魔王を倒したので砂漠でも緑化しようかと思う【完】

流水斎

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第九章

『第二次五ヶ年計画』

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 水中用ゴーレムルサールカは仮完成を見たが、本格始動はまだだ。
海に浮かばせて指示をして、指示通りに動くかを確認しなければならない。本来なら中の空洞に入って指示をするか、水中呼吸の呪文を使える人間を連れてこないとならないのだが、今回は水棲種族の作業やら中距離牽引に貸し出す約束でお願いしておいた。

それでバランスを見て、おかしかったら一度素材に戻して大工に直してもらい、再調整という微妙な時間である。

「さて、今のうちに今後の考察をしておくか。何もできない時間の有効活用だ」
 せっかくなのでレポートを用意しておくことにした。
誰が読むわけでもないが、今後のゴルビーとゴーレムの流れを、新しい五か年計画に盛り込む為である。考えるべき事は大目標である『緑化計画』、『ゴルビーにおける収益の健全化』、『空中庭園』、『ゴーレムの今後』、『それらを踏まえた新事業』の五つになる。

この中で最も重要な緑化計画であるが、ひとまず順調ながらまだまだ先は長いと言う他はあるまい。

(遊牧民を遮断するための遊水池と、熱を遮る壁の影響で古老たちから見ると凄い涼しくなったらしいしな。植林も試してる段階だし、緑化計画はまだまだ始まったばかりってとこだな)
 現時点では、水が増えて蒸発し難くなっただけである。
荒野部分に木々を植えて、それを伐採しないようにして増やしていくしかない。農地から出る蔦やら茎は何処までいっても肥料レベルなので、コンスタン・ティン伯の所で植林様に苗木を育ててもらっているのが軌道に乗るのを待つしかあるまい。

その目途が立った辺りで、竹を網状に組んで砂を固定。砂漠にも色々な植物を植えて、土を徐々に盛るという作業を将来的に実現する事で、初めて緑化が成功したと言えるだろう。

(ゴーレム自体が過渡期だし、冷却シシテムに探知システム、そして要衝への水作成設置。この辺を考えれば王国に対する貢献度と納税は賄える。伯爵に昇爵されるのは間違いないとして……次の五か年計画中に財政を健全化しねえとマズイよな)
 マジックアイテム自体が高価だし、領主の俺が担当するので貢献度は高い。
セシリアを始めとして魔術師が増えることで徐々に安価になって行くとはいえ、人数が揃ってオロシャ中の富裕層に行き渡るのはまだまだ先の事である。輸出も視野に入れると、当面は貢献度と納税に関しては心配する事は無いのだ。しかし、それは俺を始めとした所属魔術師に依存する事になるので異常な事である。仮に王宮魔術師たちがガブリールのもとで付与魔術師だらけになったら、その方面の収入は激減するだろう。

幸いなことに塩が上質(複数精製)かつ安定供給している事から売れ行きは良く、豆はダメだったが綿花の栽培は順調である。種を余らせて油を搾る形にすれば、十分に食料を買いつつも利益が勝って行くようになるだろう。商品性の高い項目ばかりだが、俺が王党派で大きな貢献をしている以上は、専売にするとか言うアホな真似はしないと思いたい。

(肥料も手に入れたし、空中庭園は本館以外はようやく始動できるな。掘っ立て小屋で良ければもう住めるレベルだし、焦らずに良い屋敷を立てれば良いだけだ。まあ……新機能を盛り込むなら今しかないとも言えるんだが……エスカレーターを組み込むか次第だな)
 エレベーターは準備をしていて、噴水はもう完成している。
目新しい機能としてエレベーターをゴーレム化によって実用を目指していたのだが、幾つか問題があった。もし攻め込まれた時に破壊した場合、穴が大き過ぎて再建に時間が掛かるのだ。もっと重要なのは『ゴーレムって人が大概もOKなんだね』というのを目に見えて見せてしまう。自転車操業で予算をつぎ込むことになるし、ここは止めておいた方が良いのかもしれない。

