、先ほど申し上げた少数派は、世界戦略に立った考えから恣意的にこの戦力を用いたくないと考えているだけなのです。
それが何らかの要因で別方向に向かうことは十分にあり得る事なのです。
数年前、我が国では陸軍将校の反乱で首相の暗殺未遂と言う暴挙が発生しました。
そうしたことが再度起きないと言う保証は誰にも出来ない事なのです。」
「仮に英国が日本の提案を断った場合、日本はどうするのじゃ。
直ちにドイツと手を結ぶとは考えにくいが、一番有り得る可能性は何だと思うておるのか?」
「それは、私個人の見解を申し上げよとの仰せでございますか。」
「ふむ、そちの考えでよい。」
「では、申し上げます。
日本は、おそらくはこの5月頃までは静観します。
其の上で、状況が好転しない場合、英国とドイツに対して申し入れをいたします。
ドイツに対しては、これ以上の欧州域内での侵攻を止めること、及び、ユダヤ人の差別政策全般を即時停止することを求めます。
猶予期間は1ヶ月程度となるでしょう。
英国に対しては、英国が保有する海外領土である植民地及び信託委任統治領の全面放棄を求めます。
英国が海外領土の住民を英国人と同様に扱う場合は、植民地ではなく英国領土として認めますが、そうはできないでしょうから、無駄な要求はいたしません。
英国が放棄した海外植民地は独立して新たな国家となることでしょう。
英国にその度量があるかないかの確認です。
これも1ヶ月乃至2ヶ月の猶予が与えられるでしょう。
その結果として日本の要請が受け入れられない場合は、両方の国に対して宣戦布告し、その行為を正す事になるでしょう。
具体的には、英国の植民地全ての解放を行うことになると思います。」
「馬鹿を申すでない。
日本にそのような権利が有るわけが無い。」
「では、失礼ながら、女王陛下、英国には植民地を持つ権利があると仰られますか?」
「そうじゃ。
そのために多くの英国兵士と英国の財力を注ぎ込んで今の植民地を経営するに至った。」
「英国がつぎ込んだ財力の何十倍もの利益を得ている現在も、まだ搾取をなさいますか?」
「自分達で其処まで成長させたものを手放せというのはおかしいではないか。
日本とて、朝鮮や台湾、それに満州を持っているではないか。」
「仰せの通りにございます。
日本もここ2年の間には、朝鮮及び台湾という二つの属領を住民投票により、独立かそれとも日本の内県として存続するかを選ばせることにしています。
内県となった場合は、日本国内の日本人と同じ権利を全て与えられ、一切の差別はしません。
言語も日本語を強制せず、公用語としての教育に留めることになるでしょう。
逆に独立した場合には、一切の内政干渉をせず、必要な援助だけは行います。
国家として相互安全保障を望む場合はこれにも応じますが、基本的に軍の駐留はしません。
満州についても、原則として軍は駐留をしないことにしますが、ソ連の動向については注意を要しますので、別の方法で引き続き国境の監視は継続します。
ソ連が満州への侵攻を企てるならば、そのときにこそ再起不能となると思えるまで叩きます。
中国の遼寧省、熱河省、山東省については、現状の中国国内での政治不穏及びその流動性から引き続き軍の駐留を継続しますが、国民党政府にしろ、共産党政府にしろ、政権安定の状況如何によっては朝鮮や台湾と同様に住民投票で三省の帰属を決定します。
独立、日本への帰属、中国への帰属、或いはソ連を除く第三国への帰属についても住民の意向次第となるでしょう。
満州は成立経緯の問題はあろうとも、国家としての形態をなしている以上、一切の政治干渉は行わず、独立国家として日本は支持します。」
「日本はそれら全ての利権を放棄するというのか?
それは本当のことか?」
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