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第3章 惹かれる心
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「とても美味しかったです」
食堂から出て、ロゼはヴァイスを見上げた。
クレープも、ヴァイスが初めて女性を連れて来た記念だと女将が出してくれたデザートのタルトケーキも、日本を思い出させるだけでなく味も美味しかった。
「口に合って良かった」
ロゼに笑みを向けるとヴァイスは手を差し出した。
「少し歩こうか」
「はい」
先刻よりも自然に手を重ねると二人は歩き出した。
第二騎士団は、王都の警備を主な仕事としている。
団長であるヴァイスが見回りに出る事はないが、いざという時のために定期的に街を回り道の変化や治安状況などを確認しているという。
そのためか街の人々にヴァイスの顔は知られているらしく、その騎士団長が女性と手を繋いで歩いている姿に皆一様に驚きを見せていた。
当のヴァイスは人々の視線を気にすることなく、歩きながらロゼに王都の名物や、店頭に並ぶ商品を指しながらこの時期に採れるものなどの説明をしていた。
自分が注目される事が苦手なロゼだったが、繋がれた手の温かさのお陰か———こちらへ向けられる視線が好意的なものが多いからか、そう緊張する事はなかった。
工芸品などが並ぶ通りの、ある店の前でヴァイスは足を止めた。
「ここに入ろう」
「はい…」
カラン、と鈴の音を立ててドアを開ける。
小さな店内の、陳列棚の上には様々な装飾品が並べられていた。
「これは団長様。お待ちしておりました」
店の奥から店主らしき男性が出てきた。
「急な依頼で悪いな」
「いえいえ。こちらのお嬢様ですか」
ヴァイスに頭を下げていた店主はロゼを見た。
「どうぞこちらへ」
店主に促され、ヴァイスはそっとロゼの背中に手を添えると奥へ入るよう力を込めた。
「あの…?」
「花は枯れてしまうからね。次は枯れないものを贈らせて欲しい」
見上げたロゼにそう言ってヴァイスは微笑んだ。
店の奥は応接室になっており、二人はソファに並んで腰を下ろした。
「この店は完成したものも売っているが、好きな石を組み合わせて作るのが人気らしい」
…セミオーダーみたいなものだろうか。
ヴァイスの説明を聞いてロゼは思った。
「お待たせいたしました」
店主がいくつかの箱を持ってきた。
箱の一つを開けると、中には様々な大きさのカットされた紫色の石が入っていた。
「店にある紫水晶の中で良いものを揃えました」
「…色の濃さも様々なんだな」
興味深そうに箱を覗き込んで、ヴァイスは顔を上げた。
「毎日つけるとしたらどういうものがいいのだろうか」
「そうですね…ネックレスやイヤリングはドレスに合わせて毎日変えるでしょうから」
店主はロゼを見ながら言った。
今はお忍び用の商家の娘スタイルの服を着ており装飾品は着けていなかったが、職業柄なのか、あるいは髪色からか、ロゼの素性は分かっているのだろう。
「指輪などいかがでしょう。重ねて着けることもできますし」
「そうか。それでいい?ロゼ」
「あ…はい」
「ではこちらからお好きな形をお選び下さい」
店主は箱の一つを二人の前に置いた。
「せっかくですから、お嬢様の瞳と同じ色の石もお持ちしましょうか」
「あるのか?」
「はい、どうぞごゆっくりお選び下さい」
そう言って店主は出て行った。
「わあ…」
箱の中を見てロゼは思わず声を上げた。
中には指輪の空枠がずらりと並んでいた。
シンプルなものから、ダイヤが入ったもの、繊細で緻密な細工が施されているものなど様々なデザインのものがある。
手芸好きでアクセサリー作りにも手を出していたロゼとしては、完成品よりも心が躍るものだった。
「気に入ったものがあれば幾つでも選んでいいから」
目の前の箱の中に夢中になっているロゼを見つめながらヴァイスは言った。
「…いえ、幾つもはいらないです…」
「そうか?とても楽しそうに見ているが」
ヴァイスの言葉にロゼの頬が赤く染まった。
「…こういうのを見るのが好きなんです」
「見るのが?身につけるのではなくて?」
「…作る方に興味があるんです」
「そういえば見事な刺繍だったな」
