野良は拾っちゃいけません~溺愛王子とヤンキー子羊~

トモモト ヨシユキ

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12 野良の数増えてた。

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    朝、俺は、刈谷のベッドで目覚めた。
   もちろん、俺の横には、刈谷が眠っていた。
   刈谷は、俺をがっちりと抱き締めていて、俺は、ベッドから抜け出すことができずにいた。
   昨日の夜。
   俺は、刈谷に再び、抱かれた。
   理不尽にも、刈谷の兄貴にキスされたことが全ての原因だった。
   俺は、自分が刈谷のものらしいパジャマを着せられていることに気づいた。
   たぶん、刈谷は、昨夜、意識を失ってしまった俺の体を清め、服を着せてくれたのだろう。
   俺は、隣で眠っているこの男の顔を見つめた。
   大人びてはいるが、ふとしたところに子供っぽさが残っている。
   あどけないともいえる寝顔に、俺は、こいつが本当に、昨日の夜、俺を抱いた男なのだろうか、と思っていた。
    あんな風に、責められて、一方的にいかされて。
   俺は、昨夜の自分の痴態を思って、赤面していた。
   恥ずかしい。
   俺は、刈谷に責められて女みたいによがり哭いた。
   俺は、眠っている刈谷の唇に、そっと指で触れた。
       刈谷。
    なんで、俺、なんだろう。
   俺は、ため息をつく。
   こいつなら、きっと、俺なんかよりずっと、いい相手がいるだろうに。
   いい家柄、ハンサムな顔。たくましく、美しい肉体。
   きっと、男でも女でも、よりどりみどりに違いない。
   なのに、なぜ、俺なんだ?
   ふと、刈谷の唇が動いて。俺の指に息がかかる。
   ずくん、と体の奥が痺れ、俺は、熱い息を吐いた。
   俺の体は、どうなってしまったのだろうか。
   全て、刈谷のせいだ。
   俺は、なんだか、心地よさげに眠っている刈谷に腹が立ってきた。
   この男のせいで、俺は、こんな風に作り替えられてしまった。
   刈谷に与えられる快楽が。俺をメスにしていく。
   それが思ったほど嫌でもない自分にも、腹が立っていた。
   なんで、女ともやったこともないのに、男に抱かれてこんなよがってるんだ俺は。
   童貞、非処女なんて、ヤバイだろ。
  眠る刈谷の横でもんもんとしている俺の枕元に、いつの間にか、やってきたチーちゃんが座って、じっと俺たちを見ていた。
   チーちゃんは、にゃあ、と鳴いて、俺と刈谷の間にもぞもぞと潜り込んできた。
   刈谷が小さく呻いて眉を寄せたので、俺は、チーちゃんにしぃーっと合図をして見せた。
   チーちゃんは、頭だけ布団から出して、俺たちの間に横たえて、ゴロゴロと喉を鳴らしていた。
   刈谷がもぞもぞと体を動かして俺を抱き寄せた。
   挟まれたチーちゃんが抗議の声をあげた。
   「ん?」
    刈谷がうっすらと目を開いた。
   刈谷の目の前には、チーちゃんの姿があった。
   「・・びっくりした」
    刈谷がチーちゃん越しに俺を見て、微笑んだ。
   「雅人が、猫になったのかと思った」
    「どんなファンタジーだよ」
    俺は、言った。刈谷は、チーちゃんと俺を抱いて、俺の耳元で囁いた。
   「おはよう、雅人」
   「残念だけど、もう、そんなに早くはないわよ」
   突然、背後から声がして、俺たちは、驚いて起き上がった。
   そこには、椅子に座っている大柄な美女の姿があった。
   長い黒髪をウェーブさせた、濃い化粧の女だった。
   うん?
   俺は、首をかしげた。
   何処かで、会ったことがあるよね。
   なんとなく、誰かに似ているような。
   「兄さん?」
    刈谷が自信無げに呼んだ。
   兄さん?
   俺は、まじまじと、その侵入者のことを見つめた。
   確かに、そういわれてみれば、刈谷家のDNAの持ち主だと思われる。
   刈谷が言った。
  「なんで、兄さんがここに?」
   「決まってるでしょ」
   刈谷兄は、言った。
   「帰ってきたのよ、あたし」
       俺たちは、起き出して、それぞれシャワーを浴びて、服を着替えた。
   その間に、刈谷の兄であるという女は、鼻唄混じりで朝食の準備をしていた。
   俺は、洗面所のところで刈谷を捕まえるとそっときいた。
  「あれ、なんだ?」
   「あれは・・」
   刈谷は、俺から目をそらせた。
   「姉さん、かな?」
    「嘘つけ!どう見たってあれは、男だろうが!」
   俺が言うと、刈谷は、珍しく当惑を隠せない様子で言った。
   「今は、姉、だ」
    「元は?」
