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15話 二人で乗り越える
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「リアス、どうしたの?」
「もしかして、真珠というのは何かの比喩なんじゃないかな?」
ほんの少しワクワクとしたような表情をしたリアスは、さらに饒舌に語った。
「真珠が秘めたるって言ってただろ。だけど秘めるって言葉は、無機物に使わないよね?」
私はリアスの言わんとすることを察し、秘めたるという言葉の指すものについて考えてみた。
「あっ!」
すぐにこの閃きをリアスに共有せねば。
「もしかして、真珠って誰かを指した表現なんじゃないかしら?」
私の早口を聞き取ったリアスは、顎に右手を添える。
そして、国宝級の美術品のような相貌で思考を巡らせた彼は、ふと神妙な面持ちで口を開いた。
「真珠が関連する人物で、ロオネル城に答えがある……」
「もしかしてっ……」
この呟きを聞いた瞬間、私たちはハッと同時に顔を見合わせ声を上げた。
「「マルガレーテ王妃!?」」
マルガレーテ王妃は、ロオネル王国の聖女と謳われる、建国史上最初の王妃様だ。しかも、彼女のマルガレーテという名前は真珠という意味がある。
もし、この真珠が彼女を指しているというのなら、最大の手掛かりは肖像画なのではないだろうか?
ということは――
「「王妃の大居室!」」
あまりにも閃きの息が合い過ぎる私たちは、興奮した勢いで両手を合わせて喜んだ。
しかし、ふと新たな謎があることに気付いた。
「王妃が秘めたる少年の『少年』ってどういうことかしら?」
「確かに、その謎はまだ解けてないね。でも、ヒントがあるかもしれない。とりあえず、王妃の大居室に行ってみよう!」
「ええ、行きましょう!」
今まで行き当たりばったりで撃沈していたが、今回ばかりは期待が込み上げてくる。
こうして私たちは、高まる鼓動に胸を弾ませながら、王妃の大居室を目指した。
◇◇◇
「なんて美しい場所なの……」
目的の場所に辿り着いた私は、広がる光景にうっとりと魅了されていた。
豪奢な壁のデザインに合うように、これでもかと贅沢に配置された鏡が、何個も吊るされた豪華なシャンデリアが放つ煌めきを反射している。
ダイヤモンドの中に入り込んだ。そんな表現がぴったりなほど、この鏡の間は非常に神秘的な美しさを孕んでいた。
「エリーゼ、あのカーテンの向こうに肖像画があるはずだ」
前方を差すリアスの指を辿れば、豪華なドレープカーテンが目に入った。私の身長の三倍はあろうカーテンの大きさに、思わず圧倒される。
私たちはカーテンまで辿り着くと、二人で協力してカーテンを左右同時に開いた。
すると、私の身長の二倍ほどあるマルガレーテ王妃の、まだ色褪せていない肖像画が現れた。
「美しい方ね」
肖像画に描かれていたのは、史実通り、亜麻色の髪に騎士にも負けぬ真のある緑眼を持った美貌の女性だった。
彼女には“結実の王妃”という通り名があるが、その名に引けを取らぬほど気品に満ち、堂々とした彼女の様子が、絵からもありありと伝わってくる。
それはいいのだが……果たして、彼女が秘めたる少年とはいったい何なのか。そして、その少年が持つ唯一無二の姿を持つものとは?
肖像画に何かヒントが隠されているかと思ったが、何もヒントが見当たらない。手掛り一つ、掴めそうな気がしない。
リアスもこの状況に焦ったのだろう。
「違ったか……?」
彼の形の良い眉がもどかしさに歪んだ。
だがその思い詰めた表情を見ていると、不思議と私の心には余裕ができた。
「リアス」
彼の名を呼び、手を握った。
「大丈夫よ。私たち二人なら、乗り越えられないものなんてないわ! 違ったらまた探せばいいのよ」
そう、思い詰めて立ち止まっても先には進めない。
できるという自信を持ってこそ、初めて前を向いて進めるのだ。
「そうでしょう?」
「エリーゼっ……」
リアスが感極まった声を出しながら私を見つめる。直後、胸に手を当て自信を奮い立たせるように言った。
「ああ、そうだ……。君がいてくれる俺に、乗り越えられない壁はないよ」
不意打ちの言葉に、思わず感銘を受ける。そんな私に、リアスは自信をみなぎらせた笑顔を向けた。
「エリーゼ、ありがとう」
リアスが流れるような手つきで、私が握った手を力強く握り返した。
そのときだった。
突然、私たちが対峙していたマルガレーテ王妃の肖像画が、ゆらゆらと歪み揺らめき、鏡に変わった。
しかし、そこに映ったのは私たちでは無かった。
不思議と親しみを覚える、リアスに似た5、6歳ほどの少年が映し出されたのだ。
――何が起こっているのっ……?
