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第八章
『水棲種族との交渉』
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別荘地に魚人が尋ねて来ることになった。
重要拠点なので出来れば他の場所にしたいところだが、他の場所が用意出来ないので仕方が無い。それに閘門で区切ったプールもあるので、彼らが水に浸かったまま話すことが出来るのも良いだろう。
日傘を二つ用意し、互いの上に挿すようにして会談を始めた。
「会談の前に、翻訳呪文の仕様についてお詫びしたいネ。この呪文は杓子定規で互いにないニュアンス伝わらない。すれ違いや不敬な言葉、成ったら申し訳ないの事ヨ」
「理解できる。言語を学ぶ時間が要らないだけでもありがたいよ」
やって来たのは魚頭人身の亜人だった。
マーマンやギルマンよりはよほど人間めいているが、体格は一回り大きく動きはゆったり。青く太い肌はどこかドザエモンめいていて、頭がカッパでも遜色ない雰囲気だ。服を着ているから沙悟浄辺りがイメージに近いかもしれない。
ちなみに怪しい中国人風なのは翻訳呪文の影響らしい。主に俺の感性はそう感じているのだろう。
「私、鯖巡視ネ。この度はお招きいただき、更にこの席に招待してくれたこと、感謝ヨ。さっそく、本題に入ってもヨロシ?」
「構わない。念のために確認するがその名前は地位かな?」
「水棲種族は多く生まれ多く死ぬネ。才能を見出されたらそれ名前なるヨ」
どうやら成人まで生きることが出来る魚人は少ないらしい。
人間でも子供が多く死ぬ地域では三歳とか七歳を越えたら生きている扱いする地域があったように、そこまでは名前が無いのだという。そして仕事の見習いについてそれなりに才能が見受けられたら、頭の形と仕事の役職がそのまま名前になるそうだ。竜頭の学者ならば竜学才、亀頭の教師なら亀老師という感じだな。
なお、彼らは混血が進んであまり頭の形で血筋は判らないらしい。竜の頭の魚人……彼らの言い方をすると水棲種族も居るが、特に神通力はない普通の人だとか。尊ぶ人間が居るから、外交部で働く事が多いとも聞いた。
「この海は素晴らしいネ。大きな魔物入って来れないヨ。子供たち、死ぬの減る。出来れば、この窪みまで来れたら最高ネ」
「許可を出すことは可能だし、他の場所にも掘れる。ただ……」
この鯖巡視という男の名前が才能だとしたら、目端が利く武官だろう。
彼ら水棲種族が大型の魔物に追われた時に逃げ込め、かつ産卵して子供を育てるのに役立つのか? その事を確認するために訪れたのだと思われる。交渉時にこの場所を見繕い、必要ならば奪う算段も固める辺りは抜け目ない。こういう所はオルバとも共通する感じで、やはり他の勢力が愚か者などと期待するのは間違っているのだろう。
とはいえ、彼らが話をする姿勢をしている段階で、交渉で終わらせるべきであるが。
「その前に聞きたいことがあるので、差し支えなければ教えて欲しい」
「一つ目は海を渡る君たちが、どうしてこの場所を知らなかったのか?」
「二つ目は協力する内容に対して、こちらも協力してもらえるのか?」
「三つ目は急ぐなら此処でも良いが、他の誰も居ない安全な場所に、この窪みを作ることが出来る。その場合は掘って欲しいのか? になるな」
これらの情報は聞いておかなければならない事だ。
基本的に相手の要請は了承する気だが、一方的に奪われる立場ではない。また、他の場所でも良いのならば、他の場所に作ってしまう方がお互いの為だろう。相手を警戒する必要がなくなるし、こちらは保険の場所にしてしまえば良いのだ。
鯖巡視は俺の言葉にいちいち頷くと少し考え得た後で口を開く。
「一つ目は、別の氏族が滅ぼされたネ。魔王軍の仕業ヨ」
「二つ目は、当然の理。貴方たちが欲しい物次第。交渉ヨ」
「三つ目は非常に嬉しいネ。出来れば両方、こちらが用意する代価が大き過ぎるなら片方を選ぶことになるヨ」
帰って来たこったえは至極当然の事だった。
どうやらこの辺りにも水棲種族が居て、彼らが棲んでいる水域だから知らなかったし、彼らが全滅したとしても棲み家や産卵場は残っていると判断して逃げて来たのだろう。その上で、迂闊に『何でもします』とは言ってこない。これも当然のことで、こちらが下手に出るならまだしも、上から目線で何か言ったとしても素直に頷きはしないのだろう。
