妹の身代りに生け贄にされたんだけどガチでマジ恋しちゃいました~世界にただ1人の男Ωは、邪神の激愛に絆される~

トモモト ヨシユキ

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8 異界との狭間

8ー3 意趣返し

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 8ー3 意趣返し

 翌日。
 僕は、美しい白色の礼服を身に付けてルーデニア兄上の隣に立っていた。
 王位継承の儀式は滞りなく行われルーデニア兄上は、無事にこの国の王となった。
 民も王宮の者たちもみな口々に新しい王を褒め称えていたが僕は、無言だった。
 僕の首には、沈黙の魔道具がつけられていて僕は、声を出すことができなかった。
 「新しい王と王妃に祝福を!」
 王宮のバルコニーから見下ろす人々の歓声に僕は、圧倒されていた。
 本当なら僕もこの人たちと一緒になってルーデニア兄上の王位継承を祝っていたことだろう。
 だが。
 今の僕にはそれはできないことだった。
 王位継承式の祝いの宴がすみ僕は、離宮のいつもの部屋へと戻された。
 ロナが僕のために湯を用意してくれて僕は、風呂で体を洗われていた。
 ロナが僕のもとに自分以外の使用人を近づかないため今でも僕の身の回りの世話はロナ一人でしてくれていた。
 「湯加減は?」
 僕は、頷いた。
 首に巻かれた魔道具が僕の声を奪っていた。
 「マクシア様・・お痛わしい」
 ロナが僕の濡れた体を布で拭きながら涙ぐむ。
 僕は、裸の全身を写す姿見の前でふと自分の腹を見つめた。
 ここに。
 僕は、目の奥がつん、と痛むのを感じた。
 僕は、妊娠していた。
 もちろんヴェルデの子を、だ。
 それをルーデニア兄上が命じて神官に殺させた。
 僕も知らない内に全ては行われた。
 僕の子供は、まだ人の形すらしてなかったのだとロナは話した。
 ロナは。
 神官とルーデニア兄上によって記憶を奪われた。
 筈だった。
 ロナは、オメガとなった僕の側に仕え続けるために自ら隷属の首輪を身に付けていた。
 そのために主以外のもののかける術から守られたのだ。
 全てを覚えていたロナは、悩んだ末に僕にそれを話した。
 ルーデニア兄上は、怒りロナを殺そうとしたけど、もしもそんなことをしたら僕は、兄上を許さない、そう伝えた。
 魔境に封じられたヴェルデのためにルーデニア兄上の形ばかりの王妃となりその子を成すことを了承した僕は、今夜からルーデニア兄上の妃として兄上を受け入れなくてはならない。
 僕は、ルーデニア兄上が用意した美しい夜着を身に付けることを拒むと、いつもと同じ白いドレスシャツとスパッツという姿で寝室に向かった。
 ベッドに腰かける僕を泣きそうになっているロナが見つめているのに気付いて僕は、微笑んだ。
 大丈夫。
 僕は、やれる。
 ヴェルデのためになら、なんだってできる。
 たとえ、ヴェルデと僕の子供を奪った男にだって抱かれるし、その子供も産んでやる!
 僕の首もとにつけられた魔道具をロナが外そうとしたのを僕は拒んだ。
 今夜、僕が声を発することはない。
 兄上に抱かれて声を漏らすつもりはなかった。
 それがせめてもの僕の意趣返しだった。
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