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28話 剣術大会
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騎士団の治癒士として働き始めてから早半年、仕事にも慣れ、団員たちも全員覚えることができ、順調に働くことが出来ている。
私は治癒士として働いているが、働き始めた当初から怪我人や体調不良者がいないときは、スキマ時間に回復ポーションを作っていた。
しかし、ポーションは薬瓶に入れなければならないため、非常に場所を取る。そこで、私はひそひそと研究を重ね、キャンディ型で、砂糖菓子のような食感の回復薬を作ることに成功した。
そして、最近は暇さえあればもしもの時に備え、ポーションと同時に回復キャンディを量産している。
そんな日常を過ごしていたある日のことだった。
今日は先生が先にお昼休みを取り、私が後でお昼休みの休憩を取る日だった。
いつも昼休みになると、エンディミオン卿がやってくるが、今日は珍しくエンディミオン卿よりも早くに先客が来ていた。
その先客とは、働く前から親交があった第1騎士団のワイアット団長と、第5騎士団のライオネル団長だ。
この2人は昼休みになると、たまに顔を見せに来てくれる。そして、色々と騎士団の情報を教えてくれたり、面白い話を聞かせてくれたりするのだ。
ちなみに、今日は昼休みを繰り上げて騎士団内で特別訓練が行われるらしく、いつもより昼休みの始終が早まっている。
「第3騎士団結構長引いてるんだな……」
そう呟いたのはワイアット団長だ。
「そうだな。今日の訓練の開始時間はどの団も共通だろ? もうエンディミオン来ないんじゃねーか?」
そう答えるのは、ライオネル団長だ。
――そっか、今日はエンディミオン卿忙しいから、来ない日なのか……。
そんなことを思っていると、ライオネル団長が悪戯な笑顔で話しかけてきた。
「なあ、クリスタちゃんはさ、この団で誰が一番強いと思う?」
突然そんなことを問われても、戦っている姿をいつも見ているわけではないから分からない。
「さあ? 皆さん強いと聞きますし、情報が無いから分からないです。でも、団長格の人が強いんじゃないんでしょうか?」
我ながら無難に答えられた。そう思っていると、ライオネル団長は自信満々の表情になった。
「実は、この騎士団で1番強いのは俺なんだよ~」
そう言いながら、私にウインクしてきたライオネル団長だが、すかさずそこにワイアット団長が口を出した。
「は? 何言ってるんだよ。一番強いのは俺だ」
「はあ? 確かにお前は強いが、俺の方がもっと強いぞ」
「いや、お前より俺が強い」
こうして、2人は言い合いを始めた。この光景は、もはや2人の恒例行事と言ってもいい。
しかしそんな中、突然ガラガラと医務室の扉が開く音が聞こえた。
見てみると、エンディミオン卿が入り口に立っていた。そして、私を姿を確認するとたちまち笑顔になり、瞬く間にこちらへと足を進めた。
すると、エンディミオン卿が室内に入ってきたことに気付いたワイアット団長が、彼に質問を投げかけた。
「なあ、エンディミオン。この騎士団で1番強いのは俺だよな?」
「いや、俺だよな!?」
2人ともエンディミオン卿が何と答えるかを、固唾を飲んで見守っている。
――どっちなのかしら?
