52 / 62
第6章 お披露目
05
しおりを挟む
「さすが宰相閣下。名演説だね」
いつの間にかルーチェの隣にランドが立っていた。
普段は着崩したラフな恰好だが、流石に今日は髪をきっちり後ろに流して正装を着こなしている。
(すっかり忘れてたけど…この人も攻略対象なのよね)
前世での大学の准教授を思い出すからか肩書きのせいか、先生のように思っていたけれど。
(美形オーラが凄いわ…)
「何?」
まじまじとランドを見つめるルーチェの視線に気づいて、ランドは首を傾げた。
「いえ…ちゃんとした姿になると見違える…いえその」
「はは、よく言われるよ。でもこういう堅苦しい服は苦手なんだよね」
首元のタイを緩める仕草をしながらランドは言った。
「ルーチェは一人なの?家族も来るんじゃなかったっけ」
「その予定でしたが…昨日の面会で力尽きてしまったようで…」
ルーチェを婚約者にしたいとユークから正式に申し込まれ、今日のお披露目に合わせて田舎から両親と兄を呼んでいた。
昨日は殿下と両陛下、そしてルーチェが養子に入る事になるアズール公爵家の方々との面会があったのだが。
まさか王宮に働きに行った娘が王太子や公爵家の人間と親しくしているとは知らず、更に王太子の婚約者となるとは想像すら出来なかった家族たちの驚きは尋常ではなく。
王都に来ることすら滅多にない彼らは錚々たる顔ぶれとの面会ですっかり疲れ切ってしまった。
仕方なく今日のお披露目への出席は諦めたのだ。
「そうなんだ。新しい家族とは一緒にいなくていいの?」
ランドが視線を送った先には、壇上での挨拶を終えた宰相とロゼがアズール公爵と息子のオリエンスと挨拶を交わしている。
「まだ公になっていませんから…」
「でも一人でいて大丈夫?変な男に声掛けられたりしていない?」
「大丈夫です」
ルーチェは握り拳を上げた。
「いざとなったらこれがありますし」
「…それを使うのは殿下だけにしておいて欲しいな」
「そうですか?」
未来の王妃が武闘派だとは…なるべく知られたくない事だ。
「フラーウム公爵」
宰相がロゼを連れてやってきた。
「本日はおめでとうございます」
和かな笑顔でランドは祝いの言葉を述べた。
「公爵にはとても世話になった。これからも頼むよ」
「はい」
「ルーチェ」
宰相はルーチェに向いた。
「君がいなければロゼはどうなっていたか。本当に感謝する」
「いえそんな…私はただ一緒にいただけで…」
「それが一番嬉しいの」
ロゼはそう言ってルーチェの手を取った。
「ひかりがこの世界に来てくれて、本当に感謝しているわ」
「ロゼ…」
「会う時間は減ってしまうでしょうけれど、これからもよろしくね」
「ええ…よろしくね、ロゼ」
ルーチェはアズール家へ移り、王妃教育が始まる。
これから忙しくなるだろう。
「あの女性は誰だ」
宰相たちが去っていくのを見送っていたルーチェの耳に声が聞こえてきた。
「ノワール家の方々と親しそうだが」
「ずいぶんと美人だな」
「でも見た事がないわ」
「あのドレス…とても上等だわ」
「ネックレスの細工も見事ね…」
「まさかフラーウム公爵の…?」
「ああ、ロゼの次は君の番だね」
同じく声が聞こえたのだろう、ランドがルーチェを見て笑みを浮かべた。
「ロゼ以上に噂が飛び交うだろうし、大変だと思うよ」
「…はい」
公爵家の養女になるとはいえ、元は子爵令嬢が王太子の婚約者になるのだ。
風当たりも強いだろう。
「君が色持ちである事を明かして、二百年前の王妃の事も明らかにすれば歓迎されるだろうけど。どうする?」
この国では魔力持ちは特別視される。
子爵令嬢のルーチェがユークの両親である国王と王妃にあっさり受け入れられたのも、魔力持ちである事と二百年前の話をランドが両陛下に説明したからだ。
今その事を知っているのは五家の人間だけだが、他の貴族や国民にも明かせば同様に身分になど些細な事となるだろう。
「…でも明かすのは、私が魔力を持っている事だけですよね」
「渡り人である事は知られたくなければ伏せていいよ」
「いえそうではなくて…セレネやカレンの事は…」
「———それは陛下の意向によるけれど、まず明かせないだろうね」
「…そう…ですよね」
「まあでも、殿下の代になって色持ちの存在に頼らずとも国を強固に出来れば…彼女たちの存在と犠牲があった事を明かせるかもしれないね」
ランドの言葉にルーチェは目を見開いた。
「あ…」
「国を良くできるか、変えられるか。全ては我々次第だ」
ランドはルーチェに笑顔を向けた。
「未来の王妃として頼りにしてるよ」
「はい…頑張ります」
ルーチェも笑顔を返して頷いた。
いつの間にかルーチェの隣にランドが立っていた。
普段は着崩したラフな恰好だが、流石に今日は髪をきっちり後ろに流して正装を着こなしている。
(すっかり忘れてたけど…この人も攻略対象なのよね)
前世での大学の准教授を思い出すからか肩書きのせいか、先生のように思っていたけれど。
