俺の人生をめちゃくちゃにする人外サイコパス美形の魔性に、執着されています

フルーツ仙人

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番外 七  マルチバース 不仲世界編

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 要するに、ダリオは、あの人外の青年——テオドールを好きになってしまったのであった。
 旧校舎で呼んだら助けに来てくれた時点で、その辺りは自覚も受容もかなり明確にあったのだが、事態がそれどころではなかったのであまり意識しないようにした。
 そもそも旧校舎で自覚したというよりは、かなり初期からそうだったのである。初手拉致監禁、これまでの怪異への恐怖や警戒に値する経験から、心を開くのが容易ではなかっただけだ。
 これまでずっと、怪異関連については誰かに助けを求めることもできず、求めても助けてもらえなかった。そういう状態にあって、辛い、怖い、嫌だ、という気持ちを諦観が押し潰して来た。
 何度も陰から助けてもらって、見返りも求めず、本人は半ばストーカーではあるが、ダリオが怖がっていた怪異を追い払ってくれた。家の前で護るように立ち尽くされ、何も言わずに去るなどされて、気持ちが動かないほどダリオも冷徹ではない。
 むしろ、ダリオが閉ざしていたやわらかいところに、無理強いせず、そっと触れるようで触れないその行為こそが、頑なな心を優しく溶かし、こじ開けたのだ。ダリオは、テオドールにそうされるのは嫌ではなかった。逆に、そわそわと落ち着かなくさせた。
 それは確かに、尊重され、大切にされているという感覚だったのだ。
 ――無理、そんなの好きになる。
 ようやく心を開こうとして、その矢先に連絡がとれなくなった。
 怠慢だったのだ。話せる時に、話そうとしなかった。
 今更そう思っても、遅きに失していた。
 どうしたら会えるのか分からない。会おうと思って、ダリオは相手のことを何も知らないのだと今更ながら痛感させられた。
 これもダリオの怠慢である。
 相手の好意で、連絡も支援も成り立っていたのだ。ダリオからは何も働きかけてこなかった結果だった。
 相手のために、生活すべてをなげうって、自分の現在と未来の維持や投資を怠ることはできないが、勉学とアルバイト、家事の隙間を縫って、ダリオはテオドールを探した。
 手がかりなどない。
 怪異のことは怪異に聞くしかないかと、比較的安全なものに、テオドールの行方を知らないか尋ねて歩いた。
 どういうわけか、怪異とのエンカウント率が激下がりしていて、こちらも難航した。
 最後にあの青年が何かしたのだろうと思う。
 鏡の妖精が、マーキング、といっていたが、それだろうか。
 その鏡の少女も姿を現さなくなってしまった。
(なんか俺、避けられている――)
 多くの怪異に避けられているのを自覚する。どう考えても、旧校舎事件以来だ。
 だが、それも永久にというわけではなかったようだ。
 マーキングが薄れていったのか、ぼちぼちとダリオの周辺で、まだしも無害な怪異が姿を現すようになり、ある日、鏡の少女がダリオのボロアパート、302号室に現れたのである。


『あ~~~~~やっと、ウザいの取れてる~~~~~』
 バスルームのミラーに現れた鏡の少女の第一声はそれだった。やはり、マーキングが施されていて、それが薄れた結果らしい。
『べったべたにアイツのけはいついてて、すっごく怖かったんだから! 謝って!』
 なぜかダリオが謝罪を要求される。ダリオはおざなりに謝り(ダリオにはそういうところが多々ある)、テオドールのことを知らないか、割と焦燥感をにじませて尋ねた。
 鏡の少女は、嫌そうな顔をする。
『何よ~ダリオ、ちょろ過ぎ!』
 ちょろ過ぎると言われて、ダリオは黙る。自覚はあった。
「そうかもしれんが、あんなに大切にされたら……好きになる」
 ダリオは恥ずかしいとは思わなかったので、真顔で告白した。
『は~~~~? だったらあたしを好きになるとこでしょ⁉』
「ええ……」
『ええとはなによ⁉』
 も~~~~~~! と鏡の少女は地団駄を踏んでいる。その後、は~と嘆息して、なにがしか折り合いをつけたらしい。
『仕方ないわね~ダリオとはつき合いも長いし……ほんとはヤなんだけど!』
