魔王を倒したので砂漠でも緑化しようかと思う【完】

流水斎

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第十章

『第二次五か年計画の修正』

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 辺境伯か姫の旧領復帰のどちらかという二択を突きつけられた。
俺が新領地を増やし、これからもドンドン増えていくのではないかという懸念があり、周囲とのバランスが取れなくなるかららしい。ここで一番問題なのは、今後に大事が起きる可能性があるからこんな話になっている。

なお、辺境伯に成れるの? という疑問もあるにはある。
功績を上げて一代で貴族になるどころか、伯爵になりやがては辺境伯とか毀誉褒貶過ぎて色々おかしい。

(辺境伯か……普通ならあり得ない話だ)
(ただ、『英雄』というラベルをオロシャ国が有効利用するだけなら……)
(理屈付けだけで、利益を得るのが俺じゃないならあり得る話なんだよな)
(得をするのは俺じゃなくて、オロシャと他の貴族たち。俺は旗振り役で名誉職や必要な軍事力の為にその爵位に着く。もちろん、他にも辺境伯に成る奴は居るだろう)
 もし専制国家だったら、むしろ処刑するかどうかの前に尋ねるジョークだろう。
反乱を疑われて『お前は実力でこうなる気なんだろう?』と揶揄される状態で、『そのような事を考えて羽織りません。お許しください!』と王の前に伏して許しを請うレベルである。そのくらいあり得ない事だと言っても良い。だがオロシャは拡大期であり、無主の地を得たり、滅びた国や小国を吸収して大きく成れるチャンスであるのは確かなのだ。

どちらを選んでも基本的には俺個人の増加ではなく、子孫とか子分どもとかに効率よく分配するための物だ。利益がホイホイ湧いてくるわけではないことに注意が必要である。

「それで、どちらを選らばれるのですか?」
「普通ならアンドラ領一択だろう。陛下や仲間の貴族に疑われて良い事なんか一つもない。援軍として派遣されている最中に、『切り取り自由。本国領は接収する』と言われても不思議じゃないからな。だから余計な野心を抱か無い方が良いんだ、普通ならな」
 現時点での問題は、所詮一代目の成り上がりで家臣も味方も居ない事だ。
レオニード伯は勇者軍の時からの付き合いがあるが、それでも陛下への忠誠と比べるまでも無い。俺が無実だと信じている間は、それなりのモラルで諫言はするだろうが、罪をでっちあげられたり国家の利益を前にしたら怪しい所だ。家臣団が育って居るどころか、まdまだ雇用主と被雇用者の関係に過ぎない。俺が謀反したのでゴルビーを取り上げると言われたら唯々諾々と従ってしまうだろう。

もちろん早々起きる事ではないが、それは誰かが悪意で状況を動かす場合の話で、『ゴルビー伯爵なら得だと思う筈だから、良い取引になるだろう』と善意でイラ・カナンと魔族の島をくれてやると言う可能性もゼロではなかった。

「普通なら……ですか?」
「自国の国力が先に回復したから他所が回復する前に侵略しようとか、攻撃されそうだから先に攻撃しようという奴は必ず居るからな。それこそオロシャどころかゴルビーだって、先に遊牧民を征服した方が良いんじゃないかと言う奴は居ると思うぞ? 大草原の中を何処まで攻める気か知らんが。それにイラ・カナン方面はいつ何が起きても仕方ないからなあ」
 辺境伯に成る場合の利点は、非常時に兵権を握れることだ。
今は全くその必要を感じないのだが、何処かの国が攻めて来るとか、こちらから何処かを攻めるので意見を寄こせと言う話になるとしよう。その時に国境を守る役目を持ち、独自戦力を有することが当たり前な辺境伯だと発言力が違って来る。それこそ今だと戦闘用に関わらずゴーレムの数を増やすだけで疑われかねないからな。

