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4部 女神の末裔編
虹の女神2
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シャンルーンは虹の女神の聖鳥でありながら、太陽神であるシオンの力によって創られている。三千年前までは、すべての主導権をシオンが握っていた。
けれど、現在は虹の女神であるイリティスがすべての主導権を握っている。
そのため、情報に関してもシオンが口止めすれば話せなかった頃と違い、今は基本的にすべて話してくれるようになった。
基本的にとなるのは、シャンルーン自身がこれは話せないと思ったものだけは黙秘してしまうから。こればかりはイリティスも仕方ないと思っていること。
ヴェガに関しても同様で、今は仮の主としてグレンの傍らにいることが多いが、主は月神となることから情報はあまり出してもらえない。
「シオンは外で戦っていると仮定して、この世界になにかしらの影響はでると思う?」
意見を求めるぐらいなら、どちらも問題なく答えてくれる。
まずは意見交換からだとイリティスは問いかけた。
『わからない。でも、この世界を壊したいなら攻撃はくるかもしれない』
『俺も同意見だ。あの続きなら、シオンがいない今は狙い時だろ』
自分ならそうするとヴェガが言えば、グレンも同意する。
事態は世界を滅ぼすようなものだが、これを国攻めで考えればこうするとグレンは言う。
『まぁ、当然だよな。グレンはよくわかってるだろうが、国を守る騎士が腑抜けだったら、そこを手に入れたいと思っていれば、攻めるだろ。今なら手に入れられるって』
「俺はやらないが……否定はしない。この世界を国として例えれば、主力の騎士団を失った状態。弱ったと思われてるんだろうな。舐めてくれる」
全盛期から変わることのない鋭い視線を外へ向けながら、グレンの声は低くなっていく。
これは彼が不愉快だと思っている証。滅多に聞くことのない声なだけに、珍しいものだと思いつつ気持ちは理解できる。
外にいる者達は、自分達など取るに足らない存在と認識しているのだ。シオンさえ排除してしまえば、簡単にこの世界を壊せると思われている。
「最悪、シオンは殺せなくても世界は壊そうってことかしら」
自分で言いながら、イリティスは腹が立ってきた。以前のような力はないから、自分達は物の数ではない。そんな風に言われている気がしたのだ。
「私達が外と対抗できないと思われてるなんてね」
仕方ないことなのかもしれないが、だから苛立たないということではない。
「見せつけてやろうか。俺達が外と戦えるということを。この三千年、無駄に過ごしていたわけじゃないことをな」
不愉快そうにしていたグレンは、今度は不敵な笑みを浮かべている。
まるで思い知らせてやると言っているようで、イリティスは呆れながら見た。彼のこういったところは、たとえ三千年経っても変わらない。
「シオンがいなくても、この世界は落とせないと教えてやる」
鋭い目付きは変わることはなく、むしろ増しているような気さえする。
『ほんと、いい性格してるな』
「褒め言葉だと思っておく」
『褒めてるんだぜ。珍しいことにな』
俺は滅多に褒めないんだぜ、と言うヴェガはニヤリと笑う。
(どっちもどっちよ。まったく……誰に似たのかしら)
聖獣の性格は誰に似るのだろうか。何度思ったかわからない疑問に、イリティスは考えるのをやめようと切り替える。
今はどうでもいいことだ。
話を進めようと、イリティスはこれからのことを考える。
「グレン、どうするのがいいと思う? ヴェガとシャンルーンも、意見があれば欲しいわ」
外からの攻撃があるかもしれない。今の段階ではこれぐらいしかわかっていない。
これは確証ではなかった。可能性でしかない。
『……セレンを空にする。とか、どうだ?』
「攻撃してくるように、わざと隙を作るのか。悪くないが」
それが隙になるのだろうか。一番の問題はそこであった。
自分達の存在を外が認識しているのかわからなければ、認識していても気にされていない可能性の方が高い。
『外が認識してるの、たぶんイリティスだけ。虹の女神だから、わかると思う』
『外の出入り口になっているところも、イリティスが管理してるしな』
おそらく彼女がいるというよりは、虹の女神の力があることは把握している程度、とヴェガは思っている。