 ちゃんと命乞いしてよね! と唇を拗ねたように突き出し、『手ェ出しなさいよ』と言った。
「? ああ」
 バスルームの洗面台鏡に向かって手のひらを合わせたダリオの手首を、見かけによらぬ怪力で、がしっと少女はつかむ。
 え、と思うや、そのままダリオは一気に鏡の中へ引きずり込まれた。
 と思ったのだが、
「二度としないと言ったのでは?」
 艶やかな美声とともに、背後から引き戻される。
『キャ―――――! ダリオ、はやくはやくはやく! ハリーハリーハリー!!! 早く命乞いして!!!』
 鏡の向こうで、少女は悲鳴を上げながら、金縛りにあったように、びたっと手をエプロンドレスに張り付け、直立不動に不可視の何かに縛り上げられている。
 ダリオはとりあえず、背後の青年——テオドールに少女を解放するように言った。というか、事態に思考が追いつかない。
「……」
 青年は無言になったが、ダリオが発言撤回するようすがないのを見て、不可視の拘束を解いたらしい。少女は脱兎の勢いで鏡の中から、別の鏡へと移動を決めたようだ。
『ばーーーーーーーか!』
 子供の罵倒か。というような捨て台詞を残して、少女が消え去ると、青年は害虫でも見るような目つきで鏡に映っている。
 少女はテオドールを怖いと言うわりに、けっこう神経が図太い。
 それはそれとして、鏡の少女は故意にやったらしいのは理解した。あとでお礼をしなければなるまい。
 ええと、とダリオは上半身をひねって尋ねた。
「呼んでも二か月ほど姿現さなかったが、何かあったのか?」
「……二か月?」
 あれ、と思った。本人は理解していなかったらしい。
「何度か呼んだが、来なくて……ああ、別に危険があったわけじゃないんだが、それももしかしてマーキング? とかいうのしてくれてたのか?」
「勝手にすみませんでした」
「いや、それは助かったし、二か月怖い目に合わなかったからな、ありがとう」
「……前回、説明したつもりで。失念していました」
 うん? とダリオは止まる。なんか、めぎょ、というような音がして、ズアッと影が爆発して、また足元に引っ込んだやつか。あれ混乱してたのかな、と後から思った。色々すっ飛ばして説明を失念していたらしい。
「そうか。あと、呼んだら来るって言ってたから、なんかあったかと思って」
 あるいは愛想を尽かされたかと思った。
「……すみません。少し、並行宇宙に行っておりましたので……」
 ちょっとその辺散歩するみたいに、少し並行宇宙に行っていたって、意味わかんねーなとダリオは思ったが、これもそうかと流した。本人がそう言うならそうなのだろう。ダリオにはこういうところがある。
「分からないが、並行宇宙? とかだと、呼んでも聞こえないんだな」
「いえ、そのようなことは」
 ん? じゃあやっぱり無視されてたってことか、とダリオは固まった。
「どこにいてもダリオさんの声が聞こえないことはないのですが……並行宇宙のダリオさんと接触していたため、同位体における波の波形が重なり……つまり、写真のネガとポジのように、重ねると打ち消し合って聞こえなくなっていたようです。思ったより時間のずれも生じていたようで、申し訳ありませんでした」
「謝る必要はないが……あー、つまり、俺の声がそもそも聞こえてなかったのか。なんだ……」
 なんだ……とダリオは肩から力が抜けた。
「無視されるのってけっこう辛いよな」
 あてつけのつもりではなく、しみじみとダリオは言った。我が身を振り返ると、ストーカー相手になら問題ないにせよ、テオドールのことを『違う』と分かった以降は、自分の頑迷さが招いた非道だったと思う。
「長期間、俺も君を無視、面と向かってやって、ごめん……」
 もともとそれはよくないこととは知っていたが、実際自分がされてみると、頭で理解している以上に辛いことだった。
「今更ムシがいいけど、関係改めたかった。ただ、遅すぎて、さすがに愛想つかされたかと思って……そうなっても仕方ないとは思うし、身勝手だけど、俺、」
 怖くて、とダリオは足元に視線を落とした。
 もう会えないかと思って。
 ぽたり、とバスルームに敷いたブラウンカラーのマットに黒い染みが出来て、あ、とダリオは驚く。
 涙腺が弱くなり過ぎだ。こんな場面で泣き落としとか、卑怯すぎる。いや、人外に通用するのか知らんけど、ここで泣くのはフェアじゃないだろう。そうは思ったが、たつ、とつ、と遅れてまた水滴がマットに落ちる。
 連絡を取ろうにも、自身の怠慢で相手のことが何もわからない。どうしたら会えるのかわからず、そもそも愛想を尽かされ、距離を置かれている相手を執拗においかけるとかどうなんだ、迷惑じゃないのかとか、本当は色々考えていた。
 最後に、呼べば来る、と言って別れたから、それを頼りない一本の藁でつかみ、時間の隙間を縫って、歩き回り、探したのだ。
 自分から長い間相手を無視していたのだから、ここで相手に請い願うのは、自分の方だろうと、どうにか顔を上げる。
 勇気を出さねばなるまい。そして、断れたらちゃんと引く。それが怖かったのだ。
「本当にごめん。最初、別のとこ連れてかれて怖くて、でもその後、何度も助けてもらって、感謝してる。他の怪異とは違うんだなって、俺わかってたんだ。前回も、呼んだら、助けに来てくれて、嬉しかった。ありがとう。前回のが理由ってわけじゃないが、俺……」
 好きに、好きになってしまって、と声を絞り出した。
 時期尚早に、全部ぶっこみ過ぎだろ、俺、とも思ったが、ダリオは固辞されたら大人しく引くつもりだった。
 なぜ、会えないのではないかと怖くなって、涙まで流してしまったのか、もう正直に言わないと説明がつかないと思い、全部ぶちまけたのだ。
 そうしたら。
 テオドールは恐ろしいほど無表情で、ダリオを凝視するよう見下ろしていた。
 ああ、さすがにこれは、とダリオも察して、次第に視線が下がって来る。断られるな、と覚悟を決めた時だ。
 ざわ、とテオドールの足元が波打った。
 目を見開くと、気のせいではない。彼の靴裏から、何かが這い出て飛び出しそうになるのを、抑えつけるかのようにして、それでも抑えきれず、足元が波打っている。
 もしかして、前回も今回も、そっけなかったのは、このはみ出そうになっている何かの制御で手いっぱいなのでは、という疑念がダリオの中に湧いて出た。
「あのさ、ひょっとして、なんかしんどいのか?」
「……はい」
 少しでも気が削がれると、コースアウトしてしまいそうな何かを扱っているかのように、テオドールは言葉少なに肯定した。
「ええと、わからんが、前回みたいにはみ出そうになってる? 俺は別にかまわないから、解放したらどうだ?」
「……」 
「もしかして解放すると俺、死ぬやつかな」
「……ここ、では」
 ここではまずいらしい。
「最初に、俺が連れてかれたところならどうだ? あそこなら楽か?」
「……はい」
「移動可能か?」
「はい」
「じゃあ、移動して……俺はまたでいいし、というか、また会ってくれれば嬉しい」
 テオドールは苦しそうに愁眉を寄せた。更に辛いし、嫌なようだ。
「いや、我慢は体によくないだろ。行ってくれ」
「……嫌です」
 なんの我慢比べなのか、テオドールは拒否の意思だけは表情から伝わって来る。ダリオは困ってしまった。好きな子が苦しそうなのだ。どうしたら楽になるのか分からない。
「楽になってほしいんだが、行くのは嫌なんだな?」
 冷や汗のようなものを、鴉の濡れ羽のような艶やかな黒髪がかかる白皙の額に浮かべ、頷かれる。
「俺にできることあるか?」
「……今」
 ダリオは黙った。 
「はなれたく、ない、です……触れ、たい……」
 でも、とテオドールは口調がどうにも維持できないようだった。
「ぼく、いま、さわりが、かげん……できない……」
 障りがある、と。
 離れたくない。だから苦しいけれど移動したくない。そう言っているという理解でいいのか。そして、触れたいと要望が苦しげに漏らされたのを聞いて、ダリオは腹を括った。
「俺を連れて、最初行ったとこ、あのなんかよく分からん空間、飛べるか?」
 青年が猫のように、青が濃く深まる両眼を見開く。彼の目の中で、紫の炎が凍り付いた。
「ぼくは……にどと、しない、と」
 おやくそく、しよ、とおもって、と切れ切れに言う。
 できるんだな、とダリオは理解したので、再度重ねた。
「構わない。俺の意思無視すること、君はあれ以来、ずっとしなかっただろ。信じられるし、もしそうでなくても恨まない。連れてってくれ。それで、大丈夫になったら、帰してくれ。約束してくれるか?」
 青年は、じっとダリオを見つめた。やがて、こくり、と首肯する。
