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第十一章
『驚くべきサプライズ』
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塩の専売を申し出ることに関して、諸侯は一定の理解を示した。
それで俺が何を得るのか、逆に手放すことになるのかに関しては斟酌しない。所詮他人の権益であり、通常なら絶対に手放さない利益であろうとも、他に塩田が出来てしまえば価値が暴落するからだ。
要するに先行投資として、多大な権利を手放し、それが自分達にも恩恵を示すのであれば何も言う事はないということだろう。
「塩の国家専売だと? ミハイル、お前正気か?」
「正気だからこそですよ、レオニード伯。どうせ攻略開始二年か三年もすれば……どんなに遅くとも今から五年後には半減する価値です」
陛下に上奏する前に相談しておくことにした。
どう考えても影響が大きいし、何か齟齬があった時にフォローできる人が陛下の側近に居ると居ないとでは大違いだからだ。
伯爵は難しい顔をしていたが、暫くして納得したたかのように頷く。
「確かにヨセフならやるだろうな。使った資金を回収できるしお前の邪魔も出来る。寧ろやらぬ理由がない。だが、今ここで手放す必要があるのか? もう少し利益を回収てでも……」
「いえ、今ならば引き替えの利益と共に、使い道に口出す権利が得られます。遠征計画に関して何を重視して何を評価するかとか、専売公社設立に携わっても文句は言われないでしょう。しかし、これが遠征後なら価値が同じであっても、その間に俺が動けません。チャンスを掴むために使うなら使うなら今でしょう?」
専売公社の価値が変動しないとしても、俺に時間が与えられない。
口出しできるのであれば、冒険者ギルドの様に情報の価値に意味を見出し、ヨセフ伯が進出するフォローをする事にも価値を見出せる。それを陛下の指示でやるのか、それとも参謀に収まった俺が示すのかで、全体に与える影響がまるで違うのだ。陛下の指示ならば陛下とヨセフ伯の仲が良くなるだけの話だが、俺が示すならば他の貴族が突出するのを避けられる。
それと専売公社に関しても、列車運営の時の様に口出せるとその後を制御できるのも大きかった。
「手放すことに対する褒章はお任せします。アンドラでも辺境伯でも遠征に終わりが見えてから、オロシャにとって都合が良い方で構いません。もちろん他に見合う報酬があるならそれでも良いですよ。上納金の額を大幅に引き下げてもらうとか、ありがたいんですけどね」
「上納金は無理だ。他の権利か先の条件に成るだろうな」
諸侯も塩の権利を手放すなら、俺が土地や辺境伯でも構わないと言った。
現時点では開発中で広くもないアンドラに旨味はなく、辺境伯も名誉称号でしかないからだ。独自の兵権も辺境どころか海の向こうの飛び地の維持には必須だし、増える利益だって塩で大儲けしている今の現状を手放す事を考えたら、投機としか思えないだろう。確定でもない利益と引き替えにするとしたら、アンドラや辺境伯の爵位はつり合いが採れないのである(水棲種族と俺の付き合いを知らないのもあるが)。
レオニードはこの段階で軽く首を振り、判ったとでも言わんばかりに肩をすくめた。
「……この手の交渉はな、誰が言い出すか、どちらが先に提案するかで意味が変わって来るものだ。確かに今ならば陛下も喜ばれようし、大臣たちも出費に頭を傷めずに済むだろうよ。将来の問題も随分と楽になる」
「やはり陛下の狙いはヨセフ伯、ゴルビー、バルガス伯爵家の順ですか?」
「察していたか? 表では口に出すなよ。士気に関わるからな」
「判ってます。粛清リストに載ってるとか話したくもありませんよ」
諭すような口ぶりだったので、ついでに懸念事項も伝えておいた。
ヨセフ伯のマッチョ思考は当然だが、強くなり過ぎたゴルビー地方も問題だろう。仮に俺に反意が無いとしても、次世代以降でそうとも限らないからだ。その状態で更なる土地なり爵位を手に入れるとあっては放置できないだろう。バルガス伯爵家は完全にトバッチリだが、広い領地の殆どが新街道か農業圏こうそうのおかげで大儲けしている。本家はともかくばらばらな血縁連中は、あちこちの勢力とも付き合いがあり一枚岩でないのが面倒だった。