(美形オーラが凄いわ…)
「何?」
まじまじとランドを見つめるルーチェの視線に気づいて、ランドは首を傾げた。
「いえ…ちゃんとした姿になると見違える…いえその」
「はは、よく言われるよ。でもこういう堅苦しい服は苦手なんだよね」
首元のタイを緩める仕草をしながらランドは言った。
「ルーチェは一人なの?家族も来るんじゃなかったっけ」
「その予定でしたが…昨日の面会で力尽きてしまったようで…」
ルーチェを婚約者にしたいとユークから正式に申し込まれ、今日のお披露目に合わせて田舎から両親と兄を呼んでいた。
昨日は殿下と両陛下、そしてルーチェが養子に入る事になるアズール公爵家の方々との面会があったのだが。
まさか王宮に働きに行った娘が王太子や公爵家の人間と親しくしているとは知らず、更に王太子の婚約者となるとは想像すら出来なかった家族たちの驚きは尋常ではなく。
王都に来ることすら滅多にない彼らは錚々たる顔ぶれとの面会ですっかり疲れ切ってしまった。
仕方なく今日のお披露目への出席は諦めたのだ。
「そうなんだ。新しい家族とは一緒にいなくていいの?」
ランドが視線を送った先には、壇上での挨拶を終えた宰相とロゼがアズール公爵と息子のオリエンスと挨拶を交わしている。
「まだ公になっていませんから…」
「でも一人でいて大丈夫?変な男に声掛けられたりしていない?」
「大丈夫です」
ルーチェは握り拳を上げた。
「いざとなったらこれがありますし」
「…それを使うのは殿下だけにしておいて欲しいな」
「そうですか?」
未来の王妃が武闘派だとは…なるべく知られたくない事だ。
「フラーウム公爵」
宰相がロゼを連れてやってきた。
「本日はおめでとうございます」
和かな笑顔でランドは祝いの言葉を述べた。
「公爵にはとても世話になった。これからも頼むよ」
「はい」
「ルーチェ」
宰相はルーチェに向いた。
「君がいなければロゼはどうなっていたか。本当に感謝する」
「いえそんな…私はただ一緒にいただけで…」
「それが一番嬉しいの」
ロゼはそう言ってルーチェの手を取った。
「ひかりがこの世界に来てくれて、本当に感謝しているわ」
「ロゼ…」
「会う時間は減ってしまうでしょうけれど、これからもよろしくね」
「ええ…よろしくね、ロゼ」
ルーチェはアズール家へ移り、王妃教育が始まる。
これから忙しくなるだろう。
「あの女性は誰だ」
宰相たちが去っていくのを見送っていたルーチェの耳に声が聞こえてきた。
「ノワール家の方々と親しそうだが」
「ずいぶんと美人だな」
「でも見た事がないわ」
「あのドレス…とても上等だわ」
「ネックレスの細工も見事ね…」
「まさかフラーウム公爵の…?」
「ああ、ロゼの次は君の番だね」
同じく声が聞こえたのだろう、ランドがルーチェを見て笑みを浮かべた。
「ロゼ以上に噂が飛び交うだろうし、大変だと思うよ」
「…はい」
公爵家の養女になるとはいえ、元は子爵令嬢が王太子の婚約者になるのだ。
風当たりも強いだろう。
「君が色持ちである事を明かして、二百年前の王妃の事も明らかにすれば歓迎されるだろうけど。どうする?」
この国では魔力持ちは特別視される。
子爵令嬢のルーチェがユークの両親である国王と王妃にあっさり受け入れられたのも、魔力持ちである事と二百年前の話をランドが両陛下に説明したからだ。
今その事を知っているのは五家の人間だけだが、他の貴族や国民にも明かせば同様に身分になど些細な事となるだろう。
「…でも明かすのは、私が魔力を持っている事だけですよね」
「渡り人である事は知られたくなければ伏せていいよ」
「いえそうではなくて…セレネやカレンの事は…」
「———それは陛下の意向によるけれど、まず明かせないだろうね」
「…そう…ですよね」
「まあでも、殿下の代になって色持ちの存在に頼らずとも国を強固に出来れば…彼女たちの存在と犠牲があった事を明かせるかもしれないね」
ランドの言葉にルーチェは目を見開いた。
「あ…」
「国を良くできるか、変えられるか。全ては我々次第だ」
ランドはルーチェに笑顔を向けた。
「未来の王妃として頼りにしてるよ」
「はい…頑張ります」
ルーチェも笑顔を返して頷いた。
84
あなたにおすすめの小説
キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる
藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。
将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。
入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。
セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。