そもそも、外がすべてを知っているかという部分もわかってはいない。ただ、三千年前のときにシオンを太陽神と言ったことから、四人の力は把握しているのかもという憶測だ。
この世界は天空の女神が創った。外も同じように、シオン達を空になぞらえて呼んでいるだけ、という可能性もあるのかもしれない。
『なぁ、三千年前のことにあまり詳しくねぇんだけど、外の連中がここを調べたりしてたのか?』
「確か、調べていたはずよ。シオンが言うに、リオンが死んだことで外からも干渉ができるようになったのではないか、と」
世界を創った女神がいないことから、正解などすでにわからないこと。
すべての始まりがリオンの死である。これだけは事実だと思われた。結果として、月神が失われたことによって、外がなにかを感じ取れるようになったのか。
外から見ることができるようになったという可能性もある。
「外からきた魔物は、魔力で判断している節があったな」
つまり、力でしか判断できない。使ってみて、初めてそうだとわかる程度。
『なるほどなぁ。なら、やっぱりイリティスじゃなく虹の女神の力として認識されてるか。そうなってくると、グレンは把握されてねぇだろ』
だから舐めきっているのだとヴェガは笑う。その目が、後悔させてやると語り掛けている。
『安心しろ。そいつらを後悔させてやるまでは、いくらでも手を貸してやる』
「それは助かるな。聖鳥より聖獣の方が知識量あるみたいだし。痛い目に合わせてやろう」
どことなく不気味なオーラを放つ一人と一匹に、イリティスとシャンルーンは引いている。
意外だと思うのは、グレンとヴェガが思っていたより意気投合していることだ。これだけはシオンも驚いていたこと。
まさか、この一人と一匹が意気投合するとは思っていなかった。そう思う反面で、フォーラン・シリウスに似ていることが原因かもしれないと思う。
「とりあえず、相手が攻撃してくるように誘い込むということでいいのかしら」
方針を決めれば、あとは勝手にしてくれと思いながらイリティスは確認を取る。
「俺はそれで構わない。情報収集や外からの影響が他に出ないか、この辺りも確認したいしな。俺はまた傭兵でもしてる」
一番情報が集まる場所だと言えば、それは間違いがないとイリティスも思っていることだ。
精霊を通さない情報に関しては、グレンが一番正確に幅広く集めてくる。シオンがいない今、一番頼りになると言えた。
・
けれど、現在は虹の女神であるイリティスがすべての主導権を握っている。
そのため、情報に関してもシオンが口止めすれば話せなかった頃と違い、今は基本的にすべて話してくれるようになった。
基本的にとなるのは、シャンルーン自身がこれは話せないと思ったものだけは黙秘してしまうから。こればかりはイリティスも仕方ないと思っていること。
ヴェガに関しても同様で、今は仮の主としてグレンの傍らにいることが多いが、主は月神となることから情報はあまり出してもらえない。
「シオンは外で戦っていると仮定して、この世界になにかしらの影響はでると思う?」
意見を求めるぐらいなら、どちらも問題なく答えてくれる。
まずは意見交換からだとイリティスは問いかけた。
『わからない。でも、この世界を壊したいなら攻撃はくるかもしれない』
『俺も同意見だ。あの続きなら、シオンがいない今は狙い時だろ』
自分ならそうするとヴェガが言えば、グレンも同意する。
事態は世界を滅ぼすようなものだが、これを国攻めで考えればこうするとグレンは言う。
『まぁ、当然だよな。グレンはよくわかってるだろうが、国を守る騎士が腑抜けだったら、そこを手に入れたいと思っていれば、攻めるだろ。今なら手に入れられるって』
「俺はやらないが……否定はしない。この世界を国として例えれば、主力の騎士団を失った状態。弱ったと思われてるんだろうな。舐めてくれる」
全盛期から変わることのない鋭い視線を外へ向けながら、グレンの声は低くなっていく。
これは彼が不愉快だと思っている証。滅多に聞くことのない声なだけに、珍しいものだと思いつつ気持ちは理解できる。
外にいる者達は、自分達など取るに足らない存在と認識しているのだ。シオンさえ排除してしまえば、簡単にこの世界を壊せると思われている。
「最悪、シオンは殺せなくても世界は壊そうってことかしら」
自分で言いながら、イリティスは腹が立ってきた。以前のような力はないから、自分達は物の数ではない。そんな風に言われている気がしたのだ。