この話の難しい所が、粛清と言っても別に処刑したいわけではないという事だ。
「強過ぎる拡大意欲はともすれば反乱に繋がりかねず、妙な事を始めている上に成功もしている俺も同じく問題。一番重要な問題は王家との兼ね合いであり、国を割って歯向かわれても困るが、このまま牽引してくれるならばありがたい。手痛い出費をさせておき、その動向を少し釘を刺しておこうという所では?」
「判っているならば良い。お前は信用置けるが、まだ子供も居ないのではな」
レオニード伯の笑みが苦笑に代わる。おそらく演技を止めたのだろう。
どこまで行っても彼は通訳であり、中間管理職でしかないのだ。陛下の思惑と俺やヨセフ伯との間に立って、上手くバランスするように求められ、そのように動いているだけなのだろう。俺に対してやや同情的なのは、勇者軍時代からの付き合いもあるが……俺自身には陛下を立てる気があるからだけであると思われた。
逆説的に言えば、陛下が邪魔だと言えば庇う気も無いし、俺の方が反旗を翻せば躊躇はするまい。
「だがお前の言いたいことは判った。陛下には伝えておくゆえ後日……」
「その必要は無い。今ここで話をしようではないか」
「「陛下!?」」
ひとまず順調な相談と根回し終了……そう思った所で驚きのサプライズだ。
ここは忠臣である王党派の領袖であるレオニード伯の屋敷だ。陛下がお忍びで来ていても不思議ではないが、まさか俺との会談に居合わせるとは思わなかった。あるいは最初からこの会話を直接聞かせることで、俺に反意が無いと見せる為のレオニード伯の配慮だったのかもしれない。だとしたら非常にありがたい事なのだが、まさに台無しのワンシーンとなった。
まさか隠れていた陛下が出て来るとは、レオニード伯自身も驚きなのだろう。
「陛下。お戯れはお止めください。あれほど出ない事を条件としましたに」
「何を申すか。この場に居るのは忍びよ。ここに国王レオニスは居らぬ。少なくとも公式記録ではそうなって居ろう? それに将来の齟齬をこの場で摘み取れるなら悪い機会ではない」
前にも似たようなことはあったような気がするが段違いだ。
まさかレオニード伯の屋敷に陛下が居るとは思いもしない。これが平時であるとかまだ若い王太子殿下とかならあり得る範囲だろう。だが陛下がお忍びでやってくるなど合って良い事はないし、その事へ既に文句をつけたであろうレオニード伯は、陛下が絶対に出てこないことを条件にしていたのだろう。同じようなことがあった時、これまでの陛下は大人しくしていたと思われる。
だが、必要な嘘というのは一回のみなら良しとされるものだ。
「なんぞ申したい事はあるか? 聞いての通り今は忍びの身よ。欲しいモノが在れば聞いてやれるし、何か無茶があっても多少の話は聞かなかったことに出来る。これ以上の好機はないぞ」
(これ本当に口出して良いのか? 揚げ足盗られないだろうな……だけど)
陛下の無茶振りに対して俺としては閉口せざるを得ない。
こういった場合、王者の戯れは『試し』であるものだ。何度か固辞してそれでも進められたら受けるのが正しい態度であると思われる。だが、本当にそうしても良いのだろうか? 陛下の性格上『面白くない。失望した』という事に成りかねないのが一つ目の問題。
二つ目の問題は、話を綿密に調整できるこんな機会は二度とないという事だ。それも緊急を要するとか、心の機微を伝えあいながら話すのは本当に難しい。
「本来であれば自らを危険にしてまで欲しいモノはありません」
「本来ならば……か。では、かかる非常に事態に何を申す?」
「では宮廷魔導師団の指揮権を、一部のみ一時的のみで構いませんので預けていただきたいのです。下部にプロジェクトチームを幾つか組織して『出征用』や『後の教育用』に準備いたします。その後のポストは解散しても良し、残しても良し。ご随意にご利用ください」
ここまで来たら、今回の問題を中心にフリーハンドをもらうべきだろう。
