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16 メメント・モリ
16ー1 拒まないで!
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16ー1 拒まないで!
認知症のエルフのための施設建設の件が落ち着いてフェブリウス領にわたしが帰ってきた頃には、季節はすっかり冬になっていた。
まあ、予定よりも早くフェブリウス領へと帰ることにしたのはさいさんの『教団』からの呼び出しがあったということもあった。
そして、何よりもライナス先生のことがあった。
わたしは、ライナス先生との結婚の儀の予定をもう半年ばかり伸ばしてもらってした。
でも、どうなんだろうな?
こんな女じゃ、ライナス先生には、不満があるんじゃね?
わたしは、帰りの空船の中で悩んでいた。
ライナス先生は、まだ若い。
もしかしたら、ここで別れてあげるべきなのかもしれないな。
だけど。
ライナス先生の温かな人柄とか、好きだしな。
何よりも、いい男だし。
「何か悩みごとかよ?」
不意に頭上から声が聞こえた。
見上げるとイシスの姿があった。
わたしは、気がつかないふりをしていた。
すると、イシスが涙声になってすがり付いてきた。
「無視しないでよ!トガー」
「なんだよ?お前、出ていったんじゃねぇの?」
わたしが冷たく言うとイシスは、わっと泣き出した。
「なんで出ていけるんだよ?」
イシスがぶちぶちと文句を言った。
「僕たち上級精霊は契約した場所でしか実体化できないんだよ。というか、ここから外には出られないし」
マジですか。
「お気の毒に」
わたしが言うと、イシスがすがってきた。
「頼むから、もう、僕を拒まないで!」
「別に拒んでなんてねぇし」
わたしが冷たく言い放つとイシスがキョトンとした。
「だって、エルフの地では僕のこと寄せ付けなかったじゃないか!」
「ああ、そういや、静かだったな」
わたしがふんと鼻で笑うと、イシスは、真っ赤になって喚いた。
「バカにして!」
「いやいや」
わたしは、イシスをおちょくって遊ぶのをやめて真面目にきいた。
「なんでエルフの地ではあんたがわたしに近づけなかったわけ?」
「だから!トガーが僕のことを嫌っているから!」
イシスが自虐的なことを言い出す。
「だから、僕が近づけなかったんじゃないの?」
「別に嫌ってなんてないし」
わたしは、答えた。
でも、そういや、わたしは、あの頃女神の反感買うんじゃないかってびびってたような。
そのせいかな?
認知症のエルフのための施設建設の件が落ち着いてフェブリウス領にわたしが帰ってきた頃には、季節はすっかり冬になっていた。
まあ、予定よりも早くフェブリウス領へと帰ることにしたのはさいさんの『教団』からの呼び出しがあったということもあった。
そして、何よりもライナス先生のことがあった。
わたしは、ライナス先生との結婚の儀の予定をもう半年ばかり伸ばしてもらってした。
でも、どうなんだろうな?
こんな女じゃ、ライナス先生には、不満があるんじゃね?
わたしは、帰りの空船の中で悩んでいた。
ライナス先生は、まだ若い。
もしかしたら、ここで別れてあげるべきなのかもしれないな。
だけど。
ライナス先生の温かな人柄とか、好きだしな。
何よりも、いい男だし。
「何か悩みごとかよ?」
不意に頭上から声が聞こえた。
見上げるとイシスの姿があった。
わたしは、気がつかないふりをしていた。
すると、イシスが涙声になってすがり付いてきた。
「無視しないでよ!トガー」
「なんだよ?お前、出ていったんじゃねぇの?」
わたしが冷たく言うとイシスは、わっと泣き出した。
「なんで出ていけるんだよ?」
イシスがぶちぶちと文句を言った。
「僕たち上級精霊は契約した場所でしか実体化できないんだよ。というか、ここから外には出られないし」
マジですか。
「お気の毒に」
わたしが言うと、イシスがすがってきた。
「頼むから、もう、僕を拒まないで!」
「別に拒んでなんてねぇし」
わたしが冷たく言い放つとイシスがキョトンとした。
「だって、エルフの地では僕のこと寄せ付けなかったじゃないか!」
「ああ、そういや、静かだったな」
わたしがふんと鼻で笑うと、イシスは、真っ赤になって喚いた。
「バカにして!」
「いやいや」
わたしは、イシスをおちょくって遊ぶのをやめて真面目にきいた。
「なんでエルフの地ではあんたがわたしに近づけなかったわけ?」
「だから!トガーが僕のことを嫌っているから!」
イシスが自虐的なことを言い出す。
「だから、僕が近づけなかったんじゃないの?」
「別に嫌ってなんてないし」
わたしは、答えた。
でも、そういや、わたしは、あの頃女神の反感買うんじゃないかってびびってたような。
そのせいかな?
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