魔王に転生したら、イケメンたちから溺愛されてます

トモモト ヨシユキ

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38 世界は、リフレインでできている。

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   俺は、腹の子が育つにつれて女体化していった。
   体は、だんだん丸くなり、女の子のようになっていく。
   「体が自然に出産に耐えられる形に変化していっているんです」
    アイリが俺の体を診察して言った。
   俺は、今では、腹が膨らんで動くことが辛かった。
   腹の子は、無事に育っていた。
   「双子ですね」
    そう、アイリは、俺に言った。
   「双子?」
    俺は、少し不安になった。
   「大丈夫なの?」
    「今のところ、順調です」
     俺は、腹の中で元気に動いている子供たちを感じて、ふっと笑った。
   「でも」
    アイリが戸惑うように呟く。
    「この子達、双子なのに魂は、1つしか関知できなかった。なぜなのかな」
    「えっ?」
    「あ、大丈夫、ですよ。異常があるとかではないので」
    
   その日、俺は、部屋のソファでくつろいでいて、つい、うとうとしていた。
   そして、夢を見た。
   そこは、白い空間の中だった。
   「よく来たね、ハジメ」
    玉座に座った白髪の青年が俺に、にっと笑いかけた。
   あれ?
   「もしかして、邪神?」
    俺が訊ねると、青年は、頷いた。
   「そうだ。私は、闇の神   グラディナード、だ」
   「大きくなってる?」
     俺がきくと、グラディナードは、応じた。
   「ああ、君のおかげで、私たちは、成長できたんだよ、ハジメ」
   「どういうこと?」
   「君が私の一部と、光の神  ラギの一部を天に返したために、私とラギは、成長することができた。礼を言うよ」
    グラディナードは、青い瞳を細めた。
   「ところで、君は、魔王の戦いの刻 を勝ち抜いたわけだ。地上に君臨する最強の魔王となったのだ。もともと、この戦いは、私の次の邪神を決めるための戦いだった。つまりは、君が次の邪神となる者なわけだが」
     マジで?
   俺は、なんとかお断りしたかった。
   「それって、俺には拒否権は?」
   「ないよ」
    グラディナードは、愉快そうに言った。
   「君は、全ての魔王を率いて闇の神となる」
   「闇の神に・・」
    俺は、腹に手をあててきいた。
    「この子たちは?」
    「君が腹の中で育てているものは、ミハイルと、君自身、だ」
    邪神が言ったので、俺は、驚いた。
   「ミハイルと、俺?」
    「そうだ」
    グラディナードは、語った。
   「新たなる光の中の闇と、闇の中の光を君が産むんだ」
    「なんで?」
    俺は、きいた。
    「なんで、そんなこと?」
    「必要だから、だ」
     グラディナードは、俺に微笑みかけた。
    「光には、闇がつきものだが、光の中にも闇はあるし、闇の中にも光はある。それがなくては、世界は、成り立たない」
     「だから」
     グラディナードの背後に光輝く金の髪の青年が現れた。
   「君は、それを自ら産まなくてはならない。なぜなら、君は、未来の光の神でもあるからだ」
    はい?
   困惑している俺に、その青年は言った。
   「私は、光の神  ラギ、だ」
    「どういうこと?俺が邪神であり、そして、光の神でもあるって?」
   俺は、頭が混乱していた。
   2人の神は、俺に言った。
   「ハジメ、君がミハイルと君自身の中の一部を天に返したことによって、我々は、失ったものを取り戻した。もはや、我々に対立する理由は、なくなったのだよ。君のおかげでね」
     「つまり、我々は、光と闇として完成されたのだ。1つになれたというわけだ」
   グラディナードがラギの手をとった。
   「我々は、もはや、分かたれてはいない」
       「なら、なんで、また、光と闇の子を?」
   俺は、彼らにきいた。
   「完成されたのではないのですか?」
    「完成されたものは、滅びるものだ。だから、それは、必要なのだ」
    グラディナードが答えた。
   「昔々、ずっとずっと昔から、私たちは、それを繰り返してきたのだ」
   「今は、1つでも、また、いつかは、2つに分かたれるときが来る」
   ラギが答えた。
   「それが、この世の常なのだ」
    「しばしの平穏な時を楽しむがいいさ」
    グラディナードが笑った。
   「では、また、いつか」
    どこかで会おう。
    俺は、目を開いた。
   そして、腹を撫でて呟いた。
  「また、どこかで、か」
    その時、激しい痛みが走った。
   「い、いた、た、痛い!!」

   比較的安産だったのだという。
   マジでか?
   あれで、安産なら、安産じゃないってどうなるんだ?
   まあ。
   なにはともあれ、俺は、双子の男の子を産み落とした。
   出産には、3人の父親たちも立ち会った。
   「ルファスにそっくりだ!」
    感涙に咽びながら、赤ん坊を抱いて、イグドールが叫んだ。クローゼも、もう1人の子を抱いて言った。
    「こっちは、ハジメの本体によく似てる」
     「どちらもハジメの子ですからね」
     ヴィスコンティが俺の手を握って言った。
   「どちらも、可愛くて、美しい」
    「ああ」
    俺は、眠くって、うとうとしながら呟いた。
   「どっちも、俺たちの子、だ」
    きっと。
    いつか、また、この子達は、分かたれるときがくる。
   俺も。
   俺の中の光と闇が分かたれるときは、来る。
   それでも。
   俺は、にっこりと微笑みを浮かべた。
   この永遠ならざる幸せを愛そう。
   例え、いつか再び、光と闇に分かたれるときが来るにしても、我々は、今を生きるしかないのだから。
    我々は、今を愛するしかないのだ。
   時よ、止まれ。
   そう、願うことはできるかもしれない。
   けれど、俺たちは、決して、止まることはできない。
   そして。
   いつか、再び、出会うのだ。
  時の彼方で。 
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感想 1

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みんなの感想(1件)

るん
2021.08.06 るん

一気読みしました!

番外編なども是非読みたいです!

2021.08.06 トモモト ヨシユキ

ありがとうございます。

解除

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