 耐えかねたように、青年の足元の闇が、一気に部屋を真っ黒に染めた。
 は、とつめていた息が、色香をしたたらせるよう濃密にからめて吐き出される。
 初手で連れ去られた空間とは少し違うような気がした。
「ダリオさん、触れても、いいですか……ぼく、」
 いやそれはぜんぜん大歓迎なんだが、とダリオはとりあえず腕を広げてみせた。障りがあると言っていたから、ダリオが触れていいか分からなかったため、待ちの姿勢だ。
「ああ、ダリオさん……ぼく、ぼく、ずっと、はなしたくて」
 ふつうに、はなしたくて、と言われ、もろもろ含めて言われているのは理解でき、ダリオは本当に後悔した。
 無視されるのは辛い。
 それをこの青年に仕打ちとして長期間やってきたのだ。
「ごめん、ごめんな……」
「ぼくが、はじめに、まちがえた、から……」
 もうにどと、しませんから、きらいにならないでください、と抱きしめるのさえ恐れるように、囲う腕の間に隙間がある。
「嫌いじゃないよ。好き……好きだ。触ってほしい。俺も、触っていい?」
 青年はどう答えたか。みるみる彼の体が大きくなっていくのを、ダリオは今度こそ恐れずに体を寄せて、頭を預けた。
 大きさは、元の1.5倍といったところか、美しさを損なわないままに、手足が黒く長くねじれるように肥大して伸びていく。人体バランスがおかしくなりながらも、異形の美とでもいうのか。黒々としたかぎ爪は黒曜石のようで、ぞっとするようなあやしい美しさはかえって繊細に鋭く、凄みを増したかに思われた。
「はんぶんだけ、はんぶんだけ、ですから……」
 うわごとのように言われ、なんとなく、空間が違うように感じたのは、より現実に近い状態に移行したのだろうと思った。テオドールは、ダリオを完全に最初の領域に連れて行くのを嫌がったのだろう。あれで、関係が底抜けに悪化したのだ。恐れたと言ってもいい。
 だからだろうか、初手で連れて行かれた時は、理性を保って冷静な様子に思われたが、かえってタガが緩んでいるようにも見えた。
 ただ、隙間を保って、ダリオの輪郭に触れないようにしてきたのを見ても、傷つけないようにしている。
「だりおさん……だりおさん……」
 歪曲した鋭いかぎ爪が、つ、と恐る恐るダリオの衣服の上から胸元に触れ、ろっ骨を辿る。しかし、すぐに熱い炎に触れた獣のように、さっと引いて、様子をぎらぎら光る目でうかがった。
「いいよ。もっと触って。いっぱい触ってほしい。ただ、爪、凄いな。かっこいいけど、痛くないようにできるか?」
「できます……ぼく、できますから……」
 知能が落ちているというより、なんかすごい興奮されてるのかなと思った。性欲とも少し違って、そばにいたい、というのだけは伝わって来る。
 ダリオが嫌がったから。
 ずっと、話かけられるのも、そばに来られるのも、見られるのも。
 ダリオが嫌がったから、律儀に全部封じて、危険な時だけそばに来て、すぐに離れて、接触を最低限にしようとしていた。
 ダリオは目頭が熱くなった。
「すき……」
 鼻声になりそうになって、それでも伝える。
「すき……すき……触っ、て。奥まで、いいから……俺、したい。セックス、できる……?」
 性急かと思ったが、そうでもないとすぐに結論した。離れていた分、粘膜の奥の奥までくっつきたい。そうすることで、もっと伝えられると思ったから、ちょうどいいタイミングなのだ。
 ふたつの影は、互いに囁き合い、話し合って、やがて重なり合うと、離れがたいように互いを抱きしめ合った。
「ん、ん」
 おそるおそるキスして、すぐに離れ、また隙間が耐えられないように口を合わせる。再び離れては、唇を舐めて、吸って、次第に深くなりながら、もう離れられなくなる。相手の舌をダリオの口は懸命に受け入れた。ダリオの人外よりずっと小さな爪が、カリカリ、と大きな相手の爪の上を引っ掻いた。やがて、ぐぷり、と身を沈めていく。あ、あ、と小さい方は喘いだ。それは、異形の巨大な影と、非力な人間のものではあったが、大きな方は小さな方を壊さないように大切に、小さい方は大きい方を、その背に腕を回して。
「あ、あ、あっ」
「ダリオさんッ、だりおさん……いやじゃ、ないですか? ぼくのこと、きらいじゃ、ないですか?」
 精神不安定か……とダリオはどこかで思った。ダリオには本当にこういうところが多々ある。
「やじゃな、すき、すきっ」