つい釣られて、私もエンディミオン卿の顔に目を向けたところ、信じられないほどの真顔で彼は口を開いた。
「何を言っているんですか。1番強いのは私ですよ。というか、クリスタ様から離れてください。その筋肉もクリスタ様に見せつけないで下さい!」
思わずズッコケそうになってしまった。ワイアット団長もライオネル団長もエンディミオン卿の答えを聞き、ハーっと深いため息を吐いた。
だが、ライオネル団長はすぐにエンディミオン卿の言葉に反応するように、私に話しかけてきた。
「ねえ、クリスタちゃん。俺の鍛え上げた筋肉かっこいいよね?」
そう言いながら、半袖の袖口を少しまくり上腕筋を見せつけてきた。
すると、鍛えている人だと分かるが、かといってごつすぎるわけではない綺麗な筋肉が視界に写った。そのため、私はライオネル団長に言葉を返した。
「そうですね。私は適度に筋肉がある人の方が好きなので、かっこいいと思いますよ。ちなみにライオネル団長は、上腕より腕撓骨筋がかっこいいです」
これが私の率直な感想だった。そしてこの私の反応を聞き、ライオネル団長は嬉しそうにはしゃいだ。
「ほらなー、やっぱりクリスタちゃん見る目あるー!」
そう楽しそうに口を開いたライオネル団長だったが、そのとき私の視界の端に映る人物はライオネル団長と真逆の反応を示していた。
「クリスタ様! 私の方がすごいですから、他の人にかっこいいって言わないでくださいっ……」
エンディミオン卿は眉間に皺を寄せ悲しそうな顔をし、私の顔を見ながら必死にそう訴えかけてきた。
――えっ、エンディミオン卿ってこの人より筋肉すごいの?
もしかして着痩せするタイプなのかしら?
言われた言葉に反応し、ついエンディミオン卿を分析するために見てしまった。
すると、ガーンという効果音が付くほど悲しそうだったエンディミオン卿の目に、徐々に光が差し込みだした。
「そうまじまじと見つめられると緊張しますが、クリスタ様のためならお脱ぎましょ――」
「お断りします!」
さすがに私が不躾に見すぎたとはいえ、エンディミオン卿もエンディミオン卿で油断も隙も無い。
エンディミオン卿が変な発言をしかけたせいで、変な空気になってしまった。
そのため、私はその空気を一掃すべくワイアット団長とライオネル団長に話しかけた。
「誰が一番強いかという話ですが……今度一般公開で騎士団内の剣術大会が行われるんですよね? そこで分かるんじゃないですか?」
ちょうど今朝先生から聞いた話を思い出したのだ。ありがとう、アルバート先生! そう思っていると、団長たちも思い出したように口を開いた。
「あっ、そうだな! なあ、クリスタちゃん。俺の勇姿見に来てくれよ!」
「俺も俺もっ!」
ワイアット団長の言葉にライオネル団長も便乗した。しかし、私は残念なことに見に行くことは出来ない。
「見に行きたい気持ちは山々なんですが、怪我する人の治療担当なので行けないんですよ。皆が怪我しなかったら良いんですけど、先生が毎年必ずまあまあの怪我人が出るって言ってましたし……」
何回か剣術大会を経験してきた張本人だから分かるのだろう。
「あーそうだったか。それは残念だな……。でもそれなら仕方ないな」
ワイアット団長は残念そうに呟いた。そのため、少ししんみりしかけたが、ライオネル団長が突然大声を出した。
「っていけね! もうちょいで昼休み終わる! クリスタちゃん! また会いに来るからね~」
その声に引っ張られるように、ワイアット団長も「また来るな!」と言って医務室から出て行った。
「エンディミオン卿も行かないといけないんじゃ……?」
2人が出て行ったのに、まったく動く気配の無かったエンディミオン卿に声をかけた。すると、私の声に反応したようにエンディミオン卿が口を開いた。
