殺意強めの悪虐嬢は、今日も綱渡りで正道を歩む ※ただし本人にその気はない

嵐華子

文字の大きさ
7 / 8

7.殺意まみれのエピローグ①

しおりを挟む
「また邪魔をしたのね。昨日、小型録音機を紛失した事に気づいたのだけれど、犯人はあなた?」

 夜会が終わり、ザルハッシュ殿下と2人きりになってから、ため息混じりにそう告げた。

 対面にソファがあるのに、この人はどうして隣に座るのかしら? イラッとしてしまうわ。

 結局、夜会の間も、今現在に至るまで1人になれていない。気分転換ができていないせいで、メンタルがただ下がりよ。

「当たり前だろう、ウェル。はい、録音機。少し借りただけだよ。感情が壊れている今の君が、他人に関心を向けるのは殺意を持った時だけだ。私に殺意を向けてくれないのに、他の誰かへ殺意を向けるなんて……」

 差し出された録音機を受け取ろうと手を伸ばす。

 すると私の手を引いたザルハッシュ殿下は、流れるような動作で私を抱きしめた。

「許せるはずがない」

 私の真っ白な髪に口づけながら、歪んだ言葉を口にする。

「まるで愛しているかのような口ぶりね」
「ウェルが私の言葉を一生を通して信じなくても、私の愛はウェルの物だよ。私はウェルしか愛さない」

 不快な言葉に思わず眉根が寄る。

「虫唾が走るわ。王女だった私を裏切って、火炙りにしたくせに」
「そうだね。前世の私は、王女だったウェルに忠誠を誓った。専属護衛騎士として守るべきウェルを……裏切った。そのせいでウェルは国王を含む親兄弟に冤罪を捏造され、拷問を受けた末に公開で火炙りなんていう、長く苦しむ方法で処刑されたんだ」

 ザルハッシュ殿下は今、どんなつまらない顔を作って、下らない事をほざいているのかしら。

 そんな風に、ふと興味が湧く。

「生まれ変わったからと言って、私も含めて他人を信用なんてできるはずがない。それくらい、王女だったウェルは苦しみ抜いて死んだ」

 興味を満たそうとしたものの、剣ダコのある大きな手で私の頭を自分の胸に押さえつけてきて、見られない。

 痛くはない。

 けれどこんな小さな事ですら、私の邪魔をするなら……ザルハッシュ殿下を殺してしまう?
 
「ウェルが、5歳で私と出会うまで黒耀石のように黒く艷やかだった髪。互いに前世を思い出した翌日から、徐々に真っ白に変わっていった。それくらい、ウェルの心を壊してしまった」

 10歳のザルハッシュ殿下と初めて会ったのは、私が5歳の時。あの頃の髪色は、確かに黒かった。

「そう思うなら、私の邪魔をしないで。あなたを殺したくなる」
「私はそれでも良いよ?」

 今度は邪魔されず、大きな胸から顔を離せた。

 ザルハッシュ殿下の頬を両手で包み、瞳を覗き見る。

「私は私に危害を与えない者は殺さない。それだけは決めてあるの。私があなたを殺そうとするなら、それはあなたが私を殺すつもりで傷つけようとした時よ」

 
 言いながら、目と目を合わせて観察する。

 前世ではあなたの裏切り殺意に気づかなかった。今世でも、彼の瞳の中に、私への殺意を見つけられない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~

香木陽灯
恋愛
 「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」  実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。  「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」  「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」  二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。 ※ふんわり設定です。 ※他サイトにも掲載中です。

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

悪役令嬢ですが、兄たちが過保護すぎて恋ができません

由香
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢・セレフィーナに転生した私。 破滅回避のため、目立たず静かに生きる――はずだった。 しかし現実は、三人の兄による全力溺愛&完全監視生活。 外出には護衛、交友関係は管理制、笑顔すら規制対象!? さらに兄の親友である最強騎士・カインが護衛として加わり、 静かで誠実な優しさに、次第に心が揺れていく。 「恋をすると破滅する」 そう信じて避けてきた想いの先で待っていたのは、 断罪も修羅場もない、安心で騒がしい未来だった――。

処理中です...