ヴァイスは微笑んだ。
「ここは上の階に工房があるというから、後で見せてもらおうか」
「出来るんですか?」
「頼んでみよう」
ぱあっと目を輝かせたロゼの頭を撫でると、ヴァイスは頭を包み込むように腕を回しその身体を抱き寄せた。
食堂から出て、ロゼはヴァイスを見上げた。
クレープも、ヴァイスが初めて女性を連れて来た記念だと女将が出してくれたデザートのタルトケーキも、日本を思い出させるだけでなく味も美味しかった。
「口に合って良かった」
ロゼに笑みを向けるとヴァイスは手を差し出した。
「少し歩こうか」
「はい」
先刻よりも自然に手を重ねると二人は歩き出した。
第二騎士団は、王都の警備を主な仕事としている。
団長であるヴァイスが見回りに出る事はないが、いざという時のために定期的に街を回り道の変化や治安状況などを確認しているという。
そのためか街の人々にヴァイスの顔は知られているらしく、その騎士団長が女性と手を繋いで歩いている姿に皆一様に驚きを見せていた。
当のヴァイスは人々の視線を気にすることなく、歩きながらロゼに王都の名物や、店頭に並ぶ商品を指しながらこの時期に採れるものなどの説明をしていた。
自分が注目される事が苦手なロゼだったが、繋がれた手の温かさのお陰か———こちらへ向けられる視線が好意的なものが多いからか、そう緊張する事はなかった。
工芸品などが並ぶ通りの、ある店の前でヴァイスは足を止めた。
「ここに入ろう」
「はい…」
カラン、と鈴の音を立ててドアを開ける。
小さな店内の、陳列棚の上には様々な装飾品が並べられていた。
「これは団長様。お待ちしておりました」
店の奥から店主らしき男性が出てきた。
「急な依頼で悪いな」
「いえいえ。こちらのお嬢様ですか」
ヴァイスに頭を下げていた店主はロゼを見た。
「どうぞこちらへ」
店主に促され、ヴァイスはそっとロゼの背中に手を添えると奥へ入るよう力を込めた。
「あの…?」
「花は枯れてしまうからね。次は枯れないものを贈らせて欲しい」
見上げたロゼにそう言ってヴァイスは微笑んだ。
店の奥は応接室になっており、二人はソファに並んで腰を下ろした。
「この店は完成したものも売っているが、好きな石を組み合わせて作るのが人気らしい」
…セミオーダーみたいなものだろうか。
ヴァイスの説明を聞いてロゼは思った。
「お待たせいたしました」
店主がいくつかの箱を持ってきた。
箱の一つを開けると、中には様々な大きさのカットされた紫色の石が入っていた。
「店にある紫水晶の中で良いものを揃えました」
「…色の濃さも様々なんだな」
興味深そうに箱を覗き込んで、ヴァイスは顔を上げた。
「毎日つけるとしたらどういうものがいいのだろうか」
「そうですね…ネックレスやイヤリングはドレスに合わせて毎日変えるでしょうから」
店主はロゼを見ながら言った。
今はお忍び用の商家の娘スタイルの服を着ており装飾品は着けていなかったが、職業柄なのか、あるいは髪色からか、ロゼの素性は分かっているのだろう。
「指輪などいかがでしょう。重ねて着けることもできますし」
「そうか。それでいい?ロゼ」
「あ…はい」
「ではこちらからお好きな形をお選び下さい」
店主は箱の一つを二人の前に置いた。
「せっかくですから、お嬢様の瞳と同じ色の石もお持ちしましょうか」
「あるのか?」
「はい、どうぞごゆっくりお選び下さい」
そう言って店主は出て行った。
「わあ…」
箱の中を見てロゼは思わず声を上げた。
中には指輪の空枠がずらりと並んでいた。
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「…いえ、幾つもはいらないです…」
「そうか?とても楽しそうに見ているが」
ヴァイスの言葉にロゼの頬が赤く染まった。
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「見るのが?身につけるのではなくて?」
「…作る方に興味があるんです」
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ヴァイスは微笑んだ。
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