68 / 98
熱帯植物園
百年前から
しおりを挟む
入場料を払って中に入る。熱帯植物園、と聞いて羽香奈がイメージするのは、学校の遠足で行ったどこかの温室。
日本では熱帯の植物は自然には育たなくて、温室で無理やり調節して育てて展示するものだと思っていたのだが。
「南の島みたいな木が普通に生えてるよ?」
園内の小道を挟むように、熱帯の植物が生えている。
江ノ島は緑の多い場所ではあるが、植物園の外に生えている樹木とは明らかに趣が違う。
「江ノ島って、オレ達が思ってるより暑い場所なのかなぁ」
葉織も植物園に関することは全く詳しくないので、入場の際に受け取ったパンフレットを開く。
「一八八二年にアイルランドの貿易商の人が作った庭園で、その頃から南国の植物を栽培してたんだって」
「百年くらい前なの? 想像つかないね……」
とりあえず、大展望塔はメインディッシュとして最後までとっておくことにして、園内を一周見て回る。
どれも小規模ながら温室、動物園、遊具もあって見どころが多い。
「あっ、弁天橋! 真正面から見えるね!」
角度自体は江ノ島の仲見世通りから江ノ島神社に入り、瑞心門から見下ろすのと同じだ。しかしそれよりも高い位置から見下ろすとまた印象が変わるのか、羽香奈は大はしゃぎだ。
展望塔からの眺めはもっと凄いはずだから羽香奈は喜ぶんじゃないかな。そんなことを葉織は考えていたのだが。
「見たぁ? さっきのアイツ、春子のビビった顔~」
「笑えるよね~。
高いところ怖い癖になんで無理して上ったりするんだろ!」
「アタシ達の金魚の糞してないと、アイツ、他に友達いないもんね~」
高校生くらいに見える女性が三人、下卑た笑いを響かせながら葉織達の後ろを通り過ぎた。
側にあるベンチに三人並んで腰を下ろして、今度は別の話を始める。
なんだか嫌な予感がしつつ、羽香奈を見ると、彼女もちょっと不安そうな顔になっていた。
楽しい時間に水を差されたような気分だが、気にしているゆとりもなさそうで、ふたりは頷き合って歩き出す。
展望塔は元は灯台だったが今はその役目は終えている。
回転灯の入っている塔のてっぺんの小部屋だけは白に、そこから下の鉄塔は青で塗装されているようだが、ところどころ錆が浮いているのが目立っている。
「葉織くん、何か見える?」
「……上の方。
遠いからはっきりじゃないけど、ちょっと黒い靄が見えてる……かもしれない」
展望塔自体にも入場料がかかるので支払い、エレベーターに乗る順番をもどかしい思いで待っていた。
日本では熱帯の植物は自然には育たなくて、温室で無理やり調節して育てて展示するものだと思っていたのだが。
「南の島みたいな木が普通に生えてるよ?」
園内の小道を挟むように、熱帯の植物が生えている。
江ノ島は緑の多い場所ではあるが、植物園の外に生えている樹木とは明らかに趣が違う。
「江ノ島って、オレ達が思ってるより暑い場所なのかなぁ」
葉織も植物園に関することは全く詳しくないので、入場の際に受け取ったパンフレットを開く。
「一八八二年にアイルランドの貿易商の人が作った庭園で、その頃から南国の植物を栽培してたんだって」
「百年くらい前なの? 想像つかないね……」
とりあえず、大展望塔はメインディッシュとして最後までとっておくことにして、園内を一周見て回る。
どれも小規模ながら温室、動物園、遊具もあって見どころが多い。
「あっ、弁天橋! 真正面から見えるね!」
角度自体は江ノ島の仲見世通りから江ノ島神社に入り、瑞心門から見下ろすのと同じだ。しかしそれよりも高い位置から見下ろすとまた印象が変わるのか、羽香奈は大はしゃぎだ。
展望塔からの眺めはもっと凄いはずだから羽香奈は喜ぶんじゃないかな。そんなことを葉織は考えていたのだが。
「見たぁ? さっきのアイツ、春子のビビった顔~」
「笑えるよね~。
高いところ怖い癖になんで無理して上ったりするんだろ!」
「アタシ達の金魚の糞してないと、アイツ、他に友達いないもんね~」
高校生くらいに見える女性が三人、下卑た笑いを響かせながら葉織達の後ろを通り過ぎた。
側にあるベンチに三人並んで腰を下ろして、今度は別の話を始める。
なんだか嫌な予感がしつつ、羽香奈を見ると、彼女もちょっと不安そうな顔になっていた。
楽しい時間に水を差されたような気分だが、気にしているゆとりもなさそうで、ふたりは頷き合って歩き出す。
展望塔は元は灯台だったが今はその役目は終えている。
回転灯の入っている塔のてっぺんの小部屋だけは白に、そこから下の鉄塔は青で塗装されているようだが、ところどころ錆が浮いているのが目立っている。
「葉織くん、何か見える?」
「……上の方。
遠いからはっきりじゃないけど、ちょっと黒い靄が見えてる……かもしれない」
展望塔自体にも入場料がかかるので支払い、エレベーターに乗る順番をもどかしい思いで待っていた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる