江ノ島の小さな人形師

sohko3

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熱帯植物園

友達

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「あなたがこんなに怖がっているのに笑って置いていっちゃうなんて……
その人達って本当に友達なんですか?」

 葉織は春子の心の声を聞いたことで、春子が本心では彼女達を友達と思っていないことを知った。

 羽香奈はまだそれを知らないはずだが、客観的な情報からだけでそう感じるのはいたって自然だと思う。

「私、今年の春から高校生になったんだけど、友達作りに失敗して。
あの子達だけがグループに入れてくれたの。
下に見られてるってわかってるけど、クラスでひとりぼっちになるのが嫌で……」

「わたし、小さい頃から周りには意地悪な人しかいなかったから、ずっとひとりぼっちだったけど……
あんな人達と一緒にいるくらいならひとりの方がマシって思ってたから、ひとりでいること自体はそんなに気にならなかったなぁ」

 正確には、気にならなかったのではなく、それを気にする感情が麻痺していただけなのだが。

 歳月を重ねるほどに、周囲の人間に期待する気持ちが擦り切れて、ついにはなくなってしまった。

「わたしを大事にしてくれる人なんて、一生出会えないって思ってた。
でも、今はそういう人に出会えたの。

今でも信じられない、夢みたいって思うけど……
無理して嫌な人と一緒にいなくても、あなたにだっていつか、あなたにとって本当に必要な人に出会えるんじゃないかな。

今すぐじゃないと嫌だっていうんなら仕方ないけど……」

 春子は羽香奈の話にじっと聞き入っていた。

 彼女に羽香奈の想像を絶する生い立ちを知る由もないが、淡々とした語り口だからこそ逆に説得力をもって胸に滲み込んでくる。

 熱を持った説得をされると嘘くさく聞こえるが、淀みなく冷めた調子で語られると、彼女の人生においてはそれが本当に日常だったのかと空恐ろしさも感じてしまった。

 馬鹿正直に階段から降りるというのも考えたが、無理をして足を踏み外しても危険なので、葉織がひとりで階段を下りて地上の係員に事情を説明することにした。

「展望フロアで怖くて動けなくなってる女の子がいるよ」

 さすがに係員もそんな話を聞いて放置するわけにもいかず、葉織と共にエレベーターで上がって春子のところへ向かう。

 その間、春子には羽香奈がついていて、何か話をしていたらしい。

「あ、あの……
見ず知らずの私のこと助けに来てくれて、ありがとう。
私もちゃんと、考えてみるよ。
今のままでいいのか」

 自分を大切にしてくれない人と無理して一緒に居続けるか、勇気を出して離れてみるか。ちゃんと考えてみる。

 最後に感謝を伝えてくれた。
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