遠慮して問題を後に残すよりは、ここですべて解決するつもりで手段を手に入れた方が良い。若い魔術師たちを一時的に配下に入れることが出来れば、魔術儀式を当たり前のように実行したり、様々なマジックアイテムを用意できる。それくらいならこれまでもやっていただろうって? それはそうだが、呪文の総数が違うのである。
王宮に務める王宮魔術師たちや、俺が抜けた後にポストが欲しい中堅魔術師たちの呪文リストを手に入れることができれば、作れるリストは相当に増えるだろう。
「魔術師たちは活躍の場があっても『今はその時ではない』と動こうとせず、普遍的な魔法の品を揃えようとしても『研鑽以外は本分はない』と断ります。ですがお考え下さい。百以上のマジックアイテムを本部に揃え、それらを使い熟す陛下直下の専門チームでございます」
「王の心を試しおるな? 不敬であるぞ」
「陛下はこの場に居られぬと聞きましたゆえ」
「ハハハ。こやつめ、言いおるわ」
などと言いつつ笑い話にしておいた。これは後が怖いからだ。
俺の私物として部隊を率いると思われては困るので、王直属の専門チームを立ち上げるということにしておく。いわゆるシークレットサービス的なチームであり、騎士と言うよりは宝貝を使いこなす仙人候補の道士たちみたいなもんだな。とりあえず魔杖子とでもしておこう。
ともあれ、これで今後の対処も楽になって来るだろう。ついでに俺が作りたいマジックアイテムやゴーレムも作るのだが、その辺も陛下に献上するので許して欲しい所である。
「他には何かあるか? 遠征に関係なくとも良い」
「専売公社と列車事業の総裁には、いずれ殿下たちを付けるべきでしょう。臣下では権限が多過ぎます。草案そのものは幾つか用意しますので、ご検討ください」
残る話題は塩の国家専売事業化の話くらいである。
前にも国鉄事業の話で話を出しておいたが、王太子殿下もその下の殿下もまだ若いので就いてはいない。ほとんど俺が用意して他の貴族に俺が任せているわけだが、こんな国家規模の事業を一貴族が差配して良い事はあるまい。今はともかく将来的に腐敗の温床になるしな。
こうして驚くべきサプライズは終り、いよいよ援軍に関しての作戦会議が開かれることに成った。
塩の専売を申し出ることに関して、諸侯は一定の理解を示した。
それで俺が何を得るのか、逆に手放すことになるのかに関しては斟酌しない。所詮他人の権益であり、通常なら絶対に手放さない利益であろうとも、他に塩田が出来てしまえば価値が暴落するからだ。
要するに先行投資として、多大な権利を手放し、それが自分達にも恩恵を示すのであれば何も言う事はないということだろう。
「塩の国家専売だと? ミハイル、お前正気か?」
「正気だからこそですよ、レオニード伯。どうせ攻略開始二年か三年もすれば……どんなに遅くとも今から五年後には半減する価値です」
陛下に上奏する前に相談しておくことにした。
どう考えても影響が大きいし、何か齟齬があった時にフォローできる人が陛下の側近に居ると居ないとでは大違いだからだ。
伯爵は難しい顔をしていたが、暫くして納得したたかのように頷く。
「確かにヨセフならやるだろうな。使った資金を回収できるしお前の邪魔も出来る。寧ろやらぬ理由がない。だが、今ここで手放す必要があるのか? もう少し利益を回収てでも……」
「いえ、今ならば引き替えの利益と共に、使い道に口出す権利が得られます。遠征計画に関して何を重視して何を評価するかとか、専売公社設立に携わっても文句は言われないでしょう。しかし、これが遠征後なら価値が同じであっても、その間に俺が動けません。チャンスを掴むために使うなら使うなら今でしょう?」
専売公社の価値が変動しないとしても、俺に時間が与えられない。
口出しできるのであれば、冒険者ギルドの様に情報の価値に意味を見出し、ヨセフ伯が進出するフォローをする事にも価値を見出せる。それを陛下の指示でやるのか、それとも参謀に収まった俺が示すのかで、全体に与える影響がまるで違うのだ。陛下の指示ならば陛下とヨセフ伯の仲が良くなるだけの話だが、俺が示すならば他の貴族が突出するのを避けられる。