「私達が外と対抗できないと思われてるなんてね」
仕方ないことなのかもしれないが、だから苛立たないということではない。
「見せつけてやろうか。俺達が外と戦えるということを。この三千年、無駄に過ごしていたわけじゃないことをな」
不愉快そうにしていたグレンは、今度は不敵な笑みを浮かべている。
まるで思い知らせてやると言っているようで、イリティスは呆れながら見た。彼のこういったところは、たとえ三千年経っても変わらない。
「シオンがいなくても、この世界は落とせないと教えてやる」
鋭い目付きは変わることはなく、むしろ増しているような気さえする。
『ほんと、いい性格してるな』
「褒め言葉だと思っておく」
『褒めてるんだぜ。珍しいことにな』
俺は滅多に褒めないんだぜ、と言うヴェガはニヤリと笑う。
(どっちもどっちよ。まったく……誰に似たのかしら)
聖獣の性格は誰に似るのだろうか。何度思ったかわからない疑問に、イリティスは考えるのをやめようと切り替える。
今はどうでもいいことだ。
話を進めようと、イリティスはこれからのことを考える。
「グレン、どうするのがいいと思う? ヴェガとシャンルーンも、意見があれば欲しいわ」
外からの攻撃があるかもしれない。今の段階ではこれぐらいしかわかっていない。
これは確証ではなかった。可能性でしかない。
『……セレンを空にする。とか、どうだ?』
「攻撃してくるように、わざと隙を作るのか。悪くないが」
それが隙になるのだろうか。一番の問題はそこであった。
自分達の存在を外が認識しているのかわからなければ、認識していても気にされていない可能性の方が高い。
『外が認識してるの、たぶんイリティスだけ。虹の女神だから、わかると思う』
『外の出入り口になっているところも、イリティスが管理してるしな』
おそらく彼女がいるというよりは、虹の女神の力があることは把握している程度、とヴェガは思っている。
そもそも、外がすべてを知っているかという部分もわかってはいない。ただ、三千年前のときにシオンを太陽神と言ったことから、四人の力は把握しているのかもという憶測だ。
この世界は天空の女神が創った。外も同じように、シオン達を空になぞらえて呼んでいるだけ、という可能性もあるのかもしれない。
『なぁ、三千年前のことにあまり詳しくねぇんだけど、外の連中がここを調べたりしてたのか?』
「確か、調べていたはずよ。シオンが言うに、リオンが死んだことで外からも干渉ができるようになったのではないか、と」
世界を創った女神がいないことから、正解などすでにわからないこと。
すべての始まりがリオンの死である。これだけは事実だと思われた。結果として、月神が失われたことによって、外がなにかを感じ取れるようになったのか。
外から見ることができるようになったという可能性もある。
「外からきた魔物は、魔力で判断している節があったな」
つまり、力でしか判断できない。使ってみて、初めてそうだとわかる程度。
『なるほどなぁ。なら、やっぱりイリティスじゃなく虹の女神の力として認識されてるか。そうなってくると、グレンは把握されてねぇだろ』
だから舐めきっているのだとヴェガは笑う。その目が、後悔させてやると語り掛けている。
『安心しろ。そいつらを後悔させてやるまでは、いくらでも手を貸してやる』
「それは助かるな。聖鳥より聖獣の方が知識量あるみたいだし。痛い目に合わせてやろう」
どことなく不気味なオーラを放つ一人と一匹に、イリティスとシャンルーンは引いている。
意外だと思うのは、グレンとヴェガが思っていたより意気投合していることだ。これだけはシオンも驚いていたこと。
まさか、この一人と一匹が意気投合するとは思っていなかった。そう思う反面で、フォーラン・シリウスに似ていることが原因かもしれないと思う。
「とりあえず、相手が攻撃してくるように誘い込むということでいいのかしら」
方針を決めれば、あとは勝手にしてくれと思いながらイリティスは確認を取る。
「俺はそれで構わない。情報収集や外からの影響が他に出ないか、この辺りも確認したいしな。俺はまた傭兵でもしてる」
一番情報が集まる場所だと言えば、それは間違いがないとイリティスも思っていることだ。
精霊を通さない情報に関しては、グレンが一番正確に幅広く集めてくる。シオンがいない今、一番頼りになると言えた。
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