いったいこの子は誰なのだろうか。そう思った時、メーデイアが出した問題を思い出した。
『真珠が秘めたる少年が握る、唯一無二の姿を持つものを探せ』
もしかして、この少年とはこの子のことではないのだろうか。
「リアス、私たち正解に近付いたのかもっ……」
「いや、もう正解じゃないかな? あの子の手を見て」
リアスの言葉を受け、私は少年の手に目を向けた。すると、その小さな手に鍵が握られているのが見えた。
「唯一無二の姿を持つものって、この鍵のことじゃないかな?」
「確かにっ……。この状況だとそうとしか思えないわ」
私はリアスと顔を見合わせ、確信を得るように頷き合った。そして、再び少年の方へと視線を戻すと、鏡はまるで湖の水面ようにゆらゆらと揺れていた。
「これって、手が入るのかしら?」
「分からない。俺が試してみるよ」
彼はそう言って鏡の方へと一歩踏み出し、長身をかがめて少年に話しかけた。
「初めまして。俺はリアスだ。実は君が持っている鍵が必要なんだ。こちらに渡してくれないだろうか?」
「……」
リアスの声掛けに対し、少年が口を開くことは無かった。その代わり、少年は手に持った鍵をリアスに差し出す動作をした。
「くれるのか?」
無言だが、少年が頷いて見せた。
リアスはその反応を見て、その鍵を手に取るために鏡の中へ恐る恐る手を差し込んだ。
「ありがとう」
お礼を言いながら少年が握った鍵をリアスが受け取り、鏡の中から手を抜き出した。
するとその手には、ちゃんと少年が持っていた鍵が現物として握られていた。
「エリーゼ!」
「リアス! これでついに――」
大興奮して、二人で喜びを分かち合おうとした時だった。
バリーン!!!!!!
少年も消え、肖像画でもなくなった鏡が、突然爆発したように割れた。するとその直後、シャンデリアが次々とガシャーンと音を立て落ち始めた。
「ど、どうしましょうリアス!?」
「とりあえず、入り口に逃げよう!」
あまりにも予想外の事態にパニックになりながら、私たちは必死に駆け出した。
部屋の最奥にある肖像画から入り口までは、それなりの距離がある。貴族女性として生きてきた私は走ることに慣れておらず、入り口までの道のりが遥か遠くに感じた。
しかし、シャンデリアは肖像画がある最奥から入口側の順に落ちてきている。となると、走り切れなかった私は後ろから落ちてくるシャンデリアに押しつぶされて死ぬしかなかった。
――ここで死ぬわけにはいかない。
ちゃんと戻るのよっ……!
走れないなど甘ったれそうになる自身の心に鞭を打つ。そのときだった。
身体が突然宙に浮いた。すると、初恋と称される美貌が目の前に飛び込んできた。
「リアス!?」
「エリーゼ、この鍵を持っててくれる?」
リアスはそう言うと、姫抱きした私に器用に鍵を預けた。そして、さきほどよりもスピードを上げて走り出した。
「リアスっ……ごめんなさい……」
「ここでは謝らないでって言ったのはエリーゼの方だよ? 君を守るのが俺の生きがいなんだ。だから、しばらく俺に抱かれていてね」
リアスはそう言うと、落ちてくるシャンデリアや、崩落を始めた建物の破片を器用によけながら、入り口側へと走り続けた。
成人女性を抱きながら走っているとは思えないほど、息一つ切らさず、凛々しい表情で走るその姿は、私の心を釘付けにした。
――私の夫、なんてかっこいいのっ……!
思わず鍵を握る手に力が入る。そのとき、突然目の前に謎の扉が現れた。
ふと、この鍵が重要な気がしてきた。
「リアス、あの扉ってもしかしてこの鍵で出るのかしら?」
「きっとそうだ! エリーゼ、頼む!」
「任せて!」
私がそう告げたとき、一番大きなシャンデリアがガシャーンと音を立てて落ち、屋根が一気に崩れ落ちた。また、壁沿いに設置された鏡も、一気にバリーンとけたたましい音を立てて割れ始めた。
リアスがそんな背後の音に釣られて、走るスピードを速める。そのおかげで、私たちは巻き込まれる前に扉の前に辿り着くことができた。
――あとはこの鍵を開けさえすればっ……!
