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1章
プロローグ
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「ここから全てを始めよう」
壇上のその人は、よく通るバリトンでそういった。
私はそっと目を閉じ、美しいその音色に聞き入った。
(なんて素敵な声なんだろう)
しみじみとそう思う。
沈んでいた私の心に落ちてきた、小さな、しかし確かな希望の光。
それが、彼の声、だった。
会場の空気が変わった。
舞台袖から、背の高い男性が現れて長い足であっという間に中央の演台へ到達した。ざわめいていた会場がしん、と静まる。私は胸のペンダントにそっと触れた。待ち焦がれていた人の登場にワクワクが止まらない。
「……まるでスーツの海だな」
独り言のようなつぶやきに私は思わず身をすくめる。
会社説明会に集まったスーツ姿の学生たちの中で白いワンピースは悪目立ちしていた。
後悔しても遅いけど。
と、壇上の彼と目が合った。見開かれる目にどきっとする。
もちろん、本当に目があっているわけではなく、自意識過剰なだけだろう。
声フェチの私にとって、ルックスは割と気にならないほう。
しかしさらりとした黒髪に高い鼻、整い切った顎のラインは美青年と呼ぶにふさわしく、視線が離れるまでの数秒間、やたら心臓がドキドキする。
(声だけじゃなくて、何もかもが特別。こんな人、本当にいるんだなあ)
住む世界が違いすぎて、嫉妬心すら生まれない。
彼は正面を向くと語り始めた。
「人間には生まれつき配られたカードがある。しょぼいのもレアなのもあるだろう。だが、チャンスのカードは平等だ」
声がホールに響き渡る。
まるで希望の光みたい。
「ここから、全てを始めよう」
彼は突然ネクタイを手早く緩めた。
「悪いな。かしこまるのは苦手でね」
どこかセクシーなその仕草。
「烏丸商事CEO、烏丸怜です。どうぞよろしく」
両手を大きく広げ、台に手をつく。
拍手の中、私は首から下げた黒いペンダント式録音機器のスイッチを押した。
一目惚れした彼の声をコレクションするために。
壇上のその人は、よく通るバリトンでそういった。
私はそっと目を閉じ、美しいその音色に聞き入った。
(なんて素敵な声なんだろう)
しみじみとそう思う。
沈んでいた私の心に落ちてきた、小さな、しかし確かな希望の光。
それが、彼の声、だった。
会場の空気が変わった。
舞台袖から、背の高い男性が現れて長い足であっという間に中央の演台へ到達した。ざわめいていた会場がしん、と静まる。私は胸のペンダントにそっと触れた。待ち焦がれていた人の登場にワクワクが止まらない。
「……まるでスーツの海だな」
独り言のようなつぶやきに私は思わず身をすくめる。
会社説明会に集まったスーツ姿の学生たちの中で白いワンピースは悪目立ちしていた。
後悔しても遅いけど。
と、壇上の彼と目が合った。見開かれる目にどきっとする。
もちろん、本当に目があっているわけではなく、自意識過剰なだけだろう。
声フェチの私にとって、ルックスは割と気にならないほう。
しかしさらりとした黒髪に高い鼻、整い切った顎のラインは美青年と呼ぶにふさわしく、視線が離れるまでの数秒間、やたら心臓がドキドキする。
(声だけじゃなくて、何もかもが特別。こんな人、本当にいるんだなあ)
住む世界が違いすぎて、嫉妬心すら生まれない。
彼は正面を向くと語り始めた。
「人間には生まれつき配られたカードがある。しょぼいのもレアなのもあるだろう。だが、チャンスのカードは平等だ」
声がホールに響き渡る。
まるで希望の光みたい。
「ここから、全てを始めよう」
彼は突然ネクタイを手早く緩めた。
「悪いな。かしこまるのは苦手でね」
どこかセクシーなその仕草。
「烏丸商事CEO、烏丸怜です。どうぞよろしく」
両手を大きく広げ、台に手をつく。
拍手の中、私は首から下げた黒いペンダント式録音機器のスイッチを押した。
一目惚れした彼の声をコレクションするために。
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