もちろんそれらは流されていく場合の過程であり、こちらから動くというのも手ではある(自分から攻める必要は感じないが一案として)。

「なるほど一理ありますし、その時は重要そうですね。どうしたものか……」
「今までは『流されるのは良くない』で能動的に行動してきたが、今回ばかりはそうもいくまい。今の所は双方にとって思わぬ急な話だからこちらの意見を求められたが、本来は陛下たちが様々な問題を勘案して決定するんだ。どちらだろうと『ありがたき幸せ!』と言って受け取るべきであり、こちらから『ではイラ・カナンを攻略しましょう』などと言える立場じゃない。新たな魔将でも出てこない限りはな」
 マイナスが少ないアンドラ領と、ハイリスクハイリターンの辺境伯。
面倒なのはこちらから能動的に動くべきではない事である。もしかしたら積極的に派閥構成をやったり、他の貴族に働きかけて地位なり安定をもぎ取るべきかもしれない。しかし、俺にとっては領地や名誉はそれほど欲しいものではなく、また神さまに送り込まれた者として魔族の再起は気になる訳だ。

とりあえず暫くはこのまま様子見として、第二期の五か年計画をどう修正するかを考えていくとするか。

「どちらにせよ当面の課題をこなしつつ、余裕の範囲でゴルビーを良くしていこう。まずは君からだなアレクセイ。貴族になるか、このまま王家直下の代官として格を上げるなり大臣を目指すなり好きな道を選んでくれ。陛下じゃないが、幾らでも協力するぞ」
「悩ましい二択のお裾分けですか? 誠にありがたい話ですね」
 格言の『隗より始めよ』ではないが、身近な所は重要である。
協力関係にある訳だし、仮にアンドラ領を貰う場合は彼の役目がまたなくなってしまう。新しい職務があって陛下に信頼されて栄転するなら良いのだが、問題が出る場合は引き取るべきだろう。その場合は新貴族へと任じてもらって、うちの寄り子としてこれまで通り働いてもらうのが良いだろう。もちろん陛下が信任しているならば、彼に対する援助の見返りに知恵をかしてもらうという事をこれからも続けても良い。

それこそだが、イラ・カナン方面に土地を切り取ったら、代官になるにせようち寄り子になるにせよアレクセイが派遣される可能性は高いからな。

「伯爵に習って様子見と行きましょう。ひとまず何から手を付けます?」
「援軍とはいえ戦争になるかもしれんからな。備蓄を増やす方向に舵を切ろう。綿花は連作障害対策で一時的に豆と入れ替える他は、特に増やさない。減らす予定だった分を備蓄に回して、うちの市場に出なくなる分は綿の種から絞った油を販売して補う。現物と交換で良いならニコライの奴が喜んで引き受けてくれるだろうさ」
 食い物が無ければ人は死んでしまうし、戦争どころではない。
なので減反するつもりだった豆類を減らさず、大規模増産するはずだった綿花をそのまま据え置く。予定よりも増える食料は全て備蓄に回せば、いきなり飢饉でも来ない限りは問題なくなるだろう。備蓄優先で行けばたとえ戦争が始まっても困らないし、何処かで食料が足りなければ融通することも出来るのだ。

農業圏構想のおかげで食料は順調に増えつつあるので、オロシャ全体で高騰している食料も徐々に落ち着くだろう。そういう方向性ならば、値が下がりつつある食料と油の交換をニコライなら受ける筈だ。

「戦争が起きなければ余る可能性がありますか?」
「その時はうちの市場に安値で放出するなり、祭りでも催すだけの事だな。貴族が持つ慈悲の結果としてばらまくんじゃなくて、祝いの祭りってことなら少しくらいはゴルビー家に愛着を持ってくれるかもしれないしな。後は油の搾り滓も肥料にするとして、魚肥との比較もしたいな。それぞれ個別に蒔いたものと、双方混ぜ合わせたものの合計三種類を試しといてくれ」
 ひとまずこれらの計画で食糧問題と予算編成に関しては問題なくなるだろう。
後は少しずつ兵士を増やして訓練するなりすれば、防衛戦に関してはゴーレムもあって問題ないだろう。俺自身が戦争したいわけでもないから、質優先というか……いきなり質が高い筈もないので、良く気が付く奴を中心に増やす事にしよう。ガタイが大きい兵士向きの奴はうちにはそれほど必要ないしな。

後はゴーレムやらマジックアイテムに関して見直せば、何とかなる。
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