俺の人生をめちゃくちゃにする人外サイコパス美形の魔性に、執着されています

フルーツ仙人

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番外 三十三.五 しゅきしゅき言語崩壊回

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 寿命を削った云々の話をした後である。
 しばらく身を寄せ合っていたが、次第に落ち着いてきた。
 ダリオも状況把握ができてくる。
 当初は、テオドールの夢の中で、館を彷徨い、最終的に寝室のベッドの上にいたふたりだ。しかし、青年の彼が現れた時点で、夢の中からやや現実世界との間のような場所に引っ張り上げられた感がある。
 レイヤーが切り替わったとでも言うべきか。
 睡眠中のテオドールから、覚醒したテオドールの意識のレイヤーに気づくと移動させられた。
 テオドールとふたりでいると、現実にいても突然周囲から切り離されたり、夢と現実の中間のような場所に連れ込まれたり、更にもっと支配者の領域らしき暗黒空間に招かれたりで、ダリオは今回は狭間コースかなぁと思った。
 少し話して、そろそろ現実世界に戻してもらい、よく寝よう。後のことはそれからだと思っていたのだが、全部嘘だ、ごめんなさいになった。
 テオドールがくっつきたがったので……いや、この言い方は大変卑怯で、ダリオもテオドールにくっつきたかった。
 お互いに人の姿で抱きしめ合い、身を寄せ合っていて、相手のことを大切に思える。
 しかし、もっとたくさん面積をぎゅうぎゅうに包んでもらえるのを知っていると、そっちもしたいと言われれば、俺もそれやりてぇなと気持ちが傾いてくるのだ。
 全身ぴったりくっついて、隙間なくしたい。お互いの意見の一致を見て、じゃークソデカぽよぽよのあれになるか? とダリオもだいぶん怪しい言い回しになった。
 テオドールは名月を思わせる端正な顔を驚いたように硬直させ、
「……そうします」  
 と少し考える風に、間を置いて返事した。
 それどういう感情なんだ? とダリオも謎に思う。
 時々テオドールはダリオに対して妙なフリーズ反応を見せる。すぐに再起動するのだが、どうも思わぬ提案や言動をダリオからされた時にこうなりやすいようだ。
「では、失礼して」
 テオドールは断ると、少しダリオから距離を取った。変化するらしい。ぐぐっと彼の姿が縮み、存在が陽炎のほどけるように膨れ上がった。周囲の光景も、寝室がまるで油絵の具の溶けるようにして崩壊し、虫食いじみたインクで黒く塗り潰されて行く。ダリオの体感では、一応まだ夢と現実の中間で、模様替えしたなぁ、くらいの感覚だ。
 テオドールもまた、ダリオの目の前で、クソデカぽよぽよのかろうじて人型っぽい形態へと変わっていく。
 水饅頭のクソデカ人型形態とも言える。体積を増やしていって、巨大な人型に形成したようなそれだ。ダリオはこの形態がけっこうお気に入りである。大きなテオドールの膝に乗せてもらって、ぬいぐるみのようにぎゅっと抱っこしてもらえるからだ。親にそうしてもらえなかったから、テオドールにそれを求めている部分もあるのかもしれない。パートナーを親代わりにしてはいけないとダリオにもわかっているのだが、どうしても相対的に自分が小さくなって、ぎゅうっと抱きしめてもらうと、ダリオは頭がぽーっとした。
 だって、俺、こんな風にしてもらったことねーもん。
 テオにしかしてもらったことねーんだもん、と半ば自分でもコントロールできない安心感で、ダリオはそのような自分をそうなもんはそーなんだから否定しても仕方ないとも思っていた。
 できれば治していきたいが、今のところそうなってしまう。
 親にしてもらいたかったことを、パートナーに代替させる状態について、開き直るまではしたくない。ただ、大好きな人に、抱きしめてもらって、包みこんでもらって、嬉しいなぁ、というのは構わない気がした。
 テオドールが小さくなっている時は、代わりにダリオが小さな彼を、ぎゅっ、とできる。テオドールは、そのまま自身を愛されることに忌憚がなく、割と素直だ。ダリオに、きゅ、と短い腕を伸ばして、ほっぺをすりすりしてくる。彼は、ダリオを親代わりにするようないびつなところはない。そこも見習いたい。
 ダリオがごちゃごちゃ考えているうちに、テオドールの変化は終わっていた。
 本体の巨大な闇より、まだ人型の名残がある。イチャイチャラブラブしてる感が分かりやすい。本体はあれだ、さすがに人知の限界を超えている。ダリオの理解範疇を遥かに凌駕する精神的交合も入ってくるので、なんか凄かった……となるが、イチャイチャしたのか? と謎感も大きいのだ。その点、クソデカぽよぽよ人型形態は良い。なんといっても分かりやすかった。ダリオは分かりやすいのが好きだ。イチャイチャしたい。
 お望み通り膝の上に抱きかかえるように乗せてもらって、ダリオは半身をひねると振り返る。テオドールは目を作っていたので、お互いに視線を合わせる形になった。
「ダリオさん」
 巨大な顔が寄ってきて、ダリオは押し倒されるように背中が仰け反った。指一本でダリオの腰に回ってしまうほどの大きな手指が腰や臀部を支え、わずかな指圧を与えてくる。
 テオ、と彼の顎に指をかけ、更にふたりは密着した。
「ダリオさん、キスしてもいいですか?」
「ん……テオ、口作って、舌も……舌、」
 欲しい、と言えたか。 
 大きな口がダリオのそれに、優しく触れた。テオドールはいつも慎重だ。すぐに離して、様子を窺うようにする。優しく何度も唇を少しだけ触れてきて、またすぐ離して、ダリオがもういっぱいしてくれと思うまで繊細に繰り返してくる。
 焦らしているわけではない。それはわかるのだが、官能だけぐるぐると触れられたところから腰の奥や性器の付け根に重く溜まってきて、もうどうにかしてくれと身も世もなくすがりつきそうになる。
 少しずつ、大きな舌先がダリオの唇を割って、苦しくないようにそっと入れてもらえると、ダリオは力を抜いて、一生懸命短い舌で愛撫した。
 お互いの舌先を擦り合わせて、必死に舐めているだけで、じんじんと痺れるような多幸感に体中が支配される。
 セックスできなくてもいい。 
 キスできなくなってもいい。
 テオドールに抱きしめてもらえなくなっても良い。
 もし青年が力を失って、無力な存在になっても、よくはないけれど、ダリオがテオドールを好きなのは彼が無敵だからではなかった。
 ずっとテオドールが小さな水饅頭の彼にしかなれなくなってしまっても、一緒に解決方法を探すが、ダリオはきっとテオドールが好きだ。
 テオドールがダリオを抱きしめられなくなっても、ダリオが抱きしめる。
 でも、そうならないように最善を尽くす。
 テオドールが不便を感じたり、辛くなったりするのは、ダリオだって全く本意ではない。
 まして、彼の夢見たような未来は。
 頭がふわふわしながらも、ダリオはどこかで自分の誤りを修正した。
 人間の夫婦がお互いに心理的断絶をすれば離婚し、愛し合っていても死がふたりを分かてば、遺された人はその後の自分の人生を生きる。
 健全に生きようとすることを、ダリオは肯定してきたが、支配者はそもそも『そう』ではないのかもしれない。
 花を失った支配者は、もう健全に生きられない。あのファイアーウィークをもたらし、消えていった支配者のように、壊れ、自壊してしまう。そういう種族なのかもしれない。人間とは違う。
 ダリオがいなくなっても、テオドールには彼の人生を豊かに幸せに過ごしてほしいと思うのは、願うのは、そもそも成立しないことなのでないか。そのくらい、種族として前提が違うのではないか。
 わからない。ダリオは何もわかっていなくて、聞かないと分かりえない。聞いても多分本当にはわからない。
 人間だって、百人いれば百通り望みが違う。
 支配者なら尚更だ。
 テオドールがどう考えていて、決して譲れないことや、生理的にどうしようもないことや、そういうことを無視して、ダリオが勝手に自分の思い描いた幸せを青年に押し付けるのは、結局あの夢を現実にしてしまう行為だったのではないか。
 だから、テオドールは寿命を削って、一緒にいられるように、人間のダリオに合わせてきた。きっと、ダリオが怖がっていたから、少しでも寄ってきてくれた。
 俺もそうしたい。テオドールが怖がっていることを、軽減したい。
 テオドールが大切だ。だいすきだ。彼を愛している。あんなさびしい悲しい夢のような思いをさせたくない。
 テオドールを幸せにしたい。彼と一緒に幸せになりたい。ダリオはもう十分幸せだから、ずっと一緒に幸せでいられるように努力したい。
 そのために、自分ひとりで勝手に思い込まずに、テオドールののぞみを聞いて、ふたりで楽しく残りの人生を歩いて行きたかった。
 ふたりで荷物を分け合って、片方が重すぎる荷物を持つことなく、一緒に背負うし、様々な景色や人との関わりを楽しみたい。
 この先ふたりの人生はずっと続くのだから。
 そう思うのと同時に、やはりテオドールがまるで夢の存在のように都合が良くて、ある日この夢は覚めるのではないかという感覚もダリオにはまだあった。
 長い未来以上に、想像しやすいその夢のさめる瞬間はリアルで、ダリオはそちらをずっと生々しく感じて怖がっている。
 でも、テオドールがこうして、ダリオを抱きしめてくれると安心して、キスしてもらうと頭がふわふわして、太くて熱い性器で中からたくさん擦ってもらうと、嬉しくて気持ちよくて大丈夫な気がしてくる。
 それも根本的な問題と対決や直視を避けて、逃避している部分は否めないが、少しずつ折り合いをつけていくしかないのだろう。
 課題はたくさんある。
 その課題解決も、楽しみながら生きていけるといい。
「ん゛う、っん、んんっ」
 段々わけがわからなくなってきて、涙目になってくるし、実際ダリオは気持ちよくて泣いてしまった。さすがにセックスする頃には青年型のテオドールに戻って、くちゅくちゅ中をたくさん指で押してもらい、今日は少しだけ、という前置きで性器も挿入してもらう。含まされた亀頭が悦点を擦り、前後するたびに、ダリオは目の前に真っ白な快感が、マグネシウムを焚くように弾けた。
「ダリオさん、好きです、大好きです。愛してる、愛してる」
 珍しく、テオドールは焦り言い淀むように切羽詰まって繰り返した。
 その瞬間、ダリオは嬉しいという気持ちで、性器の先端を咥えこまされているだけなのに、体の奥底の深い部分から、甘く鋭い、波のように押し寄せてくる長い絶頂感に体が浮き上がった。
「~~~~~~~~っッ、っ、ッ」
 その絶頂感は間断なく長い波で、押し上げられてはまた柔らかな何かに包まれ、更に絶頂へと連れて行かれる。
 がくがくと震え、痙攣する肉体をテオドールに優しく覆いかぶさって抱きしめられ、労られて、ダリオはようやくその背中に腕を回した。
 俺、ペニスの先端喰むだけでこれなのに、中に出されたらどうなるんだろうとどこかで思って、想像だけでゾクゾクとまた甘く中イきした。テオドールの亀頭から張り出した笠までを甘い飴でも舐めしゃぶるようにちゅうちゅう喰い締めては、少し緩めてまた奥に引き込むよう吸い上げてしまう。
「てお、すきぃ……だいすき……うれし、うれしいよぉ」
 繋がれて嬉しいと言いたいのだが、アホみたいなセリフになってしまった。繋がれなくても、別にいいというのも言いたかったが、よだれがだらだら出てきて、頭がスポンジになってしまったようだった。
 ペニスをずるんと引き抜かれて、くぱくぱさみしいと開閉してしまうそこを指でまた愛撫され、少しずつ減らしていって、快感の頂から引き戻してもらう。 
 ちゅぽん、と最期の指を抜かれると、前も擦ってもらい、俺、世話されすぎ、とダリオはまた泣いてしまったが、テオドールに僕もとても気持ちいいです、と死ぬほど美声で耳元に開陳される。は、と明らかに快感を覚えているらしい、低くつめた吐息が、抑えきれず漏れながら囁かれ、ダリオは体が溶けた。比喩だが、本当に腰が抜けて体が溶けたかと思った。
 ておどーるもきもちいい。
 うれしい。
 しんじゃう、おれ、しんじゃう。
 ダリオはまたイッてしまい、お漏らしした。
 ごめんなさい、ごめんなさい、と謝りながら、もっとして、まだしたい、やだ、もっとすると駄々をこね、考えこんだテオドールに、支配者空間に引きずり込まれて、上から下からたくさん差し込まれ、出し入れして、中にもいっぱい出してもらって、ダリオは出されなくなるのは嫌とか好きとかお嫁さんにしてお嫁さんになるテオのお嫁さんにしてと何を口にしてるのか分からなくなり、ぐちゃぐちゃにされた。さすがにもう十分である。
 たぶん、最後らへんは、いっぱい咥え込みながら、しゅき、ひゅき、ふぁぁん♡ とか言っていた気がするが、忘れることにした。
 本体はやはり危険だった。
 ほどほどにしたい。


 おわる
 
 
 
 


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