    「俺の一番上の兄、だ。名前は、刈谷   信一郎」
   「なんで、その元兄が突然、ここに現れたわけ?」
    俺がきくと、刈谷は、困った顔で言った。
   「たぶん、一番下の俺が1番、与し易いと思ったからじゃないかな」
  「なに、それ?」
   俺は、きいた。
   「だいたい、兄貴がいるってことも、昨日まで、知らなかったし。お前、もっと、自分のこと話せよな」
       「いや、たぶん、聞かない方がいいことばかりだよ、雅人」
   刈谷が言ったので、俺は、ムッとした。
  「俺だって、もっと、お前のこと知りたいって思ってるんだよ」
   「マジか」
   刈谷が嬉しそうに微笑んだので、俺は、しまった、と思った。
   俺は、慌てて言った。
   「つまり、あれ、だ。家政夫として家族構成が気になるというか」
   「うん、わかった」
    刈谷が、俺を羽交締めにして言った。
   「雅人の知りたいこと、全部きいて。何でも話すから」
   「わ、わかったから、離せ!」
    抱き合って、ワアワア言ってる俺たちに、誰かが言った。
   「お兄ちゃんたち、ラブなの?」
   「はい?」
    はた、と俺たちは、静止して声の主を見た。
   そこには、さらさらのショートボブという髪型をした一見女の子とみまごう美幼児がいた。
   誰?
  俺は、刈谷を見上げてきいた。
   「これも、兄弟?」
   「いや、違うと思う」
   刈谷は、じっと美幼児を見下ろして言った。
   「お前、誰だ?」
   「僕は、刈谷   佑、中野幼稚園の桃組さんだよ」
   美幼児は、どや顔で言った。
  「そうなんだ」
    俺は、刈谷から身を離して、その子供の頭を撫でてやった。
  「偉いな。佑は」
    「当たり前よ。あたしの子なんだもの」
    キッチンからフリフリのエプロン姿の刈谷兄が現れると、その美幼児は、満面の笑顔で彼に抱きついた。
   「ママ」
   「ママ?」
   俺は、問いかけるように、刈谷をじっと凝視した。
   ママ?
   パパでなく?
   刈谷が眉間にシワを寄せて、兄を見た。
   「兄さん、この子は、どうしたんですか?まさか、と思うけど、誘拐は、犯罪なんですよ。元のところへ返してきてください」
   「違うわよぉ!本当に、この子は、あたしが生んだ子よぉ!」
   刈谷兄は、その子を抱き上げると頬擦りして言った。
  「朝食の準備ができてるわよ。急がなきゃ、遅刻しちゃうわよぉ、学生諸君」
   「あれ、なんだったんだよ?」
   俺は、マンションの外に出たところで、刈谷を問い詰めた。
   刈谷は、なんか考えている様子で言った。
  「わからない。なぜ、10年も前に、家を出ていった信一郎兄さん、いや、信子姉さんが、今ごろ、帰ってきて、しかも、俺のところに現れたのか」
   刈谷は、学校への道すがら、俺に、かいつまんで刈谷兄である信子のことを話してくれた。
   10年前。
   まだ、高校生だった刈谷兄  信子は、両親に言ったのだという。
   「女になりたい」
   そして、反対されてしまった彼は、家を出た。
   「当時は、兄さんは、まだ16才。俺は、4才で、何のことだかよくわからなかったのを覚えている」
   「まあ、確かにな」
   俺は、頷いた。
   「4才児には、、ちょっと難しすぎるかな」
   「とにかく、俺が兄のことについて知っているのは、それだけだ」
   「はい?」
   驚いている俺に、刈谷は言った。
   「俺には、3人兄がいるけど、3人とも母親が違うから」
   「マジで?」
   どうやら俺は、地雷地帯に踏み込んでしまったらしい。
   名家のデリケートな話に、そう易々と触れていいわけがないのだ。
   俺は、話を変えようとした。
   「で、でも、佑くんの母親って、本当のところは、誰なのかな?」
   「知らないよ」
    刈谷が突き放すように言って、鞄の中からスマホを出して誰かに電話をかけ始めた。
   数回のコール音の後、刈谷は、その相手に言った。
  「緊急事態だ。学校の近くのカフェ『モン・プチ』で待ってるから、すぐに来てくれ」
   刈谷は、それだけ言うとプチッと電話を切った。
   俺が呆気にとられていると、刈谷は、もう一度、別の相手に電話して、同じことを繰り返した。
   「誰だよ?」
   「言いたくない」
   刈谷は、はぐらかすように言うと、俺の手を引いて歩き出した。
   「雅人、雅人は、何があっても、俺が守るから、安心して」
   「ええっ?」
   俺は、刈谷の後ろを歩いていきながら、思っていた。
   俺にとって、1番危険な相手は、お前だろうが!
   
   
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