魔王を倒したので砂漠でも緑化しようかと思う【完】

流水斎

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第九章

『異なる文化を取り入れてみる?』

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 水中用ゴーレムであるルサールカの二号機を製作し始めた。
流石に船をひっくり返しただけの一号機と違って、二号機はそれなりの造形をしている。空気を入れる場所を密封する作業と、穴を通して抜くべき場所も無事に製作されたようだ。

穴の稼働を三本目の腕とすることで、基本的には新しい機能なしで成立する予定だ。

(水上歩行を組み込んでも緊急浮上用だけ……ちょっと惜しいな)
(変形機構を組むと能力が下がるし、やるなら潜水母艦くらいはしたい)
(だが水棲種族に頼まれたならともかく、そこまでの需要はねえしな)
(やるなら上に向かって衝角突撃掛けるとして、相手の船を沈める為? 意味がねえなあ。何かの呪文を組み込むとしても、空気作成の方かな。ホーセンスが協力してくれるなら、指定移動の呪文を抜き出したいところなんだが……そしたら可能な限り消耗先を全部塞いで、時間継続だけに絞ればいい)
 ルサールカ二号機は造形以外の改良が無い。
その事を惜しいと思いつつ、まずは技術開発を軌道に乗せるところで十分だと思う自分が居る。どちらにせよ、三号機を作る時は何かしらの改良を思いついた時だ。現時点では特にアイデアがなく、組み込み可能な呪文は暴走対策もなしに使いたい物でもない。ただ、それでも能力を落して変形させれば、それなりに実用性が出て来たので満足しておくしかなかった。

そう思いながら呪文を唱え、規定値を突破すれば作業終了、失敗すれば魔力が回復してからまた掛け直していくという作業を繰り返していた。

「ゴルビー男爵。こちらに居られると伺たので挨拶に来たアル」
「鯖巡視か、久しぶりだな。いつぞや以来だな」
 そんな中で水棲種族の鯖巡視がやって来た。
頭と役目がそのまま名前になっている水棲種族なので、彼が何をしに来たのかは主張通りなのだろう。ここいらを巡回していくついでに、俺が居ると知って居たから挨拶するという程度であろう。

この出会いは特別な物ではなく、スケジューリングを告知していた為である。

「あれから何か問題はないか? ちょっとした事なら相談に乗るし、何か要求するなら代価次第で請け負うが」
「まだ無いネ。陸の上に掘った穴、まだ観察中の事ヨ。それ次第ヨ」
「今までになかったことだろうしなあ、不都合はあり得るからその方がいい」
 例の島の様に巨大な魚の魔に限らず、水棲種族の子供は死に易い。
その為にうちのプール……陸に穴を掘るという案を真似、そのためにゴーレムを貸し出したことがある。その時に貸し出しはするしアイデアは使って良いが、不都合はないか確認すべきだと言っておいたのだ。生態系の問題もあるし、陸で熱射病になるどころか、鍋の様に煮えたぎっても困るだろう。

他に交渉する事は無いし、重要な話をするとしたら龍学才あたりが来るだろう。そう思った時に、ふと尋ねてみることにした。

「そういえば水棲種族は海の中を進む船とか要るのか? こいつは作業や戦闘を考えて人魚型にしているが、船だったら指定方向に移動させる呪文だけで十分だろう」
「体力のない者が網籠のような物で運んでもらうアルヨ。船までは不要ネ」
 ここで判った事は二つある。一つ目は泳ぎ慣れているので船は不要な事。
それよりも重要な事は、指定移動の呪文に近いナニカが存在するという事だろう。何気ない会話で話すように仕向けたが、やはり鯖巡視よりも龍学才の方が交渉向きと言うのは本当なのだろう。彼ならこの時点で、呪文について確認するか、すっ飛ばして代価を要求するなりしている筈だ。

指定移動そのものはなくとも、水棲種族ならば水系統だろう。ホーセンスに頼らずともセシリアが水移動と比較していけば抜き出せるかもしれない。

「確かに俺達も三胴船があれば水中を進む必要は無いしな。……ところで艀が此処に残してあることは、南東にある港あたりやもっと南でバザールは開かないのか?」
「海流の問題ネ。此処はもっと南の流れが、東からぐるっと回り込む場所ヨ。その海流が元の南へ帰って行くアル」
 さりげなく相手の話に合わせながら、聞いている話を尋ねておいた。
その話を聞くと、どうやらかなり東にある夏王朝あたりへ向かって海流が変化して、遊牧民の土地の下あたりにぶつかり、この周辺で収束するらしい。要するに土地に沿ってクエスチョンマークを逆向きに描くような流れになっているようだが、だからこそゴルビーには砂浜が多くて浅瀬になっているのかもしれない。一度流されていった砂も、また戻って来るなら減らないもんな。

ともあれ、色々と良い事を聞いたので後々の交渉で利用することにしよう。

「なるほど参考になったよ。こっちも欲しい物があれば、代価になりそうなものを並べておくことにしよう。そっちも必要な物があれば言ってくれ」
「了解したアル。何かあれば龍学才殿がやって来るはずネ」
 ただし、急に話を持って行くとがっついていると思われてしまう。
当面は予定が立て込んでいる事も含めて、今は指定移動の呪文は求めない事にした。いずれ幾つかの呪文の使い手を呼ぶとして、その時にしれっと紛れ込ませておこう。空飛ぶ絨毯を見せて、それに組み込んでる術だと言えば判り易いだろうしな。

その上で、いずれ指定移動を何かしらゴーレムに組み込むことを考えるとしよう。それこそこの中間拠点付近でバザールが開かれるなら、百足列車みたいな感じで、浮遊専門のゴーレムと、牽引するゴーレムに分ければ良いのだから。

(作業自体は大したこと無かったが、上手くいけば成果が得られそうだな)
(そういや水の中で素早く移動する呪文があると言ってたし、それかもな)
(いずれにせよ、飛行呪文と一緒にリストに入れときゃ可能性はあるだろう)
(浮遊までなら俺でも覚えられるし、空飛ぶ板・荷車って感じで作って実験すればいいさ。そのうち高速飛行も手に入れば両者の比較も出来るしな。そして何より、簡略系のバリエーションが増えれば、暴走状態の絞り込みが出来る。暴走そのものを隊書できずとも、暴走先を『継続』に絞れれば十分だからな)
 現時点でルサールカ二号機は、もうどうしようもない。
浮き沈みのデータを得た後で三号機を建造する段階で、指定移動を組み込めるならやるくらいだろう。仮に俺の勘違いで指定移動が手に入らずとも、水棲種族は文化圏が違うから簡略系のバリエーションが増やせる可能性が高い。そうなれば(A+B+C)みたいに長い呪文構文になってしまうが、暴走方向を絞って上手く活用できる可能性があった。

そこまで理論が成立すれば、エリーに投げてアイデアを交換する手もあるだろう。暴走に関してはあいつも困ってたし、簡略系の補助呪文を交換して、後はお互い隙にするという路線で妥協できるのではないかと思う。

(後は最近は決まり切ってる研究ばかりだし、今のうちにアイデアを考えておくかねぇ。こっちの景色を見てると、色々やりたくなっちまった)
 探知システムに冷却システムと、便利だし資金も稼げるのは間違いがない。
だが、必要に迫られて同じものを延々と作り続けるだけでは面白くないのだ。魔法の基礎レベルを上げてゴーレムの『格』を上げて強くするというのはもうとっくに限界に来ている。となると呪文を始めとした何かの工夫を組み入れるか、新しいアイデアを探すしかないのである。これまではノロノロと飛行するゴーレムにあまり意味はないと思っていたのだが……。

山を一つ越えて、この中間拠点でバザールに参加するという事を考えたら、悪くはないのではないだろうか? それこそ飛行船を目指して、最初はグライダーなり浮遊型チャリオットから始められるのだから。

それだけだと他の波及へは難しいとは思うが、バザールで面白い商品作物の種が手に入れば、緑化にも役立つかもしれないしな。
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