では、他に何か面白い機能はと言うと特に思いつかない。やるとしたら遊園地のメリーゴーランドとかティーカップであるが、やはり予算を掛けた上でゴーレム概念の露呈をするだけになってしまうだろう。あえて言うならエスカレーターと違って、露呈した後に大々的に用意しても良いくらいである。

(やはり駄目か。財源がまともになってるとはいえ、手元の金を浪費するのは駄目だ。貯金してから余裕出来たら屋敷の内部に検証用で設置するくらいかな)
 なんというか概念漏洩が一番問題である。
オロシャの海はゴルビーの端っこに一か所ある程度だが、広まってしまえば他国でも採用できるのだ。現時点でも作業用ゴーレムで一日中作業させられるというのは広まっているわけだし、奴隷の方が簡単だが二十四時間休みなくということで元を取っているんだろうと思われてるから問題ないだけなのである。もしこれで水車をゴーレムにすれば遥かに効率的で、雫として垂らすことで短期乾燥もしているとバレたら大変である。

それと地味に自転車操業で手元の金が心もとないのも大きいしな。というかキーエル家に製材頼めば送ってくれるとはいえ、ゴルビーに無い木材を購入している訳で、必ず金は使うのである。目途が立っていないならば、余計な物を設置するのは将来の楽しみに取っておくべきだと割り切るとしよう。

(さて、後は一番の難関であるゴーレムについてだな。こいつは新しい技術や概念が山盛りだから、細分化すべきだろう。関節の概念による量産化が第一世代、多重関節での能力繊細化が第二世代、可変での呪文盛り込み方が第三世代、ゴーレム魔術による個別化で第四世代ってとこかな)
 ここまでは現状の再確認程度なので大した問題ではない。
空中庭園でエスカレーターを中止したり屋敷を作り込むなんてのは、現状を正しくとらえて妥協しただけである。塩田や農業による財政健全化も改めて認識しただけで、特に新機軸の相手を思いついたわけでもないのだ。未開拓のブルーオーシャンに飛び込んだようなもので、時間がたてばたつほど良くなっていくのも、発展し尽くせば収益が下がるのも当然である。

だが、ゴーレムはそうではない。技術と概念が日進月歩化してしまったからだ。

(一回目の妥協で土と火の瞬間系を交換して、そのまま土と火のゴーレム魔術を確立。足りてない水と風を研究しつつ、魔石の利用や魔物素材の技術でまた妥協と交換。水と風を三回目の交換で終わらせてゴーレム魔術師を育て始める。最低でも五年は掛かるとはいえ、可変機構による呪)組み込みも合わせるとアダマンティンの二号機でさえ速攻で旧式化すんぞ)
 何が問題かと言って、ライバルである筈の俺とエリーが妥協するくらいだ。
相手を出し抜く為に、技術や概念は基本的に秘匿するのが当然だ。しかし、ゴーレム魔術はまだまだ発展の途上。それも四属性の瞬間強化の半分が見えて来ただけであり、ここから基礎能力向上を見つけ出し、それを四属性全てで見つけなければならない。あまりに遠過ぎるのと、完成すれば技術が大幅に進歩が見えているので妥協を余儀なくされているのである。

ここからそれらを用いて実際にゴーレムに組み込み、最適解の能力と形状を持たせるにはどのくらいの年月と、幾度の改良が必要になるか判らないほどであった。

(この辺りの流れを踏んだ上で、次の五か年計画で何をやれば良いんだ? マジックアイテムにしてもゴーレムにしてもスケジュールはある程度決まったようなもんだが……)
 ゴーレム魔術が成立するのは、どんなに早くても数年後だ。
それまでは瞬間強化の具合を見つつ、逆算で基礎能力を上昇させるための呪文を割り出す流れになる。その成果を踏まえてから第三世代を量産すべきで、これから数年は時代遅れになると判っているゴーレムを、最低限の数だけ生産しながら運営することになるだろう。戦闘面はともかく四つ足ゴーレムをそれなりの数だけ量産しつつ、周囲の増産すべしという声に対抗しないとならない。たくさん作って置いて時代遅れとはどういうことだと、文句が出るのは当然だしな。

その辺りを踏まえると、技術育成に関する流れを公表して列車の量産数は抑える流れにするか、既得権益を守るために増やさない事を理由とするくらいが良いのだろうか?

