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第7章 黒猫
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「魂を呼び出したり移す……そんなことができるの」
シャルロットの言葉に私は目を丸くした。
「みたいです。マリアンヌ様にそれが行われたかは分かりませんけど」
「でも可能性はあるのよね……私がここにいるのもその黒魔術のせいかもしれないと」
もしも、私がマリアンヌの中に入ったのが黒魔術によってだとしたら。
「どうしてそんなことをしたのかしら。それに、マリアンヌの魂は一体どこに……」
「ニャーア」
突然猫の鳴き声が聞こえ、私とシャルロットは顔を見合わせた。
ここは学園のいつもの中庭で……猫などいるはずもない。
「ニャア」
けれど確かに声が聞こえて、私は周囲を見回した。
「まあ! 猫ちゃん!」
校舎の片隅から現れた黒猫がこちらへ向かって歩いてきた。
ツヤツヤとした毛並みに水色の少しつり目の、美人さんだわ。
黒猫は私の足元まで来ると、ちょこんと脚を揃えて座り、私を見上げてニャア、と小さく声を上げた。
「可愛い……。猫ちゃん、どうしてこんな所にいるの?」
「飼い猫ですよね」
この毛並みの良さは確かに飼い猫だろう。
「迷子かしら」
黒猫の視線が私の顔から頭へと移ると動かなくなった。
「なあに、このリボンが気になるの?」
髪をまとめていたリボンをほどいて目の前に差し出すと、黒猫はじっとリボンを見つめた。
それは赤地に、久しぶりに自分で百合の花の刺繍を施したリボンだった。
リボンをじっと見ていた黒猫は、やがてそのリボン、そして私の手に頭を擦り付けてきた。
「気に入ったんですかね」
「このリボンが欲しいの?」
ニャア、とまるで言葉が分かったかのように黒猫は声を上げた。
「じゃあ首に巻いてあげるからじっとしていてね」
ベンチから降りて黒猫の首にリボンを巻いていく間、黒猫は大人しくしていた。
黒毛に赤いリボンが映えてとても可愛らしい。
「ふふ、よく似合っているわ」
「ニャーア」
嬉しそうに声を上げると、黒猫は私の手に擦り寄ってきた。
「随分と人懐こいのね」
抱き上げるとすりすりと頭を寄せてくる。
本当に可愛いわ。連れて帰りたいくらいだけれど……飼い主さんがいるはずよね。
「……何だか似てますね」
シャルロットが言った。
「え?」
「マリアンヌ様とその猫。目の色と形が同じですし」
私は黒猫の顔を見た。
確かに水色の瞳は私と同じだ。
「ニャア」
甘えたような声を上げるこの子は、けれど私というか……。
「ふふ、マリアンヌの幼い頃を思い出すわ。あの子にもリボンをねだられたことがあるの」
あれは確か、孤児院のバザーに出すリボンに刺繍をしていたときだ。
それを目を輝かせながら見つめていたマリアンヌが自分にも欲しいと言って、一本あげたのだっけ。
あの時も赤いリボンで……三つ編みを編んだ先にリボンをつけてあげると、マリアンヌはとても喜んでいた。
「本当に大人しい猫ですね」
「シャルロットも触ってみる?」
「じゃあちょっとだけ……」
「アン!」
シャルロットが黒猫に手を伸ばそうとしたその時、フレデリク殿下の声が響いた。
驚いた拍子に黒猫はするりと腕から抜け出し、あっという間にその姿は見えなくなった。
「あ……」
「アン!」
急に消えた猫の重みと温もりを名残り惜しむ間もなく、ずしりと肩に重みを感じた。
「会いたかった……」
「……今日は公務でお休みだと聞いておりましたが」
「午前で終わらせた。午後はアンと一緒の授業だから」
背後から私を抱きしめてきた殿下はそう言って頬に口づけた。
「学園でしかアンに会えないなんて酷いよね」
それは殿下のせいでは……と言いそうになるのを飲み込む。
前日、王宮で私を閉じ込めようとした殿下はローズモンドや陛下たちからひどく叱られたらしい。
そうして、学園以外で私と会うことを禁じられたのだ。
「教室に戻ろう、そろそろ予鈴が鳴るよ」
「え……あ」
手を掴まれ、引っ張られる。
「マリアンヌ様、頑張ってください!」
