灯火

松石 愛弓

文字の大きさ
7 / 15

7

しおりを挟む
 ララさんが美味しい紅茶を淹れてくれて 3人で談笑しながらいただいた後、
 モーリスさんが火魔法を使うところを見せてくれた。

 モーリスさんの掌の中に小さなオレンジ色の炎が生まれて だんだん大きく育って 生き物のようにうねりだした。
 掌と掌の間で炎の形を整え 大きな耐熱ガラスの容器に入れていく。
 容器の中では炎の球がたくさん蠢いていた。

「まるで小さな炎が生きているみたい。これは何ですか?」
 炎のせいか 部屋の中は ぽかぽか暖かい。
「これは生物を温める炎。大きな炎を作ればストーブ代わりになるし、小さな炎ならカイロにもなります。寒い冬を乗り切るために 屋敷内随所に置いたり、伯爵家の方々や使用人の方々にも いろいろな大きさの炎を耐熱容器に入れてお配りしているんです」
 テーブルの上には たくさんの耐熱ガラス容器が並んで 炎を入れてくれるのを待っているように見えた。

 モーリスさんは 炎を愛おしむように ひとつひとつ丁寧に耐熱容器に入れていく。
「私も お手伝いできたらいいのに・・」
 ぽろっと 本音が零れてしまった。
「・・炎を触れるんですか?」
 モーリスさんが不思議そうに尋ねる。
「わかりません・・。でも なぜか 自分にもできたらいいのにと思ってしまって・・」
 炎が綺麗で 暖かく思えて 触りたくなってしまった。危ないに決まってるのに・・。
「ふむ。もしかして、フィーリアさんには火魔法の属性があるのかもしれませんね・・。手を見せていただけますか?」
 私が掌を見せると モーリスさんが私の掌の少し上に小さな炎を浮かべた。
 キラキラと燃える小さな炎は とても暖かい。
「熱いですか?」と訊かれて
「いえ。暖かくて 癒される光です」
 なぜか熱いと思えない自分を不思議に思った。
 モーリスさんが火魔法で作り出した炎だから?

 そのうち 掌の上に浮かんでいた炎は 私の周りを楽し気に飛び始める。
「やはり 火魔法の才能があるようですね」
 モーリスさんが納得したように頷く。
「こんなの初めて見ました!」
 ララさんは凄く驚いてる。 
 まるで 懐くように私の周りを飛び続ける小さな炎。
 ペットみたいに可愛い。

「モーリスさん、私に火魔法を教えてください!お願いします!」
 思わず平身低頭に拝み倒す。
 火魔法使いになって どこかで働けるようになって サンダー家に帰らなくても自立できるようになりた~い! 
 と 切実に思ったのでした。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

何も決めなかった王国は、静かに席を失う』

ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として、 表には立たず、裏で国を支えてきた公爵令嬢ネフェリア。 だが―― 彼女が追い出されたのは、嫉妬でも陰謀でもなかった。 ただ一つ、「決める役割」を、国が彼女一人に押しつけていたからだ。 婚約破棄の後、ネフェリアを失った王国は変わろうとする。 制度を整え、会議を重ね、慎重に、正しく―― けれどその“正しさ”は、何一つ決断を生まなかった。 一方、帝国は違った。 完璧ではなくとも、期限内に返事をする。 責任を分け、判断を止めない。 その差は、やがて「呼ばれない会議」「残らない席」「知らされない決定」となって現れる。 王国は滅びない。 だが、何も決めない国は、静かに舞台の外へ追いやられていく。 ――そして迎える、最後の選択。 これは、 剣も魔法も振るわない“静かなざまぁ”。 何も決めなかった過去に、国そのものが向き合う物語。

【完結】伯爵令嬢の25通の手紙 ~この手紙たちが、わたしを支えてくれますように~

朝日みらい
恋愛
煌びやかな晩餐会。クラリッサは上品に振る舞おうと努めるが、周囲の貴族は彼女の地味な外見を笑う。 婚約者ルネがワインを掲げて笑う。「俺は華のある令嬢が好きなんだ。すまないが、君では退屈だ。」 静寂と嘲笑の中、クラリッサは微笑みを崩さずに頭を下げる。 夜、涙をこらえて母宛てに手紙を書く。 「恥をかいたけれど、泣かないことを誇りに思いたいです。」 彼女の最初の手紙が、物語の始まりになるように――。

あの、初夜の延期はできますか?

木嶋うめ香
恋愛
「申し訳ないが、延期をお願いできないだろうか。その、いつまでとは今はいえないのだが」 私シュテフイーナ・バウワーは今日ギュスターヴ・エリンケスと結婚し、シュテフイーナ・エリンケスになった。 結婚祝の宴を終え、侍女とメイド達に準備された私は、ベッドの端に座り緊張しつつ夫のギュスターヴが来るのを待っていた。 けれど、夜も更け体が冷え切っても夫は寝室には姿を見せず、明け方朝告げ鶏が鳴く頃に漸く現れたと思ったら、私の前に跪き、彼は泣きそうな顔でそう言ったのだ。 「私と夫婦になるつもりが無いから永久に延期するということですか? それとも何か理由があり延期するだけでしょうか?」  なぜこの人私に求婚したのだろう。  困惑と悲しみを隠し尋ねる。  婚約期間は三ヶ月と短かったが、それでも頻繁に会っていたし、会えない時は手紙や花束が送られてきた。  関係は良好だと感じていたのは、私だけだったのだろうか。 ボツネタ供養の短編です。 十話程度で終わります。

あなたが決めたことよ

アーエル
恋愛
その日は私の誕生日パーティーの三日前のことでした。 前触れもなく「婚約の話は無かったことにしよう」と言われたのです。 ‪✰他社でも公開

不機嫌な侯爵様に、その献身は届かない

翠月 瑠々奈
恋愛
サルコベリア侯爵夫人は、夫の言動に違和感を覚え始める。 始めは夜会での振る舞いからだった。 それがさらに明らかになっていく。 機嫌が悪ければ、それを周りに隠さず察して動いてもらおうとし、愚痴を言ったら同調してもらおうとするのは、まるで子どものよう。 おまけに自分より格下だと思えば強気に出る。 そんな夫から、とある仕事を押し付けられたところ──?

偽りの愛の終焉〜サレ妻アイナの冷徹な断罪〜

紅葉山参
恋愛
貧しいけれど、愛と笑顔に満ちた生活。それが、私(アイナ)が夫と築き上げた全てだと思っていた。築40年のボロアパートの一室。安いスーパーの食材。それでも、あの人の「愛してる」の言葉一つで、アイナは満たされていた。 しかし、些細な変化が、穏やかな日々にヒビを入れる。 私の配偶者の帰宅時間が遅くなった。仕事のメールだと誤魔化す、頻繁に確認されるスマートフォン。その違和感の正体が、アイナのすぐそばにいた。 近所に住むシンママのユリエ。彼女の愛らしい笑顔の裏に、私の全てを奪う魔女の顔が隠されていた。夫とユリエの、不貞の証拠を握ったアイナの心は、凍てつく怒りに支配される。 泣き崩れるだけの弱々しい妻は、もういない。 私は、彼と彼女が築いた「偽りの愛」を、社会的な地獄へと突き落とす、冷徹な復讐を誓う。一歩ずつ、緻密に、二人からすべてを奪い尽くす、断罪の物語。

【完結】恋が終わる、その隙に

七瀬菜々
恋愛
 秋。黄褐色に光るススキの花穂が畦道を彩る頃。  伯爵令嬢クロエ・ロレーヌは5年の婚約期間を経て、名門シルヴェスター公爵家に嫁いだ。  愛しい彼の、弟の妻としてーーー。  

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」 お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。 綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。 今はもう、私に微笑みかける事はありません。 貴方の笑顔は別の方のもの。 私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。 私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。 ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか? ―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。 ※ゆるゆる設定です。 ※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」 ※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

処理中です...