「はい、すぐに行きます。あの……話したいことがあるので、今日帰りに少しお時間を頂いてもよろしいでしょうか?」
突然どうしたのだろうか。いつもはこんなこと聞かないのに珍しい……。
「今日ですか?」
「はい、騎士団長室で少々……」
「良いですよ。分かりました」
何か大事な用事があるのかもしれない。そう思い、珍しい彼からのお願いに応えることにした。すると、彼の顔はすぐに喜色満面になった。
「ありがとうございます! では、定時になりましたら、こちらにお迎えにあがってよろしいしょうか?!」
「いつも来てるじゃないですか」
「今日はいつもと違います。ちゃんと約束してますからっ!」
こうして、エンディミオン卿は嬉しさを噛み締めるような顔をしたまま、「では、また後で会いましょうね!」と言い、医務室を後にした。
私は治癒士として働いているが、働き始めた当初から怪我人や体調不良者がいないときは、スキマ時間に回復ポーションを作っていた。
しかし、ポーションは薬瓶に入れなければならないため、非常に場所を取る。そこで、私はひそひそと研究を重ね、キャンディ型で、砂糖菓子のような食感の回復薬を作ることに成功した。
そして、最近は暇さえあればもしもの時に備え、ポーションと同時に回復キャンディを量産している。
そんな日常を過ごしていたある日のことだった。
今日は先生が先にお昼休みを取り、私が後でお昼休みの休憩を取る日だった。
いつも昼休みになると、エンディミオン卿がやってくるが、今日は珍しくエンディミオン卿よりも早くに先客が来ていた。
その先客とは、働く前から親交があった第1騎士団のワイアット団長と、第5騎士団のライオネル団長だ。
この2人は昼休みになると、たまに顔を見せに来てくれる。そして、色々と騎士団の情報を教えてくれたり、面白い話を聞かせてくれたりするのだ。
ちなみに、今日は昼休みを繰り上げて騎士団内で特別訓練が行われるらしく、いつもより昼休みの始終が早まっている。
「第3騎士団結構長引いてるんだな……」
そう呟いたのはワイアット団長だ。
「そうだな。今日の訓練の開始時間はどの団も共通だろ? もうエンディミオン来ないんじゃねーか?」
そう答えるのは、ライオネル団長だ。
――そっか、今日はエンディミオン卿忙しいから、来ない日なのか……。
そんなことを思っていると、ライオネル団長が悪戯な笑顔で話しかけてきた。
「なあ、クリスタちゃんはさ、この団で誰が一番強いと思う?」
突然そんなことを問われても、戦っている姿をいつも見ているわけではないから分からない。
「さあ? 皆さん強いと聞きますし、情報が無いから分からないです。でも、団長格の人が強いんじゃないんでしょうか?」
我ながら無難に答えられた。そう思っていると、ライオネル団長は自信満々の表情になった。
「実は、この騎士団で1番強いのは俺なんだよ~」
そう言いながら、私にウインクしてきたライオネル団長だが、すかさずそこにワイアット団長が口を出した。
「は? 何言ってるんだよ。一番強いのは俺だ」
「はあ? 確かにお前は強いが、俺の方がもっと強いぞ」
「いや、お前より俺が強い」
こうして、2人は言い合いを始めた。この光景は、もはや2人の恒例行事と言ってもいい。
しかしそんな中、突然ガラガラと医務室の扉が開く音が聞こえた。
見てみると、エンディミオン卿が入り口に立っていた。そして、私を姿を確認するとたちまち笑顔になり、瞬く間にこちらへと足を進めた。
すると、エンディミオン卿が室内に入ってきたことに気付いたワイアット団長が、彼に質問を投げかけた。
「なあ、エンディミオン。この騎士団で1番強いのは俺だよな?」
「いや、俺だよな!?」
2人ともエンディミオン卿が何と答えるかを、固唾を飲んで見守っている。
――どっちなのかしら?