準備していた鍵を、一気に鍵穴へと差し込み捻る。
すると――カチャリ、鍵の開く音がした。
一気に心に高揚感が押し寄せる。
こうして私は、リアスとともに命からがら、光に満ちた扉の向こう側へと飛び込んだ。
「もしかして、真珠というのは何かの比喩なんじゃないかな?」
ほんの少しワクワクとしたような表情をしたリアスは、さらに饒舌に語った。
「真珠が秘めたるって言ってただろ。だけど秘めるって言葉は、無機物に使わないよね?」
私はリアスの言わんとすることを察し、秘めたるという言葉の指すものについて考えてみた。
「あっ!」
すぐにこの閃きをリアスに共有せねば。
「もしかして、真珠って誰かを指した表現なんじゃないかしら?」
私の早口を聞き取ったリアスは、顎に右手を添える。
そして、国宝級の美術品のような相貌で思考を巡らせた彼は、ふと神妙な面持ちで口を開いた。
「真珠が関連する人物で、ロオネル城に答えがある……」
「もしかしてっ……」
この呟きを聞いた瞬間、私たちはハッと同時に顔を見合わせ声を上げた。
「「マルガレーテ王妃!?」」
マルガレーテ王妃は、ロオネル王国の聖女と謳われる、建国史上最初の王妃様だ。しかも、彼女のマルガレーテという名前は真珠という意味がある。
もし、この真珠が彼女を指しているというのなら、最大の手掛かりは肖像画なのではないだろうか?
ということは――
「「王妃の大居室!」」
あまりにも閃きの息が合い過ぎる私たちは、興奮した勢いで両手を合わせて喜んだ。
しかし、ふと新たな謎があることに気付いた。
「王妃が秘めたる少年の『少年』ってどういうことかしら?」
「確かに、その謎はまだ解けてないね。でも、ヒントがあるかもしれない。とりあえず、王妃の大居室に行ってみよう!」
「ええ、行きましょう!」
今まで行き当たりばったりで撃沈していたが、今回ばかりは期待が込み上げてくる。
こうして私たちは、高まる鼓動に胸を弾ませながら、王妃の大居室を目指した。
◇◇◇
「なんて美しい場所なの……」
目的の場所に辿り着いた私は、広がる光景にうっとりと魅了されていた。
豪奢な壁のデザインに合うように、これでもかと贅沢に配置された鏡が、何個も吊るされた豪華なシャンデリアが放つ煌めきを反射している。
ダイヤモンドの中に入り込んだ。そんな表現がぴったりなほど、この鏡の間は非常に神秘的な美しさを孕んでいた。
「エリーゼ、あのカーテンの向こうに肖像画があるはずだ」
前方を差すリアスの指を辿れば、豪華なドレープカーテンが目に入った。私の身長の三倍はあろうカーテンの大きさに、思わず圧倒される。
私たちはカーテンまで辿り着くと、二人で協力してカーテンを左右同時に開いた。
すると、私の身長の二倍ほどあるマルガレーテ王妃の、まだ色褪せていない肖像画が現れた。
「美しい方ね」
肖像画に描かれていたのは、史実通り、亜麻色の髪に騎士にも負けぬ真のある緑眼を持った美貌の女性だった。
彼女には“結実の王妃”という通り名があるが、その名に引けを取らぬほど気品に満ち、堂々とした彼女の様子が、絵からもありありと伝わってくる。
それはいいのだが……果たして、彼女が秘めたる少年とはいったい何なのか。そして、その少年が持つ唯一無二の姿を持つものとは?
肖像画に何かヒントが隠されているかと思ったが、何もヒントが見当たらない。手掛り一つ、掴めそうな気がしない。
リアスもこの状況に焦ったのだろう。
「違ったか……?」
彼の形の良い眉がもどかしさに歪んだ。
だがその思い詰めた表情を見ていると、不思議と私の心には余裕ができた。
「リアス」
彼の名を呼び、手を握った。
「大丈夫よ。私たち二人なら、乗り越えられないものなんてないわ! 違ったらまた探せばいいのよ」
そう、思い詰めて立ち止まっても先には進めない。
できるという自信を持ってこそ、初めて前を向いて進めるのだ。
「そうでしょう?」
「エリーゼっ……」
リアスが感極まった声を出しながら私を見つめる。直後、胸に手を当て自信を奮い立たせるように言った。
「ああ、そうだ……。君がいてくれる俺に、乗り越えられない壁はないよ」
不意打ちの言葉に、思わず感銘を受ける。そんな私に、リアスは自信をみなぎらせた笑顔を向けた。
「エリーゼ、ありがとう」
リアスが流れるような手つきで、私が握った手を力強く握り返した。
そのときだった。
突然、私たちが対峙していたマルガレーテ王妃の肖像画が、ゆらゆらと歪み揺らめき、鏡に変わった。
しかし、そこに映ったのは私たちでは無かった。
不思議と親しみを覚える、リアスに似た5、6歳ほどの少年が映し出されたのだ。
――何が起こっているのっ……?