その上で、最後の問いに両方と答える辺り、切羽詰まっているという情報は正しいのだと思われた。
「なら互いに対等で行こう。こっちも最近になって海に出始めたから、この辺りの情報を共有したり集めるのに協力し合うとしよう。まあ海には詳しくないそっちは陸の情報は要らないから、その分こっちが出す感じだな。最優先でそちらの退避場所を用意するとして、上陸に関しては少し待ってくれ。本当に君たちの存在が正しいのかイル・カナン方面に問い合わせている」
「お互いに相手に信用持っていない。ゆえに仕方ないの心ヨ」
概ね彼らを保護するという方向で一致する。
協力してもらうならば恩を先に売っておくのは悪くないし、彼が言うように互いに信用が無いのだ。仮にこちらに産卵しに来る水棲種族が居ても、あくまで一部だろう。迂闊に信用して毒でも撒かれたら何のために逃げ出したのか分からないしな。
そして、信用していないという意味で、水棲種族は異質過ぎるのだ。キエール家経由で『水棲種族がピンチで逃げて来ているんだけど、彼らは危険ではないのか?』という問い合わせを、イル・カナンの人間に尋ねることになるだろう。
「では協力し合える話として、その窪みと同じ様な物を、適当な島なり陸側に掘ろうじゃないか。大岩を使って波への壁を作っても良い。代わりに、こちらが拠点として港を作るのに出来る範囲で協力して欲しい。もちろん、もっと南にある国家の領地では無い場所だ」
「間に合わない時、此処に逃げてもヨロシ?」
「もちろんだとも。その二つの見返りの範囲で協力して欲しい」
あちらの最低条件をクリアしつつ、追加条件を吞む。
代わりにこちらが望んでいる港の敷設をしてしまおう。お互いの協力し合える場所でも良いし、別にそれぞれが離れた場所でも構わない。こちらとしても独力でやるつもりだったことだし、作業が増える代わりに協力者も出るってことだからな。
あくまで彼らが信用できるという前提の上で、協力し合うのは良い事だろう。
「では、この穴を掘るための力見せて欲しいネ。呪文アルカ? それとも大男ネ? 大男ならば我々で何とかなるヨ」
「ああ、そいつを紹介しないといけないな。ちょっとあの建物を見てくれ」
当たり前だが作業に関して測るのも当然である。
彼ら水棲人類は力が強い者が多いので、短時間であれば陸上作業できる者が集まるだけでも何とか出来るのだろう。今まではあえてこういうプールを作る理由がなかったわけだが、プールがあればいざと言う時に安全かもしれない。という知見さえ得られてならば、ワザワザ俺たちの協力を仰がなくても良いのである。
なので俺は素直にゴーレムを見せることにした。
「出ろ、ゴーレム!」
「おお……宝貝人間アルネ!」
「見ての通り大型で力が強く、そして疲れない。何時間でも作業できるぞ。限界まで使わない限りは壊れることも無い。魔物への盾として使ったら流石に壊れるが、その代りに兵士が死ななくなるな」
出したのは四つ足ゴーレムの量産型である。
単純に大きいし、作る端から新街道なり環状農業帯に送れば金になるので、暇な時はこいつを作っているのだ。基本的に装甲以外は木製なので、港を作る時にも作業用で使えると思っていた為、これ以外を作る必要がなかったとも言う。前に船乗りのマクシムが全力運転したせいで水車を作り直したが、それを除けばまずゴーレムが壊れて止まる事は無いのだ。
敢えて言うなら、こいつも商品と言えなくもない。兵器の輸出に当るから陛下に問い合わせないとマズイだろうがね。
「と言う訳で作業に関しては互いに対等に協力し合えると思う。ただ、交易になるとそちらが欲しい物を出せるか判らないが……まあ、お互いに信用が出来て、商売も始めようと思ってから考えれば良いだろうさ」
「ではお願いするネ。近いうちに場所の候補を絞って置くヨ」
こうして水棲種族との交渉はまずまずの滑り出しを始めた。
これから信用を積み上げ、『あいつは信頼できる』という人格を見て行けば、少しずつ交流が進んでいくだろう。ひとまずはゴルビーに攻め込まれることが無くなり、こちらが港を得ることが出来るかもしれない。
それは相手の監視下にあるとも言えるが、人質となるような民衆が居ないだけ、なんとでもなるだろう。
別荘地に魚人が尋ねて来ることになった。
重要拠点なので出来れば他の場所にしたいところだが、他の場所が用意出来ないので仕方が無い。それに閘門で区切ったプールもあるので、彼らが水に浸かったまま話すことが出来るのも良いだろう。
日傘を二つ用意し、互いの上に挿すようにして会談を始めた。
「会談の前に、翻訳呪文の仕様についてお詫びしたいネ。この呪文は杓子定規で互いにないニュアンス伝わらない。すれ違いや不敬な言葉、成ったら申し訳ないの事ヨ」
「理解できる。言語を学ぶ時間が要らないだけでもありがたいよ」
やって来たのは魚頭人身の亜人だった。
マーマンやギルマンよりはよほど人間めいているが、体格は一回り大きく動きはゆったり。青く太い肌はどこかドザエモンめいていて、頭がカッパでも遜色ない雰囲気だ。服を着ているから沙悟浄辺りがイメージに近いかもしれない。
ちなみに怪しい中国人風なのは翻訳呪文の影響らしい。主に俺の感性はそう感じているのだろう。
「私、鯖巡視ネ。この度はお招きいただき、更にこの席に招待してくれたこと、感謝ヨ。さっそく、本題に入ってもヨロシ?」
「構わない。念のために確認するがその名前は地位かな?」
「水棲種族は多く生まれ多く死ぬネ。才能を見出されたらそれ名前なるヨ」
どうやら成人まで生きることが出来る魚人は少ないらしい。
人間でも子供が多く死ぬ地域では三歳とか七歳を越えたら生きている扱いする地域があったように、そこまでは名前が無いのだという。そして仕事の見習いについてそれなりに才能が見受けられたら、頭の形と仕事の役職がそのまま名前になるそうだ。竜頭の学者ならば竜学才、亀頭の教師なら亀老師という感じだな。
なお、彼らは混血が進んであまり頭の形で血筋は判らないらしい。竜の頭の魚人……彼らの言い方をすると水棲種族も居るが、特に神通力はない普通の人だとか。尊ぶ人間が居るから、外交部で働く事が多いとも聞いた。
「この海は素晴らしいネ。大きな魔物入って来れないヨ。子供たち、死ぬの減る。出来れば、この窪みまで来れたら最高ネ」
「許可を出すことは可能だし、他の場所にも掘れる。ただ……」
この鯖巡視という男の名前が才能だとしたら、目端が利く武官だろう。
彼ら水棲種族が大型の魔物に追われた時に逃げ込め、かつ産卵して子供を育てるのに役立つのか? その事を確認するために訪れたのだと思われる。交渉時にこの場所を見繕い、必要ならば奪う算段も固める辺りは抜け目ない。こういう所はオルバとも共通する感じで、やはり他の勢力が愚か者などと期待するのは間違っているのだろう。
とはいえ、彼らが話をする姿勢をしている段階で、交渉で終わらせるべきであるが。
「その前に聞きたいことがあるので、差し支えなければ教えて欲しい」
「一つ目は海を渡る君たちが、どうしてこの場所を知らなかったのか?」
「二つ目は協力する内容に対して、こちらも協力してもらえるのか?」
「三つ目は急ぐなら此処でも良いが、他の誰も居ない安全な場所に、この窪みを作ることが出来る。その場合は掘って欲しいのか? になるな」
これらの情報は聞いておかなければならない事だ。
基本的に相手の要請は了承する気だが、一方的に奪われる立場ではない。また、他の場所でも良いのならば、他の場所に作ってしまう方がお互いの為だろう。相手を警戒する必要がなくなるし、こちらは保険の場所にしてしまえば良いのだ。
鯖巡視は俺の言葉にいちいち頷くと少し考え得た後で口を開く。
「一つ目は、別の氏族が滅ぼされたネ。魔王軍の仕業ヨ」
「二つ目は、当然の理。貴方たちが欲しい物次第。交渉ヨ」
「三つ目は非常に嬉しいネ。出来れば両方、こちらが用意する代価が大き過ぎるなら片方を選ぶことになるヨ」
帰って来たこったえは至極当然の事だった。
どうやらこの辺りにも水棲種族が居て、彼らが棲んでいる水域だから知らなかったし、彼らが全滅したとしても棲み家や産卵場は残っていると判断して逃げて来たのだろう。その上で、迂闊に『何でもします』とは言ってこない。これも当然のことで、こちらが下手に出るならまだしも、上から目線で何か言ったとしても素直に頷きはしないのだろう。
その上で、最後の問いに両方と答える辺り、切羽詰まっているという情報は正しいのだと思われた。
「なら互いに対等で行こう。こっちも最近になって海に出始めたから、この辺りの情報を共有したり集めるのに協力し合うとしよう。まあ海には詳しくないそっちは陸の情報は要らないから、その分こっちが出す感じだな。最優先でそちらの退避場所を用意するとして、上陸に関しては少し待ってくれ。本当に君たちの存在が正しいのかイル・カナン方面に問い合わせている」
「お互いに相手に信用持っていない。ゆえに仕方ないの心ヨ」
概ね彼らを保護するという方向で一致する。
協力してもらうならば恩を先に売っておくのは悪くないし、彼が言うように互いに信用が無いのだ。仮にこちらに産卵しに来る水棲種族が居ても、あくまで一部だろう。迂闊に信用して毒でも撒かれたら何のために逃げ出したのか分からないしな。
そして、信用していないという意味で、水棲種族は異質過ぎるのだ。キエール家経由で『水棲種族がピンチで逃げて来ているんだけど、彼らは危険ではないのか?』という問い合わせを、イル・カナンの人間に尋ねることになるだろう。
「では協力し合える話として、その窪みと同じ様な物を、適当な島なり陸側に掘ろうじゃないか。大岩を使って波への壁を作っても良い。代わりに、こちらが拠点として港を作るのに出来る範囲で協力して欲しい。もちろん、もっと南にある国家の領地では無い場所だ」
「間に合わない時、此処に逃げてもヨロシ?」
「もちろんだとも。その二つの見返りの範囲で協力して欲しい」
あちらの最低条件をクリアしつつ、追加条件を吞む。
代わりにこちらが望んでいる港の敷設をしてしまおう。お互いの協力し合える場所でも良いし、別にそれぞれが離れた場所でも構わない。こちらとしても独力でやるつもりだったことだし、作業が増える代わりに協力者も出るってことだからな。
あくまで彼らが信用できるという前提の上で、協力し合うのは良い事だろう。
「では、この穴を掘るための力見せて欲しいネ。呪文アルカ? それとも大男ネ? 大男ならば我々で何とかなるヨ」
「ああ、そいつを紹介しないといけないな。ちょっとあの建物を見てくれ」
当たり前だが作業に関して測るのも当然である。
彼ら水棲人類は力が強い者が多いので、短時間であれば陸上作業できる者が集まるだけでも何とか出来るのだろう。今まではあえてこういうプールを作る理由がなかったわけだが、プールがあればいざと言う時に安全かもしれない。という知見さえ得られてならば、ワザワザ俺たちの協力を仰がなくても良いのである。
なので俺は素直にゴーレムを見せることにした。
「出ろ、ゴーレム!」
「おお……宝貝人間アルネ!」
「見ての通り大型で力が強く、そして疲れない。何時間でも作業できるぞ。限界まで使わない限りは壊れることも無い。魔物への盾として使ったら流石に壊れるが、その代りに兵士が死ななくなるな」
出したのは四つ足ゴーレムの量産型である。
単純に大きいし、作る端から新街道なり環状農業帯に送れば金になるので、暇な時はこいつを作っているのだ。基本的に装甲以外は木製なので、港を作る時にも作業用で使えると思っていた為、これ以外を作る必要がなかったとも言う。前に船乗りのマクシムが全力運転したせいで水車を作り直したが、それを除けばまずゴーレムが壊れて止まる事は無いのだ。
敢えて言うなら、こいつも商品と言えなくもない。兵器の輸出に当るから陛下に問い合わせないとマズイだろうがね。
「と言う訳で作業に関しては互いに対等に協力し合えると思う。ただ、交易になるとそちらが欲しい物を出せるか判らないが……まあ、お互いに信用が出来て、商売も始めようと思ってから考えれば良いだろうさ」
「ではお願いするネ。近いうちに場所の候補を絞って置くヨ」
こうして水棲種族との交渉はまずまずの滑り出しを始めた。
これから信用を積み上げ、『あいつは信頼できる』という人格を見て行けば、少しずつ交流が進んでいくだろう。ひとまずはゴルビーに攻め込まれることが無くなり、こちらが港を得ることが出来るかもしれない。
それは相手の監視下にあるとも言えるが、人質となるような民衆が居ないだけ、なんとでもなるだろう。
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