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第一部 春
17 愉快な仲間 ベニーとメル
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ねえ、ルナ、あなたって本当は王族なんでしょ?
ねえ、ルナ、どの男子がタイプ。
なんて訊きたい!
でも、それをやってしまうと、いきなりゲームバランスが崩壊しそう……うふふ、なんなのだろうか、わたしの存在って……バカみたい。乙女ゲームならではの都合の良いモブキャラにくせに調子にのってはダメよ、マリ・フローレンス。自重をしなさい。
都合の良いということで思い出したが、わたしの宿泊している部屋は四人部屋となっていて、いまマジで都合の良いことに卒業生が出たため、ひとつベッドが空いている。
すると、メイド長からそのベッドを使うように言われた。ルナは、マリと一緒に寝れる、なんてはしゃいでいるけど、それはもう最初から決められたシナリオ。さらに、その部屋には癖の強い仲間がいるのだが、紹介が疲れそう。やれやれよね、まったく。
わたしは開け放たれた扉をノックすると、「ちょっといいかしら」と声をかけた。
部屋のなかには二人の少女が着替えちゅうだった。ちょうど入浴にいくところなのだろう。制服から部屋着になると、二人はわたしの隣にいる転校生を見つめた。
「やったー! やっぱりこの部屋に来たぞー!」
「う……後輩がよかったです……」
喜んでいるのは、高等部三年生のべニース・ヴィルタンという名前で、愛称はべニー。赤髪にブルーの瞳を宿す彼女はとにかく明るくて天真爛漫な性格で演劇部に所属している。運動神経が抜群で素晴らしい踊りを披露してくれるみんなのアイドル。
そんなベニーは、歌唱力がないことだけがコンプレックス。なのでそのことに触れると地雷を爆発させるので、取り扱いにはご注意くださいませ。
そして、隣で肩をすくめる少女の名前はメルキュール・ビスコット、愛称はメル。紺碧のショートヘアに漆黒の双眸が光る彼女は背が低いため見た目は中等部の女子生徒みたいだけど、立派な高等部の二年生。文芸部に所属していて、こよなく本を愛する読書家で博識がある。たまに名言や諺など話してくれる歩く国語辞典。
そんなメルちゃんは、いつも静かでもじもじしてて引っ込み思案なため友達が少ない。わたしはいつも、もっと自分からお話しなよ、とアドバイスする。でも……。
マリ先輩うるさいです。
とツンツン反抗してくる。そのくせに、二人きりのときは手を繋いでくる甘えん坊。まあ、簡単に言うと生意気なツンデレ妹って感じね。ホント、都合の良い愉快な仲間たち。でも楽しいから大好き。
「ベニーだぞ。よろしくなっ」
ウィンクする瞳から星屑が光る。ここはアイドルの握手会ではないよ、ベニー。
「……メルです。会うは別れのはじまり、よろしくおねがいします」
もう別れのことを考えているのは喜んでいる証拠。んもう、わかりにくいのよね、メル。
そんな二人に向かってお辞儀をするルナは、
「これからよろしくお願いします! ルナスタシア・リュミエールです」
と言ってにっこりと笑った。
ルナには人を笑顔にさせる力があって、それは自分の笑顔から来ていることを本人は自覚しているのだろうか? わたしもベニーもメルもいつの間にか、みんなルナの笑顔に釣られて微笑んでいた。
「なあ、風呂にいくところだけど、マリリンもルナルナも行く?」
ベニーの問いに、「ルナルナ?」とルナは訊き返した。
わたしはすぐに説明をする。なぜならベニーはいつも言った切りで人の話を全然聞いていないからだ。
「あ、ごめんね。ベニーはすぐに人にあだ名をつけるのよ」
「へ~、ルナルナか……うん、かわいい」
「二回言ってるだけなんだけどね……」
わたしはやれやれ、疲れるわって感じで、ふぅとため息をつく。ルナは自分のベッドはどこかと探していたので、わたしは顎で示してあげた。部屋には二段ベッドが二つ、壁際に向かい合って並んでいた。ルナのベッドはわたしの上だった。
「じゃ、さきいくぞ~」
「あ! まってくださいベニー先輩っタオル、タオル」
メルはベニーのタオルを持ってゆっくり歩くと追いかけていった。そのやりとりを見つめながら、ルナは笑っていた。無垢な笑顔は見ていると癒される。
ルナは田舎の村の出身だった。
人口が少ない村のため同年代の友達はいなくて、いつも小さい子の遊び相手ばかりしていたみたい。村は農業と機織りが主な収入源。けして生活は楽なものではなく。それはルナの持って来たボロボロの鞄を見れば一目瞭然だった。
若者はみんな都会に出て出稼ぎ労働者になる。ルナもそのつもりで都会のこの学園に入学した。泣けなしの金を家族に出資させたことだけが、ルナの心に突き刺さっている。そんなルナは鞄から取り出した家族の写真を見つめながら目を潤ませていた。
ねえ、ルナ、どの男子がタイプ。
なんて訊きたい!
でも、それをやってしまうと、いきなりゲームバランスが崩壊しそう……うふふ、なんなのだろうか、わたしの存在って……バカみたい。乙女ゲームならではの都合の良いモブキャラにくせに調子にのってはダメよ、マリ・フローレンス。自重をしなさい。
都合の良いということで思い出したが、わたしの宿泊している部屋は四人部屋となっていて、いまマジで都合の良いことに卒業生が出たため、ひとつベッドが空いている。
すると、メイド長からそのベッドを使うように言われた。ルナは、マリと一緒に寝れる、なんてはしゃいでいるけど、それはもう最初から決められたシナリオ。さらに、その部屋には癖の強い仲間がいるのだが、紹介が疲れそう。やれやれよね、まったく。
わたしは開け放たれた扉をノックすると、「ちょっといいかしら」と声をかけた。
部屋のなかには二人の少女が着替えちゅうだった。ちょうど入浴にいくところなのだろう。制服から部屋着になると、二人はわたしの隣にいる転校生を見つめた。
「やったー! やっぱりこの部屋に来たぞー!」
「う……後輩がよかったです……」
喜んでいるのは、高等部三年生のべニース・ヴィルタンという名前で、愛称はべニー。赤髪にブルーの瞳を宿す彼女はとにかく明るくて天真爛漫な性格で演劇部に所属している。運動神経が抜群で素晴らしい踊りを披露してくれるみんなのアイドル。
そんなベニーは、歌唱力がないことだけがコンプレックス。なのでそのことに触れると地雷を爆発させるので、取り扱いにはご注意くださいませ。
そして、隣で肩をすくめる少女の名前はメルキュール・ビスコット、愛称はメル。紺碧のショートヘアに漆黒の双眸が光る彼女は背が低いため見た目は中等部の女子生徒みたいだけど、立派な高等部の二年生。文芸部に所属していて、こよなく本を愛する読書家で博識がある。たまに名言や諺など話してくれる歩く国語辞典。
そんなメルちゃんは、いつも静かでもじもじしてて引っ込み思案なため友達が少ない。わたしはいつも、もっと自分からお話しなよ、とアドバイスする。でも……。
マリ先輩うるさいです。
とツンツン反抗してくる。そのくせに、二人きりのときは手を繋いでくる甘えん坊。まあ、簡単に言うと生意気なツンデレ妹って感じね。ホント、都合の良い愉快な仲間たち。でも楽しいから大好き。
「ベニーだぞ。よろしくなっ」
ウィンクする瞳から星屑が光る。ここはアイドルの握手会ではないよ、ベニー。
「……メルです。会うは別れのはじまり、よろしくおねがいします」
もう別れのことを考えているのは喜んでいる証拠。んもう、わかりにくいのよね、メル。
そんな二人に向かってお辞儀をするルナは、
「これからよろしくお願いします! ルナスタシア・リュミエールです」
と言ってにっこりと笑った。
ルナには人を笑顔にさせる力があって、それは自分の笑顔から来ていることを本人は自覚しているのだろうか? わたしもベニーもメルもいつの間にか、みんなルナの笑顔に釣られて微笑んでいた。
「なあ、風呂にいくところだけど、マリリンもルナルナも行く?」
ベニーの問いに、「ルナルナ?」とルナは訊き返した。
わたしはすぐに説明をする。なぜならベニーはいつも言った切りで人の話を全然聞いていないからだ。
「あ、ごめんね。ベニーはすぐに人にあだ名をつけるのよ」
「へ~、ルナルナか……うん、かわいい」
「二回言ってるだけなんだけどね……」
わたしはやれやれ、疲れるわって感じで、ふぅとため息をつく。ルナは自分のベッドはどこかと探していたので、わたしは顎で示してあげた。部屋には二段ベッドが二つ、壁際に向かい合って並んでいた。ルナのベッドはわたしの上だった。
「じゃ、さきいくぞ~」
「あ! まってくださいベニー先輩っタオル、タオル」
メルはベニーのタオルを持ってゆっくり歩くと追いかけていった。そのやりとりを見つめながら、ルナは笑っていた。無垢な笑顔は見ていると癒される。
ルナは田舎の村の出身だった。
人口が少ない村のため同年代の友達はいなくて、いつも小さい子の遊び相手ばかりしていたみたい。村は農業と機織りが主な収入源。けして生活は楽なものではなく。それはルナの持って来たボロボロの鞄を見れば一目瞭然だった。
若者はみんな都会に出て出稼ぎ労働者になる。ルナもそのつもりで都会のこの学園に入学した。泣けなしの金を家族に出資させたことだけが、ルナの心に突き刺さっている。そんなルナは鞄から取り出した家族の写真を見つめながら目を潤ませていた。
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