いったいこの子は誰なのだろうか。そう思った時、メーデイアが出した問題を思い出した。
『真珠が秘めたる少年が握る、唯一無二の姿を持つものを探せ』
もしかして、この少年とはこの子のことではないのだろうか。
「リアス、私たち正解に近付いたのかもっ……」
「いや、もう正解じゃないかな? あの子の手を見て」
リアスの言葉を受け、私は少年の手に目を向けた。すると、その小さな手に鍵が握られているのが見えた。
「唯一無二の姿を持つものって、この鍵のことじゃないかな?」
「確かにっ……。この状況だとそうとしか思えないわ」
私はリアスと顔を見合わせ、確信を得るように頷き合った。そして、再び少年の方へと視線を戻すと、鏡はまるで湖の水面ようにゆらゆらと揺れていた。
「これって、手が入るのかしら?」
「分からない。俺が試してみるよ」
彼はそう言って鏡の方へと一歩踏み出し、長身をかがめて少年に話しかけた。
「初めまして。俺はリアスだ。実は君が持っている鍵が必要なんだ。こちらに渡してくれないだろうか?」
「……」
リアスの声掛けに対し、少年が口を開くことは無かった。その代わり、少年は手に持った鍵をリアスに差し出す動作をした。
「くれるのか?」
無言だが、少年が頷いて見せた。
リアスはその反応を見て、その鍵を手に取るために鏡の中へ恐る恐る手を差し込んだ。
「ありがとう」
お礼を言いながら少年が握った鍵をリアスが受け取り、鏡の中から手を抜き出した。
するとその手には、ちゃんと少年が持っていた鍵が現物として握られていた。
「エリーゼ!」
「リアス! これでついに――」
大興奮して、二人で喜びを分かち合おうとした時だった。
バリーン!!!!!!
少年も消え、肖像画でもなくなった鏡が、突然爆発したように割れた。するとその直後、シャンデリアが次々とガシャーンと音を立て落ち始めた。
「ど、どうしましょうリアス!?」
「とりあえず、入り口に逃げよう!」
あまりにも予想外の事態にパニックになりながら、私たちは必死に駆け出した。
部屋の最奥にある肖像画から入り口までは、それなりの距離がある。貴族女性として生きてきた私は走ることに慣れておらず、入り口までの道のりが遥か遠くに感じた。
しかし、シャンデリアは肖像画がある最奥から入口側の順に落ちてきている。となると、走り切れなかった私は後ろから落ちてくるシャンデリアに押しつぶされて死ぬしかなかった。
――ここで死ぬわけにはいかない。
ちゃんと戻るのよっ……!
走れないなど甘ったれそうになる自身の心に鞭を打つ。そのときだった。
身体が突然宙に浮いた。すると、初恋と称される美貌が目の前に飛び込んできた。
「リアス!?」
「エリーゼ、この鍵を持っててくれる?」
リアスはそう言うと、姫抱きした私に器用に鍵を預けた。そして、さきほどよりもスピードを上げて走り出した。
「リアスっ……ごめんなさい……」
「ここでは謝らないでって言ったのはエリーゼの方だよ? 君を守るのが俺の生きがいなんだ。だから、しばらく俺に抱かれていてね」
リアスはそう言うと、落ちてくるシャンデリアや、崩落を始めた建物の破片を器用によけながら、入り口側へと走り続けた。
成人女性を抱きながら走っているとは思えないほど、息一つ切らさず、凛々しい表情で走るその姿は、私の心を釘付けにした。
――私の夫、なんてかっこいいのっ……!
思わず鍵を握る手に力が入る。そのとき、突然目の前に謎の扉が現れた。
ふと、この鍵が重要な気がしてきた。
「リアス、あの扉ってもしかしてこの鍵で出るのかしら?」
「きっとそうだ! エリーゼ、頼む!」
「任せて!」
私がそう告げたとき、一番大きなシャンデリアがガシャーンと音を立てて落ち、屋根が一気に崩れ落ちた。また、壁沿いに設置された鏡も、一気にバリーンとけたたましい音を立てて割れ始めた。
リアスがそんな背後の音に釣られて、走るスピードを速める。そのおかげで、私たちは巻き込まれる前に扉の前に辿り着くことができた。
――あとはこの鍵を開けさえすればっ……!
準備していた鍵を、一気に鍵穴へと差し込み捻る。
すると――カチャリ、鍵の開く音がした。
一気に心に高揚感が押し寄せる。
こうして私は、リアスとともに命からがら、光に満ちた扉の向こう側へと飛び込んだ。
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