憐れむようなシャルロットに見送られ、私は殿下に連れ去られるように中庭を後にした。
シャルロットの言葉に私は目を丸くした。
「みたいです。マリアンヌ様にそれが行われたかは分かりませんけど」
「でも可能性はあるのよね……私がここにいるのもその黒魔術のせいかもしれないと」
もしも、私がマリアンヌの中に入ったのが黒魔術によってだとしたら。
「どうしてそんなことをしたのかしら。それに、マリアンヌの魂は一体どこに……」
「ニャーア」
突然猫の鳴き声が聞こえ、私とシャルロットは顔を見合わせた。
ここは学園のいつもの中庭で……猫などいるはずもない。
「ニャア」
けれど確かに声が聞こえて、私は周囲を見回した。
「まあ! 猫ちゃん!」
校舎の片隅から現れた黒猫がこちらへ向かって歩いてきた。
ツヤツヤとした毛並みに水色の少しつり目の、美人さんだわ。
黒猫は私の足元まで来ると、ちょこんと脚を揃えて座り、私を見上げてニャア、と小さく声を上げた。
「可愛い……。猫ちゃん、どうしてこんな所にいるの?」
「飼い猫ですよね」
この毛並みの良さは確かに飼い猫だろう。
「迷子かしら」
黒猫の視線が私の顔から頭へと移ると動かなくなった。
「なあに、このリボンが気になるの?」
髪をまとめていたリボンをほどいて目の前に差し出すと、黒猫はじっとリボンを見つめた。
それは赤地に、久しぶりに自分で百合の花の刺繍を施したリボンだった。
リボンをじっと見ていた黒猫は、やがてそのリボン、そして私の手に頭を擦り付けてきた。
「気に入ったんですかね」
「このリボンが欲しいの?」
ニャア、とまるで言葉が分かったかのように黒猫は声を上げた。
「じゃあ首に巻いてあげるからじっとしていてね」
ベンチから降りて黒猫の首にリボンを巻いていく間、黒猫は大人しくしていた。
黒毛に赤いリボンが映えてとても可愛らしい。
「ふふ、よく似合っているわ」
「ニャーア」
嬉しそうに声を上げると、黒猫は私の手に擦り寄ってきた。
「随分と人懐こいのね」
抱き上げるとすりすりと頭を寄せてくる。
本当に可愛いわ。連れて帰りたいくらいだけれど……飼い主さんがいるはずよね。
「……何だか似てますね」
シャルロットが言った。
「え?」
「マリアンヌ様とその猫。目の色と形が同じですし」
私は黒猫の顔を見た。
確かに水色の瞳は私と同じだ。
「ニャア」
甘えたような声を上げるこの子は、けれど私というか……。
「ふふ、マリアンヌの幼い頃を思い出すわ。あの子にもリボンをねだられたことがあるの」
あれは確か、孤児院のバザーに出すリボンに刺繍をしていたときだ。
それを目を輝かせながら見つめていたマリアンヌが自分にも欲しいと言って、一本あげたのだっけ。
あの時も赤いリボンで……三つ編みを編んだ先にリボンをつけてあげると、マリアンヌはとても喜んでいた。
「本当に大人しい猫ですね」
「シャルロットも触ってみる?」
「じゃあちょっとだけ……」
「アン!」
シャルロットが黒猫に手を伸ばそうとしたその時、フレデリク殿下の声が響いた。
驚いた拍子に黒猫はするりと腕から抜け出し、あっという間にその姿は見えなくなった。
「あ……」
「アン!」
急に消えた猫の重みと温もりを名残り惜しむ間もなく、ずしりと肩に重みを感じた。
「会いたかった……」
「……今日は公務でお休みだと聞いておりましたが」
「午前で終わらせた。午後はアンと一緒の授業だから」
背後から私を抱きしめてきた殿下はそう言って頬に口づけた。
「学園でしかアンに会えないなんて酷いよね」
それは殿下のせいでは……と言いそうになるのを飲み込む。
前日、王宮で私を閉じ込めようとした殿下はローズモンドや陛下たちからひどく叱られたらしい。
そうして、学園以外で私と会うことを禁じられたのだ。
「教室に戻ろう、そろそろ予鈴が鳴るよ」
「え……あ」
手を掴まれ、引っ張られる。
「マリアンヌ様、頑張ってください!」
憐れむようなシャルロットに見送られ、私は殿下に連れ去られるように中庭を後にした。
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