魔王を倒したので砂漠でも緑化しようかと思う【完】

流水斎

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第六章

『敗北は終わりを意味しない』

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 オロシャ国の守護者たるアダマンティンは敗北した。
だが、それは国家の斜陽を意味しない。新型に旧型が敗北するのはある種当然であり、終始圧倒されはしたが、外付けの装備で『もしかしたら勝てたかもしれない』と周囲に思わせることに成功したからだ。

勝利自体を新型が持って行ったことで、相手に華を持たせた格好になるので、表向きはギクシャクしない流れが形成で来ていた筈だ。

「なんやの、水中用に騎兵型とか。おどれこの子の事を放っといたんか? それともうちなんか余裕ゆうことかいな!?」
「俺はゼネラリストでお前はスペシャリスト。それだけだろ」
 自分の脅威を無視したのかと怒るエリーに苦笑する。
エリー・ティーヌという女は元もとゴーレム創造魔法を研究していた魔術師だった。その後に犯罪奴隷に落ちてからは、年季が明けるか魔王を倒すまでという契約でゴーレムを一緒に作る続けたのだ。だから彼女が特化型のスペリャリストに成るのは当然で、魔王を倒すためのツールとしてゴーレム創造魔法を選んだ俺が、総合的なゼネラリストになるのは当然だったろう。

その結果がジュガス2にアダマンティンが敗北したという事実であり、外付けの武装やケンタウルス型ゴーレムの存在で、俺の格が落ちてない事にも通じるのだ。

「とはいえその選択と経緯はお互いに無駄じゃないって事だな。しっかし、俺とガブリールの奴が二人掛かりで到達できてねえ所に先に辿り着きやがって。魔石に意味があるなんて始めて聞いたぞ」
「当たり前やろ。学院でも新しい発見や。いち早く実用化したんはうちの功績やで」
 魔石というのは魔物を倒した際に、偶に見つかる石だ。
血栓や胆石の類で龍涎香の様に他の意味を持たせるならともかく、魔石そのものに意味はないと思われていた。だが、転生前の知識と、戦闘中ゆえに近い距離に居て言葉を聞き採れたことがその価値を理解させてくれた。

異世界系の小説で登場した魔石が、本当に意味を持つとは驚きであり、自然な様で不思議な感覚である。

(言葉によるキー操作ということは、特殊動作じゃない)
(おそらく組み込んだ上で、露出させてなかったんだ)
(ガブリールの送風器をゴーレムに組み込むと全力でのみ動き続けた)
(それと同じで全力稼働しちまうんだろうな。そして途中まで隠している間は機能しなかったのを見ると、表層に存在して居ない場合、イメージに合わない能力が象徴による質強化の対象にならないのと同じなんだろう。ということはジュガス2は四腕ではなく五腕、そして五つ目は頭を守る専用の盾か。参考に成ったな)
 象徴による質の強化は完全に解明してはいなかった。
だが、図らずもエリーのお陰で特定できたと言える。また、防御の瞬間強化の呪文を使っていた様にも見えるので、おそらくこっちと合わせれば、地の魔力については解明できるだろう。是非とも一緒に研究をしたいところだが、俺がエリーにやった事を考えると難しいだろうな。さんざん友人面しといて、自暴自棄になって自傷し始めたら押し倒して思い留まらせるとか畜生過ぎる。

とはいえ交渉で手に入れようにも、エリーはエリーでこっちの情報を参考にしていると思われた。

「なあ、ダメもとで聞くんだが今度一緒に……」
「アホか! 慣れ合う気はあらへんど! おどれがうちに……」
「ティーヌ。慣れ合うのはそこまでにしておけ。……また会おう」
 俺たちが仲良く喧嘩しているとヨセフ伯がジロリと睨んだ。
エリーの喧嘩腰もヨセフ伯にとっては慣れ合っているように見えるのだろう。それはそれとして、彼としてはソブレンメンイの技術も欲しい筈だ。そしてオロシャ国の戦力を増やすための手段として認識しているからこそ、不必要に俺のことを口にしない。彼に付き従っている連中は俺の事を蔑むが、ヨセフ伯にとっては力が全てであり、貴族とか平民とかそういうのは全て二の次なのだろうと思われた。

とっつき難い御仁だが……まあ、エリーの再就職先としては悪くないんじゃないかな。あいつは女とか商人の家系とか関係なく、実力だけで見られたがってたしさ。

「よう。ずいぶんド派手に、人様の作品をぶっ壊してくれたじゃねえの。これじゃあ修復とか絶対無理だぞ」
「その分の駄賃は見れたろ? 魔石を実用化したってよ」
「……マジか?」
「ああ。大マジだ」
 ガブリールが合流するや否や文句を言って来た。
これに対して先ほどの見解を示し黙らせることにする。するとジュガス2に対する憎々しげだったガブリールの視線が、むしろかじりつきたがっている研究者の目に変わっている。こいつはこいつで現金な奴なので釘は刺しとかないとマズイな。エリーのパクリに怒りを覚えているが、それは自分も対象だったからという可能性もある。

まあ向こうに持って行かれてもそう大した知識は……あったわ。水中型はともかく水車とかは困るな。

「学院で発見されたばかりで、実用化したのはエリーが最初と言ってたな」
「戻って尋ねれば聞けるとして、おそらくは象徴による質強化でようやくだ」
「途中まで使わなかったところを見ると、まだまだ問題も多いんだろうな」
「こっちと同じで最大稼働を続けてしまう他、魔獣みたいに狂暴化……は無いにしても、何かしらの欠点があると見た。以前に定説だった魔力保有論も逆説的にありえないとして、妥当な所で消耗が激しくなる代わりに、能力を一部ないし全体的に底上げって感じになるか」
 話を聞いてゴーレムに組み込んだら偶然使えたという流れだろう。
エリーが学院で聞いたなら彼女の成果を経て学院で大流行りしている筈だ。逆にガブリールみたいに向こうから他にも魔術師が来ていて、俺達よりも早めに合流して話が進んだ可能性もある。学院は魔術の伝導ではあるが、研究予算は無限ではないし、割りと恵まれた付与門派でも使える資金にもポストにも限りがあるからな。

目的があって一時座席だった俺とは違い、ガブリ-ルであったりエリーみたいな研究者肌の者は、主流派から外れると招聘に応じて招かれるケースは良くある。

「もしエリーが発見した技術なら、口止めの代わりに少しくらいは話してくれる可能性はあるな。もちろん何度か試したら判る範囲だろうし、こっちも技術を渡す必要はあると思うが」
「お? なら素材の調達で魔石を高額にして頼もうぜ」
「それと一緒に、魔石が作られ易くなる倒し方も調べないとな」
「ああ、そういやあ偶に見る程度だったか。了解だこっちで聞いてみる」
 ガブリールが余計な事を考えないように誘導して置く。
こいつも好奇心に駆られるタイプだが、裏切らなくても問題ないなら率先して裏切らない筈だ。ガブリールの為にという理由で、俺も技術を出し易くなるというものもある。最悪、俺は領主であって研究はオマケなのだから、オロシャ国が平和で安全になるなら多少は手元の技術を渡しても問題ないのだ。問題があるとすれば、そのせいで戦争に突入してみんなが困る事だろう。

それはそれとして、ガブリールは魔物由来の素材をマジックアイテムに流用する技術を研究している。彼の伝手で『魔石』を得やすい倒し方(生息地が偏って居て、大きな個体だけ……なら育つまで放置するレベルだが)が見つかるならそれに越した事は無いだろう。

「すり合わせとくが、この後の予定はアダマンティンの更新をする準備を行いつつソブレメンヌイの簡略化。それとルサールカの実用を兼ねて、暫くゴルビーの別荘で作業だな」
「二つ目の鍋を作って比較してみねえとな。っと、行って来るぜ」
 報連相は常にやって置く。まずはこの期の予定を説明する。
陛下には早めに仕上げる必要はないと言われているが、基礎設計を見直すので行動そのものは早い方が良いだろう。素材を鉄メインで組むと明らかに速度が遅くなるので、アダマンティン2は重量を四つ足で支えるタイプに設定。それを補うために、簡略化した量産タイプを速度重視で何機か用意するつもりだ。その段階でソブレメンヌイはお役御免に成り……なんだったら試験用からユーリ姫へのプレゼントにしても良いだろう。

なお、数機を作ることに成っているが、それでも素材的には問題ない。元もとアダマンテティンはフルで鉄製だが、新型はフレームや要所のアーマーこそ鉄製だが、機動力で攻めるタイプだから皮や木製素材も利用する。それこそ足を止めての戦闘なら、ジュガス2で良いのだから。

「別荘にもエレベーターとクレーンを設置するとして……。そろそろうちの弟子も育ってきてくれるとありがたいんだがね」
 海辺の別荘は実験場であり、弟子の為の場所だ。
彼女たちの腕が予定通りに育っているならば、そろそろ彼女たちの進路を決めつつ、手元に残るならばマジックアイテムを作る算段を組んでも良いだろう。ガブリールの奴が自分の研究を同時に行うなら導師が増えるし、塩を煮る鍋の2つめが完成すれば、経済的にも薪を買う量が減って助かるからな。

何か買うのは難しいだろうが、消費するはずだった資金で何かを作るくらいは可能だろう。
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