聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~

トモモト ヨシユキ

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8 Shall We Dance?

8ー2 積み上げた歴史が違う!

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 8ー2 積み上げた歴史がちがう!

 翌日。
 わたしは、いつもより数時間もはやくご主人様に起こされた。
 ご主人様のお部屋と隣室にあるわたしの部屋は、魔道具によっていつでも連絡がとれるようになっていた。
 ご主人様は、わたしを呼びつけるとおっしゃった。
 「眠れない」
 なんですと?
 わたしは、眠い目を擦りながら心の中でご主人様を心行くまで罵っていた。
 なら、寝なきゃいいじゃん!
 だがな。
 無理もないと言えば無理もないのだ。
 今日は、待ちに待った義肢の装着の日だ。
 きっとさすがのご主人様も興奮が押さえられないのだろう。
 わたしは、ご主人様をベッドの上に起こすとクッションで体を支えた。
 そして、ベッドの脇のテーブルにリバーシをセットした。
 「これは、リハビリに使う予定のゲームなんですが」
 実は、テスたちと久しぶりにリバーシをやったら勝負魂に火が着いてしまったのだ。
 わたしは、リバーシを屋敷に持ち帰りライザやエミリアさんと対戦した。
 わたしは、決してリバーシがすごく得意なわけではなかった。
 だが、そんなわたしや、初心者のライザたちも楽しめるのがリバーシのいいところだ。
 特にこの世界は、娯楽が少ないしな。
 マジで、これ売り出したら儲かるんじゃね?
 リックさんは、わたしのことをそんなゲスい発想をするわけがないとか言ってたけど、それは、違う。
 わたしだって金は大事だ。
 それに、この娯楽の少ない世界のみなさんに楽しみを与えてあげたいしな。
 わたしは、リバーシのルールをご主人様に説明した。
 信じられないことにご主人様は、こうみえてなかなかおつむのできがいい。
 なにしろわたしが口で説明しただけで十分理解できてるしな。
 わたしは、頭のいい男が好きだ。
 わたしたちは、まだ夜も開けきらない薄暗い部屋の中でのんびりとリバーシをしていた。
 だが、ご主人様は、駒を動かすためにわたしに指示を出すのももどかしげだった。
 明日の今ごろには、もうご主人様は自分の手で駒をひっくり返していることだろう。
 そう思ったらなんか、複雑だった。
 5回やって、5回ともわたしの勝ちだった。
 だが、すぐにご主人様のことなのでわたしぐらいなら簡単に負かせるようになるだろう。
 が、今は、わたしには勝てない。
 悔しがっているご主人様を横目にわたしは、にんまりとしていた。
 積み上げてきた歴史が違うのだよ!

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