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58話 アンデッド
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討伐作戦に参加すると決めてから2日後、とうとう出発の日がやって来た。絶対に生きて帰ってくる。そう決めてはいるが万が一があってはいけないため、討伐から帰ってくるまでギル様はアルバート先生に預けることにした。
「クリスタ、必ず生きて帰ってくるのだぞ」
「クリスタさん、あなたがいないと仕事が回りません。帰ってきてくださいね」
「お二人ともありがとうございます。ちゃんと帰ってきます。待っててくださいね」
見送りに来てくれた二人にそう伝え、私は移動用の馬車に乗り込んだ。それからしばらくし、いよいよ目的の場所へと馬車が進み始めた。
今回の討伐作戦の参加者は、通常の作戦と組み方が違うらしい。というのも、討伐を主とする第3騎士団と、対大規模事件や重犯罪を主とする第5騎士団、魔導士で結成された第8騎士団に加え、オールマイティ軍団である第1騎士団の一部の団員と隠密・偵察調査を主とする第11騎士団の一部の団員も参加しているのだ。
これだけの騎士が参加するなんて、相当な大事件だ。それに、第1騎士団と第11騎士団の一部の団員を連れてくるということは、それだけ保険をかけないといけないような相手ということだろう。
――絶対みんなで生きて帰れますように……。
私も絶対に生き残らないと。
エンディミオン様にちゃんと返事をするって決めたんだもの。
そう願いと決意を再確認しながら馬車に揺られると、ついに討伐作戦の舞台に辿り着いた。馬車から降りて街の景色を見ると、騎士団員以外誰もいなかった。
その理由は、今回の討伐作戦を行うにあたり、住民たちを避難させているため街に残っている人がいないからだ。だが、そのはずなのに何となく何かがいるような感じがし、私はゾッとしながら作業を始めた。
現在、第5騎士団の半数と第3騎士団、第11騎士団で捜査や偵察を行っている。そして、カイル率いる第8騎士団は魔法検知に行った。また、残った第5騎士団の半数と、第1騎士団のメンバーは泊まる準備をしていた。
こうして皆が活動を始め、私は第5騎士団が建ててくれた医療用の仮設テントの中で治療のための準備を進めていた。すると、突然馬車の外から叫び声が聞こえてきた。その叫び声に驚き、そっとテントの隙間から外を覗くと、そこには化け物のような姿をした人が1人見えた。
――何なのあの化け物は……!?
騎士たちを襲うような動きをする化け物の近くには、1人の団員が倒れている。すると、その人の近くにいた他の団員が謎の化け物を倒した。
そして、化け物がその場に崩れ落ち干からびたその瞬間、私の足は勝手に動いていた。
「大丈夫ですか!? ジャクソンさん!」
「ああ……姉さん。こんなすぐに倒されて情けねえよ。ごめんな……」
「そんなこと気にしてませんから。治療しますね!」
辛うじて息をしているような状態なのに、情けないというジャクソンさんに私はその場で治療を施した。すると、ジャクソンさんは普通の呼吸に戻り、傷口も塞がりいつものジャクソンさんに戻った。
「傷は塞がりました。ですが、出血が多いので救護所に移動しましょう」
そう声をかけ、私たちは共に救護所となっている医療用テントに移動し始めた。
「……本当に姉さんはすげえよ。こんな時に力を使わせて本当にごめんな」
一緒に移動しているジャクソンさんが、申し訳なさそうな顔をして呟いた。
「気にしないでください。それより……今の化け物は一体何なんですか?」
「ああ、あれがアンデッドだよ。今回の敵のネクロマンサーが使役している人間の死体だ」
――あれがアンデッド……!?
聞くと見るでは全然違うわ!