家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。
得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。
至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます
下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
悪夢から逃れたら前世の夫がおかしい
はなまる
恋愛
ミモザは結婚している。だが夫のライオスには愛人がいてミモザは見向きもされない。それなのに義理母は跡取りを待ち望んでいる。だが息子のライオスはミモザと初夜の一度っきり相手をして後は一切接触して来ない。
義理母はどうにかして跡取りをと考えとんでもないことを思いつく。
それは自分の夫クリスト。ミモザに取ったら義理父を受け入れさせることだった。
こんなの悪夢としか思えない。そんな状況で階段から落ちそうになって前世を思い出す。その時助けてくれた男が前世の夫セルカークだったなんて…
セルカークもとんでもない夫だった。ミモザはとうとうこんな悪夢に立ち向かうことにする。
短編スタートでしたが、思ったより文字数が増えそうです。もうしばらくお付き合い痛手蹴るとすごくうれしいです。最後目でよろしくお願いします。
【完結】『運命』を『気のせい』と答えたら、婚姻となりまして
うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
ヴォレッカ・サミレットは、領地の危機をどうにかするために、三年ぶりに社交界へと婚姻相手を探しにやってきた。
第一にお金、次に人柄、後妻ではなく、できれば清潔感のある人と出会いたい。 そう思っていたのだが──。
「これは、運命だろうか……」 誰もが振り返るほどの美丈夫に、囁かれるという事態に。
「気のせいですね」 自身が平凡だと自覚があり、からかって遊ばれていると思って、そう答えたヴォレッカ。
だが、これがすべての始まりであった。 超絶平凡令嬢と、女性が苦手な美丈夫の織りなす、どこかかみ合わない婚姻ラブストーリー。
全43話+番外編です。
『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』
ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています
この物語は完結しました。
前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。
「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」
そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。
そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?
モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します
みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが……
余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。
皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。
作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨
あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。
やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。
この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。
ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく
犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。
「絶対駄目ーー」
と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。
何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。
募集 婿入り希望者
対象外は、嫡男、後継者、王族
目指せハッピーエンド(?)!!
全23話で完結です。
この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる