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2 世界を変えてやる!
2ー3 精霊さんにお願い?
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2ー3 精霊さんにお願い?
「こうなったのは、トガー様が不用意にサラに文句をいったからですよね?」
ジェイムズさんは、わたしに訊ねた。
「どうすればいいとあなたは思いますか?」
一瞬、辞職という言葉がちらついた。
だが、ここで職を失えば住むところも失くなってしまうのだ。
わたしは、ぐっと堪えた。
ジェイムズさんは、ふっと軽く微笑むと、わたしに命じた。
「あなたには、サラが戻るまでの間、屋敷の使用人と旦那様の食事を作ってもらいますがよろしいですね?」
はい?
なんでそうなるの?
だけど、わたしは、引き受けるしかなかった。
だって、たぶん誰が作ってもまずくなること間違いなしだったからな!
ところでこの屋敷には、15人の使用人がいる。
プラスご主人様で16人分の食事当番か。
わたしは、内心厄介なことになったなと思っていたが、これは、チャンスでもあった。
毎日の食事事情を改善したい!
それも早急に!
食事当番を引き受けたわたしは、翌日、まだ暗いうちから起き出して気合いを入れて厨房へと向かった。
当然だが、そこは、かまどで煮炊きをするタイプの調理場だった。
わたしは、まずかまどに火を入れ寸胴鍋でお湯をわかすことにした。
だが、もとの世界ではキャンプぐらいでしか煮炊きをする機会がなかったわたしだ。
いくらソロキャンプマニアだったとはいえ、薪をくべるところもないようなかまどの使い方なんてわからない。
「どうせいっちゅうの?これは」
わたしが困っているのをにやにや笑って見ていたルゥがアドバイスしてくれた。
「お願いしてみたら?トガー」
お願いですと?
「うん。トガーが頼めばかまどの精霊が力を貸してくれるよ」
マジですか?
わたしは、ほんの冗談のつもりでかまどの前に膝をついてお願いしてみた。
「えっと、かまどの精霊さん、お願いします。力を貸してください」
すると。
どういうわけか、ぼうっとかまどに火が燃え上がった。
「マジか?」
わたしが呆然としていると、ルゥがにんまりと笑った。
「だから、言っただろう?トガーは、聖女だって」
どういうこと?
わたしは、鍋を用意しつつルゥに訊ねた。
「なんで聖女ならかまどに火をつけられるわけ?」
「それは、聖女は、すべての精霊に愛される。いわゆる『精霊の愛人』だからだよ」
はい?
『精霊の愛人』ですと?
理解の範疇を越えているわたしにルゥが説明した。
「つまり、あんたが頼めば精霊は力を貸してくれるってことだよ」
「そうなんだ」
わたしは、次に水を汲みたかった。
もちろんこの世界には、水道だってないんだよ!
人々は、みな生活魔法と呼ばれる魔法で水を作り出していた。
この魔法は、この世界ではほとんどの人が使えるものらしいのだが、わたしは別だ。
わたしは、魔法が使えない。
だから、わたしは、今度も精霊さんにお願いすることにした。
「水の精霊さん、お願いします」
すると、あっという間に鍋の中に水がたまっていった。
便利だな!
「こうなったのは、トガー様が不用意にサラに文句をいったからですよね?」
ジェイムズさんは、わたしに訊ねた。
「どうすればいいとあなたは思いますか?」
一瞬、辞職という言葉がちらついた。
だが、ここで職を失えば住むところも失くなってしまうのだ。
わたしは、ぐっと堪えた。
ジェイムズさんは、ふっと軽く微笑むと、わたしに命じた。
「あなたには、サラが戻るまでの間、屋敷の使用人と旦那様の食事を作ってもらいますがよろしいですね?」
はい?
なんでそうなるの?
だけど、わたしは、引き受けるしかなかった。
だって、たぶん誰が作ってもまずくなること間違いなしだったからな!
ところでこの屋敷には、15人の使用人がいる。
プラスご主人様で16人分の食事当番か。
わたしは、内心厄介なことになったなと思っていたが、これは、チャンスでもあった。
毎日の食事事情を改善したい!
それも早急に!
食事当番を引き受けたわたしは、翌日、まだ暗いうちから起き出して気合いを入れて厨房へと向かった。
当然だが、そこは、かまどで煮炊きをするタイプの調理場だった。
わたしは、まずかまどに火を入れ寸胴鍋でお湯をわかすことにした。
だが、もとの世界ではキャンプぐらいでしか煮炊きをする機会がなかったわたしだ。
いくらソロキャンプマニアだったとはいえ、薪をくべるところもないようなかまどの使い方なんてわからない。
「どうせいっちゅうの?これは」
わたしが困っているのをにやにや笑って見ていたルゥがアドバイスしてくれた。
「お願いしてみたら?トガー」
お願いですと?
「うん。トガーが頼めばかまどの精霊が力を貸してくれるよ」
マジですか?
わたしは、ほんの冗談のつもりでかまどの前に膝をついてお願いしてみた。
「えっと、かまどの精霊さん、お願いします。力を貸してください」
すると。
どういうわけか、ぼうっとかまどに火が燃え上がった。
「マジか?」
わたしが呆然としていると、ルゥがにんまりと笑った。
「だから、言っただろう?トガーは、聖女だって」
どういうこと?
わたしは、鍋を用意しつつルゥに訊ねた。
「なんで聖女ならかまどに火をつけられるわけ?」
「それは、聖女は、すべての精霊に愛される。いわゆる『精霊の愛人』だからだよ」
はい?
『精霊の愛人』ですと?
理解の範疇を越えているわたしにルゥが説明した。
「つまり、あんたが頼めば精霊は力を貸してくれるってことだよ」
「そうなんだ」
わたしは、次に水を汲みたかった。
もちろんこの世界には、水道だってないんだよ!
人々は、みな生活魔法と呼ばれる魔法で水を作り出していた。
この魔法は、この世界ではほとんどの人が使えるものらしいのだが、わたしは別だ。
わたしは、魔法が使えない。
だから、わたしは、今度も精霊さんにお願いすることにした。
「水の精霊さん、お願いします」
すると、あっという間に鍋の中に水がたまっていった。
便利だな!
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