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第九章
『詰まったスケジュールと、助力の有用性』
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水棲種族にもマジックアイテムを報酬としてを渡せば、呪文の使い手を呼べることになった。
逆に言えばマジックアイテムが買い叩かれることになったが、現時点では所持していない呪文を代用できたり、スケジュールの大幅短縮が可能になったので痛し痒しである。
将来的に彼らが敵対したり、パクって商売敵になる可能性であるが……。
「よし、警戒するのは止めよう。どう考えても時間が足りない」
「それな。嬢ちゃんも今が山場だし、助力は期待しない方がいいぜ」
真面目な話、全員のスケジュールが詰まっていた。
ガブリールの奴はマジックアイテムを作り続ける限り忙しいし、魔物素材由来の装備を考案する研究時間も必要だった。俺に協力することでオロシャ国の役に立つから許されているが、本来は王宮魔術師なので何か要請されたら戻らないといけない。ということは冷却システムの製造に、それほど時間が掛けられないという事だ。
もちろん俺はゴーレムの製造で忙しいし、弟子のセシリアですら多忙になる所に差し掛かっていたのだ。
「セシリアに『付与』を教えたんだって? 霧の壁が成功するようになったからって無茶させるよ。だが、付与を担当できるようになれば、基礎時間が大幅に圧縮されるしな。今は覚えることに専念させた方が良いのは確かだ。落ち着いた後も学院に提出するレポートで忙しいだろうし」
「華の魔法学院は伊達じゃねえしな。若いもんが行きたがるのは仕方ねえ」
セシリアは6レベルの霧の壁達成に迫っていた。
本来ならばそこから導師としての認定を受け、何処かの門派に所属する事になる。彼女の志望である付与魔術の創造門にガブリールが所属している為、コネもあってその入り口である付与の呪文を教えてもらう事になったのだ(ガブリールとしても助っ人にしたいからだけど)。付与の呪文は最も多用する呪文であることから、今が一番重要な時と言うのは確かだ。今後に必須の呪文は無くなる為、付与魔術は最初の入り口こそが到達点とも言われる。
そして何を研究し、どんな呪文を覚えていくのが重要なのかを悟るまでが最も面白いところだ。ガブリールではないが、セシリアに作業を割り振るのは期待しないで置く方が良いだろう。
「俺はこの作業を終えたらゴーレムの実験を始めるから、ジブは魔物由来の装備を研究しててくれ。その後で冷却の呪文を始めとして、水棲種族に助っ人を頼む」
「あいよ。あれだけの魔物なら作り甲斐があるな」
巨大な魚の魔物は小骨ですらデカイので、銛を作れる。
最初の数本はそのまま水棲種族へのプレゼントになるのだが、その苦労そのものが魔法の装備に関する見識を向上させてくれるはずだった。これは鱗に関してもそうで、軽量かつ堅い部分は鎧に、重いが厚い部分は盾になる。余った素材の内、背骨と頭という最も堅い部分は、そのままでは扱い難いので、ゴーレム用にありがたく使わせてもらう予定だった。
もっとも水中用のルサールカはまだ二号機を組み立ててないので、飛行用を実験したら建造する事になり、魚の骨を使ったボーンゴーレムはもっと後になるだろう。
「ところでよ。水棲種族はどんな呪文を覚えてるんだ?」
「水上歩行はマイナーだといってたが、やはり水系統だろ? 水の中から声をかけるために伝声の呪文は覚えてる奴は多いと思うが……それでも風は望み薄だろうな。当然ながら火はまずないと思った方が良い」
付与魔術は呪文の使い手が必要で、多ければ時間短縮が可能だ。
そのことから何の呪文が使えるかが重要なのだが、水棲種族と言うだけに水系統が基本だろう。確認してみないと判らないが、水圧からの保護とかウォーターアーマーとかが多いのではないだろうか? 他にも水弾とか放水・水移動辺りがあり得そうである。
ただ、そう言う言いで何の呪文の使い手を呼ぶか悩むな。
「冷却の呪文もマイナーだろうが、レベルが水上歩行より下だから機体は出来ると思う。当面はソレを頼むとして、水作成や水移動かな?」
「水の浄化もだが、水系統は生活の役に立つから悪くはねえだろう。悪くは」
四大魔術系統というのは、それぞれに特色がある。
水系統は低位にも有用な呪文が多く、上に行っても使えない呪文が存在しないというバランスに優れた系統だった。もちろん水棲種族にとって水中呼吸や水上歩行に意味が無いとか、海に潜る気のない者にとって水圧耐性とか全く意味はないし、ウォーターアーマーがいまいち弱いとかバランス型ゆえの欠点は存在するのだが。
それでも何かの必要性に駆られて作るだけならば、悪くない助力者だろう。