それと専売公社に関しても、列車運営の時の様に口出せるとその後を制御できるのも大きかった。
「手放すことに対する褒章はお任せします。アンドラでも辺境伯でも遠征に終わりが見えてから、オロシャにとって都合が良い方で構いません。もちろん他に見合う報酬があるならそれでも良いですよ。上納金の額を大幅に引き下げてもらうとか、ありがたいんですけどね」
「上納金は無理だ。他の権利か先の条件に成るだろうな」
諸侯も塩の権利を手放すなら、俺が土地や辺境伯でも構わないと言った。
現時点では開発中で広くもないアンドラに旨味はなく、辺境伯も名誉称号でしかないからだ。独自の兵権も辺境どころか海の向こうの飛び地の維持には必須だし、増える利益だって塩で大儲けしている今の現状を手放す事を考えたら、投機としか思えないだろう。確定でもない利益と引き替えにするとしたら、アンドラや辺境伯の爵位はつり合いが採れないのである(水棲種族と俺の付き合いを知らないのもあるが)。
レオニードはこの段階で軽く首を振り、判ったとでも言わんばかりに肩をすくめた。
「……この手の交渉はな、誰が言い出すか、どちらが先に提案するかで意味が変わって来るものだ。確かに今ならば陛下も喜ばれようし、大臣たちも出費に頭を傷めずに済むだろうよ。将来の問題も随分と楽になる」
「やはり陛下の狙いはヨセフ伯、ゴルビー、バルガス伯爵家の順ですか?」
「察していたか? 表では口に出すなよ。士気に関わるからな」
「判ってます。粛清リストに載ってるとか話したくもありませんよ」
諭すような口ぶりだったので、ついでに懸念事項も伝えておいた。
ヨセフ伯のマッチョ思考は当然だが、強くなり過ぎたゴルビー地方も問題だろう。仮に俺に反意が無いとしても、次世代以降でそうとも限らないからだ。その状態で更なる土地なり爵位を手に入れるとあっては放置できないだろう。バルガス伯爵家は完全にトバッチリだが、広い領地の殆どが新街道か農業圏こうそうのおかげで大儲けしている。本家はともかくばらばらな血縁連中は、あちこちの勢力とも付き合いがあり一枚岩でないのが面倒だった。
この話の難しい所が、粛清と言っても別に処刑したいわけではないという事だ。
「強過ぎる拡大意欲はともすれば反乱に繋がりかねず、妙な事を始めている上に成功もしている俺も同じく問題。一番重要な問題は王家との兼ね合いであり、国を割って歯向かわれても困るが、このまま牽引してくれるならばありがたい。手痛い出費をさせておき、その動向を少し釘を刺しておこうという所では?」
「判っているならば良い。お前は信用置けるが、まだ子供も居ないのではな」
レオニード伯の笑みが苦笑に代わる。おそらく演技を止めたのだろう。
どこまで行っても彼は通訳であり、中間管理職でしかないのだ。陛下の思惑と俺やヨセフ伯との間に立って、上手くバランスするように求められ、そのように動いているだけなのだろう。俺に対してやや同情的なのは、勇者軍時代からの付き合いもあるが……俺自身には陛下を立てる気があるからだけであると思われた。
逆説的に言えば、陛下が邪魔だと言えば庇う気も無いし、俺の方が反旗を翻せば躊躇はするまい。
「だがお前の言いたいことは判った。陛下には伝えておくゆえ後日……」
「その必要は無い。今ここで話をしようではないか」
「「陛下!?」」
ひとまず順調な相談と根回し終了……そう思った所で驚きのサプライズだ。
ここは忠臣である王党派の領袖であるレオニード伯の屋敷だ。陛下がお忍びで来ていても不思議ではないが、まさか俺との会談に居合わせるとは思わなかった。あるいは最初からこの会話を直接聞かせることで、俺に反意が無いと見せる為のレオニード伯の配慮だったのかもしれない。だとしたら非常にありがたい事なのだが、まさに台無しのワンシーンとなった。
まさか隠れていた陛下が出て来るとは、レオニード伯自身も驚きなのだろう。
「陛下。お戯れはお止めください。あれほど出ない事を条件としましたに」
「何を申すか。この場に居るのは忍びよ。ここに国王レオニスは居らぬ。少なくとも公式記録ではそうなって居ろう? それに将来の齟齬をこの場で摘み取れるなら悪い機会ではない」
