22 / 276
1部 転生する月神編
魔物討伐4
しおりを挟む
神経を張り詰め、魔物をひたすら討つ日々。解放されたその場は大いに賑わっていた。
お酒も入り、さすがに付き合いきれないとバルコニーへ逃げ出したクオン。
「やっぱり、ここにいた。いるでしょ」
お皿に乗ったものを見た瞬間、クオンの瞳が輝く。
「チョコじゃん」
「セルティ様がくれたの。私達、お酒飲めないじゃん」
バルスデ王国では十八になるまでお酒は飲めない。二人とも十七で、あと一年は宴に参加してもジュースのみとなる。
騎士団を束ねる者という肩書きである以上、参加することは何度かあった。その都度、二人はジュースを片手に眺めているだけだったのだ。
「さすが、セルティ様だな」
「でしょ」
しかし、お酒よりこっちがいいとクオンは口の中へ放り込む。
どれだけ甘いものが好きなのか。よく言われることだが、好きなものは好きなのだからいいではないかと思う。
「そうだ、これ返さねぇとな」
懐から取り出した匂袋に、リーナは笑った。わざわざ持ってきたのかと。
「別にいいのに」
「十分助かった」
これを借りてから夢を見ることはなくなった。あのまま続いていたら、さすがに疲れがとれずに苦労したかもしれない。
「そう? また続くようだったら、貸してあげようか」
「もう勘弁だ…」
さすがにないと思いたかった。今まではなかったのだし、慣れない場所でこうなっただけだろう。
「クスクス」
うんざりとした表情に、リーナは笑いながらチョコを食べる。
「これ、甘すぎない?」
「いらねぇなら、俺が全部食う」
「食べるわよ!」
せっかくもらったのだからとリーナがムキになれば、二人は同時に笑う。
「もうすぐ帰れるな」
「そうね」
二人が参加する遠征は、この魔物討伐が初めて。
おそらく団長になってから、月光騎士団は様子見されていたのだろう。近場の魔物討伐はしたことがあるが、遠出はなかった。
「シリトルのパイが食いてぇ」
「そっち!?」
家が恋しいとかじゃないのか。突っ込みたくなったが、言えばお前だろと言われそうでやめる。
「あれはさ、やっぱ五日に一回は必要だ」
「……」
「な、なんだよ」
冷ややかな視線を向けられ、クオンが一歩引く。
「別に…」
まさか、五日に一回食べていたとは思わなかっただけ。それなりに多忙なわけで、いつ買いに行っていたのかと思ったのだ。
「欲しいなら、次からは買って来てやるけど」
「いりません。私は誰かさんみたいに、甘いものが主食じゃないの」
幼馴染みから見ても、クオンの主食は甘いものではないのかと思えた。
そんなことないと言いながら視線を逸らすから、説得力はない。クオンは嘘をついたり、困ったときには視線を逸らす癖があるのだ。
「まぁ、いいわ。クレープ忘れなければ」
「わかって……流れ星」
空を見たまま固まる姿に、またかとリーナも見上げる。そして、そのまま同じように固まった。
「すごい…」
今回は本当だったのだ。光が無数に流れていく夜空に、きれいだと思う。
「流れ星って、ほとんど見られないんだよね。そう聞いたんだけど」
なぜかはわからないが、流れ星が観測されたことはほとんどない。だからか、見られると幸運だとも言われていた。
なにが幸運なのかと思っていたが、実際に見るとそうかもしれないと思う。
こんなにきれいなものが、一生に一度見られるかどうかならと。
しばらく流れ星を見ていたリーナは、そこでクオンからまったく反応がないことに気付く。
「クオン?」
どうしたのかと見てリーナは息を呑む。
(きれい…)
見慣れた幼馴染み。けれど、月明かりで見る姿が別人に見えた。
「不吉だな…」
「えっ…」
「あの流れ星、不吉な感じがする」
急になにを言い出すのかと空を見る。リーナにはきれいな流れ星にしか見えないのだ。
「いや、気にすんな」
「でも…」
気にするなと言われても、さすがに気になる。問い詰めてやろうと思った瞬間、残っていたチョコを食べた。
「あぁー! それ私の!」
「油断してるのがわりぃんだよ! バーカ!」
そのまま室内に戻っていくクオンに、リーナの怒声が響いたのは言うまでもない。
.
お酒も入り、さすがに付き合いきれないとバルコニーへ逃げ出したクオン。
「やっぱり、ここにいた。いるでしょ」
お皿に乗ったものを見た瞬間、クオンの瞳が輝く。
「チョコじゃん」
「セルティ様がくれたの。私達、お酒飲めないじゃん」
バルスデ王国では十八になるまでお酒は飲めない。二人とも十七で、あと一年は宴に参加してもジュースのみとなる。
騎士団を束ねる者という肩書きである以上、参加することは何度かあった。その都度、二人はジュースを片手に眺めているだけだったのだ。
「さすが、セルティ様だな」
「でしょ」
しかし、お酒よりこっちがいいとクオンは口の中へ放り込む。
どれだけ甘いものが好きなのか。よく言われることだが、好きなものは好きなのだからいいではないかと思う。
「そうだ、これ返さねぇとな」
懐から取り出した匂袋に、リーナは笑った。わざわざ持ってきたのかと。
「別にいいのに」
「十分助かった」
これを借りてから夢を見ることはなくなった。あのまま続いていたら、さすがに疲れがとれずに苦労したかもしれない。
「そう? また続くようだったら、貸してあげようか」
「もう勘弁だ…」
さすがにないと思いたかった。今まではなかったのだし、慣れない場所でこうなっただけだろう。
「クスクス」
うんざりとした表情に、リーナは笑いながらチョコを食べる。
「これ、甘すぎない?」
「いらねぇなら、俺が全部食う」
「食べるわよ!」
せっかくもらったのだからとリーナがムキになれば、二人は同時に笑う。
「もうすぐ帰れるな」
「そうね」
二人が参加する遠征は、この魔物討伐が初めて。
おそらく団長になってから、月光騎士団は様子見されていたのだろう。近場の魔物討伐はしたことがあるが、遠出はなかった。
「シリトルのパイが食いてぇ」
「そっち!?」
家が恋しいとかじゃないのか。突っ込みたくなったが、言えばお前だろと言われそうでやめる。
「あれはさ、やっぱ五日に一回は必要だ」
「……」
「な、なんだよ」
冷ややかな視線を向けられ、クオンが一歩引く。
「別に…」
まさか、五日に一回食べていたとは思わなかっただけ。それなりに多忙なわけで、いつ買いに行っていたのかと思ったのだ。
「欲しいなら、次からは買って来てやるけど」
「いりません。私は誰かさんみたいに、甘いものが主食じゃないの」
幼馴染みから見ても、クオンの主食は甘いものではないのかと思えた。
そんなことないと言いながら視線を逸らすから、説得力はない。クオンは嘘をついたり、困ったときには視線を逸らす癖があるのだ。
「まぁ、いいわ。クレープ忘れなければ」
「わかって……流れ星」
空を見たまま固まる姿に、またかとリーナも見上げる。そして、そのまま同じように固まった。
「すごい…」
今回は本当だったのだ。光が無数に流れていく夜空に、きれいだと思う。
「流れ星って、ほとんど見られないんだよね。そう聞いたんだけど」
なぜかはわからないが、流れ星が観測されたことはほとんどない。だからか、見られると幸運だとも言われていた。
なにが幸運なのかと思っていたが、実際に見るとそうかもしれないと思う。
こんなにきれいなものが、一生に一度見られるかどうかならと。
しばらく流れ星を見ていたリーナは、そこでクオンからまったく反応がないことに気付く。
「クオン?」
どうしたのかと見てリーナは息を呑む。
(きれい…)
見慣れた幼馴染み。けれど、月明かりで見る姿が別人に見えた。
「不吉だな…」
「えっ…」
「あの流れ星、不吉な感じがする」
急になにを言い出すのかと空を見る。リーナにはきれいな流れ星にしか見えないのだ。
「いや、気にすんな」
「でも…」
気にするなと言われても、さすがに気になる。問い詰めてやろうと思った瞬間、残っていたチョコを食べた。
「あぁー! それ私の!」
「油断してるのがわりぃんだよ! バーカ!」
そのまま室内に戻っていくクオンに、リーナの怒声が響いたのは言うまでもない。
.
0
あなたにおすすめの小説
プライベート・スペクタル
点一
ファンタジー
【星】(スターズ)。それは山河を変えるほどの膂力、千里を駆ける脚力、そして異形の術や能力を有する超人・怪人達。
この物語はそんな連中のひどく…ひどく個人的な物語群。
その中の一部、『龍王』と呼ばれた一人の男に焦点を当てたお話。
(※基本 隔週土曜日に更新予定)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
織田信長 -尾州払暁-
藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。
守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。
織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。
そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。
毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。
記録少女狂想曲
食べられたウニの怨念(ウニおん)
ファンタジー
時は2026年。
人類は『魔人』と呼ばれる「新たな人類」によって滅亡の未来を強いられていた。
異形、機械、様々な形の新たな人類「魔人」
そしてその魔人を生み出す紛い物の神「偽神」。
人類は衰退し滅亡すると考えられていた…
しかし、世界には希望が存在した。
世界の全てを記録した概念[全記録]。
偽神を産むものであり、人類を記録するもの。
そしてその[全記録]から能力を引き出し、人に与えることのできる謎多き装置[A.I.S]。
希望とは、[全記録]から力を得し少年少女達。
少女達はイザード財閥の支援の下で、魔人達との戦いに身を投じるのであった…。
そしてこれは、そんな世界に生まれた、
とある少女のお話。
記憶を失い、自身の名前すらも分からない少女と、魔法少女・魔法戦士達が出会い、別れ、戦う物語。
少女の正体は何者なのか、[全記録]とはなんなのか。
これは 人類の存亡をかけた 謎多き戦いの物語。
『世界の真実に君たちが辿り着くのが先か、魔人たちによって滅ぶのが先か。僕にとってはとても興味深い話だよ。』
________________________________________
※こちらはTwitterで行なっている参加型創作を、
参加者様とキャラや展開について話し合って進めている小説となっています。
もし興味がある場合はTwitterのメインアカウント(@theUni_1024 )のDMにて相談・世界観についての質問などを受け付けています。
________________________________________
初心者投稿故に誤字脱字などが多くある可能性があるため、コメントなどで報告してくださるとありがたいです。
また、執筆状況が停滞したり自身の体調に問題がない限りは2週間に一話ずつ更新する予定です。気長にお待ちくださると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる