灯火

松石 愛弓

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 馬車はエルドル伯爵家へと向かった。
 サンダー男爵家から遠ざかっていく景色を眺めていると 心が軽くなっていくような気がした。
 治癒院の医師とも親しそうだったロナルドさんを 信じてみよう。
 背水の陣の私には 義父母妹以外の人の方がよほど信頼できると思えてしまう。
 
 貴族街の奥へ進むと エルドル伯爵家に到着。
 大きな門をくぐると 綺麗な噴水と色とりどりの花が咲き乱れる美しい庭園。
 その向こうに 大きなお屋敷が佇んでいた。

 ロナルドさんはご両親に私の事を説明し 素敵な部屋を用意してくれた。
 エルドル伯爵夫妻も ロナルドさんのように優しい人柄で 丁寧にお礼の言葉を述べてくれた。
 侍女の少女ララさんも優しそうな人で。私は緊張の糸が切れたように安心して ベッドに倒れ込んでいた。
 
 目を覚ますと 侍女のララさんがベッドの横の椅子に座って 私に付き添ってくれていた。
「お加減はいかがですか? 丸一日目を覚まされなくて心配しました。 何か召し上がられますか?」
 セミロングのブラウン色の髪。緑色のつぶらな瞳が 心配そうに私を見つめている。
 まるで 子猫のように可愛い雰囲気の少女。
 心身ともに弱っているときにこんな優しい光景を見たら ズキュンと胸を撃ち抜かれてしまう。
 幻聴、幻覚では・・。
 幸せに慣れてない私には アンビリーバブルなことばかり。

「大丈夫です。ありがとうございます」
 勇気を出して 幻覚と思われる少女に向かって答えてみる。

「そうですか。よかったです」
 ララさんは 嬉しそうに微笑んでくれた。
 もしかして 幻覚じゃないのかも。

『ぐう・・』
 空ききったお腹が突然しゃべりだして

「消化のよさそうなものをお持ちしますね」
 ララさんが優しく微笑み 扉の向こうへと消えた。

 程なくして 温かいスープとパンと果物を運んできて
 部屋のテーブルにセッティングしてくれた。
 スープをひとくち飲んで 私はやっと 現実だと実感できたのでした。


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