人だったなんて信じられない……。
「……人をあんな風にして操るなんて最低です」
「ああ、だから絶対に今度こそネクロマンサーを倒さなきゃならねえんだ」
討伐作戦に参加するにあたり、軽い説明は受けていた。その中で、ネクロマンサーが大量のアンデッドを使役しているということと、個体全てが同じ見た目では無いということを聞いた。
だが、アンデッドだということは見た瞬間分かるということで、人間の死体という説明以外は、見た目に関し具体的な説明がなかった。
だからこそ、今日初めてアンデッドの全貌を知り、あんな化け物がこの街にうようよいるという現実を再確認して、思わず身体が戦慄いた。すると、そんな私にジャクソンさんは言葉を続けた。
「ネクロマンサーは俺らの動向を見ているはずだ。あいつらは、自身の視界に入るところにいるアンデッドしか使役出来ないはずだから……」
私たちのことを観察しながら襲っているネクロマンサーに対し、怒りが込み上げてくる。なぜ人を襲うのか。それも、無差別に襲っているからこそ目的が分からない。快楽殺人なのだろうか。
なんにせよ、このネクロマンサーのことはとても理解できそうにない。そう思いながら、私は救護所に辿り着き、ジャクソンさんの治療を再開した。
そして、ジャクソンさんが横になって休み始めてすぐに、捜査や偵察に行っていた人たちが帰ってきた。そのうち数人が怪我をしており、救護所へとやって来た。幸い、ジャクソンさんほどの怪我人はおらず、皆が治癒魔法やポーションで治った。
――浅い傷で済んだから良かったけれど、怪我をしたことには違いないわ。
本当に気を引き締めて警戒を怠らないようにしないと……。
そんなことを思っていると、慌てた様子でエンディミオン様が救護所となっているテント内に入ってきた。どうやら、ジャクソンさんが襲われた話を誰かから聞いたようだった。
「クリスタ様……!」
「エンディミオン様! お怪我は無いですか?」
「はい、私はありません。それより……聞きました。周りが分からないのに救護所から飛び出てはいけません。危ないです! 何も無かったから良かったものの……」
入ってくるなり説教めいたことを言ってくるエンディミオン様の顔には、心配の感情が色濃く滲み出ていた。そんな彼に、私は言葉を返した。
「瀕死状態の人が目の前にいたんです。治癒士として放ってはおけません」
「――っ!」
「ですが……エンディミオン様の仰る通り私ももう少し警戒すべきでした。ご忠告ありがとうございます」
助けたという気持ち以前に、死体になった瞬間アンデッドになる可能性もあると聞いていたため、死体になる前に助けないと! という気持ちが働き飛び出してしまった。
ただ、このときの私には恐怖心はあったが警戒心が足りなかった。だからこそ彼のこの真っ当な忠告は、今一度私が気を引き締める良い機会になった。そのため、彼に感謝の念を込めてそっと微笑むと、彼はホッと安心したような顔をして口を開いた。
「クリスタ様、私もお手伝いします。今来ている人以外の怪我人も追加で来ると思いますので」
「いや、エンディミオン様は休まないと……」
「クリスタ様といると休めるんです。ね? お願いします。手伝わせて下さい」
そう言うと、彼は甘い目で私を見つめてきた。そんな彼の目を前に、恋してしまった私が逆らうなど出来るはずも無い。そのため、少しだけという条件付きで手伝ってもらうことにした。
そして、エンディミオン様が手伝い始めてからすぐ、彼の言った通り怪我人が数人やって来た。その中の1人である、今年入団したばかりの第11騎士団に所属する18歳のディラン君は大怪我をしていた。
――他の人もいるけれど、今はディラン君を優先しないと!
彼の怪我は見るからに酷く、私は即座に駆け寄って治癒魔法をかけた。すると、一瞬にしてディラン君の傷は治り、悶え苦しんでいた彼の表情にはいつもの笑顔が戻った。
だが、そんな彼は安心のあまりとんでもない言葉を発してしまった。
「クリスタ、必ず生きて帰ってくるのだぞ」
「クリスタさん、あなたがいないと仕事が回りません。帰ってきてくださいね」
「お二人ともありがとうございます。ちゃんと帰ってきます。待っててくださいね」
見送りに来てくれた二人にそう伝え、私は移動用の馬車に乗り込んだ。それからしばらくし、いよいよ目的の場所へと馬車が進み始めた。
今回の討伐作戦の参加者は、通常の作戦と組み方が違うらしい。というのも、討伐を主とする第3騎士団と、対大規模事件や重犯罪を主とする第5騎士団、魔導士で結成された第8騎士団に加え、オールマイティ軍団である第1騎士団の一部の団員と隠密・偵察調査を主とする第11騎士団の一部の団員も参加しているのだ。
これだけの騎士が参加するなんて、相当な大事件だ。それに、第1騎士団と第11騎士団の一部の団員を連れてくるということは、それだけ保険をかけないといけないような相手ということだろう。
――絶対みんなで生きて帰れますように……。
私も絶対に生き残らないと。
エンディミオン様にちゃんと返事をするって決めたんだもの。
そう願いと決意を再確認しながら馬車に揺られると、ついに討伐作戦の舞台に辿り着いた。馬車から降りて街の景色を見ると、騎士団員以外誰もいなかった。
その理由は、今回の討伐作戦を行うにあたり、住民たちを避難させているため街に残っている人がいないからだ。だが、そのはずなのに何となく何かがいるような感じがし、私はゾッとしながら作業を始めた。
現在、第5騎士団の半数と第3騎士団、第11騎士団で捜査や偵察を行っている。そして、カイル率いる第8騎士団は魔法検知に行った。また、残った第5騎士団の半数と、第1騎士団のメンバーは泊まる準備をしていた。
こうして皆が活動を始め、私は第5騎士団が建ててくれた医療用の仮設テントの中で治療のための準備を進めていた。すると、突然馬車の外から叫び声が聞こえてきた。その叫び声に驚き、そっとテントの隙間から外を覗くと、そこには化け物のような姿をした人が1人見えた。
――何なのあの化け物は……!?
