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ニコラーク伯爵家がどうなったかというと、法で禁止されている人身売買をしたことと崩落事故の放置、そしてかなりの借金もあったのとエリオットが捕まり後継者がいなくなったことで没落することが決まった。
私はエリオットと離縁した。『白い結婚』だったことも証明出来、手続きなどはレイモンド様が手伝ってくれたお陰もあって簡単に離縁することが出来たのだ。
もうニコラーク家の人間じゃない私はリンジー領へ戻ることになった。この伯爵家に仕えていた使用人たちはそれぞれ他へ働き口を紹介して貰えたそうで安心した。これもレイモンド様が助けてくれた。
「君には何も憂いを残してほしくないからね。これくらいお安い御用だよ」
本当にこの人はどこまで優しいのだろうか。おかげで私は何の心配事もなくリンジー領へ戻ることが出来る。そして伯爵家で私についてくれていた侍女が、そのまま私と共にリンジー領へ来ることになった。私を気に入ってくれたようで「これからもお仕えしたい」と言われたときは嬉しくて涙が出た。
「ああ、アメリア! 本当に大変だったね。そんなところへ嫁に出すことになって本当に済まなかった。これからしばらくはゆっくりと休むといい」
リンジー領へ戻ると家族みんな涙ながらに出迎えてくれた。結婚してからの私はかなり痩せてしまっていて余計に心配をかけてしまったようだ。それからの日々は、今までにないほど甘やかされて過ごした。
気持ちはとても嬉しいけど、お父様からは子供じゃないのに大きなぬいぐるみをいくつもプレゼントされたり、お兄様からは食べきれないほどのスイーツが並べられたり、お母様には買い物の為に街へ連れまわされたり、最終的には構われ過ぎてうざくなって部屋に立てこもったけど。
「アメリア~! パパが悪かったから部屋から出てきて可愛い顔を見せておくれ~!」
「お兄様も悪かったよアメリア! せっかく一緒に暮らしてるんだから顔を見せて~」
「お母様も寂しいわ。これからは少し控えるからまた一緒にお茶しましょうよ~」
扉の向こうで3人が何か喚いている。全く…。ゆっくり休めと言っていたのにこれじゃあ前より忙しいんじゃないだろうか。
「ふふふ。アメリア様のご家族の皆様は本当にアメリア様のことが大切なんですね。とても賑やかで楽しいです」
侍女にそう言ってもらえて嬉しいけど、恥ずかしくもあるわね。
リンジー領へ戻ってから2か月ほど後。レイモンド様が我が家を訪ねてこられた。
「お久しぶりです、レイモンド様」
「やあアメリア。会えて嬉しいよ。あれから体の調子はどう?」
「ええ、お陰様でもうすっかり良くなりました。本当にありがとうございました」
ストレスの原因が無くなったことで食欲も戻り、かなり痩せてしまった体は元通り、とはいかないまでもそれに近いくらいには戻ってくれた。お陰で体の調子もとても良くなって痩せすぎもダメだということが良くわかった。
応接間にはレイモンド様と私以外に、私の家族が総出で同席している。レイモンド様に改めて家族全員でお礼を述べる。
「それでレイモンド様、本日はどうなさったのです?」
「ああ、以前お願いを聞いて欲しいと言っていたことを覚えてる?」
「ええ、もちろんです。私の恩人ですから出来る限り叶えたいと思っておりますわ」
「良かった。…リンジー侯爵家の皆様、私レイモンド・アデルークはアメリア嬢に婚姻を申し込みたいと思っております。どうかお許しいただけませんでしょうか」
「「「「はい?」」」」
あまりの言葉に家族全員声が揃ってしまった。
レイモンド様が私に求婚? なぜ? それがお願いだとでもいうの?
「お、お待ちくださいレイモンド様! なぜそうなるんですの!? それに私は『出戻り』です。レイモンド様と結婚だなんて…」
「『出戻り』だとしても白い結婚だったのだから、大丈夫だよ。それはちゃんと証明された。白い結婚は婚姻自体無かったものになるんだ。だから『出戻り』なんかじゃないんだよ。
それにね、君は気づいていなかったと思うけど学生の時から君のことが好きだったんだ」
「はい? なんですって?」
え? ん? 私のことが好きだと言った? 聞き間違いかしら…。嫌だわ、早くも耳がおかしくなったのかしら…。
「当時はセセリアと婚約を結んでいたし想いを告げることはしなかったけど。だけどその婚約も無くなった。今の私はフリーだ。それに君も婚約者がいなくなってフリーだしね。申し込むなら今しかない」
「いえ、それはわかりますが…でも、そんな…」
「…それとね。セセリアが残した手紙には続きがあって。商人になる決心をしたのはアメリアに実現するといいですね、と言ってもらえたからだそうだよ。そんなこと無理だと否定せず、背中を押してくれた言葉が嬉しかったそうだ。それが例え冗談であっても。
だから私が婚約解消になったのはアメリアの責任でもあるんだ。だからその責任をとってもらおうかと思ってるんだけど。どうかな?」
「な、な、な…そんな…。ええ? ちょ、嘘でしょ…。私のせいだったなんて…」
セセリア様! 私の冗談で決心を固めただなんて嘘でしょう!? それで夜逃げ同然で国外へ逃亡したなんて、お転婆が過ぎる! 両家に大きな問題を残したのが私のせいだったなんて…。なんてこと。
「…そ、その節は申し訳ございませんでした」
「うん。それで受けてくれるのかな?」
「その…。私で、よろしければ…貰ってくださいまし」
「ありがとう。君が良いんだ。セセリアと婚約解消した時と、君がニコラーク家へ嫁いだことを知った時は絶望したけど、まさかこうなるなんて夢にも思わなかった」
……私もまさかこうなるなんて夢にも思いませんでした。なんという運命のいたずらなのか。
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