つい釣られて、私もエンディミオン卿の顔に目を向けたところ、信じられないほどの真顔で彼は口を開いた。
「何を言っているんですか。1番強いのは私ですよ。というか、クリスタ様から離れてください。その筋肉もクリスタ様に見せつけないで下さい!」
思わずズッコケそうになってしまった。ワイアット団長もライオネル団長もエンディミオン卿の答えを聞き、ハーっと深いため息を吐いた。
だが、ライオネル団長はすぐにエンディミオン卿の言葉に反応するように、私に話しかけてきた。
「ねえ、クリスタちゃん。俺の鍛え上げた筋肉かっこいいよね?」
そう言いながら、半袖の袖口を少しまくり上腕筋を見せつけてきた。
すると、鍛えている人だと分かるが、かといってごつすぎるわけではない綺麗な筋肉が視界に写った。そのため、私はライオネル団長に言葉を返した。
「そうですね。私は適度に筋肉がある人の方が好きなので、かっこいいと思いますよ。ちなみにライオネル団長は、上腕より腕撓骨筋がかっこいいです」
これが私の率直な感想だった。そしてこの私の反応を聞き、ライオネル団長は嬉しそうにはしゃいだ。
「ほらなー、やっぱりクリスタちゃん見る目あるー!」
そう楽しそうに口を開いたライオネル団長だったが、そのとき私の視界の端に映る人物はライオネル団長と真逆の反応を示していた。
「クリスタ様! 私の方がすごいですから、他の人にかっこいいって言わないでくださいっ……」
エンディミオン卿は眉間に皺を寄せ悲しそうな顔をし、私の顔を見ながら必死にそう訴えかけてきた。
――えっ、エンディミオン卿ってこの人より筋肉すごいの?
もしかして着痩せするタイプなのかしら?
言われた言葉に反応し、ついエンディミオン卿を分析するために見てしまった。
すると、ガーンという効果音が付くほど悲しそうだったエンディミオン卿の目に、徐々に光が差し込みだした。
「そうまじまじと見つめられると緊張しますが、クリスタ様のためならお脱ぎましょ――」
「お断りします!」
さすがに私が不躾に見すぎたとはいえ、エンディミオン卿もエンディミオン卿で油断も隙も無い。
エンディミオン卿が変な発言をしかけたせいで、変な空気になってしまった。
そのため、私はその空気を一掃すべくワイアット団長とライオネル団長に話しかけた。
「誰が一番強いかという話ですが……今度一般公開で騎士団内の剣術大会が行われるんですよね? そこで分かるんじゃないですか?」
ちょうど今朝先生から聞いた話を思い出したのだ。ありがとう、アルバート先生! そう思っていると、団長たちも思い出したように口を開いた。
「あっ、そうだな! なあ、クリスタちゃん。俺の勇姿見に来てくれよ!」
「俺も俺もっ!」
ワイアット団長の言葉にライオネル団長も便乗した。しかし、私は残念なことに見に行くことは出来ない。
「見に行きたい気持ちは山々なんですが、怪我する人の治療担当なので行けないんですよ。皆が怪我しなかったら良いんですけど、先生が毎年必ずまあまあの怪我人が出るって言ってましたし……」
何回か剣術大会を経験してきた張本人だから分かるのだろう。
「あーそうだったか。それは残念だな……。でもそれなら仕方ないな」
ワイアット団長は残念そうに呟いた。そのため、少ししんみりしかけたが、ライオネル団長が突然大声を出した。
「っていけね! もうちょいで昼休み終わる! クリスタちゃん! また会いに来るからね~」
その声に引っ張られるように、ワイアット団長も「また来るな!」と言って医務室から出て行った。
「エンディミオン卿も行かないといけないんじゃ……?」
2人が出て行ったのに、まったく動く気配の無かったエンディミオン卿に声をかけた。すると、私の声に反応したようにエンディミオン卿が口を開いた。
「はい、すぐに行きます。あの……話したいことがあるので、今日帰りに少しお時間を頂いてもよろしいでしょうか?」
突然どうしたのだろうか。いつもはこんなこと聞かないのに珍しい……。
「今日ですか?」
「はい、騎士団長室で少々……」
「良いですよ。分かりました」
何か大事な用事があるのかもしれない。そう思い、珍しい彼からのお願いに応えることにした。すると、彼の顔はすぐに喜色満面になった。
「ありがとうございます! では、定時になりましたら、こちらにお迎えにあがってよろしいしょうか?!」
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