黄泉津役所

浅井 ことは

文字の大きさ
239 / 243
新しい生活へ

.

しおりを挟む
「誰もいないから走ってていいよ」

「暑いよぉ」

「水場は日陰だからそっちに行こうか」

折りたたみの水入れにお水を入れると、少し飲んだ後に木陰を散策する風太。

カサッと音がして振り向くと、「こ、コンビニというところで……」と渡してくれたのは冷たいジュース。

「ありがとう。高……高之助は買い物とかはした事あるの?」

「たまには。コンビニというのは便利だが、スーパーの方が安いと思う」

「アハハハハ!スーパー行くんだ!」

「俺たちも支給金は貰えるが、安いに越したことはない。闇之助はその辺は無頓着だから……」

「闇之助が旦那さんで、高之助が奥さんみたいだったんだね」

「夫婦と言われるのは……ノーマルと言うやつだ」

「闇之助より人の世界のこと知ってるんじゃない?」

ポツポツとだが話を聞くと、闇之助が雑っていうのはよく分かる。

「家なんだが」

「ああ、二階建てって言ってたから、どんなのになるのかなー?とは思ってる」

「それほど大きく作らないと言っていた。今流行りの小さ見えるが中は広いと言うやつらしい。丈史……もし、俺のことが許せないのならば……」と俯いてしまう。
食事の時こそ明るくはしていたが、やはり気にはしてくれていたのだろう。

「とっくに許してる。ちゃんとみんなにも謝ってくれたし、腹パンはチャラにしとくよ」

「ごめん」

「いいって。それより、婆ちゃんが危険て言ったことが気になってて……」

「丈史も少しばかり言霊が使えるようだが、祖母殿は言葉そのものを操れる。多分無意識にだ……」

「どういうこと?」

「人をよく見ているからなのか、勘なのかははっきりしないが、相手の欲しい言葉を言ってくれるんだ。しかもその言葉には嘘はなく、耳に聞こえるというのでもなく、心に響く……上手く言えなくて悪いが」

「うーん、俺は一緒にいるからわかんないのかな?でも、悩んだ時とかに顔に出るんだと思うけど、婆ちゃんに何か言われると気持ちが軽くなるんだよね」

「感覚的にはそうなる。丈史もよく似た言葉を使うからにておるのだとおもうが、使い方によっては相手を傷つけることもある」

「気をつける。神社でも俺、みんなを守れる力が欲しいって言っちゃったし。そうだ!その辺は闇之助より教えるの上手そうだから高之助が教えてよ」

「お、俺?」

「うん。頭脳は高之助。体力おばけは闇之助って所かな」

これからは神社に帰っている時も、その後に神社に滞在していても家に帰ってきても家族なんだからと言うとまた泣いてしまう。

この泣き虫やろう!

まてよ?

「泣き虫の兄貴はいらないよ?」

「泣き虫か?」

「かなりね」

太陽がかなり上に昇ったので、風太に帰るぞーと言うと高之助の前で一瞬止まるが、「仲良し……だよね?」と言った後にしっかりと抱っこ要請。

「歩けよ!」

「地面、あちちなんだよー!」

「犬の肉球はこの暑さでは耐えられないと思う。これも人が話していたのを聞いただけだが」

「確かに。散歩も夕方すぎてから行くもんな」

「その時でも暑いんだよ」

「大人になるまでは家か庭走っておけよ?」とちょっと甘やかす。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

月弥総合病院

僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

7番目のシャルル、狂った王国にうまれて【少年期編完結】

しんの(C.Clarté)
歴史・時代
15世紀、狂王と淫妃の間に生まれた10番目の子が王位を継ぐとは誰も予想しなかった。兄王子の連続死で、不遇な王子は14歳で王太子となり、没落する王国を背負って死と血にまみれた運命をたどる。「恩人ジャンヌ・ダルクを見捨てた暗愚」と貶される一方で、「建国以来、戦乱の絶えなかった王国にはじめて平和と正義と秩序をもたらした名君」と評価されるフランス王シャルル七世の少年時代の物語。 歴史に残された記述と、筆者が受け継いだ記憶をもとに脚色したフィクションです。 【カクヨムコン7中間選考通過】【アルファポリス第7回歴史・時代小説大賞、読者投票4位】【講談社レジェンド賞最終選考作】 ※表紙絵は離雨RIU(@re_hirame)様からいただいたファンアートを使わせていただいてます。 ※重複投稿しています。 カクヨム:https://kakuyomu.jp/works/16816927859447599614 小説家になろう:https://ncode.syosetu.com/n9199ey/

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

アブナイお殿様-月野家江戸屋敷騒動顛末-(R15版)

三矢由巳
歴史・時代
時は江戸、老中水野忠邦が失脚した頃のこと。 佳穂(かほ)は江戸の望月藩月野家上屋敷の奥方様に仕える中臈。 幼い頃に会った千代という少女に憧れ、奥での一生奉公を望んでいた。 ところが、若殿様が急死し事態は一変、分家から養子に入った慶温(よしはる)こと又四郎に侍ることに。 又四郎はずっと前にも会ったことがあると言うが、佳穂には心当たりがない。 海外の事情や英吉利語を教える又四郎に翻弄されるも、惹かれていく佳穂。 一方、二人の周辺では次々に不可解な事件が起きる。 事件の真相を追うのは又四郎や屋敷の人々、そしてスタンダードプードルのシロ。 果たして、佳穂は又四郎と結ばれるのか。 シロの鼻が真実を追い詰める! 別サイトで発表した作品のR15版です。

処理中です...