異世界転移したと思ったら、実は乙女ゲームの住人でした

冬野月子

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プロローグ

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「ねえ雫!面白そうなゲーム見つけたよー」
大学に着いて顔を合わせるなりそう言ってきた親友に、柏木雫は眉をひそめた。

「また乙女ゲーム?」
「もちろん」
この親友は最近乙女ゲームと呼ばれる恋愛シミュレーションゲームにはまっていて、面白そうだと思ったものは雫にも勧めてくるのだ。

「舞台は昔のヨーロッパ風の、魔法がある世界でね。王宮の侍女見習いとして働く事になった主人公が王子様とか貴族達と恋に落ちて玉の輿に乗るんだ」
「ふうん」
「それでね」
あまり興味のなさそうな雫の目の前にずいとスマホが差し出された。
「この攻略対象なんだけど、雫にそっくりじゃない?」

彼女が示した〝彼〟を見た瞬間。
雫の心臓がドクンと震えた。



そこにいたのは黒髪の青年だった。
その顔は無表情といっていいほどに感情を読み取れず、氷のような冷たさを感じさせる切れ長の青い瞳がこちらを見つめている。
———確かに似ていると言われれば似ている気がする。
…でも、それよりも。

私…この人を知っている…?

初めて目にするゲームのキャラクターなのに、雫は何故か青年に既視感を覚えた。


「…似てる…?」
「うん、顔立ちとかそっくり。お兄さんって言っても通じるよ」
水野ひかりは親友の横顔を見つめて答えた。

雫は胸下まである長い黒髪を持っているが、その桜色を帯びた白い肌やよく見ると青みがかったグレーの瞳、そしてくっきりとした綺麗な顔立ちは日本人離れしていた。
本人は何も言わないが、ハーフなのだろうと噂されていた。

評判を聞きつけたモデル事務所や芸能事務所のスカウトマンが訪ねてくる程の容姿を持つ雫だったが、本人は内向的な性格で目立つ事を嫌っていた。
大人しく人付き合いも苦手で、大学で親しくしているのは小学校の時から一緒のひかりくらいだった。

家族など親しい相手にはその表情も柔らかくなり甘えた態度も見せるが、慣れない相手には人見知りの激しい雫と、誰にも臆する事なく接する事のできる外向的な性格のひかり。
対照的な二人だったが、何故か気が合い出会ってすぐに親しくなりその関係は十年間続いていた。


「ね、雫も一緒にこのゲームやろうよ」
「…うん…」
「じゃあさっそく入れようよ。ゲームのタイトルはね……」
スマホの画面を凝視しながらも上の空といった感じで返事をした雫を不審に思いながらも、一緒にゲームをやると言質を取れた事に満足してひかりは雫の手からスマホを取り戻した。
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