 ダリオの内壁が、きゅう、きゅう、と相手を吸い上げ、あいしてるとキスした。
「ああ、だりおさん、ぼくも、ぼくもすき……」
 艶のある低い声が、耳元に囁き、長い舌を入れてくる。ダリオの腰が、よじれながら、かくかくと浮き上がった。咥え込まされた巨大なペニスが、みっしりと空洞を満たし、ダリオの手前の悦点を削りながら、ごりごりと奥を抉っていく。
 圧迫感が甘い疼きをもたらし、痛覚というものがすべて快楽に裏返る。ダリオはハートマークの語尾になっている嬌声を上げた。   
 ぐりぐりと奥を擦られて、射精するよりも、にょるっ、と輪をくぐり抜けられる絶頂感に、ダリオは凄まじい快感の状態がずっと続いている。
「あっあっ」
 うつぶせて、片足を黒い爪の生えた大きな手で持ち上げられ、かつぐようにされながら、更にイっている最中にぐいぐい奥をこね回され、押し潰すよう幾度目かの吐精をされる。
「~~~~ッ♡ ッッ♡ っ♡♡♡」
 がくん、と胸がつきだされて顎が仰け反った。長い舌先がダリオの短い舌を引っ張り出して愛撫し、ぴちゃぴちゃと唾液をすする。は、は、と喘ぎながら、
「てお……もっと、いい。から。いっぱい、おれのなか、出してぇっ♡♡♡♡」
 押し出されるように、ダリオのペニスの先端から白濁が零れた。
 きゅうきゅうとする内壁が、テオドールの異形の怒張をあむあむと喰い締めて、どうしようもないくらい愛しいと愛撫する。ぱくうっ、と奥が開いて、喜びながらテオドールのペニスの先端を咥え込むと、さきっぽをぱくぱく食んでは、体の深いところで舌を絡めるようにディープキスした。
 はじめてなのに。他人とはじめて深く体をつなぐのに、ダリオは気持ちよくて、嬉しくて、幸せでいっぱいになった。
「あーっ♡ あーっ♡」
 頭のてっぺんから手足の指先まで、甘く、痛いような多幸感の痺れに満たされる。
 こころのもっともやわらかいところ。
 テオドールに触れられている。
 そこをひらいて、みせて、あまえて、もだえるのはこんなに気持ちいい。
 心を触れ合わせるのはこんなに気持ちいい。
 テオも、君も、俺のここで、気持ちよくなって。
 心の中にテオが入って来る。互いのそれが、身を捩り、悶えて、魂の尾を絡みつかせながら、ぐちゃぐちゃとなって溶け合う感覚。
 恍惚の先にある法悦感。
 は、あ、ああっ、と泣きじゃくりながら、奥深くに白濁をたくさん注がれて、ダリオは頭が再度ぶっ飛んだ。
「しゅき、しゅきっ、てお♡♡ らいしゅきぃいいい♡♡♡♡」
「んんぅっ、ぼくも、すき、すき……」
 持ち上げられた足で開脚させられながら、片方の乳首をこねくり回された。じんじんと通電するような甘い痒みと、腹底を先端で抜き差しされるたびに、とてつもない快感があぶくのように生じて、中から性器の外へ快楽を通すだけの壊れた蛇口になる。結果、漏らしてはいけない液体を断続的絶頂感とともに漏らしながら。
 ダリオは、ふぁあああん♡ ともう駄目過ぎる状態でたっぷり種吐けされた。


 なんかもう俺終わったな……とダリオは思ったあたり、微妙に冷静な第三者視点で自分を見下ろしてしまう彼のゆえんなのだった。



 その後、テオドールは色々発散できたのか、無事に現実へ帰還して以降、真顔無表情に戻っていた。
 ダリオもちょっと脳内お通夜だったが、おおむね幸せである。
「そういや、この旧校舎見取り図、中心に並列便所並んでるのなんだったんだろうな? 被害者児童に描いてもらったっていうスケッチも、子どもが感覚鋭くなって、霊感もどきな感じになることはあるが、やたらトイレの心象で幻覚見えたし」
「ああ、それは恐らく」
 とテオドールがアディラの残した資料とつき合わせて見せた。
「ダークウェブで特に脅迫・暴行によって大金のやり取りが成立していたチャットルームの仮想空間におけるイメージ実体化でしょう。それぞれこちらの『便所』表記対応のルームが五つ」
「あーなるほど。子供らはこれが便所に見えてたんだな……」
 しかし、テオドールの口に『便所』とか言わせてしまって、俺大丈夫か? 天罰くだらんか? とどうでもいい方に思考を飛ばすダリオなのだった。
 意思疎通努力の末に、人外と人間は、ひとまず平和な午後である。
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