騎士たちを襲うような動きをする化け物の近くには、1人の団員が倒れている。すると、その人の近くにいた他の団員が謎の化け物を倒した。
そして、化け物がその場に崩れ落ち干からびたその瞬間、私の足は勝手に動いていた。
「大丈夫ですか!? ジャクソンさん!」
「ああ……姉さん。こんなすぐに倒されて情けねえよ。ごめんな……」
「そんなこと気にしてませんから。治療しますね!」
辛うじて息をしているような状態なのに、情けないというジャクソンさんに私はその場で治療を施した。すると、ジャクソンさんは普通の呼吸に戻り、傷口も塞がりいつものジャクソンさんに戻った。
「傷は塞がりました。ですが、出血が多いので救護所に移動しましょう」
そう声をかけ、私たちは共に救護所となっている医療用テントに移動し始めた。
「……本当に姉さんはすげえよ。こんな時に力を使わせて本当にごめんな」
一緒に移動しているジャクソンさんが、申し訳なさそうな顔をして呟いた。
「気にしないでください。それより……今の化け物は一体何なんですか?」
「ああ、あれがアンデッドだよ。今回の敵のネクロマンサーが使役している人間の死体だ」
――あれがアンデッド……!?
聞くと見るでは全然違うわ!
人だったなんて信じられない……。
「……人をあんな風にして操るなんて最低です」
「ああ、だから絶対に今度こそネクロマンサーを倒さなきゃならねえんだ」
討伐作戦に参加するにあたり、軽い説明は受けていた。その中で、ネクロマンサーが大量のアンデッドを使役しているということと、個体全てが同じ見た目では無いということを聞いた。
だが、アンデッドだということは見た瞬間分かるということで、人間の死体という説明以外は、見た目に関し具体的な説明がなかった。
だからこそ、今日初めてアンデッドの全貌を知り、あんな化け物がこの街にうようよいるという現実を再確認して、思わず身体が戦慄いた。すると、そんな私にジャクソンさんは言葉を続けた。
「ネクロマンサーは俺らの動向を見ているはずだ。あいつらは、自身の視界に入るところにいるアンデッドしか使役出来ないはずだから……」
私たちのことを観察しながら襲っているネクロマンサーに対し、怒りが込み上げてくる。なぜ人を襲うのか。それも、無差別に襲っているからこそ目的が分からない。快楽殺人なのだろうか。
なんにせよ、このネクロマンサーのことはとても理解できそうにない。そう思いながら、私は救護所に辿り着き、ジャクソンさんの治療を再開した。
そして、ジャクソンさんが横になって休み始めてすぐに、捜査や偵察に行っていた人たちが帰ってきた。そのうち数人が怪我をしており、救護所へとやって来た。幸い、ジャクソンさんほどの怪我人はおらず、皆が治癒魔法やポーションで治った。
――浅い傷で済んだから良かったけれど、怪我をしたことには違いないわ。
本当に気を引き締めて警戒を怠らないようにしないと……。
そんなことを思っていると、慌てた様子でエンディミオン様が救護所となっているテント内に入ってきた。どうやら、ジャクソンさんが襲われた話を誰かから聞いたようだった。
「クリスタ様……!」
「エンディミオン様! お怪我は無いですか?」
「はい、私はありません。それより……聞きました。周りが分からないのに救護所から飛び出てはいけません。危ないです! 何も無かったから良かったものの……」
入ってくるなり説教めいたことを言ってくるエンディミオン様の顔には、心配の感情が色濃く滲み出ていた。そんな彼に、私は言葉を返した。
「瀕死状態の人が目の前にいたんです。治癒士として放ってはおけません」
「――っ!」
「ですが……エンディミオン様の仰る通り私ももう少し警戒すべきでした。ご忠告ありがとうございます」
助けたという気持ち以前に、死体になった瞬間アンデッドになる可能性もあると聞いていたため、死体になる前に助けないと! という気持ちが働き飛び出してしまった。
ただ、このときの私には恐怖心はあったが警戒心が足りなかった。だからこそ彼のこの真っ当な忠告は、今一度私が気を引き締める良い機会になった。そのため、彼に感謝の念を込めてそっと微笑むと、彼はホッと安心したような顔をして口を開いた。
「クリスタ様、私もお手伝いします。今来ている人以外の怪我人も追加で来ると思いますので」
「いや、エンディミオン様は休まないと……」
「クリスタ様といると休めるんです。ね? お願いします。手伝わせて下さい」
そう言うと、彼は甘い目で私を見つめてきた。そんな彼の目を前に、恋してしまった私が逆らうなど出来るはずも無い。そのため、少しだけという条件付きで手伝ってもらうことにした。
そして、エンディミオン様が手伝い始めてからすぐ、彼の言った通り怪我人が数人やって来た。その中の1人である、今年入団したばかりの第11騎士団に所属する18歳のディラン君は大怪我をしていた。
――他の人もいるけれど、今はディラン君を優先しないと!
彼の怪我は見るからに酷く、私は即座に駆け寄って治癒魔法をかけた。すると、一瞬にしてディラン君の傷は治り、悶え苦しんでいた彼の表情にはいつもの笑顔が戻った。
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