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第8章 カーニバル
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モーリスは真っ直ぐ湖へと向かって歩いていく。
言い知れない恐怖が胸の中に湧き上がった。
「あの、モーリス様」
「この湖は濃い色をしているでしょう」
正面に視線を送ったまま、モーリスは口を開いた。
「ここはとても水深が深いんです。夏でも水温が低くて落ちたら助からないと言われていて、遊泳禁止となっています」
それはゲームでも出てきた記憶がある。
危険だからボートも禁止されていると。
でも、どうしてそんな話を……。
心臓が痛いほどバクバクする。
「だから、この湖の中なら誰にも俺たちの邪魔はできないんです」
「……モーリス……さま」
「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ、冷たいですがすぐに分からなくなるでしょうし、俺は絶対貴女を離しませんから」
モーリスは私に笑顔を向けた。
(……心中、するということ?)
「や……」
「結婚式が挙げられないのは残念ですが。ああ、せめて誓いの口付けだけでもしましょうか」
モーリスの顔が近づいてくる。
逃げたいのに身体が――マントで包まれて、何より怖くて動かせない。
「マリアンヌ様……」
「シャー!」
突然目の前が真っ黒になった。
「くっ何だ!?」
黒い影がモーリスの顔を襲っていた。
それを振り払おうとして彼は腕を上げ――私は地面へと落ちた。
「っ」
背中から落とされて、くる、と思った痛みはけれどこなかった。
一瞬のことだったけれど、地面に着こうとする瞬間、ふわりと浮いたような気がした。
(これ……守護の術?)
「くそっ!」
気を取られているとモーリスの声が聞こえた。
見ると、黒い鳥が彼を襲うようにその周囲を飛び交っていた。
あれは……セベリノさんがくれた影だろうか。
目の前には、モーリスと私の間で、私に背を向けて立つ黒猫の姿。
(守ってくれているんだ)
小さな背中がとても頼もしく見えた。
「このっ!」
モーリスが鳥を振り払うと私へ向かってきた。
セレストが威嚇の声を上げると、モーリスの視線がセレストへと向いた。
その目に憎しみの色が宿る。
「危ない……」
「リリアン様!」
その瞬間、モーリスの身体が横へと吹き飛んだ。
「リリアン様!」
「……セベリノ、さん」
息を切らして駆け寄ってきたセベリノさんが私の前に膝をついた。
「大丈夫ですか」
「は……い」
「怪我は?」
「いいえ」
「良かった――」
大きく息を吐くとセベリノさんは私を抱きしめた。
「遅くなって申し訳ありません。間に合って良かった」
「ニャア!」
驚いたようにセレストが声を上げた。
その声のした方を見たセベリノさんは軽く目を見開いた。
「これは……」
「動くな!」
離れた所から声が聞こえた。
見るとモーリスの身体を拘束する男性がいる。
あれは……カイン?
「彼もリリアン様の後を追ってきたようですね」
私の視線の先を見てセベリノさんが言った。
ゲームでは既に見習い騎士だった、力のありそうなモーリスを、カインは簡単に黒い紐で縛り上げていく。
「あの紐は魔術によるもの。相当術を使いこなすようですね」
そんなカインを見てセベリノさんが言った。
モーリスを縛り終えたカインがこちらへ来た。
「マリアンヌ様、ご無事ですか」
「ええ、ありがとうございます」
「……ところで、今『リリアン様』と……」
セベリノさんをちらと見て、再び私を見る。
「貴女は一体……」
「この方はリリアン様」
セベリノさんがそう答えて、視線をセレストへと移す。
「そこにいるマリアンヌ様のお祖母様ですよ」
「お祖母様?」
「マリアンヌ?」
私とカインの声が被った。
(え、マリアンヌ……?)
「ニャーア」
セレストの鳴き声が湖畔に響き渡った。
言い知れない恐怖が胸の中に湧き上がった。
「あの、モーリス様」
「この湖は濃い色をしているでしょう」
正面に視線を送ったまま、モーリスは口を開いた。
「ここはとても水深が深いんです。夏でも水温が低くて落ちたら助からないと言われていて、遊泳禁止となっています」
それはゲームでも出てきた記憶がある。
危険だからボートも禁止されていると。
でも、どうしてそんな話を……。
心臓が痛いほどバクバクする。
「だから、この湖の中なら誰にも俺たちの邪魔はできないんです」
「……モーリス……さま」
「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ、冷たいですがすぐに分からなくなるでしょうし、俺は絶対貴女を離しませんから」
モーリスは私に笑顔を向けた。
(……心中、するということ?)
「や……」
「結婚式が挙げられないのは残念ですが。ああ、せめて誓いの口付けだけでもしましょうか」
モーリスの顔が近づいてくる。
逃げたいのに身体が――マントで包まれて、何より怖くて動かせない。
「マリアンヌ様……」
「シャー!」
突然目の前が真っ黒になった。
「くっ何だ!?」
黒い影がモーリスの顔を襲っていた。
それを振り払おうとして彼は腕を上げ――私は地面へと落ちた。
「っ」
背中から落とされて、くる、と思った痛みはけれどこなかった。
一瞬のことだったけれど、地面に着こうとする瞬間、ふわりと浮いたような気がした。
(これ……守護の術?)
「くそっ!」
気を取られているとモーリスの声が聞こえた。
見ると、黒い鳥が彼を襲うようにその周囲を飛び交っていた。
あれは……セベリノさんがくれた影だろうか。
目の前には、モーリスと私の間で、私に背を向けて立つ黒猫の姿。
(守ってくれているんだ)
小さな背中がとても頼もしく見えた。
「このっ!」
モーリスが鳥を振り払うと私へ向かってきた。
セレストが威嚇の声を上げると、モーリスの視線がセレストへと向いた。
その目に憎しみの色が宿る。
「危ない……」
「リリアン様!」
その瞬間、モーリスの身体が横へと吹き飛んだ。
「リリアン様!」
「……セベリノ、さん」
息を切らして駆け寄ってきたセベリノさんが私の前に膝をついた。
「大丈夫ですか」
「は……い」
「怪我は?」
「いいえ」
「良かった――」
大きく息を吐くとセベリノさんは私を抱きしめた。
「遅くなって申し訳ありません。間に合って良かった」
「ニャア!」
驚いたようにセレストが声を上げた。
その声のした方を見たセベリノさんは軽く目を見開いた。
「これは……」
「動くな!」
離れた所から声が聞こえた。
見るとモーリスの身体を拘束する男性がいる。
あれは……カイン?
「彼もリリアン様の後を追ってきたようですね」
私の視線の先を見てセベリノさんが言った。
ゲームでは既に見習い騎士だった、力のありそうなモーリスを、カインは簡単に黒い紐で縛り上げていく。
「あの紐は魔術によるもの。相当術を使いこなすようですね」
そんなカインを見てセベリノさんが言った。
モーリスを縛り終えたカインがこちらへ来た。
「マリアンヌ様、ご無事ですか」
「ええ、ありがとうございます」
「……ところで、今『リリアン様』と……」
セベリノさんをちらと見て、再び私を見る。
「貴女は一体……」
「この方はリリアン様」
セベリノさんがそう答えて、視線をセレストへと移す。
「そこにいるマリアンヌ様のお祖母様ですよ」
「お祖母様?」
「マリアンヌ?」
私とカインの声が被った。
(え、マリアンヌ……?)
「ニャーア」
セレストの鳴き声が湖畔に響き渡った。
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