前にも似たようなことはあったような気がするが段違いだ。
まさかレオニード伯の屋敷に陛下が居るとは思いもしない。これが平時であるとかまだ若い王太子殿下とかならあり得る範囲だろう。だが陛下がお忍びでやってくるなど合って良い事はないし、その事へ既に文句をつけたであろうレオニード伯は、陛下が絶対に出てこないことを条件にしていたのだろう。同じようなことがあった時、これまでの陛下は大人しくしていたと思われる。
だが、必要な嘘というのは一回のみなら良しとされるものだ。
「なんぞ申したい事はあるか? 聞いての通り今は忍びの身よ。欲しいモノが在れば聞いてやれるし、何か無茶があっても多少の話は聞かなかったことに出来る。これ以上の好機はないぞ」
(これ本当に口出して良いのか? 揚げ足盗られないだろうな……だけど)
陛下の無茶振りに対して俺としては閉口せざるを得ない。
こういった場合、王者の戯れは『試し』であるものだ。何度か固辞してそれでも進められたら受けるのが正しい態度であると思われる。だが、本当にそうしても良いのだろうか? 陛下の性格上『面白くない。失望した』という事に成りかねないのが一つ目の問題。
二つ目の問題は、話を綿密に調整できるこんな機会は二度とないという事だ。それも緊急を要するとか、心の機微を伝えあいながら話すのは本当に難しい。
「本来であれば自らを危険にしてまで欲しいモノはありません」
「本来ならば……か。では、かかる非常に事態に何を申す?」
「では宮廷魔導師団の指揮権を、一部のみ一時的のみで構いませんので預けていただきたいのです。下部にプロジェクトチームを幾つか組織して『出征用』や『後の教育用』に準備いたします。その後のポストは解散しても良し、残しても良し。ご随意にご利用ください」
ここまで来たら、今回の問題を中心にフリーハンドをもらうべきだろう。
遠慮して問題を後に残すよりは、ここですべて解決するつもりで手段を手に入れた方が良い。若い魔術師たちを一時的に配下に入れることが出来れば、魔術儀式を当たり前のように実行したり、様々なマジックアイテムを用意できる。それくらいならこれまでもやっていただろうって? それはそうだが、呪文の総数が違うのである。
王宮に務める王宮魔術師たちや、俺が抜けた後にポストが欲しい中堅魔術師たちの呪文リストを手に入れることができれば、作れるリストは相当に増えるだろう。
「魔術師たちは活躍の場があっても『今はその時ではない』と動こうとせず、普遍的な魔法の品を揃えようとしても『研鑽以外は本分はない』と断ります。ですがお考え下さい。百以上のマジックアイテムを本部に揃え、それらを使い熟す陛下直下の専門チームでございます」
「王の心を試しおるな? 不敬であるぞ」
「陛下はこの場に居られぬと聞きましたゆえ」
「ハハハ。こやつめ、言いおるわ」
などと言いつつ笑い話にしておいた。これは後が怖いからだ。
俺の私物として部隊を率いると思われては困るので、王直属の専門チームを立ち上げるということにしておく。いわゆるシークレットサービス的なチームであり、騎士と言うよりは宝貝を使いこなす仙人候補の道士たちみたいなもんだな。とりあえず魔杖子とでもしておこう。
ともあれ、これで今後の対処も楽になって来るだろう。ついでに俺が作りたいマジックアイテムやゴーレムも作るのだが、その辺も陛下に献上するので許して欲しい所である。
「他には何かあるか? 遠征に関係なくとも良い」
「専売公社と列車事業の総裁には、いずれ殿下たちを付けるべきでしょう。臣下では権限が多過ぎます。草案そのものは幾つか用意しますので、ご検討ください」
残る話題は塩の国家専売事業化の話くらいである。
前にも国鉄事業の話で話を出しておいたが、王太子殿下もその下の殿下もまだ若いので就いてはいない。ほとんど俺が用意して他の貴族に俺が任せているわけだが、こんな国家規模の事業を一貴族が差配して良い事はあるまい。今はともかく将来的に腐敗の温床になるしな。
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