江ノ島の小さな人形師

sohko3

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空の中で暮らす

島の全部が、商店街!?

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 さっきまであんなにわくわくしていたのに、お参りだって楽しみにしていたのに。

 羽香奈はすっかり意気消沈していた。

 葉織自信は平然としている……

それもなんだか信じられない、見ず知らずの大人に頬を叩かれてどうして平気でいられるんだろう……

なんでもないように歩き続け、道案内をしてくれている。

「ここは熱帯植物園。
青い塔みたいのが建ってるけど、あれは昔は灯台だったんだって。
今は灯台としては動いてない。

入場料かかるしオレもあんまり入ったことないけど、ばあちゃんが夏休み中に羽香奈に案内してあげなって昨日言ってたよ。
お金出してくれるって」

「えっ……いいの?」

「せっかく夏休みで時間あるし、江ノ島に慣れた方がいいと思うし。
いいんじゃないかな。
おかげでオレも久しぶりに中が見られて楽しみかも」

 せっかくご近所に住んでいるというのに、近くにありすぎると意外と中に入る機会というか、タイミングがないものなのかもしれない。

 なんだかなぁ。

 さっきまで葉織くんのことを心配していたっていうのに、自分も現金なものだ。

 ほんのり自己嫌悪を抱きながらも、羽香奈は江ノ島という、自分にとっての新世界を歩く楽しさを取り戻してきた。


 いくつもの階段を上がったり下がったりしながら、細い道を歩く。

 夏休みとはいえ平日だからか、通り過ぎる人の姿はまばらだ。

 羽香奈の印象に過ぎないし実際は違うのかもしれないが、立ち並ぶのは住宅よりもお店、あるいは店舗兼住宅に見えるものが多い。

「島全体に大きな商店街が続いているみたい……」

「うちもじいちゃんとばあちゃんがちょっと前までお土産屋さんやってたんだよ。
年金貰えるようになったからっていうんで辞めちゃったけどね」

「元はお店だったお家に住めるんだぁ……」

「羽香奈って何にでも感動するなぁ」

 別にからかっている風でもなく、葉織はただただ疑問らしく、首を傾げている。

 葉織くんはどこまで知っているか、わたしにはわからないけれど。

 それだけわたしは今までに、何ひとつ持たずに生きてきたってことなんだよ。

 葉織くんにとってはささやかなものなのだとしても、わたしにとってはひとつひとつがあんまりにも大きくて、抱えきれないくらいだよ……。


 この江ノ島にしたって、そうだ。

 橋の向こうの藤沢の町よりも、羽香奈が生まれ育った東京よりも、江ノ島はうんと小さい。

 それなのに、「生まれて初めて、本当の意味で生きようとしている」羽香奈にとっては広い世界に思えた。
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