「ただ、これが無いと研究が進まないって呪文は思いつかないから、その辺は検討が必要だな」
「そんなところかねえ」
正攻法で考えた場合、水系統は研究用には向かない。
良くも悪くも便利枠で、万能型で、そしてシチュエーションによっては使えない事も多い系統なのだ。火などの特化型が多い部分ほどに有用性が分かれている様な物ではなく、地の様に安定しているわけでもない。あればあるに越したことはないが、今回みたいなことでも無ければ無理して用意する様な物でもなかった。
だからまあ、使う際には有用なシチュを思いついてから仕上げていくべきだろう。
(使うとしたら水作成を篭城用に用意するとか、行軍用に水浄化とセットだな)
(それがあるだけで、水汲み場を抑えて孤立させる作戦とかが意味が無くなる)
(もちろん全軍を潤すにはまるで足りないが、一回で消費する分量が減る)
(侵略する気も無いし、横領して転売も普通にありそうだから行軍用はそれほど要らないとして……。空中庭園に一つと、王城の一つ。ヨセフ伯が謀反しそうな時に遮断する砦とか、ウッラール騎士団の拠点に一つとかかね? とりあえず数を作ったらレオニード伯に話を持ち掛けてみるか)
内部反乱も考慮した仕様なので、迂闊に話が漏れないようにすべきだろう。
仮にヨセフ伯が現状に満足していたとしても、その話が王国中に広がった段階で彼の疑念と反骨心はマックスになるに違いない。現状のオロシャ国にはワザと謀反させて討ち取るような余裕は無いし、またそこまでして絶対王政を目指せるほどに王家の体力がない。新規開拓や税収の向上で徐々に『強い王家』を目指してもらうにせよ、今は時期尚早だろう。
なのでこの件は秘かに話を持って行って、幾つか設置する程度で良いとは思う。
「後は思いた効果の呪文を作って、その普及を合わせて用意して行く感じだな。その頃には王国の大学にも精霊魔術の講座が出来ていると思うから、無理して水棲種族に頼る必要があるとは思えないけど」
「そうさなあ。とりあえずは、お互いに目の前の課題に取り組むとしようか」
何はともあれ、目の前の主題に取り組むことになるだろう。
魔物由来の素材に弾みが付けば、魔法の装備の強さが上げられるかもしれない。その発展形でゴーレムも強くできるかもしれないし、飛行できるゴーレムや水中用のゴーレムが完成すれば、もっと強い魔物を退治できるようになるだろう。そうすればその素材で更に強いゴーレムが出来るかもしれないので、ロマンや生涯目標としては十分だ。
まずは飛行型のプロトタイプの実験として、ホバー機動を試すと使用じゃないか!
水棲種族にもマジックアイテムを報酬としてを渡せば、呪文の使い手を呼べることになった。
逆に言えばマジックアイテムが買い叩かれることになったが、現時点では所持していない呪文を代用できたり、スケジュールの大幅短縮が可能になったので痛し痒しである。
将来的に彼らが敵対したり、パクって商売敵になる可能性であるが……。
「よし、警戒するのは止めよう。どう考えても時間が足りない」
「それな。嬢ちゃんも今が山場だし、助力は期待しない方がいいぜ」
真面目な話、全員のスケジュールが詰まっていた。
ガブリールの奴はマジックアイテムを作り続ける限り忙しいし、魔物素材由来の装備を考案する研究時間も必要だった。俺に協力することでオロシャ国の役に立つから許されているが、本来は王宮魔術師なので何か要請されたら戻らないといけない。ということは冷却システムの製造に、それほど時間が掛けられないという事だ。
もちろん俺はゴーレムの製造で忙しいし、弟子のセシリアですら多忙になる所に差し掛かっていたのだ。
「セシリアに『付与』を教えたんだって? 霧の壁が成功するようになったからって無茶させるよ。だが、付与を担当できるようになれば、基礎時間が大幅に圧縮されるしな。今は覚えることに専念させた方が良いのは確かだ。落ち着いた後も学院に提出するレポートで忙しいだろうし」
「華の魔法学院は伊達じゃねえしな。若いもんが行きたがるのは仕方ねえ」
セシリアは6レベルの霧の壁達成に迫っていた。
本来ならばそこから導師としての認定を受け、何処かの門派に所属する事になる。彼女の志望である付与魔術の創造門にガブリールが所属している為、コネもあってその入り口である付与の呪文を教えてもらう事になったのだ(ガブリールとしても助っ人にしたいからだけど)。付与の呪文は最も多用する呪文であることから、今が一番重要な時と言うのは確かだ。今後に必須の呪文は無くなる為、付与魔術は最初の入り口こそが到達点とも言われる。
そして何を研究し、どんな呪文を覚えていくのが重要なのかを悟るまでが最も面白いところだ。ガブリールではないが、セシリアに作業を割り振るのは期待しないで置く方が良いだろう。
「俺はこの作業を終えたらゴーレムの実験を始めるから、ジブは魔物由来の装備を研究しててくれ。その後で冷却の呪文を始めとして、水棲種族に助っ人を頼む」
「あいよ。あれだけの魔物なら作り甲斐があるな」
巨大な魚の魔物は小骨ですらデカイので、銛を作れる。
最初の数本はそのまま水棲種族へのプレゼントになるのだが、その苦労そのものが魔法の装備に関する見識を向上させてくれるはずだった。これは鱗に関してもそうで、軽量かつ堅い部分は鎧に、重いが厚い部分は盾になる。余った素材の内、背骨と頭という最も堅い部分は、そのままでは扱い難いので、ゴーレム用にありがたく使わせてもらう予定だった。
もっとも水中用のルサールカはまだ二号機を組み立ててないので、飛行用を実験したら建造する事になり、魚の骨を使ったボーンゴーレムはもっと後になるだろう。
「ところでよ。水棲種族はどんな呪文を覚えてるんだ?」
「水上歩行はマイナーだといってたが、やはり水系統だろ? 水の中から声をかけるために伝声の呪文は覚えてる奴は多いと思うが……それでも風は望み薄だろうな。当然ながら火はまずないと思った方が良い」
付与魔術は呪文の使い手が必要で、多ければ時間短縮が可能だ。
そのことから何の呪文が使えるかが重要なのだが、水棲種族と言うだけに水系統が基本だろう。確認してみないと判らないが、水圧からの保護とかウォーターアーマーとかが多いのではないだろうか? 他にも水弾とか放水・水移動辺りがあり得そうである。
ただ、そう言う言いで何の呪文の使い手を呼ぶか悩むな。
「冷却の呪文もマイナーだろうが、レベルが水上歩行より下だから機体は出来ると思う。当面はソレを頼むとして、水作成や水移動かな?」
「水の浄化もだが、水系統は生活の役に立つから悪くはねえだろう。悪くは」
四大魔術系統というのは、それぞれに特色がある。
水系統は低位にも有用な呪文が多く、上に行っても使えない呪文が存在しないというバランスに優れた系統だった。もちろん水棲種族にとって水中呼吸や水上歩行に意味が無いとか、海に潜る気のない者にとって水圧耐性とか全く意味はないし、ウォーターアーマーがいまいち弱いとかバランス型ゆえの欠点は存在するのだが。
それでも何かの必要性に駆られて作るだけならば、悪くない助力者だろう。
「ただ、これが無いと研究が進まないって呪文は思いつかないから、その辺は検討が必要だな」
「そんなところかねえ」
正攻法で考えた場合、水系統は研究用には向かない。
良くも悪くも便利枠で、万能型で、そしてシチュエーションによっては使えない事も多い系統なのだ。火などの特化型が多い部分ほどに有用性が分かれている様な物ではなく、地の様に安定しているわけでもない。あればあるに越したことはないが、今回みたいなことでも無ければ無理して用意する様な物でもなかった。
だからまあ、使う際には有用なシチュを思いついてから仕上げていくべきだろう。
(使うとしたら水作成を篭城用に用意するとか、行軍用に水浄化とセットだな)
(それがあるだけで、水汲み場を抑えて孤立させる作戦とかが意味が無くなる)
(もちろん全軍を潤すにはまるで足りないが、一回で消費する分量が減る)
(侵略する気も無いし、横領して転売も普通にありそうだから行軍用はそれほど要らないとして……。空中庭園に一つと、王城の一つ。ヨセフ伯が謀反しそうな時に遮断する砦とか、ウッラール騎士団の拠点に一つとかかね? とりあえず数を作ったらレオニード伯に話を持ち掛けてみるか)
内部反乱も考慮した仕様なので、迂闊に話が漏れないようにすべきだろう。
仮にヨセフ伯が現状に満足していたとしても、その話が王国中に広がった段階で彼の疑念と反骨心はマックスになるに違いない。現状のオロシャ国にはワザと謀反させて討ち取るような余裕は無いし、またそこまでして絶対王政を目指せるほどに王家の体力がない。新規開拓や税収の向上で徐々に『強い王家』を目指してもらうにせよ、今は時期尚早だろう。
なのでこの件は秘かに話を持って行って、幾つか設置する程度で良いとは思う。
「後は思いた効果の呪文を作って、その普及を合わせて用意して行く感じだな。その頃には王国の大学にも精霊魔術の講座が出来ていると思うから、無理して水棲種族に頼る必要があるとは思えないけど」
「そうさなあ。とりあえずは、お互いに目の前の課題に取り組むとしようか」
何はともあれ、目の前の主題に取り組むことになるだろう。
魔物由来の素材に弾みが付けば、魔法の装備の強さが上げられるかもしれない。その発展形でゴーレムも強くできるかもしれないし、飛行できるゴーレムや水中用のゴーレムが完成すれば、もっと強い魔物を退治できるようになるだろう。そうすればその素材で更に強いゴーレムが出来るかもしれないので、ロマンや生涯目標としては十分だ。
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