(どちらにせよレオニード伯やレオニス陛下と相談だな。イル・カナンあたりへ援軍を出す話が決まるかもしれんし、こちらで勝手に予定を組めるもんじゃない。マジックアイテムは暫く予定通りにするとして、その間の余った時間はやっぱり第三世代の可変機を考えるべきか。簡略化をどうにかみつけて、まるっと暴走を抑え込む前提になるとは思うが)
 ルサールカのテストが終わり次第、王都へ手紙を出す事にした。
イル・カナンへの援軍を出す場合、最低でも量産型と列車用の簡易版を数機ずつ作る必要があるだろう。国内の需要を考えればそれでも足りないくらいなので、援軍の話が落ち着いたら民間用に払い下げるくらいが適正なのかもしれない。あるいはキーエル家の管理している私営鉄道を国営にする代わりに徴する可能性も無くはないのだが。

そうなると俺のスケジュールもだいぶ決まってしまうため、余裕はそれほどないだろう。場合によってはセシリアも魔法学院に留学してしまう事を考えれば、純粋に手が足りなくなる可能性があるのだ。

(暴走を抑え込み、時間継続のみに魔力を使う浮遊型の列車。そいつに荷物を載せて大量の物資を運ぶなり、ショートカットできるようにする、簡易的な飛行船でも作ってみるかな? 高速飛行の呪文が見つかったら話は変わるんだが……水棲種族経由からだと望みが薄いからなあ)
 援軍を派遣する流れを想定すると、列車を可変させるのが効率的だろう。
他にこれといったアイデアも思いつかないし、飛行船だと問題になるかもしれないが、浮遊する列車で積載量UPくらいならばバレても問題ないからだ。そのまま援軍に組み込まれるとかはあっても、『高速で移動できるから陛下が座上されるかも!?』みたいな流れには、流石にならないと思われる。

あるいは簡略化で時間継続以外に、もう一つくらい開放しておくのもありかもしれない。

(それとも、移動なんかさせずに固定場所でやるべきか? 対象指定をせずに『目的の場所一つ』という命令だけで、延々と底板か何かに術をかけ続け、魔力が払底した所で離れた場所にいる別のゴーレムが術を使うとか? 銃器の弾倉じゃないが、時間次第で入れ替えが考慮に入る。問題は……そこまでの価値があるかどうかだな)
 列車を浮遊させて、引っ張る方が楽ではある。
だが、仮に魔力の消費と吸収のバランスが取れるならば、複数のゴーレムに交替で魔術を使用させておけば済む話だ。飛行機のエンジンではないが、複数付けることが前提のエンジンもある。巨大な外洋船サイズならばゴーレムを複数搭載できるわけだし、富裕の呪文を交替で使用することも出来るだろう。後は帆を張るなり指定移動なりすれば普通に移動できるのではないだろうか?

とはいえ、そういう強引な手段で船を浮かせても危険なだけだろう。攻撃魔法の一発で火達磨になるような物では相手に命懸けの奇襲をやってくれと言う様な物なのだから。ロボット物の世界と違って、呪文の価値が強い世界だからやるのは危険だろう。

(となるとやっぱり、試すのは積載量強化型のゴーレム列車だな。試すとしても呪文を研究してからになるだろうがな)
 思いつかないこともあるが、今の所で目算が立つのは列車だった。
無数の列車を連ねるタイプだけではなく、大型車を用意するつもりで行けばよい。もし浮遊船に未練があるならば、地上戦艦を作るのも悪くはない筈だ。ともあれ今は列車をバージョンUPさせることで、今後が平和になっても良いし戦争になっても良いように計画を立てて行こうと思う。

そして予定通りに伯爵としての昇爵と、様々な内容を言い渡す儀式、その締めとしてユーリ姫が輿入れする話が決定されたのである。
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