異世界転移したと思ったら、実は乙女ゲームの住人でした

冬野月子

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第5章 繋がる過去

02

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「それにしても、このゲームの事だけど」
ランドは机の上の紙を示した。

「とても興味深いね。———実は二百年前の事で、今まで知られていたのとは異なる事が書いてある資料を見つけたんだ」
「異なる事?」
「王家の人間が書いた日記を見つけたんだ。これまで五家で協力して今の体制を作ったと言われてきたけれど、その日記によると実際は違ったらしい」
ランドは二人を見渡した。
「五家の間でも争いが起きていたようだよ。魔法による戦いで死者も出た、かなり酷いものだったらしい」
「死者が…」
「そこへ現れたのが光の乙女だ。彼女が争いを収め、選んだフールス家の当主が王になった。…このゲームの内容と似ているね」
ロゼとルーチェは顔を見合わせた。

「…ファンブックに書いてあった、二百年前の悲劇ってこの事…?」
「異世界に存在する、今この国の者が誰も知らない過去の出来事が書いてあるゲーム。誰が作ったんだろうね」
ロゼは目を見張った。
「もしかして…ルーチェをこの世界に転生させたひと…?」
「どうやって…何のために?」

「それはルーチェをこの世界に連れてくるためじゃないかな」
ランドは言った。
「全て同じ〝女神〟の仕業だとして。彼女がかつてこの国の戦乱を終わらせるために我々五家の先祖に魔力を与え、光の乙女を異世界から呼んだ。そして今、再び光の乙女であるルーチェを異世界から転生させた」
「…でも今は…戦争は起きていないですよね」
「だけど君がいるよね、ロゼ」
「———私が…」
「強力すぎる魔力を持ったロゼを守るためだとすれば…ああ、そもそも五歳の時にロゼが異世界に飛ばされたのもその女神の仕業かもしれないね」



「どうして…わざわざそんな事…」
ロゼは俯くと自分の手を握りしめた。
「私一人のために…?」
ランドの言う事は理にかなっているように思えるが…どうしてロゼのためにそこまでするのか、それが大きな疑問だった。
それに…

「———それって私のせいで…ルーチェ…いえひかりは死んでしまったのでしょう…?」
ロゼと違い、ルーチェとひかりは魂は同じでも身体は別人だ。
ルーチェとして転生したという事は、ひかりは……

「ロゼ」
ルーチェはロゼの手を握りしめた。
「それは違う…そういう風に考えないで」
「でも」
「私はこの世界に来られて良かったと思っているわ。———雫がいない世界は本当につまらないのだもの」
「ルーチェ…」
「私をこの世界に転生させたひとに感謝しているわ、本当よ」


「ルーチェ」
ロゼの頭を撫でるルーチェにランドは声をかけた。
「君を転生させた者に心当たりはないかい」
「心当たり…ですか」
「このゲームにそういう者が出てきたりする事は」
「…いえ…なかったです」
ロゼを見ると、同意するようにロゼも頷いた。

「そうか…その転生させた者が何者なのか分かればいいのだが」
「…女神ではないのですか」
「この間オリエンスも言っていたけれど、この国に女神はいないんだよ」
「———でも私が聞いたのは確かに女性の声で…」

「女神ではないけれど、強大な力を持った誰か…」
ランドは宙を見た。
「うーん…聞き覚えがあるような…」
「あるのですか?」
「昔読んだ本のどこかにあったかもしれないな…」

扉をノックする音が聞こえた。



「ああ、良かった来ていたか、ルーチェ」
入ってきたオリエンスがほっとした顔を見せた。

「…何か御用でしょうか」
「うん、殿下の事なんだけどね」
「———変な噂を流しているようですね…」


「ああ、それに関してはごめんね」
オリエンスは手を挙げて謝った。
「根回しは早い方がいいからね。それに本当の事だから」
恨めしそうなルーチェの視線を気にする風もなく、オリエンスは笑顔で言った。

「でも私は…」
「殿下も反省というか、思うところがあるようでね、この五日間は我儘も言わずに真面目に働いているよ。ルーチェのおかげだね」
———それで機嫌がいいのか。
やたらにこにこしているオリエンスに、ルーチェは心の中でため息をついた。

(そういえば…ゲームでもこんなシーンあったな)

ヒロインと出会って変わり始めたユークに、それまで振り回されていたオリエンスがヒロインに感謝する、そんな場面があった。
ちらとロゼを見ると、同じ事を考えたのかルーチェに向かって小さく笑みを浮かべた。

「…ロゼ様も一緒に来ていただけますか?」
「ええ、いいけれど…」
「ロゼも?」
オリエンスは眉をひそめた。
「何か問題でも?」
「いや…殿下がどうもロゼに対抗意識を持っているらしくて」
ルーチェとロゼは顔を見合わせた。


「……私は殿下を邪魔する〝ライバル〟なのね」
そう言ってロゼは微笑んだ。
「ライバル…になる訳ないじゃありませんか、ロゼ様が一番なのは変わりませんから」
「ふふ、殿下は相当頑張らないとならないのね」
「…とにかく、ロゼ様も一緒でいいですよね」

「分かったよ、とにかく来てくれ」
「それではランド様。失礼いたします」
ルーチェとロゼは立ち上がった。

「ああ、さっきの事で何か心当たりがあったら教えてくれる?」
「はい」
「失礼いたします」
「それとルーチェ」
背を向けたルーチェにランドは声を掛けた。

「殿下は確かに我儘だけど、根は素直な子だから。君も心を開いてあげてね」
「…失礼します」
ルーチェは頭を下げると部屋から出て行った。




「さて、もう少し調べるか」
三人が出て行くと、ランドはルーチェたちが書いた紙を手に取った。

「———恋愛ゲームねえ…あの二人はこういうのが好きとは意外だな」
呟くと、ランドは紙を引き出しにしまい立ち上がった。
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