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13 婚約とドレスと女の戦い(2)
13ー10 壁の花
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13ー10 壁の花
「衰退?」
「ああ」
イシスは、頷いた。
「世界は、女神のためにある。なのに、お愛様は、世界を人間の手に与えてしまった。そのせいで人間たちは労働しなくてはいけなくなったし、自分達で社会を運営しなくてはいけなくなった」
ふむ。
わたしは、唸った。
今以上に世界が歪だった頃があったのか。
要するに、お愛様とやらは、世界の主権を女神から人間に取り戻したってことかな?
そんなことができたのか?
「ちなみにお愛様は?」
「処刑されたよ。『教団』の命を受けた人の子の王の手によってね」
マジか?
驚いているわたしを見てイシスは、にやっと意地の悪そうな笑みを浮かべた。
「トガーは、あの人に比べれば頭が良さそうだし、よかったよ」
わたしは、背筋が冷たくなるのを感じていた。
こいつにせよ、女神にせよ、敵にまわしたくない!
というか、まわしたら殺される!!
「ともかく君は、この船の持ち主となりうるわけだ、トガー」
イシスは、わたしに訊ねた。
「僕になんと呼ばれたい?トガー。ご主人様?聖女様?それとも精霊女王?」
「わたしは」
わたしは、イシスに乾いた声で答えた。
「トガー。トガー アリサ。ただの人間だ!」
「ふーん」
イシスは、わたしの言葉ににやりと笑った。
「ようこそ、トガー」
イシスは、わたしにぐっと身を寄せて囁く。
「精霊女王の船の新しいマスター」
数日後。
グレングルド王国の王都にある王城ライフニッツ城の大広間でライナス先生の叙勲式が行われた。
すっかり王妃様と仲直りしたアルノルド王から男爵位を賜ったライナス先生のために盛大なパーティーが開かれた。
たかが一男爵のためにこんなパーティーが開かれるとは、信じられないがそこは、娯楽の少ない世界だからな。
みんな何かと理由をつけて宴を開きたいのかもしれないな。
それに、ライナス先生の治療院の経営手腕は、すごく注目されてるし。
しかし。
宴もたけなわとなる頃には、わたしとライザは、隅っこで壁の花をきめていた。
ライナス先生と十何年ぶりかに社交界に帰ってきたフェブリウス伯爵は、もてはやされていた。
そのため、最初のうちは、わたしとライザもいろんな人たちに話しかけられていたのだが、わたしもライザもこういうのに慣れてなくてな。
なんとか社交に励もうとは努力したんだが知り合いもいないし、かといってメシに走るほどうまい料理もでないしな。
わたしたちは、その場にいることが苦痛で仕方がなかった。
「衰退?」
「ああ」
イシスは、頷いた。
「世界は、女神のためにある。なのに、お愛様は、世界を人間の手に与えてしまった。そのせいで人間たちは労働しなくてはいけなくなったし、自分達で社会を運営しなくてはいけなくなった」
ふむ。
わたしは、唸った。
今以上に世界が歪だった頃があったのか。
要するに、お愛様とやらは、世界の主権を女神から人間に取り戻したってことかな?
そんなことができたのか?
「ちなみにお愛様は?」
「処刑されたよ。『教団』の命を受けた人の子の王の手によってね」
マジか?
驚いているわたしを見てイシスは、にやっと意地の悪そうな笑みを浮かべた。
「トガーは、あの人に比べれば頭が良さそうだし、よかったよ」
わたしは、背筋が冷たくなるのを感じていた。
こいつにせよ、女神にせよ、敵にまわしたくない!
というか、まわしたら殺される!!
「ともかく君は、この船の持ち主となりうるわけだ、トガー」
イシスは、わたしに訊ねた。
「僕になんと呼ばれたい?トガー。ご主人様?聖女様?それとも精霊女王?」
「わたしは」
わたしは、イシスに乾いた声で答えた。
「トガー。トガー アリサ。ただの人間だ!」
「ふーん」
イシスは、わたしの言葉ににやりと笑った。
「ようこそ、トガー」
イシスは、わたしにぐっと身を寄せて囁く。
「精霊女王の船の新しいマスター」
数日後。
グレングルド王国の王都にある王城ライフニッツ城の大広間でライナス先生の叙勲式が行われた。
すっかり王妃様と仲直りしたアルノルド王から男爵位を賜ったライナス先生のために盛大なパーティーが開かれた。
たかが一男爵のためにこんなパーティーが開かれるとは、信じられないがそこは、娯楽の少ない世界だからな。
みんな何かと理由をつけて宴を開きたいのかもしれないな。
それに、ライナス先生の治療院の経営手腕は、すごく注目されてるし。
しかし。
宴もたけなわとなる頃には、わたしとライザは、隅っこで壁の花をきめていた。
ライナス先生と十何年ぶりかに社交界に帰ってきたフェブリウス伯爵は、もてはやされていた。
そのため、最初のうちは、わたしとライザもいろんな人たちに話しかけられていたのだが、わたしもライザもこういうのに慣れてなくてな。
なんとか社交に励もうとは努力したんだが知り合いもいないし、かといってメシに走るほどうまい料理もでないしな。
わたしたちは、その場にいることが苦痛で仕方がなかった。
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